肥後狼犬とは
肥後狼犬について
肥後狼犬は熊本のヤマイヌとニホンオオカミを掛け合わせて作出された犬種だと言われています。かつてはイノシシ猟を行うために用いられた犬種ですが、明治ごろからその個体数を減らしていき、昭和頃には絶滅したと思われていました。ところが、1984年に九州地方の山中で肥後狼犬のメスが発見され保存会の創設者によって保護され、再び日の目を見ることになりました。
現在は絶滅を危惧されている日本原産の犬種ではありますが、様々な理由により残念ながら天然記念物の指定はされていません。またブリーダーについても、保存会は存在するものの会員が高齢化していることもあり、2019年現在では活動は行われていないに等しいようです。またブリーダーについても情報はほとんどありません。そのため、肥後狼犬を飼いたいと思っても子犬を迎えるのは困難であると思われます。
さらに、現在純粋な肥後狼犬は存命しておらず、肥後狼犬の血を引いた子孫が何匹か日本で暮らしているだけという状態です。運がよければ、肥後狼犬の血を引いた子犬を譲ってもらえるかもしれませんが、価格については検討がつかないというのが現状です。それだけ数も少なく、大変貴重な犬種であり、姿を見れたら運がいいくらいに思っておいたほうがいいかもしれません。
肥後狼犬は日本犬の狼犬種(ウルフドッグ)
肥後狼犬は日本原産の狼犬種であり、日本唯一にして最も日本狼に近い犬種であるとされています。この狼犬種というのは、読んで字のごとく狼と犬を掛け合わせて作られた犬種のことです。日本でもウルフドッグを取り扱うブリーダーは数人存在し、狼らしい神秘的でワイルドな一面に惚れ込んだオーナーはたくさんいます。
狼の血が入っている犬種と言われると「獰猛」「怖い」「言うことを聞いてくれなさそう」などと思われるかもしれませんが、ウルフドッグだからと言って両親が狼だと言うのは少なく、ほとんどのウルフドッグの中に流れる狼の血は25パーセントほどが理想とされています。狼の血が50パーセントを超えてしまうと、野生の本能が強く残りすぎるためか、数々の問題行動を起こし、ひどい場合は人間と共存することすら困難になることも。
肥後狼犬はヤマイヌとニホンオオカミを掛け合わせた上でさらにニホンオオカミと交配をさせて作出された、野生の本能がとても色濃い犬種です。もしかしたら、純粋な肥後狼犬が絶滅したのは、人間との共存に向いていない性格をしていたからかもしれませんね。
肥後狼犬の魅力
ワイルド
肥後狼犬の魅力は何と言っても、狼に近い野生的な見た目でしょう。現在、日本犬の中にも狼のような見た目を残した犬種はたくさん存在していますが、あくまでも狼に似ている容姿というだけであり、狼の姿ではありませんよね。
それに比べて肥後狼犬はヤマイヌとオオカミの間に生まれた犬種です。ワイルドさ、野生感を帯びた風貌、鋭い眼光、引き締まったボディなど、現在存在しているどの犬種よりも狼に近いワイルドな姿をしていると言えます。
高い狩猟スキル
肥後狼犬が作出された目的は「高度な猟を行うため」です。そのためイノシシ猟にかけては右に出るものはいないというほど、肥後狼犬の狩猟スキルは高かったと言われています。現在では肥後狼犬を用いての狩猟は行われていないため、どれほどまでに素晴らしい狩猟能力を持っていたかを確かめることはできませんが、ニホンオオカミの血を色濃く受け継いでいる犬種である以上、想像もできないほどの高いスキルを持っていたと思われます。
ウルフドッグの中では比較的飼いやすい
現在、肥後狼犬の情報がほとんどなく、保存会の活動もあまり行われていない状況であるため、確認は難しいかもしれませんが、肥後狼犬は種を存続するために他の犬種や日本犬と掛け合わせて個体を増やしているため、海外のウルフドッグよりも狼の血が薄まり比較的飼いやすくなっているという情報もあります。
ただし、肥後狼犬の中にはニホンオオカミの血が色濃く流れており、個体によっては野生の本能がむき出しになっている可能性が高いです。いくら狼犬種の中では飼いやすくなっているとは言っても、オオカミの血が色濃く流れている以上、初心者が手を出していい犬種ではないというのは間違いないようです。
肥後狼犬の他の日本犬
四国犬
肥後狼犬以外にも、日本原産の犬は多く存在しています。代表的な犬種として有名なのが、古くから四国地方の土着犬として生活をし天然記念物にも指定されている「四国犬」です。高知の山岳地帯でヤマイヌとして生活をしていたところを、当時の猟師が飼い慣らして猟犬として育てたのが始まりとされています。
一見するとオオカミのように見えるため、大変人気の高い日本犬ではありますが狩猟本能がとても強く、飼い主がしっかりとしつけ、管理を行ってあげないと感情が暴走し、人に襲い掛かる事件へと発展することもあります。素人が飼ってはいけないというだけではなく、飼い主となる場合は相当な覚悟と責任が必要となる飼育が難しい犬種です。
甲斐犬
山梨県の甲斐地方の土着犬である甲斐犬は、現在でも猟犬として活躍をしている犬種です。野生らしいワイルドな性格をしており、飼い主と決めた人にだけ寄り添う「日本のワンマンズ・ドッグ」として海外でも徐々に人気が集まっています。ペット化されていない日本犬であり、性格は大変気性が荒く、他の動物や見知らぬ人には強い警戒心を示します。しかし、自分が信頼している飼い主に対しては甘えん坊で従順な一面を見せる、まさに猟犬らしい猟犬と言えるでしょう。
紀州犬
現役の猟犬として働く日本犬として有名なのが紀州犬です。真っ白な被毛とガッチリとした骨格がとても魅力的な犬種で、和歌山・三重・奈良にまたがる紀州半島で飼育されていました。大変落ち着いた性格で、真面目で忠実な性格をしています。いつも堂々としていて、飼い主の命令に忠実に淡々と従うクールさを持っています。
薩摩犬
薩摩犬といえば、幕末の維新志士である西郷隆盛の愛犬というイメージが強いのではないでしょうか?2018年現在、絶滅したと言われているが2000年には100匹ほどの薩摩犬が存在していたため、薩摩犬の子孫は現在も残っていると予想されます。
薩摩犬の特徴は、獰猛で人に懐かないというもの。古くから薩摩地方でイノシシ猟に用いられていた犬種であるためか、飼い主に対しては忠実で機敏だが、なかなかしつけが難しく、やはり素人が飼育をするのは難しい犬種だったようです。
琉球犬
縄文時代に猟犬として飼育されていた日本でも大変古い犬種である琉球犬は、沖縄県の天然記念物に指定されている犬種です。縄文時代には沖縄県でのみ飼育をされていたようですが、弥生時代に入ると日本列島に渡り弥生犬として使役されるようになったとのこと。
現在存在している日本犬のルーツであると考えられる、まさに日本犬の原種と言っても過言ではない犬種です。なお、琉球犬は1万年以上前から存在している犬種であることから「生きた文化遺産」という異名を持っています。
川上犬
天然記念物であり、ニホンオオカミの血が流れているという伝承を持っている川上犬は、有名でポピュラーな柴犬の一種であると言われています。長野県が原産であり、ヤマイヌとニホンオオカミを交配させて作出されたと言われています。過去に起こった戦争や食糧難などにより頭数が激減し、いっときは純血種としての絶滅の危機に瀕しましたが、信州川上保存会により保護育成が行われ、現在では300頭ほど存在しています。
北海道犬
別名「アイヌ犬」と呼ばれている北海道犬は日本で最も古いとされる琉球犬と似た遺伝子をもつ犬種として知られています。かつてはアイヌ民族と共に生活をし、ヒグマやエゾシカなどの大きな獲物を人と共に狩猟していたと伝えられています。
大変気性が激しく、気が強いだけではなく、飼い主と決めたただ1人に愛情を注ぎ忠義を尽くす犬種ではありますが、子犬の頃から愛情をたくさんかけて育てることで、愛情深い忠実な家庭犬にもなります。ちなみに某有名携帯電話会社のイメージキャラクターとして長年愛されている犬種でもあり、テレビCMの影響で認知度が上がった犬でもあります。
ただし、北海道犬は大変希少性が高く、国内では6〜7千頭ほどしか存在していないとも言われています。
まとめ
肥後狼犬はオオカミに近い特性や見た目を持っていることから、かつては注目をされていた犬種ではありますが、残念ながら今はその数は激減し姿を見ることはなかなかありません。もし肥後狼犬の血を引く犬を見れたらラッキーかもしれません。その時はぜひ、ワイルドな凛々しい姿を確かめてみてくださいね。