山陰柴犬ってどんな犬?
山陰柴犬(さんいんしばいぬ)は、その名の通り山陰地方原産の日本犬の一種です。山陰柴犬は、古くから山陰地方の土地に根付いてきた地柴であり、先祖犬は朝鮮半島から渡ってきた犬種であると考えられています。
そのため、天然記念物に指定されている「柴犬」に該当するものの、一般的に知られる柴犬とは異なる特徴やルーツを持つ品種であり、韓国原産の済州犬(チェジュイヌ)、珍島犬(チンドケン)、日本犬では四国犬に近い関係にあるとされています。
山陰柴犬にはかつて2つの血統が存在し、それぞれ飼育されていた地域を元に因幡犬、石州犬と呼ばれ犬種として認知されていました。現存の山陰柴犬は、この因幡犬、石州犬がベースとなっています。
長きに渡り、猟犬としてアナグマ猟などで活躍してきた山陰柴犬でしたが、太平洋戦争や感染病などによって絶滅寸前の危機に陥った過去を持ち、現在でもその危険性が完全に排除されたとは言えません。というのも、山陰柴犬は現在の生存頭数が約450頭前後とされる非常に稀少な犬種でもあるのです。
そのため、現在でも山陰柴犬の保存会「山陰柴犬育成会」によって山陰柴犬の保存、育成が行われています。
山陰柴犬の性格
- 忠実
- 忍耐強い
- 無駄吠えをしない
- 冷静
- 優しい
山陰柴犬の性格は、主人と認めた相手に対して忠実で従順であると言われています。普段はあまり大きく感情を表さず、落ち着いていて冷静。喜んでいる時も激しく尻尾を振って感情を露わにすることは多くないため、素っ気ないと表現されることも。しかし人にはとても優しく接し、愛情深く、無駄吠えをしない犬種とされています。
山陰柴犬は、「口数が少なく忍耐強い」と表現される山陰地方の人々と共に長きに渡り猟犬として寄り添ってきたために、その素質を受け継いでいるのかもしれません。
山陰柴犬は、感情表現そのものは激しくないものの、嬉しいときは尻尾を控えめに振って喜ぶこともあれば、人の心を感じることに長けていると言われていますので、普段からのコミュニケーションが密であればあるほど飼い主さんに答えてくれる、そんな性格でもあります。
山陰柴犬の特徴
山陰柴犬の特徴についてご紹介します。
大きさ(体重/体高)
山陰柴犬の体高はメス37cm、オス40cm程度とされています。これは、JKC(ジャパンケンネルクラブ)が定めている「柴犬」としての体高とほぼ同じですが、一般的な柴犬に比べて足が長いため、やや体高が高いことが多いようです。
体重に関しては一般的な柴犬の平均体重がメス7kg~9kg、オス7kg~13kgであることから、これらとほぼ同等であることが考えられ、小型犬に分類されます。
とは言っても、小型犬・中型犬・大型犬の分類についての定義は曖昧な部分も多く、体重によって判断する場合は10kgを超える柴犬そのものが中型犬に分類されることも。ただ、柴犬は日本犬種6種のなかでも最も小さい体を持つことから、体高や体重に関わらず「小型犬」として分類されることが多いようです。
しかし、一般的な柴犬と山陰柴犬の写真を見比べてみると、山陰柴犬の方がやや体高も高く、細身でありながら引き締まった筋肉を持つように見えます。そのため、柴犬よりもやや大きい体格を持ち、大きめの小型犬、もしくは中型犬と同等の大きさであると考えておくといいかもしれません。
体の特徴
山陰柴犬の外見的特徴についてご紹介します。アナグマ猟で活躍した山陰柴犬は、アナグマの住処である狭い土の穴などに入り込むのに適した小さめの頭部とシュッと引き締まったスリムな体格が特徴です。
しっぽはくるんと丸まった巻尾よりも、ぴんと立った差し尾が多く、顔つきは狐顔で、鼻づらは尖り、目元も涼やか。耳の位置が顔より横に出ず、凛とした顔立ちをしています。
また、生後4ヶ月頃から成犬になる時期にかけて体型が崩れるのも山陰柴犬の特徴です。耳や足ばかりが成長するため「バンビ」と表現されることも。生後7ヶ月を過ぎた頃から徐々に体型が整い始めるものの、山陰柴犬らしいスマートな姿が完成するには3年~5年の月日を要するとされています。
このように、山陰柴犬は子犬期、若年期を過ぎた頃にグッと深みを増すのも、山陰柴犬の魅力ですね。
山陰柴犬の毛色や毛質の種類
山陰柴犬の毛並みは固めのスムースコート。癖がなく、直毛であることからお手入れがしやすい毛質とも言えます。しかし、山陰柴犬は冬毛が抜ける5月~6月頃には、まるで「羊」のような姿になることでも知られており、「羊犬」としてメディアに取り上げられることもあるほど、夏と冬では異なる毛質に変化するのも特徴です。
山陰柴犬の毛色に関しては「赤」のみが認められているものの、そのバリエーションは豊富で、やや淡い赤毛から黒の混じった赤毛まで様々です。後頭部から背中、お尻にかけて一刷毛濃くなっているのも山陰柴犬の特徴ですね。なかでも「淡赤(うすあか)」と呼ばれる一見「白一色」に見えるほど淡い赤毛は非常に珍しく、年齢を重ねるごとに毛色が濃くなる特徴を持ちます。
山陰柴犬の子犬の値段
山陰柴犬の子犬の値段は、現在の時点で明らかになっていません。というのも、山陰柴犬の保存や繁殖を行っている育成会が動物小売業や販売目的の個人などへの譲渡の一切を遮断しているため、山陰柴犬の子犬はペットショップはもちろん、ブリーダーによる販売も行われていないのです。そのため、山陰柴犬の子犬の値段は不明なものの、稀少な犬種であることからその値段が高額になる可能性もあります。
山陰柴犬は絶滅寸前の危機に陥った過去を持つだけではなく、一回のお産で産まれる子犬の数が少なく、通常一度の出産につき2頭から3頭、4頭以上産まれることは珍しいとされています。
更に一般的に年に2回ある発情期さえ必ず定期的にくるわけではありません。このようなことから、山陰柴犬の個体数は現在でも少なく、非常に稀少な犬種とされており、個人で繁殖、取引されることはありません。
山陰柴犬を飼うには
山陰柴犬を飼うための方法についてご紹介します。上記で、山陰柴犬はペットショップやブリーダーによって販売されることはないとお話しましたが、一つだけ山陰柴犬をお迎えする方法があります。
それは、鳥取県東伯郡湯梨浜町を拠点に山陰柴犬の保存、保護、育成を行っている「山陰柴犬育成会」から子犬を譲渡してもらう方法です。とは言っても、生体価格を支払えば子犬を譲渡してもらえるという訳ではなく、下記のような条件が設けられています。
- 管理を徹底し社会に迷惑をかけない方
- 屋外で飼育する方
- 去勢や避妊を前提としない方
山陰柴犬を飼育するための条件は比較的厳しく、上記のような条件をクリアすることが必要となります。山陰柴犬はとても貴重な犬種であり、犬種存続のために譲渡後も育成会との連携が重要となるのです。
これは山陰柴犬に限ったことではありませんが、ただ可愛い!というだけで飼うのは難しいと言えますね。
山陰柴犬の子犬をお迎えしたい場合は、山陰柴犬を飼うための環境をしっかり整えられるのか、条件をクリアすることができるのかをしっかり確認してから、山陰柴犬育成会への問い合わせをしてみましょう。
山陰柴犬をお迎えした後、子犬を産ませたい場合には山陰育成会のサポートを受けることもできるようです。また、山陰柴犬育成会では年に一度、山陰柴犬と飼い主が一同に会する鑑賞会も行っていますので、まずは山陰柴犬をより知るために参加してみてはいかがでしょうか。
山陰柴犬の飼い方
山陰柴犬の飼い方についてご紹介します。
環境
山陰柴犬の飼育環境として、山陰柴犬育成会の譲渡条件にもあるように屋外飼育が前提となります。山陰柴犬は基本的には寒さにも強く、一般的な柴犬と比べても病的抵抗力も高いため、特筆すべきかかりやすい病気などの存在もありません。ただし、他の犬種と比べて犬種特有の情報そのものが少ないため、山陰柴犬育成会のアフターフォローが要となりそうです。
運動
山陰柴犬は本来猟犬として活動的に生活していたこともあり、運動量が非常に多い犬種です。そのためしっかりと散歩に連れて行ってあげたり、おもちゃで遊んだり、運動不足にならないよう注意が必要です。山陰柴犬が運動不足になると、ストレスが溜まってしまい、無駄吼えなどの原因にもなりえます。毎日の散歩や遊びはもちろん、定期的にドッグランなどを利用してノーリードで走り回れる機会を設けましょう。
しつけ
山陰柴犬は、非常に利口で従順、優しい性格をしていることからしつけそのものはそう難しくないとされています。しかし、利口さ故に判断力や独立心も強く、正しい主従関係を築くことが必要となるため、飼い主の技量が試されます。家族を含め、一貫したしつけを行うことを心がけましょう。
餌
山陰柴犬の食事に関しては、稀少な犬種であることから情報が少ないようです。しかし、山陰柴犬育成会がある鳥取県東伯郡湯梨浜町では、米や野菜などを食べさせている飼い主さんも多いようです。山陰柴犬に適している食事に関しては、山陰柴犬の子犬を譲渡してもらう際に山陰柴犬育成会でしっかりと確認しておきましょう。
お手入れ
山陰柴犬は毛が生え変わる換毛期、特に冬毛が抜ける時期にはまるで羊のようにモコモコになることから、日々のこまめなブラッシングは欠かせません。毛質そのものは、スムースコートなのでブラッシングはしやすいので、コミュニケーションや皮膚の健康チェックも兼ねて、毎日行ってあげるといいですね。基本的にトリミングは必要ないとされていますが、汚れが目立つ場合は自宅でシャンプーを行いましょう。
山陰柴犬のおすすめブログ
ボクは山陰柴犬のリキです
こちらは、2007年から10年以上に渡って山陰柴犬の魅力について綴られているブログです。タイトルになっている「リキくん」は、2014年1月に虹の橋を渡り、現在は妻にあたるもみじちゃん、娘のネイちゃん、孫のリンちゃんを天国から見守っています。
ちなみに、リンちゃんは「羊犬」として話題になった「コウくん」のママなのですよ~♪山陰柴犬育成会の鑑賞会や、繁殖、子犬のあっせんなどについても紹介されていますので、是非チェックしてみてください。
Hello! Iam Sunny Sanin Shiba Inu.
https://saninshibainu.jimdo.com/
山陰柴犬サニーちゃんのブログです。山陰柴犬の歴史や仲間、山陰柴犬育成会についてなど様々な情報が盛りだくさん。山陰柴犬サニーのお部屋では、家族や兄弟などの可愛い写真もたくさん掲載されていますので、是非チェックしてみてくださいね!
自分探詩(じぶんさがし)& 山陰柴犬かれんとの日々
https://blog.goo.ne.jp/maoko78
山陰柴犬かれんちゃんの飼い主さんのブログです。伸び伸びと暮らす山陰柴犬のかれんちゃんの様子や子育て、更に毎日の手作りご飯なども紹介されているので、是非参考にしてください。山陰柴犬の子犬の写真も豊富で、とっても可愛いですよ~!
山陰柴犬育成会の拠点となっている鳥取県湯梨浜町宇野周辺では、たくさんの山陰柴犬が暮らしているようです。山陰柴犬のブログを辿っていくと「○○くんは、○○くんの息子なのか!」など発見も多く、物凄く楽しいですよ。山陰柴犬という犬種を守ろうとする飼い主さん達の愛情も強く、他の犬種にはない独特な繋がりというものも感じさせられます。
山陰柴犬のおすすめ動画
キャベツをかじる山陰柴犬
おすすめブログでもご紹介したリキファミリーの動画です。なんと山陰柴犬ファミリーがとっても美味しそうにキャベツを丸かじりしている様子が撮影されています。みるみるうちに減っていくキャベツを丸かじりするその姿はなかなか迫力がありますよ~!(笑)
山陰柴犬 湯梨浜で鑑賞会 日本海新聞
山陰柴犬育成会が年に一度開催している鑑賞会の様子を紹介されている動画です。コロコロとした山陰柴犬の子犬も撮影されていてとっても可愛いですよ。山陰柴犬育成会の鑑賞会への参加を考えている方は、是非チェックしてみてくださいね!
スイカを食べる山陰柴犬親子
こちらもまたまたリキファミリーの動画です。もみじちゃんとその子供達がスイカを食べている様子を撮影されています。子犬達は初めてのスイカだったようですが、もみじちゃんに負けじと勢いよくスイカに齧りついています♪
まとめ
山陰柴犬についてご紹介しました。筆者自身、山陰柴犬について詳しく調べるにつれその魅力にどんどん惹き込まれていきました。
一般的に知られる柴犬と山陰柴犬の違いについても、血統はもちろん外見的特徴、性格など知れば知るほど別犬種であることを強く感じさせられますね。
山陰柴犬の犬種としての保存、繁栄はもちろん、その魅力がもっと幅広い人々に広まることを心から願っています。