犬は魚の骨を食べてはいけない!
犬は、食べ物を細かく噛み砕くことが苦手です。骨から肉をはぎ取ったり、太い骨をゴリゴリと噛み壊したりすることはできます。ですが、魚の骨から身をはぎ取り小さな小骨を噛み砕いて飲み込むことはありません。
焼き魚を丸ごと与えてしまうと、飲み込める大きさに噛みちぎりながら食べていますが、基本的に犬は丸呑みをしてしまいます。
犬の大きさにもよりますが、丸呑みした魚の小骨が喉や食道、胃に刺さってしまったら自力で抜くことは困難で最悪の場合化膿したり、貫通してしまったりします。魚の骨はとても危険です。
犬の体内に骨が刺さってしまうと臓器を傷つけてしまう
犬が魚の骨を飲み込んで喉を通過し、食道を通り、胃に送られていく途中に、魚の骨が臓器に刺さってしまう危険性があります。
他の食べ物と同時に、魚の骨が胃にたどり着き、体内に刺さることなく無事に消化されれば心配はありません。ですが、喉に魚の骨が刺さってしまうと、犬はヨダレを飲み込むだけでも痛みがあります。
飲み込んだ骨が邪魔をして、食べ物が食道内につまったり気道が圧迫され呼吸障害を引き起こしたりする恐れもあります。
魚の骨が犬の食道に突き刺さると、出血はもちろんですが、突き刺さった場所から炎症が広がります。その骨が食道を貫通して胸腔内に入ってしまう可能性もあります。
痛みや、発熱、突然の息苦しさに、犬がパニック状態になってしまうとさらに呼吸が荒くなり、呼吸困難状態に陥る危険もあります。
チワワやトイプードルのような小型犬種においては、全ての臓器、器官が細く、小さな魚の骨であっても簡単に内臓を傷つけてしまいとても危険です。
魚の骨に注意したい魚
人間の喉や内臓に刺さった実例から、犬にとって注意が必要な魚をご紹介します。
- 1位:鯛(タイ)大きな骨も小骨も多い。小さな骨も薄い骨もとても固い
- 2位:鯵(アジ)小骨が多い。鋭い骨が刺さりやすい
- 3位:鯖(サバ)大きく固い骨も、固い小骨も多い
- 4位:秋刀魚(サンマ)細くて鋭い小骨がとても多い
- 5位:鰯(イワシ)細かく小さな骨がとても多い
犬が魚の骨などの誤飲や異物の飲みがおこるタイミングとして、最も多いのは「飼い主さんの食事の前後」です。お皿の上の食べ残しや、ごみ箱に捨てたはずの魚の骨を飲み込んだというケースがとても多いです。
人間が不注意で骨を飲み込んでしまうことが多い魚は、一緒に暮らしている犬にとっても誤飲が多い魚です。どのような魚であっても、「小さな骨だから飲み込んでも大丈夫だろう」というのは間違いです。
特に人間の食べ残した骨だけの状態の丸呑みや焼き魚、煮魚の背骨、ヒレ、尾などの頑丈で、細かい骨が多い部位の丸呑みは、犬にとても危険で注意が必要です。
犬の体内に魚の骨が刺さったときの症状
犬の体内に魚の骨が刺さってしまった時、どのような行動をみせるのか?どんな症状が現れるかを詳しくご紹介します。
喉に魚の骨が刺さった場合
- 「カッ!カッ!」と、短く咳をして嗚咽し、吐き出そうとする
- 多量のヨダレ
- ソワソワ、痛みで鳴く
- 喉を掻きむしる
- 呼吸の乱れ、または呼吸困難
犬の喉に魚の骨が刺さってすぐの時には、痛みと違和感から何度も吐き出そうとします。刺さった魚の骨から痛みが強いと、ヨダレが大量に垂れてきます。
犬の喉の奥に刺さった魚の骨をそのまま放置していると、感染症による「食欲不振」、「激痛」、「発熱」、「嘔吐」などがみられるようになります。
食道に魚の骨が刺さった場合
- 激痛で鳴き続ける
- 鼻水やヨダレが止まらなくなる
- 呼吸困難
- 発熱
- 感染症
- 吐血
- 震え
犬の食道に魚の骨が刺さると激しい痛みがあります。食道に刺さった骨から細菌感染を引き起こしてしまうと、細菌が犬の血液中に入り込んで、敗血症を発症する危険性もあります。
胃や十二指腸に魚の骨が刺さった場合
- 激しい腹痛
- 嘔吐
- 吐血
- 高熱
犬の胃壁に刺さる、刺さった骨が内臓を突き抜けると、血管などを傷つけてしまう恐れもあります。犬は激痛や発熱で衰弱し、虚脱してしまうこともあります。
魚の骨が体内に刺さった時の共通点
犬は体内に入り込んだ異物を吐き出そうとしたり、痛みを訴えて鳴いたりします。特に「喉」、「食道」、「胃」、「腸」は異物が入り込むと、何とかして骨を吐き出そうとします。
ですが刺さった魚の骨は、他の食べ物を吐き出せても、一緒に吐き出ないことも多いので、何度も何度も吐き出そうとしても出ないという苦しい状態が続いてしまいます。
魚の骨を誤飲したときに疑わしい症状が見られたら
犬の喉を見ても魚の骨が刺さっていることが確認できないけれど、明らかに誤飲後の様子がおかしい、と感じたらすぐに病院で検査を受けてください。骨がある程度大きければ、レントゲンで見つかる可能性もあります。
魚の骨が犬の体内に入り込んで、どこかに刺さっているかもしれないときの処置は自宅では行えません。
また、稀に痛みに強く、我慢強い犬は、魚の骨が体内のどこかに刺さっていても、発熱以外の症状を我慢してしまうこともあります。人間であればとても耐えられないような痛みでも、じっと耐えていることもあります。
万が一、犬が魚を丸呑みしてしまったり、犬が魚の骨を誤飲してしまったりしたら、無症状でもできるだけ早く病院で検査を受けましょう。魚の骨の誤飲も早期発見であれば、体への負担も最小限におさえられます。
犬の体内に魚の骨が刺さったときの対処法
「小骨だから大丈夫」、「放っておけば自然と取れるだろう」と簡易に捉えられがちな魚の骨ですが、正しい対処をしなければ、犬に重篤な全身症状を引き起こす危険性があります。
犬の体内に刺さってしまった魚の骨は、強制的に体内から取り除き、傷ついてしまった臓器の治療、感染症の治療をしなければ完治しません。犬に魚の骨が刺さるケースによっては、大きな手術が必要になることもあります。
魚の骨を飲み込んだすぐにできる応急処置
まずは、犬の口を開いてライトを照らし、喉に魚の骨が刺さっていないか目視で確認しましょう。
※刺さっている魚の骨は絶対に指で取ろうとしないでください。さらに深く刺さり、見失ったり、症状を悪化させる恐れがあります。また、犬が嫌がり咬まれる可能性もあります。
ピンセットや毛抜きで、犬に刺さっている魚の骨を左右に動かさず、まっすぐ引き抜きます。できれば2人で対処します。
1人が犬の体をしっかり保定し、もう1人が骨を引き抜きます。口を触られることを極端に嫌がる犬などは、絶対に無理に口をこじ開けて骨を取り出そうとしないでください。
この応急処置を行う場合
- 犬が口を開けたまま、静かにしていられる
- ピンセットや毛抜きでつまめる状態で骨が刺さっている
- はっきりと刺さっている骨の位置が確認できる
- 刺さっている骨が1本だけだと確認できる
このような条件がそろっている場合にだけ応急処置が行えます。
犬の喉に魚の骨が刺さっていることが確認できたら、水や食べ物は与えずにできるだけ安静にして、すぐに獣医師による処置をしてもらいましょう。
また、魚の骨が綺麗に抜けた場合でも見えない部分に深い傷があると化膿することがありますので、必ず獣医師の診察をうけましょう。
魚の骨が喉に刺さったとき絶対にしてはいけないこと
「犬の喉に魚の骨が刺さっているけど取れない」、「犬の喉に魚の骨が刺さっているかもしれない」、このような時に絶対に食べ物を与えないでください。
温かいご飯を、飲み込むと刺さった魚の骨が取れる、というのは間違った情報です。また、掃除機などで吸い出そうとする対処方法も、結果的に取れず犬にはとても危険な行為なのでやめましょう。
犬に栄養補給として魚の骨を与えたい場合
魚の骨にはカルシウムをはじめビタミン、タンパク質などさまざまな栄養素が含まれています。愛犬の骨の発育や皮膚の生成が期待できるため、できるだけ効果的に摂取したい食材です。
魚の骨に含まれる代表的な栄養素は以下の8つです。
- カルシウム:骨の発育や強化、神経刺激の働きを整える効果
- グルコサミン:関節の軟骨を形成、柔軟性向上の効果
- コンドロイチン:腸の炎症を抑える、皮膚の弾力性向上の効果
- コラーゲン:関節を保護する作用、滑らかな動きの効果
- タウリン:動脈硬化の予防の効果
- ビタミン:貧血の予防、骨の強化の効果
- マグネシウム:肥満・高血圧予防の効果
- タンパク質:皮膚や被毛の生成
いくら栄養素が豊富だからと言っても魚の骨をそのまま愛犬に与えるのは危険です。安全に毎日の食事にプラスして与えるには、コーヒーミルやグラインダーで細かく砕き、粉末状にするのがおすすめです。
また圧力鍋があれば、魚の骨を入れておくだけでほろほろとなりペースト状にできます。どちらも愛犬に魚の骨を与えるための安全な方法なので、ぜひ試してみてください。
まとめ
意外と多い、犬の魚の骨を誤飲することは、とても危険です。喉に刺さってしまったけれど病院ですぐに処置して助かったという犬が多いのですが、食道や胃、腸にまで魚の骨が入り込み刺さってしまったケースもあります。
魚の骨が内臓を突き刺してしまったら、開腹手術による処置が必要になり犬の体への負担はとても大きなものです。食卓に並ぶ焼き魚を、ほんの一箸、与えただけでも犬は骨の誤飲につながってしまうこともあります。
犬に魚の骨を誤飲させないよう十分注意しましょう。