犬の避妊手術(去勢手術)の補助金事業がスタートした背景
犬や猫の不妊去勢手術については賛否両論ありますが、この事業は犬や猫の不妊や去勢手術を推奨する事業です。
なぜ推奨するような事業がスタートしたのか、それは殺処分される犬や猫が後を絶たないからです。
環境省の発表によると、平成26年度の犬の殺処分頭数は21,593頭、猫の殺処分頭数は79,745頭で合計101,338頭にのぼります。平成6年以降、殺処分頭数は年々減っていますが、未だに毎年10万頭以上の命が失われています。
犬の殺処分頭数を大きく上回る猫は、その半数以上が子猫と発表されています。
小さな命が毎年5万頭近く殺処分されているのは本当に悲しいことです。
また、野良猫による糞尿被害や、野良猫にエサを与えることによる地域トラブルも社会的な問題となっています。
不妊去勢手術に対しては賛否両論ありますが「動物の愛護及び管理に関する法律」や「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」の中で、適正に飼えない場合は繁殖できないようにする努力義務が飼い主に課されています。
社会的な問題や法律等の背景があり、動物愛護の観点から問題解決のひとつの手段として不妊去勢手術が推奨され、その手術費用を助成する、という事業が始まっています。
事業の具体的な内容は?
基本的に地域猫が対象ですが、飼い犬や飼い猫の手術を受ける人も受けられます。
メスの不妊手術の場合10,000円、オスの去勢手術は5,000円の助成金が支払われます。
申請方法は、まず、飼い犬や猫の不妊去勢手術を動物病院で行い、手術後一か月以内に指定された書類を日本動物愛護協会へ郵送します。
FAXやE-mailでは申請できませんので注意が必要です。
協会が書類の審査をし、助成金交付が決まったら、交付額が申請者にハガキで知らされます。
申請できる頭数は年度あたり各世帯犬1頭、猫1頭に限られていますが、地域猫活動をされている方は、5頭まで可能とのことです。
ただし事業の予算に限りがあり、予算がなくなり次第申請受付をストップするとのことなので、申請前に確認した方がよさそうですね。
犬の避妊手術(去勢手術)の補助金事業 実施地域について
2016年1月に始まった公益財団法人日本動物愛護協会の事業以外にも、同じような助成事業を行っている自治体や団体があります。
幾つか例を挙げてみましょう(平成28年1月現在、各自治体や団体のHPの情報を元にしています)。
東京都の場合
市区町村単位で不妊去勢手術に対する助成制度があります。
実施されている場合は自治体のHPに詳細が掲載されています。以下に一部、例を挙げます。
区 | 対象動物 | 金額 |
世田谷区 | 飼い猫 | オス3,000円、メス6,000円 |
飼い主のいない猫 | オス5,000円、メス10,000円 | |
中央区 | 飼い主のいない猫 | オス17,000円まで、メス20,000円まで、妊娠中25,000円まで |
新宿区 | 飼い猫 | オス2,500円、メス5,000円 |
飼い主のいない猫 | オス4,000円、メス9,000円 | |
文京区 | 飼い主のいない猫 | オス15,000円、メス25,000円、妊娠中30,000円 |
台東区 | 飼い主のいない猫 | オス5,000円、メス10,000円 |
町田市 | 飼い犬 | オス3000円、メス6000円 |
飼い猫と飼い主のいない猫 | オス2500円、メス5000円 |
神奈川県の場合
市町村単位で助成制度があります。実施されている場合は自治体のHPに詳細が掲載されていますが、以下に一部、例を挙げます。
区 | 対象動物 | 金額 |
横浜市 | 飼い猫と飼い主のいない猫 | オス5,000円、メス5,000円 |
川崎市 | 飼い猫と飼い主のいない猫 | オス2,000円、メス3,000円 |
相模原市 | 飼い犬 | オス3,000円、メス4,000円 |
飼い猫 | オス2,800円、メス4,000円 | |
厚木市 | 飼い猫 | オス2,500円、メス4,000円 |
鎌倉市 | 飼い猫 不妊去勢手術費用の20%の金額に相当する額。ただし、オス2,500円、メス4,000円が上限 |
千葉県の場合
公益社団法人千葉県獣医師会と公益財団法人千葉県動物保護管理協会が毎年、動物愛護週間に合わせて不妊・去勢手術普及助成事業を実施しています。
対象は飼い犬と飼い猫で、助成金額は5,000円です。毎年希望者多数で抽選が行われています。
抽選に当たり、指定された動物病院で手術を受けた場合に限り、助成されます。
なお、自治体などが実施する事業の場合も予算に限りがあるため、予算がなくなり次第、申請できなくなります。
手術前に必ず担当窓口に確認した方が良いですね。
犬(猫)の避妊手術(去勢手術)の補助金に関する疑問
助成の対象は猫が多いのはなぜ?
上記に挙げた例を見ても解るように、助成の対象になるのは猫であるケースが多いといえます。
猫は交尾をするとほぼ100%妊娠し、一度に3~6頭の子猫を出産します。
猫の殺処分頭数が多いのも、繁殖力が高いことが原因と考えられます。
他にも事業はあるの?
不妊去勢手術助成事業以外にも、猫の問題解決のために環境省が推奨する「地域猫活動」や、日本獣医師会が行っている「マイクロチップを利用した犬や猫などの個体識別の普及推進事業」があります。
「地域猫活動」は特定の地域に住んでいる飼い主のいない猫を調べ、行動範囲や行動パターンの把握、えさやりのルール作り、不妊去勢手術の実施などを行うことで、生きている猫を保護しながら不幸な命を増やさないよう地域ぐるみで行う活動のことです。
「地域猫活動」個人で行うことは難しく、自治会や有志で団体を作り、飼い主のいない猫を保護・管理する必要があります。こうした団体を設立する方法の説明会や、活動援助などを行う自治体も徐々に増えてきています。
「マイクロチップ普及推進事業」は日本獣医師会が行っています。これは犬や猫にマイクロチップを装着し、マイクロチップの情報と飼い主の情報をデーターベースに登録することで、迷い犬や猫などが飼い主の元に戻れるようにしよう、という事業です。海外では飼い犬のマイクロチップ装着率が90%を超える国もあります。
まとめ
犬の飼養頭数の減少や、譲渡会、保護団体の活動などによって殺処分される犬や猫は年々減少傾向にありますが、殺処分ゼロにはほど遠いのが現状です。
小さな命を守る、動物に優しい社会を築くために何ができるか、どんなサービスを利用できるのか今一度、考えたいですね。
<参考HP>
ユーザーのコメント
40代 女性 oomiya
助成金が出るようになった背景には、やはり人間の勝手で増えすぎて手に負えなくなっている経緯があるのだろうと思います。自分で責任を持って世話を出来ないのならば、不妊去勢手術は当然行うべきものだと思います。
女性 らぶり
30代 女性 まろんママ
30代 女性 すず
責任を取れないような飼い方しかできないというのならば、動物を飼う資格がない人だと思ってしまいます。
飼い主がいるのに充てられたその助成金で、もっと他の命をつなぐことができるのではないか、と勘繰ってしまうのですが…。
しかし、実際に充てられているということはそれが実状なのでしょうね。愛犬・愛猫にお金をかけられない、だけど飼う、そういう人がいるんですね。
20代 女性 シーナ
女性 Kanako
女性 ひまわり
女性 ゴン吉
飼い主がいる犬や猫に対しても助成金が出るということは、不妊去勢手術についての意識を持ってもらうという意味合いでは成功だと思います。