犬に「にんじん」をあげても大丈夫です
動物病院で仕事をしていると、飼い主さんから様々な質問を受けます。
その中でも多いのが「これは食べさせて良いですか?」という質問です。
色々な食べ物のなかでも、身近な「にんじん」と犬との関係についてお話しします。
獣医師としての知識でオーナーの皆様にお答えしてみようと思います。
食べさせてもよいが基本はドッグフードが主食
にんじんを犬に食べさせて良いのか悪いのか…というと、適切に調理されていて適量であれば問題ありません。
ただし、犬のためには総合栄養食であるドッグフードとたっぷりのお水があれば良いということを覚えておいてください。
これは、仕事上で飼い主さんによくお話しすることです。そのため、獣医師としては「NO」というべきなのでしょうが、私もオーナーの一人としてついついあげたくなる瞬間があります。
にんじんは与え方が大事
そこで大事なのが「調理してある」ということです。
にんじんは野菜ですので、基本的に肉食獣である犬には必要ない食料です。
犬は体内でビタミンを合成することができるので、野菜を取る必要があまりありません。
もともとオオカミは、草や果物を食べている草食動物の内臓をそのままたべることでビタミンを補給してきました。
もちろん皆さんのお家のワンちゃんたちは、ドッグフードという総合栄養食でしっかりその栄養を補給できています。
犬が生のにんじんを食べると下痢の原因になることも!注意するべき点とは?
手づくりご飯やおやつとしても与えやすい、にんじんですが与え方を間違えると体調不良の原因になることもあります。
食べさせる前に、にんじんの危険性について知っておきましょう。
生のにんじんは危険があることを知っておきましょう
まず犬ににんじんを上げたい場合は、必ず加熱しておきましょう。
生のにんじんにはビタミンCを壊してしまう酵素が含まれています。
そして、繊維質であるため消化に悪いのです。与える時は加熱をするのが重要です。
繊維質の多い食材は、下痢の原因になることがある
加熱しても繊維質はそのままですから、一度にたくさん上げないようにしましょう。
消化できない食材で胃がパンパンになって、胃切開手術をすることになってしまう場合もあります。
小柄な犬では、のどに詰まらせる可能性もありますので小さく切る、薄くスライスするなどの工夫も大事です。
にんじんは繊維質をふくむ野菜ですので、たくさん摂るとウンチがゆるくなったり下痢してしまうこともあります。
基本的に「犬が消化できない食材」として認識して、気を付けて与えてあげましょう。
これはダメ!調理されたにんじんを与える危険性
次に気になるのが「人のために調理されたにんじん」です。
夕食を食べていて、お皿の人参をあげてしまって良いのでしょうか。
その点では「NO」です。
人の食べるにんじんは犬にとっては害が多い
調理されたにんじんは、人間用に味付けされているため塩分が多すぎます。
塩分は、犬の心臓や腎臓に負担をかけ病気を引き起こす大きな原因になります。
人間と犬は体の仕組みが全く違うため、人が食べるための味付けをしたにんじんは毒に等しいということです。
調理する場合は一緒に他の物を調理しないのがベスト
さらに、にんじんを使う料理といえば肉じゃがやカレー、シチューなどタマネギと一緒に煮込んだものも多いですよね。
犬に毒になる、タマネギやネギ類と一緒に調理されていることも考えておきましょう。
タマネギやネギと一緒に調理したにんじんには有毒成分がついているので、それだけでタマネギ中毒になってしまう可能性もあります。
タマネギ中毒はタマネギの有毒成分により赤血球が壊されてしまい、貧血になってしまう病気です。
症状がでなくても、タマネギやそのエキスを食べてしまうことで犬の体に大きな負担をかけてしまうので、十分気を付けましょう。
犬に「にんじん」を与える方法と摂取量の目安
にんじんを食べさせたい場合、どういう状況で愛犬に与えていますか?
夕食のお皿から、ちょっと…というのは犬のために良くありません。
もし、夕食のお皿からどうしても食べたがるという場合は、犬専用に調理したにんじんを一皿、小皿に入れて置いておきましょう。
欲しがったら犬専用のにんじんを一つだけあげればOKです。
本来はテーブルから食べ物を与えないのがおすすめ
犬は序列を大事にする精神構造を持った生き物です。
人間と食卓を一緒にすることで、オーナー様との上下関係が混乱してしまうことも多いんです。
今、テーブルから食べ物をあげているという場合は、まず人間の食事が終わるまで待たせる練習からスタートしましょう。
だんだん、人間の食事と犬へのにんじんとの間隔をあけるようにして、完全におやつとして与えるのがベストです。
1日の摂取目安量は体の大きさによって異なる
具体的な摂取量は個体の体質や体調などによって異なりますが、目安は以下となっています。
- 超小型犬:6〜15g程度
- 小型犬 :33g程度
- 中型犬 :60g程度
- 大型犬 :60〜90g程度
にんじんを丸のみしてしまう犬も多い
当然ですが、にんじんはのどや消化管に詰まってしまわないように、小さくするか薄くスライスしておきましょう。
すりおろしたり潰したりしてペーストにするのもよいでしょう。
嬉しさのあまり丸飲みしてしまう犬はとても多く、のどを詰まらせることも十分考えられます。与え方は十分に気をつけましょう。
にんじんを使った犬用ごはん・おやつのレシピ
にんじんをゆでて与えるだけでもよいでしょうが、せっかくなら愛犬に美味しく食べてもらいたいとお考えの方も多いのでは?
そんな方におすすめの犬用ごはん・おやつの手づくりレシピをご紹介します。
初心者でも簡単!『お手製人参チップス』
ゆでたにんじんは、日持ちしないのでお手製の人参チップを手作りするのもおススメです。
にんじんを薄くスライスして、お皿の上にキッチンペーパーを敷いて重なり合わないように並べます。
10~15分ほど水分が飛ぶくらい電子レンジで加熱しましょう。(この時は焦げてしまわないように様子を見ながら加熱してくださいね)
出来上がった人参チップは、味付けをせずに密封容器で保管しましょう。
保存料などは使用していないので冷蔵庫などで保管し、早めに使い切るように!
少し塩を振ると、人間用にも美味しいおつまみになります。

お散歩の際に少しオヤツを持っていくんですが、簡単に割って大きさを調整できたり、ベタベタしない、持ち運びやすいものは便利ですよ。
レンジで加熱が簡単ですが、オーブンで焼いてあげるのも良いです。
その際、人参以外にも、サツマイモやカボチャやリンゴなどを薄く切った物も一緒にチップスにしたりします。
チップスを粉々に割りフードにかければ、人参の「ふりかけ」にもなりますよ。
特別な日のおやつに!『愛犬用お野菜パンケーキ』
【材料】
- 米粉 :50g
(小麦粉でも可) - 卵 :1個
- かぼちゃ:20g
- にんじん:20g
- 豆乳 :50cc
- オリーブオイル:適量
【作り方】
- かぼちゃは種を取り、水で洗って小さく切ってからラップに包んでレンジで温めます。
- ボールに米粉、卵、豆乳を入れてよくかき混ぜて生地を作ります。
- かぼちゃをつぶし、にんじんも擦りおろし、生地に入れて更に混ぜます。
- 温めたフライパンにオリーブオイルを薄く敷き、生地を流し込み弱火でじっくり両面を焼きます。
- 火が通れば出来上がり!
ボリューム満点!『ミートボール入りにんじんスープ』
【材料】
- 鶏ひき肉...100g
- キャベツ...1枚
- 椎茸...1枚
- にんじん...4分の1本
【作り方】
- ボウルに鶏挽き肉を入れて粘りが出るまで混ぜる。
- みじん切りにしたキャベツと椎茸を混ぜて、お好みの大きさのミートボールを作る。
- 小鍋に適量の水、すりおろしたにんじんを入れて沸かし「2」のミートボールを入れてふっくら火が通るまで過熱する。
- そのまま人肌まで冷ましたら出来上がり。
市販で買えるお勧めにんじんのおやつ
にんじんのおやつを手づくりするのが面倒な人は、市販の犬用おやつがおすすめです。
最後はにんじんを使った市販の犬用おやつをいくつかご紹介します。
ドギーマン ドギースナックバリュー 豆乳と野菜のクッキー 犬用おやつ
豆乳、にんじん、ほうれん草が入ったヘルシーなクッキーです。見た目もかわいく、カラフル。小型犬でも食べやすい小さめサイズのおやつです。
ペティオ (Petio) 犬用おやつ おいしくスリム 砂糖・脂肪分ダブルゼロ 野菜ボーロ
パピーからシニアまで安心して食べられる無添加の野菜ボーロです。
にんじん、じゃがいも、ほうれん草、かぼちゃなど、さまざまな味が楽しめます。国内生産という点も安心できます。
にんじんのおやつで愛犬とのきずながグッと深まる
にんじんは、きちんと調理して適切な量をあげれば健康に害のない美味しいおやつになります。
大好きなオーナー様からもらうにんじんおやつは、愛犬にとって至福の瞬間になります。
毎日一緒に暮らすパートナーとして、1日でも長く健康でいてもらいたいなら愛犬にとって必要なもの必要でないものをしっかり把握することが大事です。
かならず必要な栄養ではない
にんじん、についていえば必要ではないものです。ですから与える時は犬に害にならない方法で適量与えることが大事です。
愛犬のことをしっかり考えてオーナーが決めて与えることが大事
自分で自分の健康管理をできない愛犬のために、オーナーがしっかりワンちゃんの自己管理を手伝ってあげましょう。
ちょっとした注意だけで、愛犬を健康で長生きさせてあげられます。
にんじんが大好きな愛犬のためにひと工夫する、そんな時間も楽しめたら素敵な愛犬ライフが送れそうですね。