犬にお酢を与えても大丈夫!
獣医として仕事をしていて、飼い主さんからいろいろなお問い合わせや質問を受けてきました。その中には自分が健康のために飲んでいる「酢」を犬に与えても良いかどうかというものも・・・。
お酢は、さまざまな健康効果が人で証明されている食材ですよね。発酵食品の一種ですので、アミノ酸が豊富でクエン酸・酢酸などの有機酸が体にとって良いとされています。
そんな酢は犬が飲んでも大丈夫な食材です。ただし、お酢が体にいいかといわれるとそういうわけでもありません。人間のご飯を誤飲してしまった、お酢を飲んでしまった、という場合は特に心配する必要はありませんが、健康のために飲むというのは良い影響を受けるとは言い難いのです。
というのも、まず、犬は人間とはまったくちがった体の構造をしていることを知っておきましょう。
人間は、体内でビタミン・必須アミノ酸を合成することができません。ですから必ず食品からその栄養素を摂取しなければなりません。
犬は肉食動物で、基本的に動物の肉・内臓・骨・軟骨などを食べることで体内のすべての栄養素を補うことができます。人間と違う点は、体内でほとんどのビタミンやアミノ酸を作り出すことができるところですね。
ですから、基本的に人間と犬は必要とする栄養素が違うということに。犬に必要な栄養素は、良質なたんぱく質・脂質・コラーゲン・カルシウムなどです。これらの栄養素をしっかり取っていれば、健康に過ごすことができます。
大抵のドッグフードは、これらをキチンと食べられるように作られていますよ。このようなことから、犬の毎日に酢を取り入れる必要性はないことがわかりますね。では、酢をとることでプラスになることはないのでしょうか。
犬にお酢を与えるメリットや栄養素
アミノ酸
お酢に含まれている成分の中で最も有名なのがアミノ酸の存在です。アミノ酸は犬が生きていく上で必要な栄養素であり、アミノ酸が不足すると体の機能が低下して最悪は命に関わる場合もあります。
健康な犬であれば、体でアミノ酸を生成できるため問題はありませんが、なんらかの問題によりアミノ酸不足となっている犬にはお酢は効果的な食べ物と言えます。
クエン酸
酢に含まれている成分として言われるものがもう一つ、それが酸っぱさの元になっているクエン酸です。人間の場合、クエン酸は糖質の代謝を促しスタミナアップや疲労回復に効果を発揮する成分となっています。
しかし、このクエン酸は人間にとっては良い影響を与えるものですが、犬の健康にはあまり影響を及ぼさない成分であると言えます。
クエン酸やアミノ酸を摂取するのが無駄とは言いませんが、健康に影響を与えるものとは言い難いといえます。
犬に与えてもいいお酢の種類
- リンゴ酢
- 黒酢
- 穀物酢
- 米酢
たくさんの種類があるお酢ですが、どのお酢なら犬に与えても良いのでしょうか?答えは、どのお酢も犬に与える必要はないです。
前述した通り、犬はお酢から得られる健康メリットはありませんし、お酢を飲んだところで何かいいことがあるわけでもありません。たとえ、健康に良いと言われているリンゴ酢や黒酢でも同じです。
逆にお酢を飲んでも何らかの悪影響が及ぶこともありません。しかし、お酢には砂糖などのカロリーが高いものが多く含まれています。以上の点を踏まえても、やはり犬にお酢を与える必要はないといえます。
とはいえ、お酢を与えようと思っていなくても、愛犬が誤飲をしたという場合もあるでしょう。その時は、特に中毒になるようなものはお酢の成分に含まれていませんので、体調に変化がないか念のために見守るようにしてあげましょう。
お酢を使った犬のしつけや皮膚のケア方法
お酢をしつけに活用する
お酢は、飲むだけでなく他の方法で愛犬の健康に役立てることもできます。古くから使われている方法ですが、愛犬のしつけにお酢を活用してみるのはいかがでしょうか?
お酢は犬にとって嫌いな匂いであることが多く、霧吹きなどに入れてスプレーをすることで安心して使えるしつけ防止のスプレーにできるのです。噛み癖のあるワンちゃんや、無駄吠えや吠え癖のあるワンちゃんで叱ってもなかなか効果がない場合、スプレーボトルに薄めたお酢を用意しておきましょう。
ダメ、といいたいタイミングでお酢をスプレーすることで大きな声で叱るより効果が高いという話もあります。また、お酢は口に入れるのも酸っぱくて嫌いだという子も多いので、酢水を作って食糞をした時にかけたり、スプレー をすると自然にしつけができるのだとか。
その他にも、トイレのしつけとしてトイレ以外の場所に酢水をスプレーでかけておくと効果があるようです。ぜひしつけにお困りの方は、お酢のスプレーを試してはいかがでしょうか。
お酢を皮膚のケアに活用する
お酢を体に取り入れるのは特に影響はありませんが、殺菌効果を利用して消毒液の代わりに使用をするのは良いといえます。お酢には殺菌効果があるだけではなくリンス効果もある液体と言われています。
そのためシャンプーの時に匂いのきついリンスをすると、トリミングの後体を床や地面にこすりつけて嫌がるワンちゃんでもお酢のリンスはわりと好評。
細菌性皮膚炎や膿皮症やマラセチアなどの皮膚病になりやすい犬に使うと良いとされています。その他にも、愛犬のケージやキャリーケースの消毒殺菌にもお酢は無害・無毒で安心して使うことができます。
天然成分であるお酢は皮膚に優しく、化学物質が含まれている市販のものよりも安心して使えるというのは大きなメリットと言えるでしょう。
その他の活用法
犬にお酢を使った方法として有名なものは他にもあります。例えば、動物病院でしか行えない歯石とり。しかし、まだそこまで溜まっていない、あるいは歯石になりかけているという場合は、お酢とハチミツを混ぜたものを歯石につけてあげてこすると取れやすくなります。
あくまでも取れやすくなるだけで、取れない場合もありますので歯の汚れが気になった試してみるくらいの感覚で挑戦してみましょう。
また、マダニが取れない場合は、お酢とお湯をお風呂や桶などにはりその中に犬を入れてあげると自然と取れます。ただ、こちらも応急処置であるためできるなら獣医師のもとで一刻も早く正しい治療を受けましょう。
さらにマーキングの匂いやフンの匂いの対策としては、酢水を霧吹きの中に入れてスプレーをすると消臭効果を発揮してくれます。また、殺菌も同時にしてくれるため、トイレのしつけやマーキング対策としても効果的です。さらに耳ダニ予防として耳掃除の時にお酢を少しつけた綿棒を使うと効果的です。よければ試してくださいね。
犬にお酢を使用する際の注意点
お酢は目に入るとしみる原因になりますので顔に向けてスプレーをするのはやめておきましょう。また、お酢の匂いはしつけに使うほど、犬にとっては刺激の強いものです。そのまま使用するとあまりにも刺激が強すぎますので、必ず水で薄めてから使うようにしましょう。
さらに、お酢は健康に悪影響はないとは言っても、アレルギーがある可能性もありますのでお酢に触れて嘔吐や下痢などのアレルギー反応が見られたら病院へ急ぐようにしましょう。
まとめ
お酢は犬には必要のない食材ということを説明しました。無理に食べさせる必要はまったくないので、サプリなどで犬への健康効果を謳っているお酢関係の商品は効果はないと思ってよいでしょう。
お酢を与えるのなら、鳥の胸肉や牛の赤身などを普段の食事に少量プラスするだけでそれ以上の効果を得られます。ただ犬がお酢を舐めた、酢イカ、酢飯を食べてしまったからといって何か問題があるものではありませんのでご安心ください。
犬に必要な栄養素は、人間とは全く違うことを知っておけば与えて良いものや悪いものもしっかりわかってきます。愛犬と飼い主さんは、一緒に暮らす仲間ですが同じものを食べていてはお互い健康に過ごすことはできません。
お互いの健康のために、飼い主さんはお酢を・愛犬はお肉をと上手に使い分けて楽しく暮らしたいものですね。
ユーザーのコメント
20代 女性 あっぷるぱい
そのままあげるには難しく、使いづらい食品なのかもしれませんね。何かよっぽどの理由がない限り、それでもお酢を使うと言うのは飼い主の押し付けなのかもしれないなぁと思いました。(お酢好きのわんちゃんならべつなのかな?どうなんだろう。)
お酢と同じような効果のある食材は他にもありますから、そちらを使う方が有効かつ効率が良いのかもしれないですね。
躾でのお酢を使ったスプレーや、トイレ掃除にお酢(クエン酸)は舐めても安心ですし手軽に作れるスプレーなのでおすすめされてますね。
わんちゃんが使っているタオルやクッションやマットなどを洗濯する際に洗剤と一緒にお酢を入れると染み付いた臭いが取れるそうです♪古くなったお酢などあれば試してみるのも良いかなと思います。洗剤と一緒に適当にドバドバと入れる程度で良いそうです。
お酢の匂いが気になる方はクエン酸などを使うと良いですが、お酢でも干して乾燥してしまえば匂いは気になりません。
20代 女性 てとめる
女性 もふころ