愛犬のおしっこ、その色は健康のサイン?
愛犬のトイレの世話は毎日のこと。ペットシーツを片付けるとき、ふと「あれ?いつもとおしっこの色が違うかも」と感じたことはありませんか。
言葉を話せない愛犬にとって、おしっこは健康状態を教えてくれる重要な「お便り」です。色の変化は、時に病気のサインである可能性もあります。飼い主がそのサインにいち早く気づくことが、愛犬の健康を守る第一歩となります。
この記事では、犬の正常なおしっこの色から、注意すべき色の変化、そして考えられる病気や自宅でできるケア方法までを、詳しく解説します。
正常な犬のおしっこの色
健康な犬のおしっこは、一般的に「淡い黄色」から「麦わら色」をしています。この黄色は「ウロクロム」という色素によるものです。
▲健康な犬のおしっこの色
ウロクロムは、体内で古くなった赤血球が分解されてできるビリルビンという物質が、さらに分解されて作られる老廃物の一種です。このウロクロムが尿と一緒に排出されるため、おしっこは黄色く見えるのです。
おしっこの色の濃さは、水分摂取量によって多少変動します。朝一番のおしっこや、運動後などであまり水を飲んでいない時は少し濃い黄色になり、水をたくさん飲んだ後は薄い黄色になるのが通常です。
このように、健康な範囲内での濃淡の変化は生理的なものなので、過度に心配する必要はありません。大切なのは、普段の愛犬のおしっこの色を把握しておくことです。
犬のおしっこの色別・考えられる病気の種類
普段の色と明らかに違う場合、それは体からのSOSかもしれません。ここでは、特に注意が必要なおしっこの色と、その背景に隠れている可能性のある病気について解説します。
無色透明〜非常に薄い黄色
▲無色透明に近い犬のおしっこの色
【考えられる病気】
- 多飲多尿
- 慢性腎臓病
- 糖尿病
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
- 尿崩症(中枢性・腎性)
おしっこの色がほとんど水のように無色透明、あるいは極端に薄い黄色が続く場合は、注意が必要です。これは「多飲多尿(たいんたにょう)」のサインかもしれません。多飲多尿とは、水を異常にたくさん飲み、その結果として尿の量が増えている状態を指します。
腎臓には、体内の水分量を調節するために尿を濃縮する働きがありますが、その機能が低下すると、薄いおしっこが大量に出るようになります。トイ・プードルやチワワなどの小型犬から柴犬のような中型犬まで、犬種を問わず注意が必要です。この状態から考えられる病気には、慢性腎臓病や糖尿病、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、尿崩症(中枢性・腎性)などがあります。
濃い黄・オレンジ色
▲オレンジ色がかった犬のおしっこの色
【考えられる病気】
- 脱水
- 黄疸(おうだん)
おしっこが明らかに濃い黄色やオレンジ色の場合、いくつかの原因が考えられます。一つは、発熱や下痢、嘔吐などによる「脱水」です。体内の水分が不足すると、尿が濃縮されて色が濃くなります。
そして、もう一つ注意したいのが、肝臓の病気や胆管の閉塞などによって引き起こされる「黄疸(おうだん)」の可能性です。黄疸になると、通常は便と一緒に排出される「ビリルビン」という黄色い色素が血液中に増加し、尿中にも排出されるため、おしっこがオレンジ色に見えることがあります。この場合、歯茎や白目の部分も黄色っぽくなっていないか確認しましょう。
赤・ピンク色
▲赤色やピンク色がかった犬のおしっこの色
【考えられる病気】
- 血尿(けつにょう)
- 尿路結石症
- 前立腺の病気(オス)
- 腎臓の損傷
- 腫瘍
- タマネギ中毒
おしっこが赤色やピンク色に見える場合、それは「血尿(けつにょう)」、つまり尿に血液が混ざっている状態です。血尿は、見た目で明らかにわかるものから、検査をしないとわからないレベルのものまで様々です。
原因としては、細菌感染による膀胱炎が最も一般的です。その他、尿路結石症(特にミニチュア・ダックスフントやシーズーなどで注意が必要)、オス犬ならば前立腺の病気、あるいは腎臓の損傷や腫瘍なども考えられます。
また、タマネギやニラなどを誤って食べた際に起こる「タマネギ中毒」でも、赤血球が破壊されてヘモグロビン尿が見られることがあります。
茶・黒っぽい色
▲茶色や黒っぽい犬のおしっこの色
【考えられる病気】
- 溶血(ようけつ)
- バベシア症
- 重度のタマネギ中毒
茶色や黒っぽいコーラのような色のおしっこは、非常に危険なサインです。これは、大量の血液が混ざっている重度の血尿や、血管の中で赤血球が破壊される「溶血(ようけつ)」によって、尿中に「ヘモグロビン」という色素が排出されている状態(ヘモグロビン尿)を示唆します。
マダニが媒介するバベシア症や、重度のタマネギ中毒などが原因として挙げられます。また、事故による筋肉の広範囲な損傷や、重度の熱中症などによって筋肉細胞が壊れ、その成分である「ミオグロビン」が尿中に排出される場合も、同様の色(ミオグロビン尿)になることがあり、いずれも緊急性の高い状態です。
白く濁っている・キラキラしている
▲白く濁った犬のおしっこの色
【考えられる病気】
- 膀胱炎
- 腎盂腎炎(じんうじんえん)
- 尿路結石症
おしっこが白く濁っている場合、細菌感染によって生じた「膿(うみ)」が混ざっている膿尿(のうにょう)が疑われます。これは膀胱炎や腎盂腎炎(じんうじんえん)のサインです。
また、尿の中に結晶や結石の成分が排出されている場合も、濁って見えたり、光に当てるとキラキラして見えたりすることがあります。これは尿路結石症の兆候であり、放置すると尿道に石が詰まっておしっこが出せなくなる「尿道閉塞」という命に関わる状態を引き起こす危険性があります。
犬のおしっこの色が異常な場合の対処法
愛犬のおしっこの色に異常を見つけたら、飼い主はどうすればよいのでしょうか。慌てず、適切に行動することが大切です。
まずは落ち着いて観察する
おしっこの色の異常に気づいたら、まずは慌てずに愛犬の他の様子も観察しましょう。元気や食欲はありますか?おしっこをする時に痛がったり、何度もトイレに行ったりしていませんか?水を飲む量や、おしっこの量に変化はありますか?
これらの情報は、動物病院での診察の際に非常に重要な手がかりとなります。一時的な色の変化で、他に症状が何もない場合もありますが、異常な色が続く、または他の症状を伴う場合は注意が必要です。
おしっこを採取して動物病院へ
色の異常に気づいたら、そのおしっこをできるだけ新鮮なうちに動物病院へ持って行くと、診断がスムーズに進みます。採取する際は、清潔なプラスチックトレイに直接受ける方法や、ペットシーツを裏返してツルツルした面におしっこをさせ、それをスポイトや清潔な醤油さしのような容器で吸い取る方法が簡単です。
地面にしたおしっこは、ゴミや細菌が混ざってしまうため検査には不向きです。採取したおしっこは、時間が経つと成分が変化してしまうため、できれば採取後数時間以内に持参するのが理想です。
迷わず動物病院を受診する
最も重要なことは、飼い主が自己判断しないことです。おしっこの色の変化は、様々な病気のサインである可能性があります。特に、赤色や茶褐色のおしっこが出た場合や、元気・食欲の低下、嘔吐といった他の症状を伴う場合は、緊急性が高いと考えられます。
たとえ愛犬が元気そうに見えても、異常な色が続くようであれば、必ず動物病院を受診し、獣医師の診察を受けてください。早期発見・早期治療が、愛犬の健康を守る鍵となります。
犬のおしっこを正常に保つコツ・自宅でできるケア方法
病気の治療は獣医師に任せるとして、日頃から愛犬のおしっこを健康に保つために、ご自宅でできるケアもあります。
新鮮な水をいつでも飲めるようにする
健康な尿を保つ基本は、十分な水分摂取です。体内の老廃物を適切に排出し、尿を適度な濃さに保つためには、新鮮な水をいつでも好きなだけ飲める環境を整えることが非常に重要です。
飲み水が入った器は常に清潔に保ち、複数の場所に設置するなどの工夫も効果的です。特にドライフードを主食にしている場合は、飲水量が不足しがちなので意識してあげましょう。
トイレ環境を清潔に保つ
不潔なトイレ環境は、犬が排尿を我慢する原因となり、膀胱内に細菌が繁殖しやすい状況を作ってしまいます。これが膀胱炎のリスクを高めることにつながります。
ペットシーツはこまめに取り替え、トイレトレーも定期的に洗浄し、常に清潔な状態を保つよう心がけましょう。愛犬がいつでも気持ちよく排尿できる環境は、泌尿器の健康維持に不可欠です。
定期的に健康診断を受ける
症状が出ていなくても、目に見えないレベルで病気が進行していることがあります。特にシニア期に入った犬は、慢性腎臓病などの泌尿器疾患のリスクが高まります。年に1〜2回の定期的な健康診断を受け、その際に尿検査を含めてもらうことをお勧めします。症状が出る前に体の変化を発見できれば、より早期の対処が可能になります。
まとめ:日頃から犬のおしっこの色を確認することが重要
愛犬のおしっこは、単なる排泄物ではありません。それは、日々の体調を映し出す「健康のバロメーター」です。毎日のお世話の中で、ほんの少し気にかけて色を確認する習慣をつけるだけで、言葉を話せない愛犬の体調変化にいち早く気づくことができます。正常な色を知り、異常な色の意味を理解しておくことが、万が一の時の迅速な対応につながり、愛犬を深刻な病気から守ることになります。
愛犬との健やかで幸せな毎日を送るために、ぜひ今日からおしっこの色チェックを始めてみてください。