犬に去勢は必要?手術の時期や費用、メリットとデメリットを解説

犬に去勢は必要?手術の時期や費用、メリットとデメリットを解説

あなたの愛犬は「去勢」を行っていますか?昨今の日本では犬の去勢手術を獣医が強く勧めています。しかし、去勢手術は本当に犬の為に行うことなのでしょうか?ですのでこの記事では、オス犬の去勢の費用から時期、メリットやデメリットについて書いていきます。犬の去勢手術に迷っているかたの参考になれば幸いです。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬の去勢とは

犬の去勢手術

犬を飼っている方であれば必ず話題に挙がるのが「犬の去勢」についてです。犬の生活が大きく変わる去勢手術ですが、その知識をつけておかないと後々大変なことになるかもしれません。ですので、この記事では

  • 犬の去勢にかかる費用・期間について
  • 犬の去勢手術の時期について
  • 犬を去勢するメリット
  • 犬を去勢するデメリット
  • 犬の去勢についての個人的な見解

まず、犬の去勢とはその文字通り睾丸を摘出する手術のことを指します。別名睾丸摘出術ともいわれます。犬には局部麻酔を使うことはほとんどありませんので、全身麻酔をかけて行うのが犬の去勢手術です。

犬の去勢手術にかかる費用

費用

土地柄、動物病院の違いで犬の去勢の価格に多少変動があるとは思いますが、犬の去勢手術を行うには15,000~30,000円前後の費用が必要となります。

また、助成金(補助金)を出してもらえる自治体もあるので、助成金(補助金)を受けたい場合は犬の去勢手術を行う前に申し込みが必要です。基本的に犬の去勢手術は睾丸を切り取る手術ですので、日帰りできます。麻酔代、処置代も含まれているので、そこまで高額になることはないと思います。手術前に血液検査を行うので手術代+検査代金+内服薬などがトータルで必要になると考えましょう。

猫と違い抜糸を行います。(猫も縫合して抜糸が必要な病院もあります)傷口をなめないようにエリザベスカラーをつけられたり、化膿しないように抗生物質を処方されることもあります。ちなみにメス犬は開腹するので、もうちょっと高くなります。

犬の去勢手術をする時期はいつ?

犬の去勢・避妊手術をする時期によって、健康リスクを高める可能性があるということをアメリカの研究者が発表しました。

アメリカでは増え過ぎと問題行動を抑えるために、犬の去勢・避妊手術率は78%となっています。また、そのほとんどが1歳未満に受けさせています。

研究の発表として、759頭のゴールデンレトリーバーの股関節形成不全、前十字靱帯断裂、リンパ腫、血管肉腫、肥満細胞腫の発症率を10年間追跡しました。

その結果、1歳未満で去勢・避妊した犬の場合、オスで股関節形成不全とリンパ腫、オス犬、メス犬両方で前十字靱帯断裂の発症のリスクが高く、1歳を超えて去勢・避妊手術した犬の場合、メスで肥満細胞腫と血管肉腫の発症のリスクが高いことが確認されました。

またオス犬では体重過剰率が高くなりました。調査主任でカリフォルニア大学デービス校獣医学部名誉教授のベンジャミン・ハート博士によると「犬が去勢・避妊手術する時期は十分な注意が必要。かかりやすい病気は犬種によって違い、去勢の時期が健康に及ぼす影響も異なる可能性がある」ということでした。

また、なぜゴールデンレトリーバーを調べたのかは、日本ですと小型犬が多いですが、アメリカでは多い犬種の一つであるからだそうです。

関節等の問題は体重増加と関連があるので、去勢・避妊手術後は体重管理には十分気をつける必要があります。

腫瘍の発生には様々な原因が考えられますので、一概に去勢・避妊手術だけが原因とはいえないかもしれません。また、骨格系の問題は体重超過が悪化や発症の要因になりますので、特に股関節形成不全のリスクの高いレトリバーは去勢・避妊手術後の体重管理はしっかり行う必要があります。

犬の去勢手術をするメリット

早い時期に犬の去勢手術をすると、足をあげてのマーキングや、他の雄犬との争いなどオスの特徴がほとんど見られなくなります。また、前立腺肥大や精巣腫瘍の危険性を去勢していない犬より、低くすることができます。しかし前立腺がんは予防にはなりません、

生殖行動がなくなるので、望まない仔犬が生まれてくることを防ぐことができます。

犬の去勢手術をするデメリット

遅い時期に犬の去勢手術をしても、早い時期のメリットが得られません。また、犬の去勢手術により男性ホルモンが劇的に減少するので、太りやすくなります。また、性格的変化はありますが、なわばりの防衛・攻撃行動、恐怖による噛みつき、捕食性攻撃行動などは手術をした後、変わらないケースもあります。

犬の去勢は全身麻酔で行うので、麻酔をかけるリスクもあります。まれに麻酔から覚めず、亡くなってしまう犬もいます。麻酔は必ず何らかのリスクを伴いますから術前検査や日頃の健康管理をしっかり行い、麻酔についてのインフォームドコンセントを受け慎重に検討したほうが良いでしょう。

犬の順位付けへの影響

犬は皆さんもご存じのとおり、順位付けして群れを作り生活している生き物です。家庭で飼われていても、家族(人間)の様子を観察して、犬が勝手に順位付けています。つまり犬には、平等という概念はありません。

犬の順位の付け方は、性別、年齢、気性、才能、体力などにより、つまるところ雄犬で年上の気性が強い、知恵のあるものがボスとなります。これは本能的に刷り込まれているので、犬は人間の家族にもそれを当てはめています。

犬は性別だけで順位を考えると、オス>中性(去勢・避妊してある犬)>メスという形になります。犬が去勢手術をすると、オスであってもランクは一つ下がってしまいます。

犬の去勢についての個人的な見解

犬

私もオス犬を飼っていますが、去勢手術はしていません。我が家の犬は停留睾丸(睾丸が体内にとどまっている状態)で単睾丸です。体内にある睾丸が腫瘍化する可能性はあり、獣医に犬の去勢手術を勧められましたが、断りました。

私は体内の睾丸が腫瘍化した時に、犬の去勢手術すればいいという考え方(もちろん初期症状を見逃さないということもありますが)です。そんなやり取りから早5年。体調管理を行いながら、我が家の犬は15歳になりますが、いまだに元気です。

現在の日本は、医療が発達したせいか、予防医療により力を入れているような気がします。犬の去勢・避妊手術がそうではないでしょうか。確かに、犬の去勢・避妊手術をすれば(的確な時期である場合)メス犬であれば、乳腺腫瘍はかなりの高確率で防ぐことができますし、子宮蓄膿症も子宮自体を取ってしまうので、なりません。

オス犬であれば、前立腺肥大や精巣腫瘍を高確率で防ぐことができます。
去勢・避妊手術をしないことを選択した場合は、しっかりと体調管理を行い、初期症状を見逃さないことが大事になると思います。その時に手術でも遅くないかもしれません。

ただし、性格上の問題で犬が去勢手術を受ける場合はこの限りではないと思います。海外では飼育することにかなりの制約がある犬種(ピットブルテリア、スタッフォードシャーブルテリア、土佐闘犬、ブラジリアンガードドッグ、ドゴアルヘンティーノなど)は犬の去勢手術をしたほうがよいでしょう。

また、公共の場所では口輪をする、消防と警察に飼うことを届け出ておく、税金が他の犬種に比べてかなり高いなど、厳しい規制があります。日本ではそのような規制は全くなく、誰がどの犬種を飼っても特に何もという感じですが、やはり気性の激しい犬種をペットとして迎える場合は、犬の去勢手術をした方がいいと思います。

おわりに

今の日本では安易に犬を去勢・避妊手術する方が非常に多いですが、全身麻酔で行うので手術時のリスクや術後の合併症などがあるかもしれないことを考えるる必要があります。健康な犬の体に全身麻酔というリスクを負わせ、健康な臓器を取り出すことが果たしてあなたの犬に必要かどうかは獣医師と話し合い最終的には飼い主が決めることになります。

最終的に決断するのは飼い主であるあなたです。口が利けない、弱い生き物だからこそ飼い主がそれをしっかり読み取り、最善を考えてあげるのが飼い主の役目として必要なことなのではないでしょうか。

監修獣医師による補足

去勢・避妊手術を受けるかどうかは迷うところです。健康なわんちゃんのもともとある臓器を手術で取り除くので、本当に必要か迷います。
避妊手術を行わない場合、中年以降で「子宮蓄膿症」「乳腺腫瘍」の発生率が高くなります。子宮蓄膿症は発見が遅れると命にかかわりますし、乳腺腫瘍の半分は悪性です。
また、去勢手術を行わない場合、中年以降で「精巣腫瘍」「前立腺肥大」「肛門周囲腺腫」の発生率が高くなりますし、前立腺肥大や肛門周囲腺腫の場合は去勢を同時に行います。
進行してしまった場合このような病気は手術や治療にリスクを伴います。
手術を行った場合「麻酔のリスク」「肥満」を代表とし、ほかには「尿失禁」「皮膚炎」などのホルモンが関係する病気を引き起こす場合があります。
メリットもありますし、デメリットもあります。
獣医師としっかり話し合い手術をするかしないかを決めましょう。家族が納得した答えを出すことが大切だと思います。

獣医師:平松育子
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