ミニチュアピンシャーの耳を立たせる意味と歴史
ミニチュアピンシャーの耳といえば、上にピンと立った状態を思い出す人もいるでしょうが、本来の形状は垂れています。元々垂れている耳を外科的手術で切ることで、上に向かってピンと立たせています。では、なぜあえて外科的手術を行なってまで、ミニチュアピンシャーの耳の形状を変える必要があるのでしょうか。
それは、ミニチュアピンシャーを含めて断耳が当たり前に行われてきた犬種は昔、羊や牛などの家畜を管理したり、鳥などを捕えたりする仕事を人と共にしてきた時代がありました。その作業中のケガを防いだり、狼に耳を咬みつかれたりするといった攻撃を回避する他、狩りの最中にキツネと誤解されないための配慮から、断耳が行われてきたのです。現在も断耳が行われている理由には、その犬種らしいスタイルであることや慣習といったこともありますが、「垂れた耳」がかかりやすい病気の予防目的で、日本でも取り入れられています。断耳の対象となる犬種は、ミニチュアピンシャーの他にド―ベルマンやボクサー、グレートデン、シュナウザーなどです。
しかし近年、主にヨーロッパやオーストラリアなどの一部の国で「動物愛護」の観点から、断耳そのものを認めないという流れも出てきています。断耳を行なう一般的なタイミングは、誕生後3か月程から半年にも満たない子犬が対象で、全身麻酔を施した状態で軟骨の一部分を外科的手術で切ります。
ミニチュアピンシャーの耳掃除のやり方
ミニチュアピンシャーの耳は垢や汚れが気になりやすい犬種ですので、耳の健康を保つために決まった頻度で清潔にします。耳の環境を衛生的に保つためには、「耳用の洗浄液」を使うとデリケートなミニチュアピンシャーの耳の内部を傷つけることなくキレイにできます。
耳用の洗浄液の使用方法は、液を耳の中に何滴か落として、それから耳を軽めにマッサージをします。家族の人ができるのはそこまでで、後はミニチュアピンシャーが自然に頭を振れば、洗浄液で浮き上がった垢が出てきます。床は多少汚れますが、その後拭き落とせるので便利です。綿棒を使うと垢が手の届かない奥へ入る恐れがあるので、この方法ならば安全です。
また、蒸発の早い洗浄液であればそのままでも乾いていきますが、指で簡単に触れられる部分に洗浄液が付着していれば、クリーンなガーゼなどで取り除きます。もし、今まで洗浄液で耳のケアをしてきた経験がなく、不安に感じるようでしたら動物病院に相談してみると良いでしょう。特に断耳されていないミニチュアピンシャーの耳は垂れた状態のため、耳の内部の湿度がどうしても高くなりますので、病気を誘因する可能性があります。できる限り空気の流れを良くするような対策が必要です。
ミニチュアピンシャーの耳のトラブルについて
ミニチュアピンシャーの耳は、断耳を行なっていなければ垂れた耳ですので、空気が入れ替わりにくい形状といえます。そのため耳の内部がジメジメと湿りやすく、良好とは言い難い環境になりがちです。対策としては空気の通りを良くしたり、耳の内部をクリーンなガーゼなどで拭いたりするだけで、環境が変わってきます。特にお風呂に入れた後の水気はもちろん、湿っている時は取り除きましょう。こういったこまめなケアが、ミニチュアピンシャーの耳の病気予防に一役買います。
ミニチュアピンシャーがなりやすい耳の病気は「外耳炎」と呼ばれるもので、耳の外側と鼓膜を結ぶ外耳道が赤味を帯びて腫れ、通常無臭の垢が臭うのが特徴です。この病気になると痛みや痒みといった症状が表れますので、ミニチュアピンシャーの行動にも異変が出てくるようになります。ミニチュアピンシャーは耳に関したトラブルを引き起こしやすいといわれていますので、普段の生活の中でもできるだけ意識して予防に努めましょう。
まとめ
ミニチュアピンシャーの耳は本来垂れた形状をしていますが、外科的手術で上にピンと立ち上がるように整形するため、どちらの形も存在しています。この方法は、家畜の管理や狩猟犬として活躍してきた時代に、ケガや事故を未然に防ぐ方法として取り入れられてきました。現在では家庭犬として飼っている人が大半なので、必ずしも施さなければならないわけではありません。しかし未だにこの慣習が続く理由は、その犬種らしいスタイルにするためや、ミニチュアピンシャーの耳の病気を未然に防ぐ目的とさまざまです。
また、ミニチュアピンシャーの断耳に対する考え方も考慮する必要があります。ヨーロッパやオーストラリアなど一部の国では、動物愛護の観点からこの行為自体を禁止する対策を取っていますが、日本では飼い主の任意に委ねています。
また、断耳をする方法も耳の健康を守る手段として有効といえますが、本来の垂れた耳の形状で過ごしても、定期的に耳の湿度管理を行なったり風通しを良くしたりするといったケアで、病気予防のサポートができます。また、耳専用の洗浄液を動物病院や市販で入手できますから、それを上手に生かして耳の内部の汚れを取ることも可能です。そのような点を考えてもどのような対策が犬にとって良い選択なのか、外科的手術を受ける前に一度検討してみるのも良いでしょう。
ユーザーのコメント
30代 女性 ひまわり
私は病気のリスクが低くなるような手術であれば賛成です。確かに手術時の麻酔のリスクや、手術後の感染症リスク等はありますが、たれ耳のまま過ごした時の病気のリスクと比べれば安全ではないでしょうか。わんちゃんが健康で過ごしてくれる事が一番です。