犬のコマンドとは
犬のコマンドとは、飼い主が犬に対して出す「命令」のことです。
犬は人間の言葉は分かりません。しつけを行うときに「すわって」「おすわり」「すわれ」など、いろいろな言葉を使うことがあります。しかし、人間にとって意味が同じでも、発音やイントネーションが違うだけで犬にとってはちんぷんかんぷんな音に聞こえてしまいます。
そんなときに役に立つのが「コマンド」です。コマンドは、犬にしてほしい行動を単語にしたもので、短い言葉ではっきりした音のものが良いとされています。毎回同じ言葉で指示を繰り返すことは、犬にとっても「◯◯=これをすればいい」と伝わりやすく覚えやすいのでしょう。
犬のコマンドの教え方
犬にコマンドを上手に教えるには7つのポイントがあります。飼い主が心得ていれば、犬のしつけはずっと楽になるはずです。
コマンドを統一する
例えば、「おすわり」が「すわれ」や「シット」など、言い方が違うと犬は混乱してしまいます。
「こう言われたらこの動作をすればいいんだ」と犬が理解しやすいようにすることがポイント。また、家族の中で使う言葉を統一することも大切です。
犬が従いやすいコマンドから始める
犬は何も分からない状態から始めるわけですから、トレーニングは犬が従いやすいコマンドから始めましょう。
最初は、犬に覚えさせたいコマンドの動きをおやつなどの報酬を使って誘導します。それに慣れたら飼い主の手の動き(ハンドサイン)と声だけ、その次は声だけと、徐々に誘導のレベルを上げていくことで、誘惑が加わってもできようになるのが目標です。
コマンドは犬の動きを誘導して教える
そのコマンドでどんな動きをすればいいのかを教えるために、まずは手で誘導することから始めます。
おやつを持った手を犬の前に出し、その手を追いかけたらおやつをあげましょう。「手についていくと良いことが起こる」と犬に覚えさせることが重要です。そうすれば、そのうちおやつがなくてもあなたの手に従うようになります。
褒めるタイミングを見極める
褒めるということは、犬に「それでOKだよ」と伝えることです。犬が飼い主のコマンドに従うことができたらすぐに褒めてあげましょう。
褒めるタイミングは、その行動が完了したら「すぐに」です。遅すぎると犬は何に対して褒められたのかわからなくなります。ただし、早すぎるのもよくありません。行動が完了した瞬間に褒めることが大切です。
例えば、「おすわり」なら座ろうと腰を下ろしている最中に褒めてしまうと、中途半端な体勢でおすわりが身についてしまいます。しっかりと腰を下ろしたことを確認してから褒めてあげましょう。
失敗させたままで終わらせない
コマンドを教えるときは、十分な時間をかけることが大切です。すぐに覚えられる犬もいれば、そうでない犬もいます。
しっかりとコマンドができていないところで終わらせてしまうと、犬は「覚えなくていいんだ」と勘違いしてしまうことがあります。
環境によってはコマンドのレベルを下げる
まずは、家の中の犬が快適に過ごせる場所でトレーニングを開始するのがベストです。
次に、家の中でしっかりと覚えたコマンドを外出先で試してみると、家では完璧だったのに突然できなくなる犬もいます。それば、家の中と外では聞こえてくる音や匂いなどがあふれていて、初体験のものばかりや誘惑が多すぎてしまうからです。
家の中でできるようになったからと安心せず、外ではコマンドのレベルを下げて少しずつ慣らしていきましょう。
一度に多くのコマンドを教えすぎない
犬が集中していられるのは5〜10分程度と言われています。その僅かな時間に詰め込み過ぎてしまうと、犬は覚えられなくなります。その時間を考慮して、教える内容を選びましょう。
一つ覚えたら休憩とゆっくり犬のペースに合わせることが大切です。また、休憩中には愛犬が好きなことをして遊んであげるといいですね。犬にとって 「コマンドのトレーニングは楽しい!」と感じてくれることが大事です。
犬に負担をかけないためにも、トレーニングは気分転換をしながら楽しく行うようにしましょう。
犬のコマンド一覧!しつけに使える用語
コマンドとして使う言語は一貫していれば何語でも構いませんが、普段の日本語に比べて英語の方が言葉として短く発する事ができる事と、犬にとっては聞き取りやすいというメリットがあります。
では、犬のしつけを行う上で使えるコマンドについて、日本語と英語でいくつか挙げてみましょう。
「いいこ」=「グッボーイ(グッガール)」
犬は褒められることが大好きです。このコマンドを伝える際、大げさでもいいので笑顔でテンション高く伝えると、「これは良い言葉だ、褒められている」と覚えてくれます。指示に従ったら必ず言ってあげましょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
東京大学大学院医学系研究科の研究チームによると、2秒以内に褒めてあげるのがベストだと考えられる結果が発表されています。
また、叱る時間は犬の年齢や性格、行動の種類によっても異なりますが、一般的には5秒以内に叱ることが推奨されています。 褒めたり叱るタイミングは2秒以内、叱る時間は5秒以内を目安に行動しましょう。
「だめ」=「ノー」
褒める言葉を教えたら、次はよくないことをしたということを教える言葉です。この短いフレーズは、犬が良くない行動をした時に素早く、端的に「それは悪いことだ」という意味を伝えることができます。
このコマンドは犬を叱るというより、「それはしてはいけないよ」ということを教えるための言葉です。犬が行動してから「いけない」と伝えるより、その行動を先読みして別のことに興味を移させるなどして、「良い行動」を強化してあげるほうがお互いにストレスが少なくなりますね。
監修ドッグトレーナーによる補足
しつけにおいては、「だめ」「ノー」は調味料程度に使いましょう。ノーばかりのしつけはNGです。
「グッド」9割「ノー」1割、これくらいの割合を意識して行いましょう。
「おすわり」=「シット」
日常でよく使う腰を下ろさせるコマンドです。興奮した犬を落ち着かせるために使うことも多いので、覚えておくと家の外など色々な場面でも使えます。
「ふせ」=「ダウン」
こちらも日常でよく使うコマンドです。食事中や来客があったときなど、足元で大人しくしてほしいときになど使います。
「しずかに」=「クワイエット」
興奮して吠えてしまった時などに使います。この言葉を教えるときは低い声、落ち着いた大きさで伝えることが大切です。
大きな声や高い声で教えると、犬は余計に興奮して吠えてしまうことがあります。このコマンドで犬が吠えるのをやめたときは、すかさず褒めてあげましょう。
「まて」=「ステイ」
ごはんの前やお出かけ前、お散後に部屋に入る前など様々な場面で犬にちょっと行動を止めて待ってほしいときに使います。日本語だと「まて」「まって」などバリエーションが増えてしまうので、英語で伝えたほうが犬にとっては分かりやすいかもしれません。
初めはほんの数秒から「よし」や「グッド」などで待つ姿勢を解除してあげましょう。待つことができたらたくさん褒めてあげて、徐々に待つ時間を長くしていきましょう。
「はうす」=「ハウス」
サークルやケージ、クレートに入ってほしいときに使うコマンドです。これは子犬をお迎えしたすぐから教えてあげましょう。
お留守番するときや、夜寝るときなどに使います。ハウスに入ったら邪魔をせず、落ち着いて休める場所だということを覚えてもらいましょう。
「つけ(ついて)」=「ヒール」
お散歩中にぐいぐいリードを引っ張って好き勝手に歩かれては困ります。そこで、自分の左側について歩幅を合わせて歩く「脚測行進(リーダーウォーク」と呼ばれるトレーニングの際に使います。
このトレーニングは、愛犬の行動を抑制し、事故や怪我などトラブルを未然に防ぐ効果がある大切なしつけです。
「こい」=「カム」
犬は走ることが大好きです。ドッグランなどで遊んでいるときなど、自分のところまで戻ってきてほしいときに使います。
日本語では「こい」「おいで」などいろいろな言葉を使ってしまうことがあるので、短く「カム」と言ったほうが犬にも聞こえやすいようです。
監修ドッグトレーナーによる補足
お散歩や外出する際に「こい」「カム」は必須のコマンドです。呼び戻しができていないことで、毎年多くの犬が散歩中に飼い主とはぐれて迷子になったり、事故に巻き込まれたりしています。
「こい」「カム」ができてからでもお散歩は遅くありません。愛犬の安全を守るためにしっかりと覚えてもらいましょう。
「ちょうだい」=「ギブ」
犬がくわえたおもちゃなどをこちらに渡すように伝えるコマンドとして使います。
レトリバーなどの犬は、投げたおもちゃを飼い主のところへもっている遊びが好きで、自主的に飼い主の前に落として遊びを催促することも多いですが、犬のペースではなく飼い主のペースに合わせるためや噛んでほしくないものを返してもらうときのためにも覚えてもらうとよいでしょう。
「はなせ」=「ドロップ」
犬は、興味を惹かれたものをすぐに口に入れてしまう習性があります。誤って飲み込んでしまうと危険です。何を飲み込んだかわからないのはとても怖いことです。
何かを口に入れしまっても、「はなせ」や「ドロップ」のコマンドに従うことができれば、誤って飲み込んでしまうことは少ないでしょう。ただし、誤飲した場合は手術などが必要になることもあり、愛犬の体に大きな負担をかけることもあります。 しっかりとコマンドを覚えもらうことは愛犬の命を守ることに繋がります。万が一誤飲した場合は、早急に動物病院を受診しましょう。
まとめ
コマンドは、他にもたくさんあります。日本語でも英語でも、一度教えたコマンドは変えずに、家族の間でも統一することが大切です。
そして、コマンドトレーニングにはコツがありますが、なにより信頼関係が築けていれば、スムーズにしつけることができます。もちろん個体差はありますが・・・。
信頼関係は一日で築けるものではありません。毎日愛犬の様子をみて、しかりとお世話やコミュニケーションをしていく中で、少しずつあなたの気持ちに応えてくれるようになります。
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