犬は鮭を食べられるけど生で与えてはダメ!
犬に鮭(サーモン)を与えても問題のない食べ物です。
この「鮭」と「サーモン」は、見た目や味などもそっくりですが、実は違う魚の種類なのです。
鮭は国産の加熱して食べる天然鮭、正式には「白鮭(しろざけ)」のことを指し、一般的にお寿司などで食べられるサーモンは、「ニジマス」のことを指します。いずれにしても鮭とサーモンの栄養素に大きな違いはなく、どちらも犬が食べられる魚です。
ただし鮭は寄生虫(アニサキス)がいるため、人間でも生食できない魚です。またサーモンも犬に生食させるのは避けたほうが無難です。犬は、生の鮭やサーモンを食べることで、食中毒や消化不良を引き起こす可能性があります。
与え方や選び方によっては、犬の健康に役立つ栄養素がたっぷり詰まった食材なので、注意点をしっかりと理解して愛犬の食事にうまく取り入れましょう。
参考文献:アニサキスによる食中毒を予防しましょう|厚生労働省
鮭中毒とは?
鮭やサーモンは犬が食べてもいい魚であるとご紹介しましたが、命を脅かす可能性がある「鮭中毒」と呼ばれる中毒症の存在があります。
鮭中毒とは、ネオリケッチア・ヘルミンテカと呼ばれる微生物に感染した淡水魚を生で食べることによって、引き起こされる中毒です。
主にアメリカ西海岸を中心に感染例が報告されている中毒症であり、今のところ日本では報告がありませんが、2016年には世界中に分布する可能性があるという微生物について新たに報告がなされているため、今後日本でも注意が必要であると予測されます。
鮭中毒の原因となる菌については3種類あり、いずれも加熱や24時間以上の冷凍によって死滅させることができるとされています。
過去に犬が生の鮭を食べたことで死亡してしまった例が報告されています。与え方に注意が必要な魚である、ということはしっかり理解しておきましょう。
万が一、愛犬が生の鮭を大量に食べてしまった場合はしっかりと様子を観察し、早急にかかりつけ獣医師に相談してください。
参考文献:Discovery of new bacteria complicates problem with salmon poisoning in dogs|オレゴン州立大学
鮭に含まれる栄養素と犬への健康効果
アスタキサンチン
鮭の赤い色は、人参などと同じカロテン色素のアスタキサンチンです。
アスタキサンチンは、強い抗酸化作用を持つとして近年話題の栄養素ですが、魚の中では鮭だけがもつ色素です。
体内の活性酸素を抑えて動脈硬化を予防し、ガン予防の効果もあるといわれています。
活性酸素を除去し免疫力を高めることで犬の体が本来持っている〝自然治癒力〟を引き出してくれる素晴らしい栄養素です。
DHA,EPA
鮭には、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などの脂肪酸が豊富に含まれています。
これらの脂肪酸は血液の流れを良くする働きだけでなく、血管を若返らせる効果も期待されています。
タンパク質
鮭に含まれるタンパク質は、20種類のアミノ酸の結合により構成されています。その中には必須アミノ酸と呼ばれる栄養素が、すべてバランスよく含まれています。
犬にとっても消化吸収率がとてもよいタンパク質であることから、ドッグフードなどに取り入れられることもあります。
ビタミン
ビタミン類も豊富に含まれています。主にビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2などが豊富であり、これらは代謝の促進や胃腸や神経系の健康をサポートする効果が期待されています。
コラーゲン
鮭の皮の部分はコラーゲンが豊富です。皮のすぐ下の脂にはDHAやEPAが含まれるため皮つきのまま与えるのがおすすめです。
コラーゲンは細胞の代謝を良くしてくれるので、愛犬の老化防止にもぜひ活用したいものです。
このように、鮭、サーモンには犬の健康にも役立つ栄養素が豊富に含まれています。鮭中毒に注意すれば、鮭の栄養素が持つ効果、効能は愛犬の健康管理に取り入れたいものであると言えますね。
犬に与えてもいい鮭の量
犬に鮭を与える目安は犬の食事量の20%程度とされています。基本的には主食に少量トッピングする程度にしておきましょう。
鮭やサーモンには栄養素が豊富に含まれており、ドッグフードに利用されることもあるとはいえ、犬の主食にすることはできません。あくまでも、主食とのバランスを重視することが大切です。
また、与えすぎると消化不良を引き起こす可能性もありますので、愛犬の体の大きさや体質を考慮した上で、少量ずつ与えるようにしてください。
犬への鮭の与え方
選び方
犬に食べさせる時は、塩分が含まれていないものを選びましょう。
スーパーなどでよく販売されている「塩鮭」は塩分が多すぎるため、ムニエル用などの切り身がおすすめです。また、鮭の缶詰を利用する場合は味付けされたものや油漬は避け、水煮缶を選んでくださいね。
加熱する
犬に食べさせる時は、焼く、茹でる、蒸すなどの方法で必ずしっかりと加熱するようにしましょう。
鮭に含まれているビタミンには加熱に弱いものもあり、長時間の加熱は栄養価を下げると言われることもありますが、生焼けによる食中毒の方がよほど健康に害をきたす可能性があります。
骨を取り除く
犬に食べさせる時は、骨をしっかりと取り除きましょう。骨ごと与えてしまうと、喉や胃腸などを傷つけてしまう可能性があります。
小骨が心配な場合や鮭のあらを使用する場合は、圧力鍋を利用して骨が柔らかくなるまで煮込み汁ごと与えるのもおすすめです。
骨の処理が面倒な場合は、刺身用のサーモンを利用するといいですね。
身以外の部分
骨以外であれば犬に食べさせることができます。
皮や白子にも栄養素が豊富に含まれていますので、しっかりと加熱にして与えましょう。
鮭の加工品
人間用に加工されたおつまみやおやつは与えないようにしましょう。
人間用の鮭フレークや鮭とば、鮭ジャーキーなどには塩分が多く含まれているため、犬には不向きです。 犬におやつとして与えたい場合は、手作りするか、犬用のおやつを用いるようにしてください。
犬に鮭を与える際の注意点
アレルギー
人間同様、犬にも食べ物アレルギーがあります。初めて犬に鮭やサーモンを与える時は、少量ずつ様子を見ながら与えるようにしましょう。
鮭の骨
犬は、食べ物を骨ごと食べるイメージが強いことから、魚の小骨くらい大丈夫だろうと考えられがちですが、魚の骨が喉や内蔵に刺さってしまうことで健康に害をきたす可能性もあります。
魚の骨が刺さった箇所によっては、外科手術が必要になったり、命に危険が及んだりする場合もあります。
もし鮭を骨ごと食べてしまった場合は、早急に動物病院を受診してください。
塩分
犬に与える時は、くれぐれも過度な味付けはしないよう注意しましょう。
特に人間用に加工された鮭には塩分が多く含まれているため、かえって健康に害をきたす可能性もあります。味付けしないでシンプルに茹でたり、蒸したりして食べさせるようにしましょう。
鮭を使った犬用手作りごはんのレシピ
簡単!鮭のホイル包み焼き
鮭を使ったホイル焼きのレシピです。とても美味しそうなので、味付けさえ別にすれば人間用と兼用して作ることもできそうです!
手作りご飯を作ったことがない場合でも、気軽に挑戦できそうですよ!
旬の鮭とカブの具沢山スープ
鮭を使った栄養たっぷりのスープレシピです。
スープごと食べることで、栄養素も水分もしっかり補給できそうですね。調理方法も簡単なのでおすすめです!
鮭やサーモンを使った犬用手作りレシピは非常に豊富です。
野菜などと茹でるだけでも嗜好性、栄養価共に高い手作りごはんが作れるので是非挑戦してみてくださいね。
犬に鮭を与える際の豆知識
鮭の種類と栄養素
鮭の種類カラフトマス、シロサケ(秋鮭)、紅サケ、マスノスケ(キングサーモン)、銀サケ、サクラマス、ニジマス、アトランティックサーモン、など、私たちが日頃食材として目にしている鮭の種類は非常に豊富です。
その種類によって含まれる栄養素の量に若干の差があるので、愛犬の体質によって使い分けることができるかもしれませんね。
鮭の種類と栄養素の特徴
肥満気味の犬には、高たんぱく低カロリーのシロサケや紅鮭
まず、エネルギーとタンパク質の含有量についてですが、一般的に「秋鮭」として食卓に上ることが多いシロサケや紅鮭に比べ、アトランティックサーモンのカロリーはかなり高いです。
タンパク質は、カロリーの低い紅鮭やシロサケのほうが少し多いくらいです。肥満気味の犬や運動量の多くない犬などは、高たんぱく低カロリーのシロサケや紅鮭を選ぶとよさそうですね。
EPA、DHAは、血栓予防や脳の健康と発達を促す
EPA、DHAは脂肪酸ですから、エネルギー量の多い種類に多く含まれているようです。EPAはアトランティックサーモンが一番多く、ギンサケ、マスノスケと続きます。しかし、DHAは海面養殖のニジマスが一番が豊富であり、アトランティックサーモン、銀サケ、マスノスケと続きます。
血栓の予防効果や血中コレステロールの低下などはこれらの脂肪酸共通の効能ですが、DHA独自の効能として、脳の健康と発達を促すことが挙げられます。
脳の神経細胞の膜に入って脳内の情報をスムーズにする、脳のアンテナのような部分の成長を助けます。つまり脳の中にDHAがたくさんあると、脳の働きが良くなるということです。
DHAは母乳にもふくまれることから子どもの脳の発達にも欠かせないもので、近年、老人生痴呆症予防や、網膜反射機能の向上という効果もわかってきています。
アスタキサンチンは成長期から老犬まで有効的
アスタキサンチンの含有量については紅鮭がダントツ1位という結果になりました。 アスタキサンチンは悪玉コレステロールの原因となるLDLコレステロールの酸化を防ぐことができますが、これは活性酸素を消去するという働きの効果、同時に免疫力を正常に保つために大変有効なものです。
つまり成長期の犬から、老犬の痴呆予防まで、すべてのステージに活用できるお助け食材といえそうです。
鮭にはビタミン類も豊富
最後にビタミン類に関してですが、注目すべきはマスノスケ(キングサーモン)のビタミンA含有量です。
胃腸や気管支などの粘膜や皮膚の状態を整えるビタミンなので、風邪予防、視力低下、被毛の健康維持など犬にも効果が期待できます。
ビタミンB2はシロサケが一番ですが、それほど差はありません。ホルモンの正常化を守り、欠乏すると、口角炎や口唇炎になるといわれています。
ビタミンB12は紅鮭をはじめ、若干差はありますが鮭には多く含まれています。欠乏すると悪性の貧血になるといわれ、鮭にはそれを予防する効果があります。
また、骨のビタミンと呼ばれるビタミンDも鮭は豊富で、特に紅鮭、シロサケとおなじみの種類に多く、カルシウムの吸収に役立つため、犬のごはんにも最適です。
鮭(サーモン)入りおすすめのドッグフード
ブルー ウィルダネス アダルト・サーモン
こちらは、BLUE ウィルダネスラインのアダルト用サーモン味です。
犬の祖先とされるオオカミの食事をベースに設計されており、良質なタンパク質が豊富に含まれたグレインフリー(穀物不使用)のナチュラルフードです。
ニュートロジャパン ワイルドレシピ超小~小型成犬用サーモン
ナチュラルチョイスで有名なニュートロジャパンが販売する「ワイルドレシピ」のラインナップにはサーモン味があります。
「祖先が食べていた食事を再現」をキャッチコピーに、肉食よりの雑食である犬にあった良質なフード設計が徹底されており、高タンパク、グレインフリー(穀物不使用)となっています。
ワイルドレシピサーモンは、ペットショップやホームセンターなどでも販売されていますので、是非試してみてくださいね。
上記のフード以外にも、海外製のプレミアムドッグフードには、鮭やサーモンを使用したものが多く販売されています。
日頃から鮭やサーモンを好んで食べる愛犬の場合、試してみるといいかもしれませんね。
まとめ
鮭、サーモンは成長期の犬から老犬まで、様々な効能を期待できる素晴らしいお魚だということがわかりました。
鮭は比較的価格も安価で、手に入り易いので愛犬の手作りご飯に腕をふるってみてはいかがですか?
ドッグフードの素材やおやつ、栄養補給のためのサーモンオイルなど、犬のために加工された商品もたくさん販売されています。
犬用に加工された鮭の中骨せんべいや、歯ごたえを重視したトバ(皮付きのまま細く切り、干したもの)などのおやつもおすすめですよ。