樺太犬とは?
樺太犬という犬種をあまりご存知ないかたも多いでしょうが、樺太や千島列島で作り出された犬種であり、アイヌ民王が犬ゾリをするときに用いられた犬種の子孫だと言われておりそのため、別名アイヌ犬とも呼ばれております。
元はシベリアンハスキーやアラスカンマラミュートといった北方系の犬種であると言われていますが、1800年代には作業犬として活躍をしており犬ゾリや狩猟などにも用いられた他、行商などにおける使役犬としても活躍をしていました。
しかし、現在ではその運動量の多さなどから飼育する人が少なくなりほとんど生き残っていない犬種だと言われています。ただ樺太犬の子孫達はどこかに引き取られたり、飼育をされたりしているためその遺伝子はどこかで生き残っていると考えられます。
樺太犬の性格
- 従順
- 忠実
- 忍耐力がある
- 勇敢
- 丈夫
- 優れた方向感覚
現在樺太犬は存在していないと言われているため、どのような犬種であったかは過去の資料を見るだけでしか確認はできませんが、南極大陸で隊員と共に仕事を行なっていたところを見ると、おそらく大変忠実で忍耐力のある犬種であったのは想像ができます。
また勇敢な性格をしており、持ち前の丈夫な体を使って厳しい南極大陸での生活を耐え抜いたことでしょう。また、1年後に迎えにきた隊員に駆け寄った姿を見る限り、大変忠実で義理固い性格をしていたのではないでしょうか。
さらに、樺太犬は優れた帰巣本能を持っていた犬種とされており犬ぞりで飼い主が方向を見失ったとしても優れた方向感覚と持ち前の帰巣本能で連れて帰ってくれたという話もあります。
樺太犬の特徴
樺太犬は今現在はその姿を残していないため過去の資料によるものでしか確認はできませんが、体長は64〜76cm、体高が54〜67cm、体重は22〜45Kgもあったと言われています。この大きさだけで見ると中型犬〜大型犬に属する犬種であったということがわかります。
また樺太犬は極寒の地である樺太諸島で生まれた犬種であるため寒さにも強く、密集した毛に全身を覆われていた個体だったそうです。そのほかの特徴としてあげられるのが、太刀耳と垂れ耳の個体がいたこと、尻尾は巻尾と差尾の2種類がいたこと、面長な体をしていたこと、手足がとても太くたくましい体をしていたことが知られています。
また樺太犬はとても強い体を持っていたため、粗食にも耐えられる犬種であったことから南極大陸の同行に選ばれたと言われています。
樺太犬の毛色と毛質
樺太犬の毛質は冬の寒さでも耐えるために長毛種で毛は固かったようです。特に北海道で生活をする樺太犬は長毛種で被毛が豊かである個体が多かったという情報もあります。また毛色は黒、白黒ブチ、狼灰色、茶、薄茶、白などの色があったようです。さらに全体的に黒い個体が多く、胸元の白い毛が特徴的だったとか。
ちなみに今回の主役であるタロとジロはタロが黒い毛色でジロが白い毛色をしていたようです。2匹の姿は剥製にされており、タロは北海道大学植物園に、ジロは東京上野の国立科学博物館で展示をされています。
また南極物語の映画の影響で、何度かタロとジロの剥製が展示される機会があったので、これから何かのイベントが行われたらその姿を同時に見ることができるかもしれませんね。
樺太犬のタロとジロの活躍について
南極物語をご存知の方も多いでしょうが、ここでタロとジロの活躍の概要を少しご紹介しましょう。タロとジロは南極大陸を調査するための南極越冬隊に同行をして1956年に昭和基地へ降り立ちました。連れてこられた理由は雪上車が動かなくなった時のために、ソリで人や荷物を運ぶためです。このときタロとジロを含めた22頭の樺太犬が昭和基地に運び込まれました。
タロとジロはなぜ置き去りに?
厳しい寒さを乗り越えてなんとか越冬を成功したタロとジロを含む樺太犬たち。しかし、交代の船が来る途中で予想外の悪天候に苛まれてしまい、南極大陸から出れなくなりました。この時、隊員は脱出が出来たのですが連れてきていた樺太犬達は南極大陸に置き去りとなったのです。それから1年後、隊員が再び南極大陸を訪れるとそこには奇跡的に生還をしたタロとジロの2頭の姿が。この奇跡的な生還に日本中が湧きあがり、タロとジロの活躍と奇跡を讃え記念碑が建てられたりグッズが販売されたのです。
またタロとジロが亡くなった後も、その功績をたたえて剥製や慰霊碑が建てられた他、小説や映画にもなりました。今でもその活躍は有名で、世界中から愛される有名犬となっているのです。
タロとジロの子孫はいるの?
タロとジロの子孫は存在しています。残念ながらタロの子供は確認されていませんが、ジロの子供は10頭いたとされています。これは南極観察を行なっているときに、同じ犬ソリ犬として同行していたシロという雌犬との間に生まれた子犬で、無事に日本へ帰国しているようです。
この子犬達は帰国後、北海道の各所に引き取られていったそうですが、その子孫達がどうなったかはわかっていません。そのため確実なことは言えませんが、おそらくどこかでタロとジロの血は受け継がれていることでしょう。ちなみに樺太犬を後世に残そうとする団体、樺太犬保存会という団体がありますが、現在ではその頭数の激減や飼育の難しさから活動は休止状態となっています。
第3の生存犬「リキ」について
南極物語で有名なタロとジロですが、実はその影には2匹を守った第3の生存犬の「リキ」の存在があったのをご存知でしょうか?リキは他の犬の中でも高齢で当時は7歳、他の犬と同じく鎖から抜け出すことに成功をしたリキですが、まだ1歳ほどの幼い兄弟犬であるタロとジロを見捨てることができず、基地周辺に残って2匹のお世話をしていたというのです。
自分の餌を与え、狩りを教え、生き残る術を伝えたリキ。しかし高齢だったリキは寒さに耐えられずタロとジロと過ごした基地の近くで息絶えたそうです。南極物語で奇跡的に生き残った2頭を救ったリキ。その存在を知る人があまりにも少ないのは悲しいですね。
海外の反応は?
海外の反応はもちろん好評で、実際にタロとジロの物語はハリウッドでリメイクをされただけではなく、2頭の活躍を描いた小説は海外で翻訳もされているベストセラー小説となっています。世界中でも愛されるタロとジロは海外でも名犬として名前が上がるほど有名な犬なのです。
樺太犬の値段
残念ながら樺太犬は現在では絶滅したと思われる犬種であるため値段をつけることはできないと思われます。また、樺太犬を日本で飼育するとなると大変ですし現実的ではないのは間違いありません。
もっとも、樺太犬がたくさん運動をできる場所や樺太犬が活躍できる犬ぞりを用意できるのであれば話は別でしょうが、そもそも樺太犬のブリードを行っているブリーダーが存在していないと思われるので、飼いたいと思っても手に入れることは難しいでしょう。ただし、タロとジロの子孫がもし残っているのであれば、樺太犬の血を引いた子犬を飼うことはできるかもしれません。しかし、それでも価格はいくらになるかは検討がつきません。
もしかしたら里親として迎え入れることができるかもしれませんが、有名犬の血統であるがため100万円を超えるかもしれません。そもそもタロとジロの血統を持つ子犬を探すのも難しいでしょうし、樺太犬自体が頭数が少ないため飼育するのは少々困難かもしれませんね。
樺太犬は今でも飼える?
前述した通り、現在樺太犬は絶滅している、あるいは子孫は残っていたとしても違う犬種と交配をされている可能性が高いため、おそらく純粋な樺太犬は存在していないのではと言われています。調査によると2011年の時点で純粋な樺太犬は3頭ほどしか残っていなかったそうです。その後は樺太犬保存会も休止状態となってしまったため、どれほどの頭数が現在も残っているのかは定かではないようです。
もし、どうしても飼いたいと思うのであれば樺太犬とよく似ているイーストシベリアンライカなら存在しています。昔からイーストシベリアンアンライカは樺太犬と同一視されている傾向があるため、樺太犬と暮らしている気分にはなれます。ただし、イーストシベリアンアンライカも大変な運動量や広い土地が必要になりますので飼育をするのは現実的ではありません。
どうしてもというならば、日本でも飼えるシベリアンハスキーを検討されてみてはいかがでしょか?見た目も似ている犬種ですし日本でも十分に飼える犬種でブリーダーも存在していますのでオススメですよ。
樺太犬「タロとジロ」の映画やドラマ
南極物語
実話を元に構成された日本でもっとも有名な南極物語。少々脚色などが加えられていますが、置き去りにされた理由や他の犬達の話も描かれているため大変わかりやすい内容となっています。どちらかというとタロとジロに焦点を当てた話となっています。
カラフト犬物語
こちらは樺太犬達が中心となった話です。どのようにしてタロとジロが生き残ったのかなどが細かく書かれています。ちなみに著書は実際に昭和基地でタロとジロのお世話をしていた方で、タロとジロを迎えにいった北村泰一先生です。とてもリアルな話なので、脚色されていない話を見たい方はこちらがおすすめです。
まとめ
映画「南極物語」とはだいぶ違う印象を受けた方もいらっしゃるかもしれませんね。それでも、実際のエピソードの中にも、いくつものドラマがあった事がうかがえたのではないでしょうか?
樺太犬は今でこそ絶滅したと言わざるを得ないほど見かけなくなってしまった犬種ですが、当時はとてもポピュラーで車や電車などの代わりに使役犬として人々の生活を支えていた犬です。交通機関の発達により、活躍の場を失い野に放たれたり、ほかの犬種と交雑されたことで失われた幻の犬ですが、その功績はタロとジロ、そして第3の生存犬であるリキの武勇伝と共に末長く語り継がれるはずです。樺太犬はいなくなっても、人間のために働き、人間と共に歴史を歩んできた犬の存在だけは忘れないようにしてくださいね。