ミニチュアピンシャー と ドーベルマン の違い
ミニチュアピンシャー(ミニピン)とドーベルマンは同じドイツ生まれで、体の大きさを除いて顔などの外見的特徴を見る限り、血統の近い犬種に見えます。しかし、実は犬種として誕生したのはミニチュアピンシャーの方がはるかに先です。似ているようで異なる2犬種の違いを比べてみました。
歴史の違い
どちらの犬種も、家庭犬としてだけではなく、警備犬(けいびけん)や番犬、警察犬(けいさつけん)として活躍できるほど能力が秀でている「使役犬」に分類されます。しかし、誕生するまでの経緯やかけ合わされた犬種は、違う歴史をたどってきた別の犬なのです。
- 【 誕生した時代 】
- ミニチュアピンシャー:18世紀
ドーベルマン :19世紀後半
- 【 交配犬種 】
ミニチュアピンシャー - ジャーマン・ピンシャー
スムースダックスフンド
イタリアン・グレーハウンド - ドーベルマン
- ジャーマン・ピンシャー
ジャーマン・シェパード
ロットワイラー
ミニチュアピンシャーの歴史
ミニチュアピンシャーは、非常に歴史の古い犬種だと考えられていますが、ルーツについては不明なことも多いようです。ミニチュアピンシャーはスムースダックスフンドとイタリアン・グレーハウンドがもとになって作られたことを示す1800年代の記録があるそうです。
ドーベルマンよりもさらに見た目がミニチュアピンシャーとそっくりなジャーマン・ピンシャーも交配に使われたと考えられていますが、詳細は不明だと言う人とミニチュア・ピンシャーはジャーマン・ピンシャーを小型化した犬種だと言う人がいるようです。
ジャーマン・ピンシャーはドーベルマンよりは小さくミニチュアピンシャーよりは大きい中型犬です。ジャーマン・ピンシャーもミニチュアピンシャーも害獣、特にネズミの駆除に用いられていたそうです。
ドーベルマンの歴史
ドーベルマンは、ミニチュアピンシャーよりもっと後の19世紀後半に、ルイス・ドーベルマンが自分の仕事で役立つ頼もしい護衛犬がほしくて生み出した犬種です。
ジャーマン・ピンシャー 、ジャーマン・シェパード、ロットワイラーなどをかけ合わせてドーベルマンのベースとなる犬が生まれ、その後さらなる交配を重ねた結果、現在のドーベルマンが誕生しました。
大きさの違い
- 【 ミニチュアピンシャー 】
- 体高:26~32cm
体重:4~6kg
種類:小型犬
- 【 ドーベルマン 】
- 体高:63~72cm
体重:32~45kg
種類:中型犬(または、大型犬)
ミニチュアピンシャーとドーベルマンの体型は、ガッチリとした筋肉質な体型で、どちらも艶がある短い毛が特徴です。
しかし、その違いは何と言っても体の大きさで、ミニチュアピンシャーは小型犬、ドーベルマンは中型犬(日本では大型犬とされることもある)として、かなり差があることが分かります。
毛色の違い
- 【 ミニチュアピンシャー 】
- ブラック&タン(黒地に茶色)
チョコレート&タン(濃い茶色)
レッド(赤みがかった褐色)
- 【 ドーベルマン 】
- ブラック&タン(黒地に茶色)
ブラウン&タン(明るめの茶色に赤褐色)
ミニチュアピンシャーの毛色には、基本色となるチョコレート・タン、レッド、ブラック・タンが存在します。ドーベルマンの場合は、2犬種が似ていると言われるだけあってブラック・タンがやはり多いのですが、レッド単色の毛色はスタンダードにはありません。
基本色ではありませんが、他にもブルーと呼ばれる灰色や、柔らかい黄土色や薄めの茶色に若干パープルが入ったような、イザベラというあまり見かけない色も存在します。
こういったスタンダードで認められてないさまざまな毛色があることも、同じような犬種だと誤解される原因になっているのかもしれません。
耳の違い
ミニチュアピンシャーと言われてもドーベルマンと言われても、どちらも耳が立っている顔を想像する方が多いのではないでしょうか。
しかし、ミニチュアピンシャーにはもともと立ち耳や半立ち耳の子がいますが、ドーベルマンにもともと立ち耳の子はいません。ドーベルマンの立ち耳は、手術で耳を切りその後のテーピングで固定して作られているものなのです。
ミニチュアピンシャーでも断耳手術をすることはありますが、日本でも最近は断耳をしないミニチュアピンシャーが増えています。アメリカではミニチュアピンシャーもドーベルマンも断耳された犬が一般的ですが、ヨーロッパではどんな犬種も断耳や断尾をすることが禁じられています。
かかる費用の違い
ミニチュアピンシャーとドーベルマンでは、年間の飼育費用が大きく違います。また、子犬の平均的な価格も違うでしょう。
ミニチュアピンシャーは日本ではよく見かける犬種で、ペットショップなどでも購入できることが多く、血統や毛色にもよりますが20万円前後から販売されていることが多いようです。
しかし、ドーベルマンとなれば飼育されている頭数がミニチュアピンシャーよりとても少ないため、ブリーダーから直接購入することが多いでしょう。ドーベルマンの子犬でも20万円前後から販売されていることが多いようですが、飼育に費用がかかるため、平均的にはミニチュアピンシャーより高額になるようです。
小型犬のミニチュアピンシャーと、中型犬(時に大型犬)のドーベルマンでは、1ヶ月の食費や消耗品費、病気の時に必要となる治療費、予防にかかる医療費などの差は大きくなります。
ドーベルマンを迎え入れるのであれば、初めからそれなりの出費が必要になることを理解しておく必要があります。
ミニチュアピンシャー と ドーベルマン の共通点
ここまでは違いをご紹介しましたが、そっくりと言われるだけあって、ミニチュアピンシャーとドーベルマンには共通点があります。似ているポイントもよく知っておきましょう。
「ピンシャー」という名前がついている
ミニチュアピンシャーとドーベルマンが同じ犬だと思われてしまう原因には、犬種としての名前も深く関わっています。ドーベルマンを紹介する時に「ドーベルマンピンシャー」の名前で紹介されているのを見たことがありませんか?ミニチュアピンシャーとそっくりな名前ですよね。
この「ピンシャー」は、ドイツ語で「テリア」を意味する言葉です。もともとは「噛む」や「つまむ」を意味する単語に由来するようですが、テリアが獲物(多くはネズミなどの害獣)を噛んでしとめる仕事をする犬であることから「ピンシャー」が「テリア」という意味で使われるようにもなったそうです。
しかし、ドーベルマンが警察犬や護衛犬として活躍する幅を広げていくうちに、「もはやピンシャーの名がつくのはふさわしくない」として、単に「ドーベルマン」と呼ぶ国が多くなりました。
原産国であるドイツや周辺国では「ドーベルマン」と呼ばれるのに対し、アメリカとカナダでは、「ドーベルマンピンシャー」が今も正式名称となっています。
日本では、ジャパンケンネルクラブ(JKC)での名称は「ドーベルマン」ですが、「ドーベルマンピンシャー」と呼んでいる人も現在でもいます。「ドーベルマン」も「ドーベルマンピンシャー」も同じ犬なのですが、この名前の名残りが、ミニチュアピンシャーとの区別をつきづらくしているややこしい共通点とも言えます。
運動量が多い
ミニチュアピンシャーとドーベルマンは体格がかなり違いますが、1日の運動量はどちらもたっぷり必要です。
ミニチュアピンシャーの運動量
ミニチュアピンシャーは大きさとしては小型犬ですが、ジッとしているよりも動いていたい行動派で、大型犬を連想させるほどにかなりタフです。その分飼い主の体力も要求されますから、愛犬と共に運動がしたい、動いていたいという人に向いています。
動き回ることや遊びが好きなので、ストレスを抱えないようにボールを使う遊びや、自分の思い通りに走り回る運動などを織り交ぜて、満足できる運動量がどれくらいか探ると良いでしょう。
注意点としては、遊びや運動に夢中になりすぎて飼い主の言うことが耳に入らなくなったり、思わぬ場所をすり抜けたりすることがありますので気を付けましょう。
ドーベルマンの運動量
ドーベルマンは中型犬に該当する大きさのため、ミニチュアピンシャー以上に運動量が多くなります。1日の目安は、1時間ほどの運動が朝晩の2回必要とも言われています。広めのドッグランなら、自分の思い通りに走り回らせてあげると良いでしょう。
散歩はジョギングほどの早さで一緒に走るのがおすすめです。ドーベルマンらしい強靭な体格をキープするためにも、運動はしっかりとさせてあげることが肝心です。
ミニチュアピンシャーとドーベルマンの運動量はどちらも多いですが、やはり家族として飼うからには、できるだけストレスを与えない環境を提供することが重要です。ミニチュアピンシャーとドーベルマンの飼い主には、それなりの体力が必要だということを覚悟の上で飼育しましょう。
まとめ
ミニチュアピンシャーとドーベルマンは見た目もよく似ていますが、誕生はミニチュアピンシャーの方が先です。しかしどちらもドイツで最初に誕生したという共通点もあります。
ミニチュアピンシャーは飼い主には誠実で勇敢ですが、知らない他人には用心深く、他の犬に対してはたとえ大型犬であっても全くひるまないことも多いそうです。ドーベルマンはもともと護衛目的のために誕生した犬種のため、的確に警備や防衛の仕事をこなす能力があります。
ただどちらの犬種も、しっかりとしたしつけと運動をさせて、飼育環境には気をつかわなければなりません。