マタギ犬とマタギの関係
そもそも「マタギ」とは?
まず、マタギ犬を知る前に、マタギという言葉を聞いたことが少ない方も多いと思いますので、マタギという言葉の意味からご紹介しましょう。東北地方の言葉で「猟師」を意味する「山立(ヤマダチ)」が、伝わっていくにつれだんだんと訛りが出るようになり「マタギ」という言葉になったという説が有力です。他にも一跨ぎ(ひとまたぎ)で山を越えて行くことから由来している説やアイヌ語からくる説など様々です。いずれにしても山と深く関わりのあるところからきているようです。
マタギとは、北海道や東北地方で、熊やイノシシ、カモシカ等の大型動物、時にはニホンザルやウサギなどといった小動物を集団で狩りをする者のことを言います。
マタギになるには?
マタギは猟銃を扱うことから、誰でも簡単になれるものではなく猟師になるための条件や資格、当人の精神、健康状態まで厳しく審査されます。 狩猟免許や猟銃所持許可証も取得しなければなりません。
狩猟免許試験は各都道府県ごとに決められ、年に1~8回ほど実施されています(参考:東京環境局 狩猟免許試験について)。試験に合格すると狩猟者として各都道府県に登録し、警察署から猟銃所持許可証を受けなくてはなりません。試験から登録までの手数料や猟銃などの金額を見積もると、30万円近くは用意しておく必要があります。
無事に狩猟免許を取得しても、毎年のようにかかる狩猟者登録費、猟友会費、猟銃のメンテナンスや登録の更新なども必要になります。色々な方面でも維持が大変なマタギですが、やはり大きな収入となっていたのは「熊の胆」でした。万病に効く妙薬として、古来より重宝されてきた薬です。
熊は毛皮なども高値で取引されていたことから、マタギにとっては大きな収入源となっていました。ですが、人の何倍もの大きさと力を持つ熊相手では、常に危険と隣り合わせです。狩りの時にはマタギ犬というパートナーが必要不可欠だったのですね。
狩りのパートナー「マタギ犬」
マタギの意味を理解すると、マタギ犬が一体どういった犬なのかは、だいたい想像が付くと思います。
このマタギにより熊やイノシシ、鹿の狩りに使われていた犬のことを指し、外見は今の日本犬の姿で、大きさは中型犬ほどのサイズといわれております。
縄文時代に存在していた犬の特徴を持った遺伝子を多く残しているといわれているマタギ犬は、別名「熊犬」とも言われ、狩猟を目的に使っていた犬の総称であると言われており、決して国際的に認定された犬種ではありません。
マタギ犬は、猟師と一緒に山へ入り獲物の場所を教えたり、獲物が逃げないように吠えるなどしてその場に足止めをすることが主な役割です。数頭を連れて行く場合は、それぞれに違った役割を分担し狩猟を行っていました。
猟師が狙われそうな時などは、獲物の意識を別に向けさせ、猟師を守ることもしていたようです。また、マタギ犬を使い獲物へ攻撃させることはなく、逆にマタギ犬が攻撃されてしまっている時は、猟師がマタギ犬を守ることも大事だったようです。お互いに身の安全を第一に狩りをする良きパートナーだったのですね。
マタギ犬を祖先に持った犬
現在正式にこのマタギ犬を祖先にもった犬種は、秋田犬と北海道犬のみと言われています。
ちなみに、以前東北地方には、8犬種が存在していたといわれていますがご存知でしたか?
マタギを先祖に持つ8犬種
- 会津犬
- 津軽犬
- 秋田犬
- 仙台犬
- 越路犬
- 岩手犬
- 相馬犬
- 高安犬
残念ながらこの中で生き残っているのは、有名な秋田犬、そして岩手犬と言われています。実は、四国の土佐犬もマタギ犬として活躍していたことがあるんですよ。
(岩手犬については、のちほど詳しくご説明します。)
昭和初期の日本犬ブームで、日本犬の知名度を上げるために一役買ったと言われるこの8犬種。
日本犬のブームにより、ブリーダーが優秀な個体を買占めてしまい、原産地には良い個体が残らなかったといわれています。
また狩猟を行う機会も減ってきたことで、個体数が減少し、更に追い討ちをかけるように、戦火よってその姿を消して行きました。
最終的には、以前から存在していた保存会も、頭数が減ったことによって後に解散したと言われています。
それでは、このマタギ犬を祖先に持つ、現在も残っている犬種について詳しくご説明していきます。
北海道犬
北海道犬(別名アイヌ犬)は、アイヌ民族が縄文時代の初期に北海道へ移住した時に、北海道の厳しい環境に生き抜き、そして順応したマタギ犬が残ったのではないかと言われています。
北海道犬は嗅覚、聴覚が非常に優れているため、周囲の変化をいち早く察知することができます。そして場の空気を読むことにも長けていたため、猟の際にはマタギ犬として活躍する場面も多くありました。
アイヌ民族は、このマタギ犬のことを当時「セタ」と呼んでいたようです。
弥生時代には、渡航人が連れてきた犬との混血が始まったといわれていますが、北海道という特殊な立地で、混血の影響は最小限にとどまり、この血統が維持できたのではないかと言われています。舌に青い斑点があるのも北海道犬の特徴のひとつです。
のちにイギリスの動物学者によって、正式に「アイヌ犬」として認定され、さらに1937年には、文部省によって天然記念物である「北海道犬」として定められました。
秋田犬
「秋田マタギ犬」と言われている犬が祖先と言われ、岩手県から秋田県にまたがる山岳地帯が原産といわれており、山岳地帯でも疲れることなく走り回れる膨大な体力を兼ね備え、勇敢で大型の動物に攻撃を与える闘争本能を持ち、性格そのものは猟犬らしく好戦的な性格といわれています。
中型犬として狩猟で活躍していたのですが、江戸時代に入り、闘犬が盛んになると、この秋田マタギ犬も大型犬へと改良され、交配には土佐犬や大型の洋犬が用いられたと言われています。
この洋犬とは主にジャーマンシェパードドッグやグレートデンが用いられたと言われています。
中型犬として狩猟に用いられていた秋田マタギ犬は、交配によって徐々に大型犬へと進化していきました。
しかし、大正時代になると、この大型の姿と特徴を残しつつ、日本犬本来の姿へ戻す努力が行われるようになったと言われ、1931年には、約9頭の犬が正式に「秋田犬」として国の天然記念物へと認定されました。
岩手犬
「岩手犬」という名を聞きなれない方も多いかもしれません。
この犬種もこれまで説明してきたマタギ犬と同じく、秋田、岩手県が原産の犬です。
岩手マタギ犬や秋田マタギ犬(秋田犬参照)と呼ばれ、一時期は中型犬でしたが、同じ原産地で闘犬として大型化した秋田犬と区別するため、岩手犬が出来たのではないかと言われています。
まとめ
いかがでしたか?
聞きなれないマタギ犬ですが、現在では、北海道犬や秋田犬がその血を引いいていることがわかりましたね。
さらに東北には8犬種がいたことも知ることができましたが、ほとんどが絶滅していますので、残ったこの2犬種はしっかり次の時代へと残していきたいと思います。
ユーザーのコメント
女性 カカオ
40代 女性 匿名
40代 男性 匿名
・マタギ犬ってのは「古代に狩猟目的に使っていたイヌの総称」であって、犬の種類ではない。
・マタギ犬の血が云々という場合は、品種分けが成立する以前の、日本在来種のうち、マタギが狩猟に使っていた犬の血統をベースに話をしている。その理由は、これらの犬が縄文時代から遺伝的性質をほぼ変えないまま保たれていたとされるからである。
・土佐犬は、江戸後期から明治時代にかけて、交配で作られた品種。なのでマタギ犬と呼ばれるものではない。当然、血もひいていない(四国犬に西洋の大型犬を交配して作られたもの)。
・マタギ → 確かに、主が書いている説が最有力とされているが、アイヌ語で「冬の人」・狩猟を意味するマタンギ・マタンギトノがなまったものという説もある。こっちのほうがしっくりくるんだが・・・・・・。
・土佐闘犬は寒いところで狩りなんかさせたら、垂れ耳だから腐っちゃうだろうし、死んじゃうんじゃない?そもそもだけど、狩猟に土佐犬使ってみたことあるという事実は確かにあるけど、危機管理が全くできなくて熊や猪相手だと尻尾巻いて逃げちゃうか、相手の強さわからんすぎてすぐ殺されるんじゃなかったっけ?基本、役に立たないので狩猟には使われない。狩猟の犬ってのは、戦わせるんなくて、殺す前、殺した後の獲物を探してもらうものだからねぇ。たまに犬が鹿とか倒しちゃうけど、基本的に犬だけで狩りをしたら「違法」だしね。(「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」を参照)
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