犬が伸び(背伸び)をする意味
犬の伸び(背伸び)は、前脚をのばして前かがみに伏せのような姿勢で、お尻を天に高く上げたポーズのことを指します。
この姿勢には、単なるストレッチの場合の他に、「遊んで!」と相手を誘うときにやるもの、痛みを抱えているときのものなどがあります。
それでは、犬が伸び(背伸び)をする意味について見ていきましょう。
①ストレッチ
犬も人間と同じように、寝起きやずっと同じ姿勢でいたときなどに、筋肉を伸ばすために伸び(背伸び)をします。
愛犬が「う~~ん」と、気持ちよさそうに伸びをする様子は微笑ましくなりますね。
②遊びたい、不安や葛藤がある(カーミングシグナル)、恐怖などの気持ちを表す
犬は姿勢によっても自分の気持ちを表現します。
「遊ぼうよ!」という気持ちを表す「プレイバウ」
人間や犬などを前に興奮気味に頭を低くしてお尻を持ち上げ伸びのポーズをしているときは、「遊ぼうよ!」と誘っているサインです。
これは「プレイバウ」と呼ばれています。
このポーズの特徴は、尻尾を高く上げていたり、喜ぶように尻尾を振っていたりして、口元や耳はリラックスしています。
不安や葛藤があることを表すカーミングシグナルとして
カーミングシグナルとは、吠えたり声を発さずに、体の動きや仕草だけで相手に気持ちを伝えたり自分の気持ちを落ち着かせるために行うボディランゲージのことをいいます。
犬が伸び(背伸び)のポーズをしているとき、状況によってはこの「カーミングシグナル」であることがあります。
カーミングシグナルには他に、口回りや鼻をなめる、あくびをする、痒くもないのに体をかくなどの動作があり、これら他のカーミングシグナルが同時に見られる場合には伸びをするポーズもカーミングシグナルである可能性が高いと考えられ、犬がストレスを感じている、好ましくない状況があってその状況をなんとかしたいと思っているでしょう。
「恐怖」と攻撃の可能性を表している、威嚇のポーズ
体勢を低くして背中が伸びた状態で唸っている場合は、相手を威嚇しています。これは、散歩中などで相性の良くない犬と出会った時などに表れることがます。恐怖心から威嚇をしている場合には、鼻にしわを寄せていたり歯を見せていたり、耳が後ろ向きに寝ていたりと、体や表情がかたく緊張したものになっています。
こういった場合は、犬を決して相手に近づけることはせずに、そっとその場から離れたり、違うルートで散歩するようにしましょう。恐怖がそれ以上に大きくなると、攻撃につながる恐れがあります。威嚇のポーズは「これ以上近づくな」という犬からの警告です。警告を無視してはいけません。
③お腹に痛みがある(祈りのポーズ)
前脚を伸ばして、伏せの姿勢でお尻だけ高く持ち上がっているポーズは、ストレッチ姿と似ています。
しかし人間や犬に向かってではなく、しっぽを下げたまま伸びのポーズをしている場合は「祈りのポーズ」かもしれません。
祈りのポーズは、犬が何らかの痛みを我慢しているときに行うことが多く、小刻みに震えていたり、祈りのポーズをした後に丸くなってつらそうにしたりします。
何かしらの体調不良の可能性がありますので、愛犬の表情や様子を注意深く見てあげてください。
病気が隠されている愛犬の伸び(背伸び)
祈りのポーズは、お腹の痛みの可能性
「祈りのポーズ」は、犬がお腹の痛みを感じているときに行われることが多くあります。
元来犬は痛みを我慢し隠すことも多い動物ですので、祈りのポーズをしだしたら相当辛い思いをしているのかもしれません。
愛犬が頻繁に祈りのポーズで伸び(背伸び)をしている場合は、嘔吐や下痢はないか、水を大量に飲んだり食欲がなくなったりなどの変化がないかなど、注視してください。
いつもとちょっとでも違うことがあれば、必ず動物病院を受診するようにしましょう。
お腹の痛みから考えられる症状は、膵炎や胃捻転などです。
膵炎(すいえん)の可能性
膵炎には、急性膵炎と慢性膵炎があります。
急性の場合は、強烈な痛みや激しい嘔吐・下痢があります。早く治療を始めないと死に至ることもある、恐い病気です。
慢性の場合は、嘔吐や下痢が断続的に続くこともありますが、食欲不振くらいしか症状がないこともあります。他の消化器系の疾患と判別しづらく診断までに時間がかかることもあるようですが、検査技術が発達し昔より早く診断される例が増えているようです。治療には、炎症を抑える薬の他に食事療法などが行われ、症状がそれ以上悪化しないよう、また合併症を起こさないように治療を行うことが求められます。
胃捻転(いねんてん)の可能性
胃捻転は、時間の経過とともに死に至る確率が非常に高くなるため、見つけたら即病院へ連れて行かなくてはいけない、緊急性の高い病気です。
胃捻転は胃が捻じれてしまった状態ですが、捻転が起こる前に何らかの原因で胃が異常に拡張してしまう胃拡張を起こします。胃拡張だけで済む場合もあれば、胃捻転にまで進んでしまう場合もあります。胃拡張捻転症候群(GDV)とよく呼ばれています。
吐きたそうなのに吐けない、よだれが大量に出る、お腹が膨らんでいる、元気が全くない、落ち着かない様子でうろうろする、などの症状が見られます。
好発犬種としては胸の深い体形を持つ大型犬、特にグレートデンやセントバーナード、ド―ベルマン、大型のセッターやサイトハウンドが好発犬種と言われていますが、ゴールデンレトリーバーやコッカー・スパニエルなどでも多く報告されているようですし、小型犬ではミニチュアダックスフントで多く見られているそうです。どんな大きさのどんな犬種でも起こりえる病気で、年齢があがったり兄弟や祖先犬にGDVを起こしたことがある場合にはよりリスクが高まります。
胃捻転は、症状が始まってからできるだけすぐに、遅くても数時間以内に胃に溜まったガスを抜いて胃を元の位置に戻す治療(手術)を始める必要があり、5~6時間ほどが経過すると回復が難しく非常に死亡率が高い、手術中や術後に死亡することも多いと言われています。
胃がパンパンに膨れていて、愛犬の様子がおかしいと感じたら、真夜中でも朝を待つのではなく夜間救急へ駆け込んでください。
また、胃捻転を起こしやすいとされる犬種を飼っている方は、万が一に備えて夜間救急や手術をしてもらえる病院を調べておきましょう。
GDVの発症率が最も高いと言われているグレートデンでは、避妊手術などを受ける時に予防的な胃を固定する手術を同時に行うことが推奨されている場合もあります。
誤飲の可能性
間違って何かを飲み込んだり、固いおやつを大きめの塊のまま飲みこんでしまったなどにより、腹痛を起こしている可能性もあります。
便で排泄されれば問題ありませんが、中にはうまく排泄に至れないこともあります。
いずれにせよ、愛犬が頻繁に何度も祈りのポーズのような伸び(背伸び)をしていたら、動物病院で診てもらうようにしましょう。
まとめ
以上、犬の伸び(背伸び)のポーズの意味をご紹介しました。
ストレッチやプレイバウならばよいのですが、不安や恐怖によるカーミングシグナルや威嚇の姿勢であった場合には、不安や恐怖の原因を取り除く必要がありますし、腹痛があることを表す「祈りのポーズ」は危険な病気のサインである可能性がありますので、いち早く気が付いてあげなくてはいけません。
祈りのポーズは、ストレッチやプレイバウととても良く似たポーズですが、落ち着きのない様子を見せているか、何度も繰り返すか、食欲はどうか、顔や体が緊張しているかなど、愛犬の表情や仕草を見れば、飼い主さんならすぐに異変に気が付いてあげられるはず。
水の飲み方、便の状態、食欲など、毎日のことですが、きちんとチェックしましょう。
犬は言葉を発することはできませんが、いろいろなシグナルを飼い主さんに出しています。
愛犬の異変にすぐに気が付いてあげられるように、犬の伸び(背伸び)のポーズには、「祈りのポーズ」という痛みをこらえているポーズもあるということを、頭の隅に置いておいてくださいね。