犬の涙やけ
マルチーズやトイプードル、シー・ズーなどでよく見かける、目頭から鼻にかけての毛が赤茶色に変色している症状が気になる方、多いのではないでしょうか。
赤茶色なのは、そこにたまっていた涙の成分が赤く変色したもので、涙やけと呼ばれています。病気ではありませんが、放置すると皮膚が炎症を起こすことがあります。
人の場合は、悲しい、悔しい、嬉しいといった感情が高まった時に涙を流します。犬にも悲しい、嬉しいという感情はありますが、感情が高まって涙を流すということはないと考えられています。
ではなぜ、涙やけを起こす犬が多いのでしょうか。犬達にとって涙はどいう役割をし、どういう時に流すのでしょうか。今回は、犬が涙を流す理由と涙やけへの対処についてご説明します。
涙の役割
涙は目の表面を覆い、目を潤すと同時に感染を防ぐバリアになります。
また、血液の代わりに角膜に酸素や栄養を補給します。黒目の部分には視界を邪魔する血管がないからです。ほかに目に入ってしまったゴミなどを洗い流す働きもしています。
さらに、涙には目の表面にできた傷を治す成分も含まれています。涙は、目の「見る」という機能を十分に発揮させるための重要な役割を担っているのです。
涙は上瞼の内側にある涙腺から分泌され、目の表面を覆い、最終的には目頭から鼻に抜けている鼻涙管を通って排水されます。
そのため、これらの機能が正常に機能している間は涙が溢れることはありません。涙の分泌量が排水量を上回ると溢れるのです。
犬が涙を流す主な病気
前述の通り、犬は人のように感情によって涙を流すことはありません。つまり、犬が涙を流している場合、涙の分泌量と排水量をアンバランスにしている原因があるということになります。
もしも愛犬の涙が頻繁に流れたりたまっている場合は、病気の可能性を疑った方が良いでしょう。
犬が涙を流す場合に考えられる主な病気を3つに分類してご紹介します。
1. 物理的な刺激を目に与える病気
病気ではなくても、目にゴミが入ると犬は涙を流します。しかし、涙でゴミが流れてしまうと、また正常な状態に戻ります。しかし、物理的な刺激を目に与え続けるような病気の場合、涙で刺激の素を流すことができず、涙を流すことが多くなります。
異所性睫毛(しょうもう)
睫毛(まつげ)が異常な場所に生えたり異常な向きに生える病気です。
眼の縁の部分に生えている睫毛が本来は眼の外に向いていますが、内側に向いているために角膜の表面を刺激してしまいます。場合によっては瞼の裏側に生えていることもあります。
眼瞼内反、眼瞼外反
瞼が内側や外側に反ってしまう病気です。犬の場合は皮膚の表面を被毛が覆っていますので、瞼が反ると目の表面に被毛が当たり、涙の原因になります。
脳疾患の場合、眼球が正常な位置からずれることがあり、この場合も物理的に瞼が反って涙を流すことがあります。
2. 物理的に涙を排水できなくなる病気
前述の通り、目の表面を覆っていた涙は最終的に鼻涙管を通って排出されます。その鼻涙管がなんらかの原因により詰まってしまうと、涙が排出できずに目頭の部分にたまったり、流れたりします。これを「鼻涙管閉塞」と言います。
3. その他
角膜炎・結膜炎・ぶどう膜炎といった目に炎症を起こす病気、緑内障、眼球や第三眼瞼・鼻腔などにできる腫瘍、また鼻の病気である鼻炎の場合にも、涙をよく流すという症状が見られる場合があります。
涙やけのお手入れと予防
まず、一番の基本は赤茶色にやけた部分の毛を刈ります。そして、たまった涙や涙やけの部分の皮膚をこまめに拭き、常に清潔な状態に保ちましょう。
涙やけを目立たなくする薬も市販されていますが、あまり高い効果は見られず、長く使い続けることで皮膚や眼球に刺激を与えてしまうこともあるので、あまりおすすめできません。
また、涙やけしている部分の毛を刈っただけで終わらせず、涙を流す根本的な原因を解決する必要があります。原因が病気の場合は、動物病院できちんと治療を受けましょう。
鼻涙管閉塞の場合、犬用のフードに含まれる添加物や色素などを代謝することで体内で産出される成分が詰まりやすくするという説もあります。
科学的に証明されているわけではありませんが、添加物の少ない原料を使った高品質なフードに変えたら改善されたという報告もあるので、手作り食も含め、試してみるのもいいかもしれません。
まとめ
私たちに身近な涙なので、犬の目頭に涙がたまっていてもさほど気にしない飼い主さんもいるでしょう。しかし、犬が涙をためたり流したりする原因に、病気が隠れていることもあります。一時的なものなのか頻繁に涙を流しているのかについて、注意してみてあげましょう。