土佐犬の歴史
土佐犬と聞くと、古くから闘犬としての歴史を持つ大型犬を思い浮かべた方も多いのではないではないでしょうか。実は、現在一般的に土佐犬と呼ばれる犬種の正式名称は「土佐闘犬(とさとうけん)」といいます。土佐闘犬は、日本犬の一種であり、かつて「土佐犬(とさけん・とさいぬ)」と呼ばれた中型犬にイングリッシュ・マスティフやジャーマン・ポインター、グレート・デーンなどを交配することで誕生しました。土佐闘犬の「闘」を略して土佐犬(とさけん)と呼ばれるようになり、元となる土佐犬と混同することから、本来土佐犬の名を持っていた中型犬は、「四国犬(しこくいぬ)」と改称されています。上記で、土佐犬と土佐闘犬についてご紹介しましたが、この2種類の犬種の見た目は似ても似つかないほど違いがあります。鎌倉時代、あるいは室町時代から藩士の士気を上げるために奨励されていたと言われる「闘犬」ですが、この初期に闘犬として使用されていたのが、オオカミのような見た目を持つ中型犬の「四国犬(しこくいぬ)」です。
幕末から明治にかけてより闘犬が盛んになり、愛好家がより大きく、より耐久力を持つ犬種を生み出そうと海外から大型犬を輸入、土佐犬(四国犬)と交配した結果、大きく強靭な体を持つ土佐闘犬が誕生したと考えられています。
四国犬は、1937年に国の「土佐犬」として天然記念物へ指定されましたが、現在土佐犬と言えば土佐闘犬を思い浮かべる人が多く、あまりよく知られていない犬種でもあります。比べて土佐闘犬は、大きな体を持ち好戦的な犬種として世界中に知られ、現在では「ジャパニーズマスティフ」と称されることもあります。
現在でも、より強い犬種を生み出すため土佐犬を他の犬種と交配するブリーダーもいるようです。しかし、土佐犬を純血種として保存することを推進している団体などでは、土佐犬とピッドブルなどの他の犬種の交配を禁止しています。少しややこしい話になってしまいましたが、以上のことを踏まえて、改めてこの記事では「土佐闘犬」を「土佐犬」と表記してご紹介していきます。
土佐犬の性格
土佐犬は、やはり闘犬としてのイメージが強いためか、凶暴や恐いといったネガティブなイメージを持つ人も少なくありません。ただ、穏やかで飼い主に忠実な一面を持つ犬種でもあります。
- 頑固
- 警戒心が強い
- 聡明
- 闘争本能が強い
- 穏やか
- 忍耐強い
- 忠実
頑固
土佐犬は、自信家であると同時に頑固な一面を持っています。このような性格は、日本犬の血を濃く引き継いでいることが関係しているのかもしれませんね。
警戒心が強い
土佐犬は、縄張り意識が強く、知らない人や動物に対して強い警戒心を持ちます。メスと比べて、オスの方が警戒心が強い個体が多いようです。
聡明
土佐犬は、非常に聡明な犬種でもあります。土佐犬は、判断力に長け、飼い主の指示をしっかりと理解する知性があります。
闘争本能が強い
土佐犬は、闘争本能が強い一面を持ちます。これは、闘犬として受け継がれてきたものであり、やはり土佐犬とは切っても離せない本能と言えますね。ただ、きちんとしたしつけや訓練で闘争本能をコントロールすることは可能です。
穏やか
土佐犬は、基本的にとても穏やかで人懐っこい性格をしています。特に飼い主や家族に対しては、とても優しく、無駄に吠えるようなことも殆どありません。
忍耐強い
土佐犬は、とても忍耐強い犬種です。これもやはり、闘犬としての本能が関係しているのかもしれません。土佐犬と人が安全に暮らしていくために必要な訓練などにも、しっかり向き合うことができます。
忠実
土佐犬は、とにかく飼い主に忠実な犬種としても知られます。逆に飼い主や家族以外の人には、心を許さないことも少なくありません。
勇敢
土佐犬は、非常に勇敢で大胆な一面を持ちます。そのために、家族を守ろうと知らない人や動物に警戒心を強めてしまうこともあります。
土佐犬の性格についてご紹介しました。土佐犬は、闘犬というイメージから凶暴で恐いと思われがちですが、基本的には非常に穏やかで優しい性格をしています。土佐犬が闘犬としての闘争本能や警戒心を持つことは事実ですが、「土佐犬の性格は飼い主で決まる」と言われることもあるほど、子犬期のしつけや訓練をしっかり行うことで、とても素晴らしいパートナーになってくれる犬種でもあります。
土佐犬の特徴
土佐犬の外見的特徴をご紹介します。
土佐犬の大きさ
土佐犬は様々な犬種との交配が行われたことから、大きさのバラつきが激しい犬種でもあるため、3段階に分けられます。体重は小さい個体で30kg台から、大きい個体になると100kg超えとされており、体高に関しても様々です。ただ、日本で純粋犬種の犬籍登録を行うJKC(ジャパンケンネルクラブ)では、土佐犬の体高のみを表記しており、オス60cm、メス55cmとされています。
土佐犬の体の特徴
土佐犬は、大きな骨格に引き締まった筋肉、たるんだ皮膚が特徴です。頭部は大きく、マズルは角ばっており、耳は垂れています。ジャパニーズマスティフという別名を持つこともあり、土佐犬の外見的特徴は、イングリッシュマスティフに共ずるものが多くあります。
土佐犬の被毛はスムースコートで、色はレッド(赤毛)、アプリコット(淡赤毛)、フォーン(金色がかった茶色)、ブラック、ブリンドル(虎毛)が基本となります。JKCでは、胸部と足に見られる若干の白斑のみ認めるとされています。
土佐犬の値段
土佐犬の値段は、100,000円~500,000万円と非常に幅が大きいようです。土佐犬は、現在でもペットしてではなく闘犬として繁殖されることが多い犬種です。そのため、ペットショップなどで販売されることはなく、基本的にブリーダーから購入することになります。
土佐犬の値段の差は他の犬種同様、親の経歴や体格、また闘犬としての素質なども反映します。特に闘犬大会においての番付の頂点「横綱」から、口割りと呼ばれる稽古を付けてもらった犬は値段が高くなるようです。
土佐犬を飼うには
土佐犬を飼うために必要なことをご紹介します。
土佐犬を飼うには①ブリーダー
土佐犬はペットショップでは販売していないため、まずブリーダーを見つける必要があります。土佐犬のブリーダーは、他の犬種と比べるとその数は多くないものの、土佐犬専門、または他の大型犬と共に土佐犬をブリーディングしているブリーダーさんなど様々なブリーダーさんがおり、なかには、土佐犬とピッドブルなどの犬種のミックス、ハーフを交配しているブリーダーさんもいます。
土佐犬のような比較的珍しい犬種の犬を飼う場合は、たとえ遠方であったとしてもまず犬舎へ見学へ行き、ブリーダーさんと顔を合わせてお話をすることをおすすめします。信頼できるブリーダーさんから、土佐犬をお迎えしましょう。
土佐犬を飼うには②飼育許可
土佐犬は、国によってはピットブルやドゴ・アルヘンティーノ、フィラ・ブラジレイロなどと共に「危険犬種」として、飼育の規制対象に指定されている犬種です。日本国内では、特に規制はないものの、自治体によって「特定犬」に指定されていることも少なくありません。
過去には、飼育されていた土佐犬が近隣住民や他の犬に咬み付き、怪我を負わせる事件が起こっています。なかには、人や犬が噛み殺されてしまったケースも少なくありません。そのような事件を繰り返さないため、土佐犬を飼育する際には、然るべき届出を行い、規制を厳守しましょう。
特に茨城県では、特定犬の飼育に関する規制を県の条例として定めています。特定犬となる犬種は、ピットブル、ドーベルマン、ジャーマンシェパード、セントバーナードなど、土佐犬を含めて8犬種です。ミックスやハーフである場合も、体高60cmかつ体長70cm以上の犬は規制の対象となります。特定犬は必ず「檻」の中で飼育すること、特定犬を飼育していることを明示するラベルを掲示することが義務付けられています。
土佐犬を飼うには③訓練
土佐犬を飼う時は、必ずプロによるしつけトレーニングを受けましょう。もちろん、闘犬としてのトレーニングではなく、人と共存するために必要なトレーニングです。これは、土佐犬だけではなく、飼い主自身も受ける必要があります。土佐犬をコントロールできるだけの知識と技量を身につけるために、プロのドッグトレーナーから指導を受けましょう。
土佐犬を飼うために最も必要なのは、飼い主さんの覚悟と、飼い主として土佐犬をコントロールできるだけの技量なのかもしれません。子犬期のしつけにおいて、しっかりと上下関係や信頼関係を築くことができなければ、成犬期になると手に負えない状態に陥ってしまう可能性もあります。
過去に起こっている土佐犬の咬傷事故についても、やはり飼い主の管理不行届や、危機管理の甘さが目立っていたように感じます。土佐犬は、人や他の動物を殺してしまえる程の力を持つ犬種であるということをしっかり理解し、悲惨な事故を起こさないよう守ってあげるのも飼い主の重要な役目ですね。
土佐犬の寿命
土佐犬の平均寿命は、10年〜12年とされています。これは、大型犬の平均寿命と比べると少し短く、超大型犬の平均寿命と同じくらいです。犬の寿命には体格が大きく関係し、大型犬よりも小型犬の方が長生きする傾向にあります。そのため、土佐犬のなかでも体の大きさによって寿命に若干の差があるかもしれません。
まとめ
土佐犬の歴史と性格、特徴や値段などについてご紹介しました。過去に土佐犬に咬まれることで人や動物が死亡してしまう事故が起こったため、土佐犬そのものを凶暴で野蛮、とても危険な犬種であると認識してしまっている人もいるかもしれません。
しかし、このような事件は飼い主に落ち度があったケースも少なくありません。確かに、土佐犬は闘犬としての闘争本能を強く持つ犬種であり、野放しにすれば危険であることは間違いありません。しかし、基本的には飼い主に忠実で温厚な性格の個体が多く、正しい管理の下であればとても素晴らしいパートナーになってくれる犬種でもあります。
土佐犬への間違ったイメージを払拭するためにも、これから土佐犬をお迎えしたいと考えている方は、正しい知識を持ってマナーを守り、土佐犬との暮らしを豊かなものにしてくださいね。
ユーザーのコメント
40代 男性 当麻
さて、この「土佐闘犬」は、輸入やペットとしての飼育に厳しい規制がある国が多い。
それがどういう事を意味するかを察するのは容易いこと。噛み殺される事案を含め、人間に危害を及ぼすケースが後を経たず、素人の飼い主程度がコントロールできる犬種ではない、ということである。かっこいい、大型犬が好き、強さを誇示したいといった理由程度で、手を出すべきではないだろう。
アメリカで有名な闘犬に、アメリカン・ピット・ブル・テリア(通称:ビットブル)という犬種がいる。土佐闘犬同様、犬による人間の殺傷事故のケースが非常に多く、諸外国では輸入と所有が禁止されており、当地アメリカ国内でも、州によっては同様の規制を設けているぐらいである。しかし、このビットブルについて、まだまだ小さな流れではあるが、本来の気質である忠誠心と服従心の強さを育み、「闘犬」という愚かな歴史を書き換えようという話を聞く機会が増えて来た。
もし、土佐闘犬を飼うのならば、「闘犬」ではなく「土佐犬」として、新しい生き方を出来る様に支えていってもらえないだろうか?切に願うばかりである。
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