犬にスルメを与えてはいけない
動物病院で診る患者さん、胃腸トラブルで来院するケースで多いのが乾物を食べさせている場合です。「隣で欲しそうにしていると、ついあげてしまう」そんな理由で人間が食べているものを愛犬に与える方もいると思います。
犬と人間とでは、身体のサイズが違うため人間では大丈夫な量でも犬には「過剰摂取」になります。また、犬には分解できない物質・酵素などが含まれていると「中毒症状」を引き起こすことがあります。
さらに、人間が食べるものにはさまざまな原材料や添加物が含まれており、これが「アレルギー」を引き起こす原因にもなります。こういったリスクを考えると、犬に人間が食べているものを与えるのは注意が必要です。
チョコレートや玉ねぎなど注意が必要な食べ物は、意外とたくさんあります。その中でも注意しないといけないのが、乾物です。
乾物は天日干しされることで栄養素や塩分が凝縮しているため、見た目の量よりも犬の胃腸にダメージを大きく与えがちです。今回は乾物のなかでも「スルメ」に関して、与えない方が良い理由を詳しくわかりやすく説明します。
犬のお腹の中で膨らむスルメの危険性について
スルメは、イカを干して作る乾物です。イカの旨味成分が凝縮し、人間が嗅いでも美味しそうな香りがしますよね。
嗅覚の鋭いワンちゃんが欲しがってしまうのも当然のことかもしれません。
ですが、軽い気持ちで与えたスルメで、大事件が起きてしまうことも多いんですよ。スルメの引き起こすトラブルは大きく分けて3つです。
胃腸の閉塞
スルメは乾物なので、飲み込んだ後で胃腸で消化液を吸って大きく膨らみます。人間と違って、犬の歯はすり潰すように噛むことができませんので、ある程度飲み込める大きさに噛みちぎったら、あとは丸飲みしてしまいます。
すると胃袋のなかでどんどんスルメは膨らんでいきます。ところが、胃の先にある十二指腸は意外に細く、ふやけて膨らんだスルメは通過できないこともあるのです。
もちろん大きく膨らんだスルメは、吐き戻すこともできなくなってしまいます。
こうなると、愛犬は食欲を失い、「嘔吐するものの胃液しかでない」、という状況になってしまいます。最悪、胃腸の閉塞により、手術を行わなければならないケースもあることを知っておきましょう。
スルメだけでなく、乾物類・犬用ガムなどふやけてふくらむ食べ物は危険がいっぱいなんですよ。
塩分の過剰摂取
スルメは海産物ですよね。生きている時のイカは、海の塩分濃度とほぼ同じ塩分濃度の体をしています。
そのイカを干すことで、塩分濃度はアップします。事実、スルメを噛むと、塩をかけていないのに程よい塩味を感じませんか?
でも、人間にとって程よい塩味は犬にとっては危険な塩分量です。
オオカミとして生きていた時代から、動物の生肉を食べて生きていた犬達にとって、スルメの塩分は塩分濃度が濃すぎるということですね。
塩分を取りすぎることで、心臓と腎臓に負担をかけ命を縮める可能性もあります。「自分が食べているものと同じものをあげたい」という軽い気持ちであっても、愛犬の体にとっては毒に等しいと理解しておきましょう。
下痢・嘔吐
生・乾物に限らずイカは消化に時間がかかる食べ物です。人間でも食べ過ぎると、お腹を壊すほどです。そのため犬が大量にスルメを食べたり、大きいまま食べると胃や腸に負担をかけ消化不良を起こします。
さらに、さきほど説明したようにスルメは胃や腸の水分を吸収し膨らみます。この「消化不良」と「膨張」が重なり、嘔吐や下痢といった症状を引き起こします。嘔吐や下痢が続くと体力も落ち、普段の食事を摂ることも難しくなります。身体が回復するのにも時間がかかり、ひどい場合は入院も必要になります。
飼い主さん自ら進んでスルメを与えるというのは、愛犬にとってリスクの方が大きいのでやめた方がいいでしょう。
犬がスルメを食べた時の対処法
愛犬がスルメを食べたら無理に吐き出させたりせず、まず体調の変化について確認してください。食べた量が少量で特に症状がなければ、様子を見守ってください。
もし愛犬が食欲がなく苦しそうにしていたり、嘔吐や下痢をしていれば、すぐにかかりつけの動物病院に連れて行ってください。その際は「いつ食べたか」「どれくらいの量を食べたか」がわかれば、メモに控えておきましょう。
またスルメ以外の添加物などが含まれていることもあるため、パッケージも持参してください。可能なら吐しゃ物や便なども捨てずに持っていくと、診察時に役立つこともあります。動物病院に行く前に、獣医師に確認してください。
犬にスルメをやめさせる方法
以上のように、スルメは与えない方が良い食品であることはお分かりいただけましたか?
動物病院でご相談を受けるケースで、一番多いのが「酔っ払った家族が面白がって与える」という状況のようです。
スルメをつまみに一杯・・・で気持ちよくなると、判断力が低下しがちになります。
さらに、スルメの旨みの香りに釣られて嬉しそうに見つめられたら、あげたくなる気持ちはわからないでもありませんよね。
でも、「それは愛犬にとって毒に等しい」ということを忘れないでください。普通、犬はスルメを食べたことがありません。それがどんな害をもたらすかも理解することができません。
今は元気だし問題ないように見えても、与え続けることで体へのダメージは蓄積されていきます。継続して愛犬にスルメを与えてしまっている場合でも、なるべく早めにストップすることをおすすめします。
そこで、「脱スルメ」の秘訣も書いておきますね。
スルメから少しづつ他のものに変える
スルメの旨みは強烈なので、いきなりスルメをやめるのは難しいかもしれません。
ですから、少しずつスルメを減らして犬用のおやつにシフトチェンジしていきましょう。
まずは、愛犬にスルメを与える場合はこまかく裂いて短くカットしてください。できれば茹でて塩分を抜いて、もどしておくと良いでしょう。
人間がおつまみにスルメを食べている時に、愛犬が欲しがったらスルメと一緒に犬用のおやつ(ジャーキーなどが類似した風味で喜びやすい)をあげましょう。
初めはスルメ>犬のおやつですが、少しずつスルメ<犬のおやつに変えていきます。
難しいと思われるかもしれませんが、ワンちゃんたちは「飼い主さんから美味しいものをもらえる」楽しみが一番うれしいのです。
もらえるのがスルメでも、おやつでも喜んでくれると思います。
大事なのは愛犬のしつけよりも人間の危険への理解
食べてはいけないものを食べているワンちゃんたち。でもよく考えれば、犬が自分でスルメを戸棚から引っ張り出してたべているわけではありませんよね。
それは人間が与えているのだ、ということを理解しましょう。うちの愛犬はスルメを食べている=うちの家族がスルメを与えている、ということなんです。
ですから、スルメをやめようとおもったら家族のみなさんでしっかり話し合いをしてください。一人でも納得できていないと、脱スルメはうまくいきません。
「愛犬の体のために必要であること」「スルメを食べることで病院にかかることもあること」をしっかり全員で理解すればきっと大丈夫です。
まとめ
愛犬を喜ばせるおやつは、スルメでなくてもいいと思います。
犬は、それほど味覚の優れた生き物ではありません。犬の嗅覚は、タンパク質や脂肪の旨みを喜ぶようにできています。
犬のおやつにはいろいろなものがあり、犬用ジャーキーやゆでた鶏肉などは香りも高く愛犬が喜ぶオヤツになります。
飼い主さんはスルメで一杯、愛犬はおやつでハッピーというのが望ましい一家団欒だということですね。
幸せで長くともに過ごせるように、楽しみながら頑張っていきましょう。
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ユーザーのコメント
40代 女性 Haru
帰宅したら松前漬け用スルメが20gほど入っていた袋が引き裂かれ、空になって落ちていたのです。体重、4キロと5キロのどちらがどれだけ食べたかも分らない。
ハラハラしながら様子を見守ったところ、翌日、それぞれのウンチの中に未消化のスルメが交じって排出されました。塩分も心配でしたが、腎機能に悪影響もなく元気そのもので現在に至っています。
これはラッキーだっただけ。おなかの中でふくれて消化管に詰まったりしたら、急性腎不全にでもなったら! それ以来、スルメ以外の乾物も猫が開けられない缶にしっかりしまうようにしました。
まさかまさかの伏兵!猫と同居のご家庭、どうぞ我が家と同じ失敗をしないようにお気をつけ下さい!
30代 女性 KEI
また、犬の脳の匂いに関する部分が人の40倍もあるというのにはビックリしました。そんな能力を実際に使って様々な探知犬が活躍しているというのも納得でした。
30代 女性 チョコママ
お盆や、お正月、みんなが集まる場所など、誰が犬に何かをあげていてもわからない時がありますよね。
酔っぱらった大人以外にも、まだ小さい子どもも間違えて与えてしまうかもしれません。
愛犬の体のためにも、それだけはきちんと守ってあげなければと思いました。
女性 sarang
お酒のおつまみとして食べていたスルメを与えてしまうケースが多いとのことですが、日本酒を飲んでいて誤って犬が飲んでしまい亡くなってしまった芸能人のブログも注目されましたよね。
飼い主が何か食べたり飲んだりしていると、犬は欲しそうに甘えてきたりしますが、本当に愛犬のことを大切に思っているのであれば決して与えてはいけないですよね。
私はついつい人間の食べ物を与えてしまう飼い主さんの気持ちが全く理解できません。
愛犬の食事や健康を管理できない飼い主さんはご自分のカラダの健康も管理できていないのではないかな?なんて思ってしまいます。
「犬のしつけ」が問題になることもありますが、犬を飼う前に「飼い主のしつけ」「飼い主のための犬と暮らすためのトレーニング」というのがあっても良いのではないかといつも思います。
飼い主の不注意で亡くなってしまう子や処分されてしまう子のニュースを見ると本当に心が痛いです。
女性 patata
女性 ゴン吉
乾物が水分を含むと膨らんでしまうのは想像に難くありませんが、それよりも硬い乾物の先などで喉などを傷つけてしまわないかの方が心配です。
もし丸飲みをしてしまったら、きっとスルメは長いままなので喉でつかえてそのうち水分を含み窒息してしまったら、と考えだすと危険なことしか出てきません。
どういうわけか、うちの愛犬2頭は海のものが苦手なので、今のところ人間のつまみの中で欲しがるものはチータラくらいです。スルメは欲しがらないので安心していますが、うっかり置き忘れる等ないようにしたいと思います。
40代 男性 匿名
50代以上 女性 てとめる
20代 女性 ゆず