犬はしいたけを食べても大丈夫?
犬は市販されている食用のしいたけであれば、安全に食べることができます。ただし、生や十分に加熱していない状態では健康に悪影響を与える可能性があります。
しいたけを愛犬に与える際には、正しい下処理と加熱調理を必ず行い、少量を守ることが大切です。
生のしいたけは与えてはいけない
犬に生のしいたけを与えるのは避けましょう。生や加熱不十分なしいたけには、レンチナンという成分が含まれており、「しいたけ皮膚炎」と呼ばれる毒性反応を引き起こす可能性があります。
十分に加熱すればレンチナンの毒性はほぼ失われ、安全性が高まります。
干ししいたけを与えるときは戻し方と量に注意
干ししいたけも犬に与えることは可能ですが、戻し方には注意が必要です。干ししいたけはミネラル(特にカリウムとリン)が凝縮されており、戻し汁にこれらが溶け出しています。
健康な犬であってもごく少量にとどめ、腎臓病など持病がある犬には絶対に与えないようにしてください。
しいたけに含まれる栄養素と犬への期待できる効果
しいたけには様々な栄養素が含まれており、適量であれば犬の健康維持に役立つ可能性があります。ただし、犬での効果はヒトほど明確ではないため、あくまで「可能性」として考えてください。
β-グルカン
しいたけにはβ-グルカンという成分が豊富に含まれています。この成分は免疫細胞の働きをサポートし、免疫力を維持する手助けをする可能性があります。
ただし、犬における臨床データはまだ限定的で、効果には個体差があることを理解しておきましょう。
エリタデニン
エリタデニンはしいたけ特有の成分で、動物実験では血中コレステロール値の低下が示されています。犬への具体的な効果はまだ明確ではありませんが、適量であれば健康的な血液状態の維持に役立つ可能性があります。
食物繊維
しいたけには不溶性を中心とした食物繊維が含まれており、適量摂取すれば便通の改善に役立ちます。一方で与えすぎると消化不良や便秘を起こすこともあるため、少量に抑えることが重要です。
ビタミンD2
しいたけに含まれるビタミンDは主にD2という種類であり、犬は日光によるビタミンD合成がほぼできないため、通常の栄養摂取は総合栄養食が基本となります。
しいたけに含まれるD2の効果は犬では十分に確立されていないため、あくまで補助的な栄養素として考えましょう。
グアニル酸
干ししいたけの豊富なうま味成分であるグアニル酸は、犬の食欲を刺激する可能性があります。
ただし、犬への食欲改善効果は明確に証明されているわけではありません。食が細くなりがちな犬への少量のトッピングとして利用する程度が適切です。
犬へのしいたけの与え方
犬にしいたけを与える際は、愛犬が安全に食べられるよう正しい下処理と調理方法を守ることが重要です。以下で具体的な手順を解説します。
必ずしっかり加熱してから与える
犬に与えるしいたけは、生や加熱不十分な状態だと健康リスクが高まります。
しいたけの柄(石づき)の固い基部を切り落とし、傘の汚れをキッチンペーパーで軽く拭き取り、細かく刻むかペースト状にして、茹でる・蒸す・電子レンジで加熱するなど、必ず十分に火を通してください。
調味料や油は犬に有害なのでNG
犬にしいたけを与える場合、油を使った炒め物は避けてください。油脂は高脂肪で、犬の膵炎のリスクを高める原因となります。また、調味料(塩分や糖分、香味野菜など)も犬には有害となるため、一切使わずに調理しましょう。
干ししいたけは十分に水戻ししてから細かく刻む
干ししいたけを与える際は、水でしっかり戻し、柔らかくなったものを細かく刻んで加熱調理します。
戻し汁にはミネラル(リンやカリウム)が高濃度で溶け出しているため、健康な犬であってもごく少量の使用にとどめ、腎臓病がある場合は使用しないでください。
犬にしいたけを与える適量の目安
しいたけは健康的な食材ですが、犬に与える量は少量に抑える必要があります。犬の体格や体重に応じた適切な目安量を守りましょう。与える頻度は毎日ではなく、週に1〜2回程度を目安とします。
小型犬の適量は2〜5g程度
チワワやポメラニアンなどの小型犬には、刻んで加熱調理したしいたけをティースプーン半分〜1杯程度(調理後重量約2〜5g)までに抑えます。小型犬は特に消化器官がデリケートなので、少量でも消化不良を起こすことがあります。
中型犬の適量は7〜10g程度
柴犬やコーギーなど中型犬の場合は、調理したしいたけを大さじ1杯程度(調理後重量約7〜10g)を上限の目安とします。個体差もあるため、体調を観察しつつ調整しましょう。
大型犬の適量は15〜20g程度
ゴールデンレトリバーやラブラドールなど大型犬であっても、与える量は大さじ2杯程度(調理後重量約15〜20g)までにしましょう。体格が大きいからといって大量に与えるのは、消化不良や栄養バランスの崩れを引き起こします。
子犬や老犬には成犬量の半分以下を目安に
子犬や高齢犬は消化機能が弱いため、最初は耳かき程度のごく少量から与えてください。その後問題がなければ、成犬目安量の半分以下を目安に徐々に増やします。便の状態や体調を注意深く観察しましょう。
犬にしいたけを与える際の注意点
犬にしいたけを安全に与えるためには、いくつかの重要な注意事項があります。以下に挙げるポイントを守り、愛犬の体調や安全に十分配慮しましょう。
最初は「少量」から与える
犬が初めてしいたけを口にする場合は、ごく少量から始めてください。
犬によってはしいたけを含むきのこ類に対し、嘔吐や下痢、皮膚のかゆみなどのアレルギー反応を示すことがあります。与えた後は翌日まで体調の変化をよく観察しましょう。
腎疾患の犬には「干ししいたけ」は与えない
干ししいたけは、リンやカリウムなどミネラル類を多く含みます。腎臓病や尿路結石の既往歴がある犬にとって、これらのミネラルが病状を悪化させるリスクとなります。
該当する持病がある犬の場合、干ししいたけやその戻し汁は与えず、必ず獣医師に相談してください。
免疫疾患がある犬は必ず獣医師に相談を
しいたけに含まれるβ-グルカンは免疫細胞に働きかける成分であり、自己免疫疾患や免疫系の疾患で治療を受けている犬に与える場合は注意が必要です。
特に免疫抑制剤を服用中の場合は、治療効果や体調に影響を与える可能性があるため、事前に必ず獣医師へ相談しましょう。
人間用の料理は与えない
人間向けに調理されたしいたけ料理(煮物や佃煮、炒め物など)は塩分や糖分、油分が多く含まれているだけでなく、玉ねぎやニンニクなど犬にとって有害な食材が含まれている可能性があります。
犬には必ず味付けをせずに調理したしいたけのみを与えましょう。
まとめ
犬はしいたけを食べることができますが、生や加熱不十分な状態ではレンチナンによる皮膚炎や消化不良の原因になるため、必ず十分に加熱調理したものを少量与えるようにしましょう。
干ししいたけの場合もミネラルが多いため、戻し汁の使用はごく少量に留め、腎臓病などの持病がある犬には与えないでください。
また、初めて与える場合は少量から始め、アレルギーや体調の変化に注意が必要です。特に持病がある犬や免疫系疾患の治療中の場合は、事前に獣医師に相談したうえで与えましょう。