子犬のしつけはいつから始めるのがいいの?
子犬のしつけは、自宅に迎えたその日から開始しても良いでしょう。なぜならペットショップやブリーダーから子犬を迎えた場合、その子犬はすでに3ヶ月を超えていることが多いです。犬の成長は人間の10倍近いスピードと言われています。
特に子犬期は生後半年経てば、人間の幼稚園児や小学生程度の年齢と考えられます。ちょうど社会性を育む大切な時期でもあり、覚える吸収力もある時期です。一度に覚えさせることは困難ですが、子犬を飼い始めたらその日から少しずつ始めていきましょう。
子犬のしつけは何からするべきか?
まずはトイレトレーニングから始めると良いでしょう。トイレのしつけができると、子犬の粗相の始末による飼い主さんのストレスもなくなります。ペットショップによっては、すでに「トイレトレーニング済み」という子犬も販売されています。それだけ、最初にしておくと後々楽だということでしょう。
トイレトレーニングと同時進行でも良いですが、細かいしつけの前に、これから生活していく環境に慣らしていくことが非常に大切です。子犬期は見るもの聞こえるもの全てが新しい世界です。
自宅や家族はもちろんのこと、家族以外の人、景色、物音、外の環境など、いろいろなものに慣れさせ、恐怖心を取り除いて安心させてあげることが、しつけを始めるための大切な準備段階となります。
子犬のしつけの基本9つ
1.トイレトレーニング
子犬のトイレトレーニングは、タイミングが大切です。まず、子犬が排泄の姿勢をした時、飼い主が
「ワンツー・ワンツー」
「1.2.1.2.・・・」
など、決まったリズムで声をかけ、一定のリズムを繰り返します。
すると、やがてその言葉や音を聞くと条件反射的に子犬は排泄するようになります。最初の頃はトイレシートを広範囲に広げ、飼い主さんもおおらかな気持ちでトレーニングしていきましょう。
トイレ以外の場所で排泄してしまうことが何度もおきますが、排泄物は淡々と始末し、成功した場合には大いにほめてあげることを繰り返しましょう。排泄は生き物の自然の原理です。人間の都合でトイレの場所を決めさせようとているわけですから、失敗しても叱らず、根気よくしつけを行いましょう。
こちらのトイレトレーニングの動画も参考になりますので、目を通しておきましょう。
2.名前とアイコンタクトのしつけ
子犬に自分の名前を覚えさせることは、全てのしつけの基本となります。
飼い主さんは、自分の目の高さにおやつを持ち、子犬の名前を呼んでください。おやつ欲しさに、子犬が自分を見たらほめながら、おやつをあげることを数回繰り返してください。
おやつを与えすぎても良くないので、時には音の鳴るおもちゃなどを使うのも良いでしょう。これを繰り返すとやがて自分の名前も覚えます。
下記の動画ではアイコンタクトの重要さや具体的な教え方を紹介しています。愛犬とともに実践してみましょう。
3.「待て」「おすわり」などのコマンドのしつけ
「待て」「おすわり」などの指示や命令をコマンドと呼びます。コマンドに従うようにしつけることは、日常生活のあらゆる場所で役に立ち、ときには子犬を危険から守ることにもつながります。
コマンドの詳細については後述しますが、コマンドに従わせるには、飼い主さんと犬との信頼関係が重要になります。また、コマンドは基本的なものから、高度レベルのものなど様々ですが、子犬期に覚えさせると、その後の犬との生活はより楽しく豊かになるでしょう。
4.人に慣れさせるしつけ
犬を人に慣れさせるしつけは、様々なトラブルを回避するため大変重要なことです。犬にも様々な個性があり、警戒心が強い、怖がりといった性質を強く持った子犬もいるでしょう。
ですが、攻撃性が強いまま育つと、来客や通行人を威嚇したり、飛びかるような事態を招くことにもなりかねません。また、人間社会の中で犬自身も緊張状態が続き、ストレスを抱えやすくなるでしょう。飼い主としても、やたらと人に吠える愛犬と行動することは大変です。
犬好きで近寄ってくる人もいれば、犬が嫌いな人もいるでしょう。様々な人がいますが、犬にとって人間は「楽しい存在」であり「自分に危害を与えない存在」と感じてもらえるようにしましょう。
また、こちらの動画も参考にして人に慣れさせるにはどうしたらいいのか?をより深く理解すると、愛犬との距離がグッと近付くかと思います。
5.環境に慣れさせる(社会化)のしつけ
子犬を積極的に家の外に連れ出し、人や環境に慣らしていくことも非常に大切なしつけです。
犬を一生家の中だけで飼うということはないでしょう。家の中では、家族だけのルールを守れば良いのですが、一歩外に出れば社会のルールに従う必要があります。これは飼い主の責任でもあります。
住宅や周辺の環境も様々です。車の交通量が激しい場所や、人の往来の多い場所、線路や踏切に近いといった場所に住んでいる場合は、犬も事故に巻き込まれてしまったり、人に何らかの危害を与えてしまったりすることも考えられます。
音や物に過敏に反応してしまう犬は日々がストレスになりかねませんので、子犬のうちから環境に慣れさせておくことが成犬になった時の、犬の心の安定にもつながります。
6.お手入れに慣れさせるしつけ
室内で飼っていても犬は汚れますし、衛生管理は必要です。また、犬の体に触れることで早期発見できる病気もあります。ところが実際には、自分に触れさせるのを嫌がる犬もいます。
子犬の頃からブラッシングや歯磨きの道具などに慣らせておくと、グルーミングも楽になり、動物病院で嫌がることも減ってきます。ヘアカットなども抵抗なくさせてくれるでしょう。子犬期のうちに、体の至る所や口周りなどを撫でられても平気でいられるようにしつけをしてください。
関連記事:愛犬がお手入れ嫌いにならないために!家庭で出来る2つの練習
7.甘噛み・噛み癖を直すしつけ
子犬期は歯の生え変わりもあり、むず痒さから物や飼い主さんの手を噛むこともあります。また、飼い主さんに甘噛みしてくることもありますが、これを放置しておくと、成犬になってもひどい噛み癖を持ったままの危険な犬になってしまいます。
噛み癖を直すしつけには様々な方法があります。犬が手や体を噛んできたら、何も言わずに無視してその場を離れましょう。この方法はそれまでの空気を変え、子犬が「噛んだらつまらなくなった」と思うようになるので、噛み癖をやめさせるのに有効です。
また、市販の甘噛み防止スプレーの利用や、噛んだ場合に子犬のマズルを掴むマズルコントロールなどがあります。
8.吠えるのをやめさせるしつけ
犬が吠えるのにはそれなりに理由があります。中でも子犬期は、要求吠えが一番多いかもしれません。人間の赤ちゃんが泣いて欲求を訴えるのと同じです。しかし、犬の吠え声はときにはご近所とのトラブルを招くこともあります。成犬になって一段と激しく吠えることがないよう、早めにしつける必要があるでしょう。
子犬が吠えているときは、徹底的な無視が一番効果的です。犬に触れること、目を合わせること、話かけることを一切しないでください。そして吠えるのをやめたときに、たっぷりとほめてあげることで、子犬は学習します。
関連記事:犬の無駄吠えの対策としつけ方!吠える原因と対処法からおすすめの防止グッズまで
9.ハウス(クレートなど)に入るしつけ
来客時や、車での移動時にハウスやクレートができている犬は後々の生活が大変楽になります。子犬のうちからハウスやクレートを嫌がらないようにトレーニングしていきましょう。
犬は、本来狭い場所を好みます。縄張り意識があるので、自由に動ける範囲が広いとその範囲全てを自分の縄張りと捉え、警戒吠えが酷くなるのです。狭いハウスやゲージに入れることは可哀そうに思いがちですが、実は犬にとっては安心できるパーソナルエリアがあることになるのです。
しつけ方法は、まずハウスの中におやつを置いて誘導してください。そして自分から入ったら、子犬をたくさんほめてあげましょう。
最初は、扉は開けたままにして、出入りを自由にさせておくと良いでしょう。子犬がハウスに慣れてきたら、短時間ずつ扉を閉め、声をかけながらおやつを与えてください。「ハウスの中にいるとおやつがもらえる」と思うようになると、自分から進んで入るようになり、扉を閉められても平気になります。
ハウスは居心地の良い空間と思わせるため、罰としてハウスに入れる行為はしてはいけません。あくまでも、ハウスは嬉しいことがある場所、居心地の良い場所と思わせるようにしつけてあげると、ハウスを嫌がることはなくなるでしょう。
こちらの動画ではクレートを使ったトレーニングを実践しています。参考にしましょう。
関連記事:犬のハウスは絶対に教えておきたいしつけ!その意味や方法とは?
子犬に覚えてもらうべき4つのコマンド
犬のコマンドとは、飼い主が犬に対して出す「指示」のことを言います。いくつかの基本的なしつけのコマンドを子犬が覚えると、犬との生活が大変快適に、そして楽しくなります。
1.おすわり
子犬がたまたま座った瞬間に「おすわり」と言って、おやつをひと粒口に入れてあげると、比較的簡単に覚えるしつけコマンドです。
また、犬が立っているときに「おすわり」と言いながら子犬の額近くでおやつを見せると、目線はおやつにくぎ付けのまま、犬のお尻が自然に下がります。お尻が床にしっかりついたタイミングで、「いい子」と言ってほめてあげてください。
2.待て
アイコンタクトとおすわりのしつけがしっかりできるようになったら、「待て」のトレーニングしてみましょう。
最初、おすわりをさせ、おやつでアイコンタクトを取ります。子犬はおやつを見ますので、最初は2〜3秒程度の時間でもそのままでいられたら「いい子」とほめ、そのおやつをあげてください。これができるようになったら「待て」と言われてからじっとさせる状態を徐々に長くしていきます。
次の段階では、「待て」の指示後、ゆっくりおやつを下に置いてみてください。少しでも待てたら「良し」と言っておやつを与え、徐々に「待て」の時間を延ばしていきます。
3.伏せ
犬は「伏せ」を覚えると、興奮した場合でも「伏せ」のコマンドを言うだけで落ち着きを取り戻すので、大変役立つしつけコマンドです。
「伏せ」と言った後、おやつを子犬の前足あたりに持っていき、犬を伏せの姿勢に誘導します。犬は、なかなかお尻を下ろしませんが、その場合は、お尻を少し押して、伏せの姿勢を強制しましょう。
ほんの少しでも子犬が伏せの姿勢になった瞬間に、たくさんほめ、おやつを与えると良いでしょう。これを繰り返し行うと、おやつ欲しさにコマンドから伏せるようになります。
4.ツケ(そばについていなさいの意味)
「おすわり」や「待て」より、難易度が上がるコマンドです。「ツケ!」と言ったら、犬が飼い主の左側(又は右側)にぴったりと寄り添う状態です。このとき、飼い主さんより犬の体が前に出ていないことが理想です。
飼い主の横についていることで、車道を歩く場合や危険物のそばを歩行するときに安全を確保されるメリットがあります。
少し離れた場所から、おやつを見せ、子犬に飼い主のそばにへ来ることを覚えさせます。そばに来たらすかさずおやつを与えほめます。なかなか難しく思うようにいかないしつけコマンドなので、挑戦する場合は、犬が飽きない短時間で根気よく行いましょう。
子犬のしつけは家族でルールを統一しよう
子犬のしつけで一番大切なことは、家庭内でルールを統一することです。例えば、キッチンに入ることをいけないというお母さんと、入っても何も言わないお父さんがいた場合、犬はどちらの指示に従えばよいのか混乱します。
また、ある日は許されていたことが、別の日にはいけないと言われることでも、犬は混乱します。さらにコマンドでも「おすわり」と言う人と「すわれ」と言う人がいた場合、犬にはそれが同じ意味だとは理解できないため混乱するのです。
このように、子犬を混乱させてしまう状態では、どんなに頑張ってしつけようとしてもスムーズにはいきません。それは子犬の物覚えの悪さではなく、しつける側にある問題です。まず子犬を飼う場合には、家族全員で話し合い、飼い主さんたちが一貫性を持つようにしましょう。
子犬をしつける必要性って?しないとどうなるの?
「人間社会の都合に合わせ、無理やり子犬に人間のルールを押し付けるのは可哀そう」という意見もあります。しかし、犬が人間と一緒に暮らしていくためには、人間社会に順応している方が、犬にとってもまた快適で安全、そして安心な日常を送ることができるのです。
子犬の頃からしつけができていれば、子犬にとってはそれが当たり前となり、ストレスも生じません。何か問題ができてからでは遅いので、そうならないめの予防策として子犬期からのしつけは大変重要なのです。
犬は、元々群れを成して生きてきた動物です。このため、群れのリーダーから指示されることで、安心した精神を保つことができます。飼い主さんを自分より上の立場だと認識し、指示に従っていることは、犬の本能にも沿うことになり、犬にとっても決して不幸なことではないのです。
難しい場合は「しつけ教室」という選択肢もある
せっかく子犬を迎えるのだから、一からしっかり自分たちでしつけようとは思っても、実際はなかなかうまくいかないといった場合も出てくるでしょう。初めて犬を飼う家庭は、飼い主さんたちにもしつけの知識がなく、難しいことも多いかもしれません。
全国では様々な地域でしつけ教室が開かれています。家庭内で頑張ってしつけるのもよいですが、このような場所に参加してみることもおすすめします。飼い主さんにとっても犬の生態を知り、知識を得る良い機会になりそうです。
また、しつけ教室への参加は、ほかの飼い主さんや犬との出会いや交流のきっかけにもなり、良いコミュニケーションの場にもなるようです。子犬を飼う前から、知人やネットを使い、あらかじめしつけ教室を探しておくのも良いでしょう。
地域によっては子犬を迎える前のセミナーを開催しているところもあるようです。子犬を迎える準備段階から、犬のいる暮らしをイメージし、期待してその日を待つのもいいですよね。
まとめ
子犬を飼いしつけるということは、子犬を人間の生活スタイルに合わせさせるということになります。そう考えると、子犬が苦痛にならないような方法でトレーニングしてあげたいですよね。
近年のしつけ方法は、いけないことを力で教えるのではなく、「してほしいことをほめながら教えるスタイル」が主流となっている傾向のようです。
子犬期はわずかな期間です。みるみる成長していくので、とても貴重な日々となります。しつけを厳しい訓練と捉えず、子犬と楽しく過ごす時間と考え、たくさんほめて思い出を増やすような気持ちで挑戦してみてください。
監修ドッグトレーナーによる補足
愛犬を迎えてから1歳までのしつけや社会化はすごく大切です。この1年が今後の愛犬との生活に大きな影響をもたらします。
迎えたその日からすぐに出来る事をご家族で相談しながら取り組んでいって、是非素敵な日々を送っていただければと思います。応援しております!