なぜ避妊や去勢手術を行うのか?
ワンちゃんが、避妊や去勢手術を行う目的は、不要な繁殖を避けることや行動的な問題(男の子とならマーキング、女の子なら発情後の想像妊娠など)を抑えることといったものの他に、未避妊のメスや未去勢のオスに発生の多い病気の発生率を低下させることも含まれています。
しかし、その一方では、避妊や去勢手術を行うと、肥満になりやすいというようなデメリットも存在し、特に女の子では尿失禁がしばしばみられます。さらに、ここ最近の話題として、「避妊、去勢をすると、骨肉腫になりやすい」と言われ、病気の発生率を増加させてしまうとされています。
インターネットでもしばしばこの話題を見かけますが、病院にいらっしゃる飼い主様の中には、「えっ?避妊や去勢でがんになるの?うちはもう手術しちゃったよ・・・」とご心配なさる方もいらっしゃいますので、今回は、この話題について少し解説させていただきます。
避妊や去勢で骨肉腫になりやすい
この根拠は「Endogenous Gonadal Hormon Exposure and Bone Sarcoma Risk」という論文で導かれた結論です。この論文を、超ざっくりと要約すると、「北米のロットワイラーを統計学的に調査したら、避妊、去勢したロットワイラーの方が骨肉腫になりやすいことがわかった」と書かれています。
ですので、統計学的には上記の情報は事実のようです。しかも、人間では、肥満や食生活、生活環境やストレス、さらには遺伝子などが、がんの発生と関わっていることが知られていますが、この論文ではきちんとそういった要因も考慮した上で結論付けています。ですので、「ワンちゃんが避妊、去勢をすると骨肉腫になりやすい」という情報はかなり信憑性があるように思われます。
しかし、それでは避妊や去勢はしない方が良いのでしょうか?いやいや、それはあまりに結論を急ぎすぎています。
まとめ
骨肉腫は、たしかに大型犬や超大型犬ではその他の犬よりも発生が多いことが知られていますし、ロットワイラーも骨肉腫の発生が多い犬種として知られています(それが上記の論文でロットワイラーを用いた理由でもあるのですが)。
しかし、避妊や去勢で防げるその他の病気と比べれば、決して発生率が高いわけではありません(正確なデータはありませんが)。また日本で多い小型犬では、さらに発生が少ないと考えられています。
つまり、骨肉腫のリスクを考えて、避妊や去勢手術を行わないのは、交通事故にあうリスクがあるから、一切道路は歩かない、と言っているようなものです。
逆に避妊や去勢をすることで得られるメリット(繁殖の抑制、マーキングや発情行動の抑制、男の子なら前立腺炎や会陰ヘルニアの発生率が下がり、女の子なら乳腺腫瘍の発生率が下がりますし、子宮蓄膿症にかかるリスクが無くなります)も、きちんと比較した上で判断をしていただきたいのです。
これはあくまで私個人の経験ですが、ここ最近では年間約5000頭のワンちゃんやネコちゃんを診させていただいていますが、骨肉腫のペットはここ数年で一頭しか見ていません。
一方、会陰ヘルニアや前立腺、乳腺腫瘍といった病気は、毎月のように診察しています。ですので、個人的な経験からは、やはりその発生率の差から、避妊や去勢手術をお勧めしたいと考えています。
この記事が、避妊、去勢を考えていらっしゃる飼い主様のご参考になれば幸いです。
ユーザーのコメント
40代 男性 ぷぅぷぅ
この子は生後9〜10ヶ月頃に去勢しました。
つい最近まで躾は勿論のこと 疾患に関しても去勢をする事はメリットであると信じて疑いませんでした。
ですが、今年新たにセントバーナードの仔犬を迎え入れ散歩デビューした際に 前犬の友達の飼い主さんから「若いうちに去勢すると骨肉腫のリスクが増えるらしい」と聞き、此処に辿り着きました。
関連性は未だ定かではありませんが、少なくとも私の飼っていた子は早くに去勢し、若い年齢で骨肉腫になっています。
元々セントバーナードは短命&骨肉腫になりやすい犬種なので、疾患予防の為の去勢はあまり意味が無いのかもしれません。(それ以上に骨肉腫や胃捻転のリスクの方が高いので)
この話を聞くまでは今の子も去勢を考えていましたが、現在は迷っています。
40代 女性 大型ワン好き
というのもうちの子は8頭兄妹でよくお里の兄妹や血縁関係にあるワンちゃん達で集まるのですが、去勢した子は一発で分かります。
骨格や毛が全く違うからです。
2歳未満で手術した子は特に顕著で、まるで別犬種のように華奢で総じて関節が弱いのです。
少なくとも超大型犬の男の子に関しては躾に自信があれば別段必要なものではないかと。
躾が出来ないことで有名なアメリカでは去勢するのが多数派ですが、ペット先進国の多いヨーロッパではほとんどが去勢しません。
結局のところメリットとして一番に来るのはコントロールのしやすさと経済の流れでしょう。
先進国からワンちゃんを輸入しようとすると去勢手術をしないことはかなりの確率で約束させられますよ
50代以上 女性 匿名
避妊しません。
避妊した方がいいとメリットが良くかかれていますが、避妊した子は皮膚病や太るなどいろいろ出てきているようです。
正常な臓器が無くなる、特に生殖器はホルモンのバランスが崩れるから骨も皮膚も弱くなるのだと思います。
性格が穏やかになると書いてあったりしますが、穏やかになるのではなく元気がなくなるのではと私は思っています。
確かにいろいろ面倒はありますが、人間にもあることです。
うちは今生理中ですか、ちっとも大変ではありません。
40代 男性 チワワの新米パパ
性同一性障害でもない人に去勢手術を行う…今話題の『望んでいないのに不妊手術をされた、旧優生保護法の被害者の方々』と同じではないでしょうか?
マーキング・マウンティングが無くなる・減る → 飼う側(人間)の都合100%のメリット
生殖器関連の病気にかからなくなる → 無くなるのだから、当たり前。貴方は自分自身や自分の息子に精巣腫瘍予防で去勢手術をするのでしょうか?
大人しくなる・無駄吠えしにくくなる → 言葉は凄く悪いですけど、オスなら手術で強制的に『オ○マ』にしてしまうようなものです。もし犬が人間と喋れたら、元気いっぱいだったオスの犬が女性っぽい喋り方し始めても、違和感無く愛情を注げるでしょうか?
極論を言ってしまえば、去勢手術をして少しでも手間がかからないようにしなければ犬を飼えないような人は、最初から飼わない方が良いんじゃないかと思います。
獣医師さん・ペットショップの店員さんに、最近『去勢手術するのが当たり前』の考え方で、しないでいると『何故しないの?早くしましょう!』とやたら勧めてくる方が増えて来ているのには、心底ウンザリです。
先程述べたように、『人間である貴方自身も、去勢手術を受けているんですよね、当然。』と聞き返したいです。
女性 匿名
今、関節疾患や、血管肉腫、リンパ肉腫、肥満細胞腫、骨肉腫などの癌、心臓の病気などが、今、身近にもずいぶん増えているようにと感じます。生殖器の癌は、発生しても、治療ができる場合も多いですが、血管肉腫、肥満細胞腫などは非常に悪性度が高く、治療の甲斐もなく亡くなってしまうことの方が多いようです。そのような子の死因を、「癌」ではなく「避妊去勢手術」とした場合、伸ばすと言われている寿命すら、逆に縮んでいるのではないかと疑問です。なぜなら、今、犬の死因の第一位が「ガン」だとされ、「避妊去勢手術」とはされていないからです。さまざまな論文が、すでに、伝統的な手法(避妊去勢)について警鐘を鳴らしているようです。
50代以上 男性 匿名
暑さなどの環境からストレスに陥り発症、ドッグフードの科学薬品類の摂取による体内毒物の滞留から発症、などがありそうですがその他に避妊手術から体内のバランスが変化して発症というのが考えられるそうです、特に血管腫が考えられるとの話を聞きましたが延命のために受けた手術により早死にさせてしまったのでしょうか。
50代以上 女性 匿名
人生の経験についてのことなら、やらない後悔よりやって後悔 と思いますが、健康体にメスを入れる 健康上の予防のために というのは、うーーん??? 自分に当てはめてみても、なんとなくではあるが、雌なら効果明確のような気がするが、雄の場合どうなんだろ?
で、人と犬、同じ雌同士としても、まだまだ発育盛りて時にするのはどうなんだろ?発育しきって、今からは現状キープていう段階ならまだわかるんだけど。それと、人なら理屈をわかって手術に臨めるけど、わんちゃんはどうなんだろ?
結局、犬の利益だけからみた正確なデーターが出ない限り、なにがいいかわるいかなんて、本当の議論も出来ない気がします。
50代以上 女性 匿名