犬のカーミングシグナルとは?意味は?
犬のカーミングシグナル(Calming Signal)とは、生まれつき備わった犬の非音声的言語を表します。
犬が緊張してストレスを感じたり、興奮したりしているときの気持ちや感情を伝える役目があるのがカーミングシグナルだと言われています。犬や猫といった動物は人間の指示とは無関係に、こういった仕草で相手をなだめ、自分自身を落ち着かせようとします。
カーミングシグナルにはそれぞれ、「Calming(落ち着かせる)」、「Signal(合図や信号)」という意味があり、「自分や相手を落ち着かせる」「敵意がないことを示す」などといった意味を持っています。
犬は犬種に関係なく同じような行動を取り、諸説ありますが、現在で27個~30個ほどのカーミングシグナルがあると言われています。これは、ノルウェーの動物学者「トゥーリッド・ルーガス」が提唱したものです。
犬のカーミングシグナルの種類と意味20選
普段、飼い犬が取っている「行動」も、飼い主さんや自分自身を落ち着かせるために行っている「カーミングシグナル」かもしれません。カーミングシグナルが表す「犬の気持ち」について、いくつか例を挙げてみました。
1.あくびをする
犬のあくびは寝起きなどで眠いとき以外に、興奮している気持ちを落ち着かせるためのカーミングシグナルです。
飼い主さんに叱られてあくびをしているときは、叱られていることにストレスを感じ、あくびで不快感を緩和させようとします。「これ以上叱らないでほしい」「飼い主さんに落ち着いてほしい」など、嫌なことを止めてほしいときに用いられます。
それ以外にも、散歩中に親しくない人が触ってきたり、知らない犬が近づいてきたりするような、犬にとってのストレスが発生したときは、あくびをすることで相手に不快感を表します。
2.体をかく
犬が体をかくカーミングシグナルは、体の痒み以外に、「相手の気をそらす」「リラックスしている」という意味があります。
犬はあくびのシグナルと同様、飼い主さんに叱られる、散歩中に他の犬に遭遇したときなど、ストレスを感じる緊張状態から不意にリラックスするときや、意識的にリラックス状態を作り出そうとするときに後ろ足を使って体をかくことがあります。
3.目をそらす
顔や目をそらすカーミングシグナルは、相手に対して敵意がないことを伝えるときに用いられます。「目をそらしてそっぽを向く」行動から「地面のにおいを嗅ぐ」という行動が組み合わさって見られることが多いようです。
初対面の犬に会った場合、こういった行動で少しずつ距離を縮めようとしています。また、飼い主さんに叱られているような場合、目をそらすだけでなく体全体を背け、興奮している相手を落ち着かせようとします。
その一方で、犬が相手の目を見るという行動は、相手に対して敵意があることを示す危険性があります。このように、犬を面と向かって見つめることは犬に大きなストレスを与えてしまうので避けましょう。また、「目を細める」「ゆっくりまばたきをする」ことで、効果的に犬を落ち着かせることができます。
4.尻尾を振る
尻尾を振るカーミングシグナルは、好意的な意味を持つ場合が多いと言われています。しかし、尻尾の振り方によっては逆の意味を表していることもあるので注意しましょう。
犬が警戒しているときは、尻尾を上向きにして小刻みに振ります。また怯えているときは、尻尾を垂らしていたりお尻の間に挟み込んでいたりと振り方によって意味が異なります。
5.自分の足を噛む
恐怖や緊張など、何かしらのストレスを感じ、カーミングシグナルを出していることがあります。 アレルギーなどが原因ではなく頻繁に自分の足を噛んでいる場合、犬がストレスに感じていることがないか気にかけてあげましょう。
もしアレルギーなどが原因となり、足が痒くて自分の足を噛む場合、早急にアレルゲンになるものを特定し、取り除いてあげる必要があります。
6.歯をカチカチ鳴らす
犬が歯をカチカチ鳴らしている場合、不安感やケンカ腰になっている相手の犬に対して落ち着かせようとしているサインです。
犬は怖くて歯をカチカチ鳴らしているわけではなく、不要な対立を避けようとしてカーミングシグナルを出しています。それ以外にも、歯周病など、口のトラブルが原因でカチカチ鳴らすことがあります。
犬が歯をカチカチと鳴らしている理由とは?4つの心理と病気の可能性
7.座る・伏せる
興奮している相手の前に犬が座ったり伏せたりするカーミングシグナルは、自分の気持ちを落ち着かせたり、相手を落ち着かせようとしたりしているときです。
例えばドッグランなどで他の犬と遊んでいるとき、興奮しすぎた気持ちを一旦落ち着けることでケンカなどに発展せずにすむことがあると言われています。また、ただ単純に疲れている場合や意味のない行動のときに見られることがあります。
8.人の顔をなめる
犬が人の顔をなめる理由には、「愛情表現」「おねだり」の2つの意味があります。顔をなめるカーミングシグナルは、基本的に信頼できる相手にしか取らないと言われています。
ごはんが欲しいときに飼い主さんの顔をなめるのは、飼い主さんを信頼している証でもあり、子犬が母犬に食べ物をおねだりするときの名残が残っているからでもあります。ただし、舐められすぎると感染症にかかってしまう危険があるので気をつけましょう。
9.口や鼻の周りをなめる
犬が口や鼻をなめるような場合、緊張や不安でストレスを感じており、自分を落ち着かせようとしていることが考えられます。
散歩中に知らない人が近づいてきたり、自分の苦手なことをされたりしたときに、こういったカーミングシグナルを表すことがあります。また、鼻をなめるために舌を出すことで、相手に敵意がないことを伝えています。
10.おしっこをする
犬同士が認め合ったときや、散歩に連れて行ってくれる飼い主さんへ、愛情のサインとして、おしっこをすることがあります。また、他の犬や見知らぬ人に会い、緊張しているときや嫌いなことをされたときに、おしっこをするカーミングシグナルを出すことがあります。
11.耳を倒す
犬が耳を後ろに倒している場合のカーミングシグナルには、2つの意味があります。犬は飼い主さんに抱っこしてもらったときなど、うれしい気持ちのときに耳を後ろに倒し、尻尾を振って喜びを表します。
その一方で、恐怖を感じたり、不安な気持ちになったりしているときも耳を後ろに倒しています。耳だけの動きで犬の気持ちをくみ取ることは難しい面もありますが、それ以外にも、表情や尻尾の振り方を合わせて観察し、犬の気持ちを理解してあげましょう。
12.口をパクパクする
犬が口をパクパクするカーミングシグナルは、犬が興奮している状態のときに見られることが多いです。犬は外で遊んでいるときなど、楽しくて興奮しすぎた自分自身を落ち着かせるために口をパクパクさせることがあります。
また、注射のために動物病院へ向かうときなど、嫌なことを思い出してしまったときにも、口をパクパクさせることがあります。特に、柴犬のように口が大きく、表情の変化が見わけやすい犬種は、口から様々な感情を読み取ることができます。
13.身震いする
子犬や老犬、被毛の少ない犬種は寒さに弱く、体が濡れたときや気温が寒いときに体をブルブルと震えさせることがあります。このような身震いは生理的現象ですが、それ以外にも犬はよく身震いをすることがあります。
犬が不安から落ち着こうとしている場合、飼い主さんはその原因を特定し、取り除いてあげてください。また、うれしいことがあったときに気分を落ち着かせようとしている場合も、犬は身震いをすることがあります。
14.前足を片方上げる
犬が片方の前足を上げるしぐさは、興奮や緊張を抑えようとしているカーミングシグナルです。相手に敵意がないことを伝えると同時に、自分自身を落ち着かせようとしています。それ以外にも、犬が飼い主さんに片足を上げてタッチするような場合、緊張を抑えているわけではなく何かを要求しているサインであることが多いです。
15.地面のにおいを嗅ぐ
興奮や不安な気持ちを落ち着かせるために、犬は地面のにおいを嗅ぐことがあります。初めての場所や慣れない環境で、犬がしつこく地面のにおいを嗅ぐ場合、においの確認以外にも、緊張した気持ちを落ち着かせようとしている可能性が考えられます。
それと同時に、こちらに敵意がないことを表しているので、飼い主さんは犬が落ち着けるような環境を整えてあげましょう。
16.お辞儀のポーズをする
頭を下げ、お尻を高く上げながら伸びをする「お辞儀のポーズ」は、プレイボウ(Play bow)またはプレイングバウ(Playing bow)と呼ばれ、相手に敵意がないことを伝えるとともに、一緒に遊びたい気持ちを表しています。
散歩中にこのカーミングシグナルを行う場合、飛びかかろうとしているわけではありません。しかし相手が恐怖を感じているようなときは、吠えられてしまうことがあるので注意しましょう。また、飼い主さんに向かってこのポーズをしたときは、存分に遊んであげてください。
17.くしゃみをする
犬は異物が鼻の粘膜を刺激したときだけでなく、自分の感情を表すときに「わざと」くしゃみをすることがあります。これは、ストレスを軽減したり、相手が興奮しているときにそれを鎮めたりしようするためのカーミングシグナルです。
【嬉しい?ストレス?】犬がくしゃみするときってどんな気持ち?
18.仰向けになる
犬は気を許していない相手の前では、決して仰向けになることはありません。仰向けのポーズは、急所であるお腹を相手に見せるということなので、目の前の相手に敵意がなく、気を許していることを表すカーミングシグナルになります。
こういった「敵意がない」ことを表すカーミングシグナルは「仰向けになる」以外にも見られることがあります。
19.ゆっくり歩く
犬がいつもよりゆっくり歩くのは、緊張を和らげるためのカーミングシグナルです。通常の素早い動きを避け、ゆっくりと歩くことで気持ちを落ち着かせようとしています。また、相手からのメッセージを待っているというシグナルでもあります。
20.背中を見せる
背中を見せるカーミングシグナルは、犬がすねているわけではなく、飼い主さんが何らかの事情で興奮しているときです。犬は、飼い主さんに落ち着いてほしいという意味を込めてこういった行動を取ることがあります。もし、飼い犬が自分の背中を見せてきた場合、優しく接してあげてほしいです。
愛犬が背中やお尻を向けてくる・・・これ、実は嬉しいことなんですよ♪
犬同士でカーミングシグナルはしているの?
犬のカーミングシグナルは、飼い主さんなどの人間に対してだけでなく、犬同士でも行われています。犬同士で行われるカーミングシグナルは、知らない犬(相手)に対して相手を落ちつかせ、不要な対立を避ける役割を果たしています。
初めて会った犬同士が、ゆっくりと弧を描きながら相手に近づく動作は、相手の犬を警戒しながらも、こちら側には攻撃の意思がないことを表現しています。また、相手に横腹を見せながらゆっくりと前を通る場合、相手の犬の反応を見ていることがあります。
このようにカーミングシグナルは、伝えている相手が犬か人間かで、意味が少し異なっています。
おすすめの本「カーミングシグナル by.トゥーリッド・ルーガス」
「カーミングシグナル by.トゥーリッド・ルーガス」は、カーミングシグナルを提唱したトゥーリッド・ルーガスが犬の本当の言葉や気持ちを解説した本です。
ルーガス氏は生涯のほとんどの時間を動物たちと過ごし、競走馬のトレーナーをした経験を持っています。これまでに多くの動物たちと過ごした経験を生かし、犬たちを研究した結果、生まれたのが「犬語」として有名になったカーミングシグナルです。
本書の中では、犬が「あくびをする本当の意味」「体をかく理由」「眠くないのに眠そうな顔をしている理由」など、犬の様々な本当の言葉を解説しています。この本はドッグトレーナーなどの専門家向けでなく、飼い主さん向けに和訳がされており、写真つきで分かりやすく紹介されているという特徴があります。
犬を飼っている飼い主さんやこれから犬を飼おうと考えている方は、こういった本を活用し「犬の気持ち」を理解することをおすすめします。
まとめ
犬を飼っている人でも、「カーミングシグナル」について知らない飼い主さんも多いです。
しかし飼い主さんは犬と一緒に暮らしていく上で、犬たちがどのようなタイミングでどのシグナルを発しているのか理解することがとても大切です。早い段階で本当の「犬の気持ち」に気づき、犬が抱えているストレスや不安を取り除いてあげましょう。
そして、犬との信頼関係を強め、飼い主さんとの絆を深められるとよいですね。
ユーザーのコメント
30代 女性 まみ
大人になってからは大人しくリードも付けれるようになったんですが、未だにリードを付けたら体をブルブルします。記事を読んで「はっ!」としました。
大人しくリード付けさせてくれるし、散歩も行くんですが、やっぱり不安だったんだなぁって思わされました。犬の動作を見過ごしてはダメですね。反省です。
40代 女性 RIRIKA
記事の中で興味深かったのですが、犬の体が濡れた時ブルブルと体を震わせることも、カーミングシグナルの一つだったという事…。意外でした。
40代 女性 ととりこさまんさ
女性 Monaka
女性 Romane
ワンコはしゃべることが出来ないのでこういうしぐさをすることで表現しているんですよね。
うちは散歩にいくと他のワンコがいても従順というか敵対心など全くなく、というよりまったく気づいていないのか?というぐらいにスルーします。というより目を合わせようともしません。もちろん相手のワンコはこっちに飛び掛ろうとしたりワンワンほえられたりしてるんですが。
たまにおしっこをトイレからはみ出して失敗した時は、やっぱり気まずいのか?!顔を伏せて上目使いで伏せ体勢。そんな健気な姿を見たらついつい許してしまいますがそれもカーミングシグナルなんでしょうね。
でももしかしたらこれ以外にも沢山のカーミングシグナルがあるのかも??と思うとワンコ生活がもっともっと楽しくなります。
お留守番の時間が長い為、ストレスも溜まってると思うので毎日沢山スキンシップしてあげようと思います!
女性 エアマックス
おしゃべりは出来なくても、表情や声色、睡眠や食欲の変化などをよく観察するように気をつけています。
カーミングシグナル。尻尾の状態は常に見るようにしており、そして、なるべくわかりやすい単語で話しかけたり、どこかを指差すなどの身振り手振りで接する事でコミニケーションを取るようにしています。
ワンちゃん自身も飼い主の表情や声色、話すペースなどを感じ取っているはずと思い、
もともとは無愛想な私がとにかく笑顔を見せてあげるようになりました。
どこかで聞いた事があるのですが、お留守番から飼い主が帰って来た時にワンちゃんが歯をキーってむき出してお出迎えする事があるのは、人間の笑顔を真似しているそうです。
その事を知らなかった頃は、「帰宅が遅くて怒っているのかしら?」と少し心配になりましたがどうやらその逆で、嬉しい笑顔を見せてくれているのかと思うと、1日の疲れやストレスが一気に吹き飛びます!
愛犬には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
女性 ゴン吉
犬からの意思表示ですね。これを理解してあげることでお互い意思の疎通を図ることができ、如いては信頼関係にも繋がるものだと思います。
嬉しい時のカーミングシグナルは、飼い主さんならわかりやすいですね。愛犬の嬉しさレベルまで把握しているのではないでしょうか。
尻尾を振る方向でも愛犬は感情を表現しています。本当に嬉しい時と義理で尻尾を振っている時まで知ることができます。
一番間違った解釈をしてはいけないと思うのは、不安を感じていたりストレスや恐怖を感じている時のカーミングシグナルですね。体を震わせる原因は精神的なことのほか、病気や怪我などの痛みを耐える時にも同じ行動を取ることがあります。こればかりはいつも以上に注意深くみておいてあげると良いと思います。
我が家の愛犬は「鼻スタンプ」というカーミングシグナルを取ることがあります。家族に「自分はここにいるよ」という時に、人の足や腕など触れやすいところに鼻をペタッとつけてそこで待っています。
他にご飯やおやつが欲しい時、水を交換してほしい時、褒めてもらいたい時にもこの行動をとります。これも信頼関係が築けている証かなと思ってとても嬉しく感じています。
女性 抹茶パフェ
女性 フォーク
女性 数の子
20代 女性 ゆず
じっと目を見つめると目を逸らすのは飼い主として認めてくれているということは知っていました。それも、カーミングシグナルに含まれていたんですね。犬は、動作でいろんな感情を表現してくれるので一緒に生活していてとても楽しいですよね!