犬の歯石の取り方┃歯石除去の麻酔あり・なしの違いとは

犬の歯石の取り方┃歯石除去の麻酔あり・なしの違いとは

ここ数年、無麻酔での歯石除去が問題視されていることを、ご存じでしょうか?医療資格のないペットショップ等でも行われているのですが、それは安心できるものだと思いますか?ペットショップ等が獣医療的なことを行うことも問題だと思いますが、最近では動物病院でも「無麻酔での歯石除去」を行うところが出てきているようです。無麻酔歯石除去の是非についてお話したいと思います。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬の歯石は口のトラブルや病気の原因に

歯磨き

わんちゃんに歯石ができ、それを放っておくと口腔環境が悪化し、そこから内臓疾患や最悪の場合には、頬に穴があいてしまうこともあります。
そうならないために、おそらく飼い主のみなさまは、愛犬への口腔ケアとして、歯磨きなどをされていることでしょう。
それでも歳を重ねていくと、歯石ができてしまうこともありますよね?

そんな時に、全身麻酔を使って歯石除去手術を選択する飼い主さまもいらっしゃいますが、でも、わんちゃんに持病があったり、シニア犬になっていて、全身麻酔を使うのは心配・・・と思ったことがあるかと思います。

そして、この頃では、「無麻酔での歯石除去」を選択される方が増えていると聞きます。

たしかに麻酔を使わないという面では、安心はあるかと思いますが、無麻酔には麻酔を使わないというメリットはありますが、デメリットもあり安心かというとそうでもないのです。

また、「無麻酔での歯石除去」となるため、医療行為ではないと考えて、ペットショップやトリミングショップ等でも「無麻酔歯石除去」をされているところもあります。

果たして、医療資格のないショップの方が行うことは本当に大丈夫なのでしょうか?

「無麻酔」=「安全」とは限らないことを解説してみたいと思います。

歯石を取る方法

人間は、歯医者さんに行くと、「はい、お口あけてください」と言われれば、子どもでも口をあけて、診てもらったり治療をしますよね?

では、わんちゃんはどうでしょうか?

歯磨きの間、少しくらいならお口を開けていられるわんちゃんもいるかもしれませんが、基本的に犬は口を触られるのが嫌いです。それに、ずっと口をあけていることもできません。

それらの理由から、安全に歯石を除去するために、全身麻酔を使って隅々までキレイにします。
ですが、全身麻酔は、愛犬の持病や年齢によっては危惧される飼い主さまも多いと思います。

そこで最近選択される方も増えているのが、「無麻酔による歯石除去」です。

たしかに全身麻酔を使用しないため、安全!と思われるかもしれませんが、わんちゃんが意識のあるまま触られたくないお口をあけられて、歯石除去の治療をされるということは、実はかなりのストレスを与えてしまい、無麻酔でも安心ではないのです。

歯石を除去するために使用する器具の中には鋭利なものもあります。急に暴れてしまったときに怪我をさせる可能性もあります。

また、歯石を除去しているときに歯が折れてしまう、ぐらぐらしている歯が抜けてしまった。そのようなときには専門的な処置が必要になります。

全身麻酔をする場合

歯

麻酔を使用しますので、必ず動物病院にて行います。
歯石除去は、「歯周病の進行の防止」であり、治療のための処置です。歯石自体は歯周病の原因ではありません。

歯周病というのは、細菌が歯の周囲で増殖し、炎症を引き起こされて進行していく、細菌感染症です。

炎症が進むと、歯周ポケットが深くなって行き、やがて歯を包んでいる骨が溶け、歯がグラグラになってとれ落ちてしまいます!
歯周病はゆっくり進行する病気ですが、その進行を食い止めるために行われるのが、歯石除去を始めとした「口腔ケア」です。

歯石の表面にも菌はついていますが、一番害となるのは、歯周ポケットの中にいる菌です。これは、歯石ができることで、歯周ポケットの奥まで菌が入っていってしまうので、やっかいなのです。

ですから、日々の口腔ケアはかかせないのです。

全身麻酔をしない場合

たとえ無麻酔で愛犬の歯石を除去しても、お口をあけて見た目はキレイかもしれませんが、歯周ポケットの中の菌までは取り除けていないのです。
それが一番の問題です。

歯周病の進行の防止をするには、歯周ポケットの『中の汚れや細菌を取り除く』必要があるのですが、そこに手をつけないのであれば、歯周病の予防的に見れば全く意味がないことになります。

そして、麻酔を使わないことで、愛犬の体は大丈夫!と思っていらっしゃる方が多いかと思いますが、それは本当にそうでしょうか?

私は、歯医者さんは苦手です。
特に歯を削られている時は、ドキドキしたり、具合が悪くなります。
これは犬も同じなのです。

血圧が上がってしまったり、かなりのストレスがかかります。
心臓疾患があるわんちゃんは、麻酔を避けますが、麻酔を使わないことも実は危険なのです。
ぜひ知ってください。

まとめ

口腔ケア大事!

私は、ウチの愛犬には、無麻酔での歯石除去はさせたくありません。
もちろん全身麻酔には抵抗はありますが、なるべく日々歯磨きなどの口腔ケアをして、歯石除去をすることのないようにつとめています。

もしどうしても歯石除去を行うとしても、全身麻酔を選びます。
体がまだ大丈夫であればですが。

無麻酔で、意識のある中で行ってしまえば、せっかく今は病院は大好きなところ!となっているのに、とても恐ろしい場所になってしまうかもしれないですし、ストレスや緊張で心臓にかなりの負担をかけてしますかもしれないからです。

私にはそちらのリスクのほうが怖いです。ましてや、動物病院以外では絶対に歯石除去はしてもらわないつもりでいます。
今一度、口腔ケアと歯石除去について、考えてみてください。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    50代以上 男性 ももじのパパ

    そもそも、動物病院の麻酔下の歯石取り(治療)と無麻酔下の歯石取り(予防ケア)は、別ものと私は思います。
    人間も病気になる前の未病の段階で、いろんなケアが発生している現在、予防ケアの一環として、わんちゃんの無麻酔歯石取りがあっても良いと思います。
    たしかに、無理やり押さえつけて、無麻酔下で歯石取りをするところもあるようですが、適切な対応をしてくれるところでは、無麻酔下でも歯の裏側や歯肉縁下の歯石取りをしてくれる技術(適切な保定の仕方とわんちゃんとのコミュニケーション)を有しているところはあります(私が利用しているところは、これに当たると考えています)。
    同じ土壌で麻酔・無麻酔を考えるから、無麻酔はダメとなるのではないのでしょうか?
  • 投稿者

    女性 清水 美森

    私はドッグトレーナーをしています。
    そこでトレーニングを始め、ある程度の過程に来ると
    飼い主さんが自身で出来る歯石取りを教えています。
    このある程度の過程とは、犬からの飼い主さんへの信頼関係がしっかり出来、
    飼い主さんも犬を信頼し、飼い主さんの言う事(命令)が出来るようになってからと
    言う事です。
    オーラルケアについて講習をし、理解した上で歯石取りを行います。
    この頃になると、犬も横になり、口の中を触ってもじっとしてくれます。
    さすがに重度の歯周病(歯が鍾乳洞のようになっている、歯がぐらつくなど)の場合は
    病院に行ってもらいますが、歯肉炎くらいまでなら、家庭でのケアで十分治せます。
    麻酔はもちろん、病院は犬にとってもいい所ではありません。
    大好きな家族が自分のためにしてくれる、知識を持った愛情表現として
    行ってくれる事が1番大切と思います。
    人間のように毎日の歯磨きと言うのは大変な事。本来ならそれに越した事はないのですが、
    数週間~数カ月に1回のペースで飼い主さんが行えば十分です。
    飼い主さんならば、自分の犬の体調もよくわかると思います。
    おうちでならば、緊張もせず、心臓への負担も病院よりは減らせるでしょう。
    そして何より、痛みが無くなった犬は、自分の苦しみを飼い主さんが取り除いてくれた事を
    理解します。信頼もさらに深まります。
    私の生徒さん、私の犬達は、歯石取りと言われると、自分から横になり
    じっとするようになります。
    しっかりとした知識、信頼があれば、それほど危険なものではないと思います。
    病院で麻酔をかけ、治療したと言うのに、ろくに歯石も取らず、抜糸する病院も多くあります。
    それも治療費は高額。ヨークシャテリアで5万円。
    私の生徒さんの中には、病院の先生の方が驚いたと言う話もよく聞きます。
    麻酔なしでどうやってここまできれいにしたかと聞かれたと言うのです。
    歯石取りも、トレーニングのやり方次第。これにつきます。


  • 投稿者

    男性 かれんぱぱ

    基本的に人間でも、犬でも歯石を取れば、歯周病がよくなるという考え方に問題があります。
    歯石が取れれも、ちゃんと口腔ケアができなければ、時間の問題で歯周組織は悪くなりますし、歯周ポケットに存在している細菌による全身疾患の可能性はあります。
    全身麻酔で歯石を除去し、無菌的な口腔内を作ったとしても、口腔ケア(普段の歯ブラシ)がちゃんとできていなければ、すぐに歯石が付着するし、細菌も増殖します。
    そもそも、歯石は無機質で、単なる歯の凸凹でしかありません。凸凹な部分を除去して、最近が付着する面積を少なくすることが、歯石を除去する目的なのです。
    どのくらいの期間で歯石を除去すればいいのかは、付着しやすさによるので、一概には言えませんが、早い子は1ヶ月で歯石が付着しますので、全身麻酔のリスクを考えると普段からの歯ブラシの習慣づけの方が、リスクは少ないはずです。
    我が家では、ほぼ毎日歯ブラシをしています。
    慣れれば、犬も人間も大したストレスはありません。
    それに、時間も費用もたいしてかかりませんので、歯石を取るとか、取らないとかじゃなくて、
    ちゃんとした歯ブラシの習慣をつけることをお勧めします。
  • 投稿者

    20代 女性 たかた

    こちらの記事に賛成です。
    無麻酔歯石除去を獣医師でない人が行なっているのを見かけますが、動物に危害を及ぼす可能性のある歯石除去歯垢除去は診療行為に当たりますので獣医師以外が行なってはいけません。
    獣医師法に抵触します。

    そもそも歯垢がたまらないように、歯磨きをする習慣やトレーニングを行うべきです。日本ではあまり歯磨きトレーニングがなされていないように思います。
  • 投稿者

    40代 男性 無免許でも麻酔なしを選ぶべき

    私は、ちゅうちょしていたため、うちの犬を死ねせてしまいました。(高齢犬)
    自分自身、免許のないペティグラスという足の爪の医院がありますが、
    そこで爪の細菌感染を見つけてもらい完治しました。
    もし、歯石を取ることができたら(麻酔なし)
    感染症で痴呆のような症状も防げたと思います。
    私の犬の最後は、歯の形がボロボロで食べることができなくなり死んでいったと思います。
    できれば麻酔なしの歯石とりが認可されることを希望します。


    無免許でも麻酔なしを選ぶべきの投稿画像
  • 投稿者

    50代以上 女性 動物病院様の主張はわかりますが

    無麻酔下の歯石取りは、予防ケアであって、医療行為ではありません。
    歯石は、歯垢が石灰化したもので、それ自体はなんら病気でもありません。
    それを一部取り除く程度なら、歯磨きの延長です。

    無麻酔下では、歯肉縁下の歯石まで取り除くことは困難です。
    きちんとするなら、動物病院様で除去すればいいだけの話です。

    飼い主さんはみな、歯石を取るためだけに、4万も5万もかけて、
    歯石取りを行いたいとは思いません。なぜそんなに高いのでしょう。
    除去しても数カ月ですぐ歯石になります。歯磨きが出来なければ。

    また、無麻酔だとストレスがかかるため可哀そうとおっしゃますが、
    それでは麻酔がかけれないシニア犬はどうしたらいいのでしょうか。

    歯石を放置することは、可哀そうとは思わないのでしょうか。
    多くの意見が法律も変えてしまいます。医療行為だという人もいなくなるでしょう。

    人間でも、介護施設で、歯科医や歯科衛生士でもない介護者が、他人の口の中の
    清掃をしてもいいのかと議論され、「全く問題ない」旨の通達がなされました。
    同じように、治療行為ではない、予防ケアなら問題ないと思います。
  • 投稿者

    30代 女性 匿名

    無麻酔で歯石を取ってもらったところ、顎の骨が折れて動物病院に救急搬送される事になりました。危険がある事は承知の上でやってもらったので訴えたりはしませんでしたが、結局麻酔よりも身体の負担を背負わせてしまいとても後悔しました。
    みなさん無麻酔処置に賛成のようですが、歯が綺麗になればそれはそれで良いかもしれないけど、うちのように後遺症が残ってしまうようなリスクがある事も知っておいてもらいたいです。出来るだけうちの様な可哀想な思いをするわんちゃんが減りますように。。
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