犬にカニを与えても大丈夫?安全な与え方と生や殻の注意点まで詳しく解説

犬にカニを与えても大丈夫?安全な与え方と生や殻の注意点まで詳しく解説

犬にカニを与えても大丈夫?加熱したカニの安全な与え方から、生の危険性、殻の誤飲リスクまで詳しく解説。アレルギー症状や、万が一生で食べてしまった時の応急処置も。愛犬の健康を守る正しい知識を紹介します。

SupervisorImage

記事の監修

大阪府立大学生命環境科学部獣医学科卒業。その後、約10年に渡り臨床獣医師として動物病院に勤務。予防医療、行動学、老犬の介護問題に興味を持っています。正しい知識と情報を多くの方に伝えたいという思いからWEBライターとして動物関係の記事を執筆しています。

条件を守り「加熱したカニ」であれば犬に与えても大丈夫

お皿に盛られたドッグフードと食べようとしない犬

結論から言うと、いくつかの重要な条件を守れば、加熱したカニの身を犬に与えることは可能です。

犬は本来肉食に近い雑食動物であり、カニの身に含まれるタンパク質やミネラルは栄養になります。

しかし、与え方によっては健康に影響がでる場合もあり、注意が必要です。

たとえば、犬の体質によっては、アレルギー反応が出たり、ミネラルの過剰摂取などのリスクも考えられるため、カニを与える前に獣医師へ確認するようにしましょう。

また、カニを与える際には必ず以下のポイントを守って与えるようにしましょう。

味付けは絶対にしない

人間用に塩ゆでしたり、バターで炒めたりしたカニは犬に与えてはいけません。 人間用の味付けは犬にとっては過剰です。

塩分が多い場合は腎臓や心臓に負担をかけたり、脂肪分が多い場合は、肥満や膵炎(すいえん)の原因になったりする可能性があります。(※膵炎とは、消化酵素を分泌する膵臓に炎症が起こる病気。激しい腹痛や嘔吐を伴うことがあります)

もし犬にカニを与えるのであれば、何も味付けをせずに蒸したり茹でたりしたものを与えるようにしましょう。

与えるのは身の部分だけにする

カニの身は柔らかく消化しやすいですが、殻や足の先端、エラなどの硬い部分は絶対に与えないでください。

これらの部分は消化できず、犬の口の中や食道、胃腸を傷つける可能性があります。必ず飼い主が手で丁寧にほぐし、身だけを少量取り分けてあげましょう。

ごく少量をおやつとして与える

カニは犬にとって主食ではありません。あくまでおやつやトッピングとして、ごく少量に留めるべきです。

一日に犬が必要とする総カロリーの10%以内におやつの量を抑えるのが理想とされています。特に初めて与える際は、アレルギー反応が出ないか確認するためにも、ごく少量から試すようにしてください。

犬に生のカニを与えるのはNG

ハンドサインで制止されている犬

加熱したカニとは対照的に、生のままのカニを犬に与えるのは絶対にやめてください。生の甲殻類には、犬の健康に深刻な害を及ぼす可能性のある、さまざまなリスクが潜んでいます。

食中毒のリスクがある

生の魚介類には、腸炎ビブリオ菌などの食中毒の原因となる細菌が付着している可能性があります。これらの細菌は人間だけでなく犬にも感染し、激しい嘔吐や下痢、腹痛といった消化器症状を引き起こします。特に子犬やシニア犬、持病のある犬は抵抗力が弱いため、重症化する危険性が高まります。

寄生虫に感染するリスクがある

生の川ガニなどには、肺吸虫(はいきゅうちゅう)といった寄生虫が潜んでいることがあります。この寄生虫が犬の体内に入ると、肺に寄生して咳や呼吸困難などの呼吸器症状を引き起こす「肺吸虫症」という病気を発症する可能性があります。治療が遅れると命に関わることもあるため、予防が非常に重要です。

犬が生のカニを食べると引き起こされる症状

加熱されたカニの身

万が一、愛犬が生のカニを食べてしまった場合、以下のような症状が現れる可能性があります。これらのサインを見逃さないように注意深く観察してください。

嘔吐・下痢

最も多く見られるのが、嘔吐や下痢といった消化器系の異常です。これは、生の身が消化しにくいために起こる消化不良や、前述した細菌感染による食中毒が原因と考えられます。血便や粘液の混じった便が出ることもあります。

食欲がなくなる

いつもは元気な愛犬がぐったりして動かなくなった、大好きなおやつやフードを食べたがらない、といった症状も危険なサインです。腹痛や吐き気、発熱などによって全身状態が悪化している可能性があります。

咳・呼吸の異常

肺吸虫のような寄生虫に感染した場合、咳が出始めたり、呼吸が速く苦しそうになったりすることがあります。これらの症状はすぐには現れず、感染から数週間後に発症することもあるため注意が必要です。

犬は生のカニをどれくらい食べると危険?

診察台の上で獣医師になでられながらぐったりする犬

「どのくらいの量なら安全か」という明確な基準はありません。

たとえ一片であっても、犬の健康に悪影響を及ぼす可能性があると考えるべきです。

危険な量は、犬の体の大きさや年齢、健康状態によって大きく異なります。例えば、体重2kgのチワワと30kgのゴールデン・レトリバーでは、同じ量を食べても体に与える影響は全く違います。

また、食べたカニに細菌や寄生虫が含まれていた場合、量に関わらず深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。したがって、「少量だから大丈夫」と判断することは非常に危険です。生のカニは量に関わらず、犬にとって有害であると認識してください。

犬が生のカニを食べたときの応急処置

犬を膝の上に抱っこしながら何かを書く女性

愛犬が生のカニを食べてしまったことに気づいたら、飼い主はパニックにならず、冷静に行動することが重要です。以下の手順で落ち着いて対処してください。

状況を正確に把握する

まずは、いつ、何を、どのくらいの量を食べたのかをできる限り正確に確認してください。カニの種類(川ガニか海のカニか)、食べた部分(身、内臓、殻など)、食べた量、食べてからの経過時間などをメモしておくと、動物病院での説明がスムーズになります。

自己判断で吐かせようとしない

インターネットなどで見かける「塩やオキシドールを使って吐かせる」といった方法は、絶対に行わないでください。素人が無理に吐かせようとすると、吐いたものが気管に入って誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こしたり、食道を傷つけたりする危険性があります。処置は必ず獣医師の判断に委ねましょう。

速やかに動物病院へ連絡し指示を仰ぐ

最も重要なことは、すぐに動物病院へ連絡することです。深夜や休日の場合は、救急対応している動物病院を探してください。電話で先ほど確認した状況を正確に伝え、獣医師の指示を仰ぎましょう。病院へ連れて行くよう指示された場合は、食べたものの残りやパッケージなどがあれば持参すると診察の助けになります。

犬にカニを与える場合は「アレルギー症状」にも注意する

自分の足を噛んでいる子犬

カニは、犬にとってアレルギーの原因となる可能性がある食材(アレルゲン)の一つです。これは加熱済みであっても同様です。初めてカニを与える際は、アレルギー反応が出ないか特に注意深く観察する必要があります。

皮膚の「アレルギー症状」

食物アレルギーの症状として、皮膚のかゆみ、発疹、赤みなどがよく見られます。特に目の周りや口の周り、耳、足先などをしきりに掻いたり舐めたりするような仕草が見られたら注意が必要です。

命に関わる「アナフィラキシーショック」を起こす可能性もある

非常に稀ですが、重篤なアレルギー反応であるアナフィラキシーショックを起こす可能性もゼロではありません。これは、全身に及ぶ急激なアレルギー反応のことで、呼吸困難や血圧低下、ぐったりして意識を失うなどの症状が見られます。これは命に関わる緊急事態ですので、少しでも疑わしい場合は一刻も早く動物病院を受診してください。

犬がカニの「殻」を誤飲しないように注意

ソファの上でしょんぼりとした表情の犬

カニを与える際に最も注意すべきことの一つが、殻の誤飲です。犬がカニの殻を食べてしまうと、非常に危険な事態を引き起こす可能性があります。

食道・胃・腸を傷つける危険性がある

カニの殻は硬く、割れると鋭利になります。これを犬が噛み砕かずに飲み込んでしまうと、口の中や喉、食道、胃、腸などの消化管を傷つけ、出血や炎症を引き起こすことがあります。

腸閉塞を引き起こすリスクがある

消化されないカニの殻が腸に詰まってしまうと、腸閉塞(ちょうへいそく)という状態になることがあります。これは、腸の中で食べ物や便の流れが完全に止まってしまう非常に危険な状態で、激しい嘔吐や腹痛を伴い、緊急手術が必要になるケースも少なくありません。

対策として、犬に与える際は必ず殻を完全に取り除くことはもちろん、人間が食べた後の殻をゴミ箱から漁られないよう、蓋付きのゴミ箱に捨てるなど厳重な管理を徹底しましょう。

まとめ

食器からフードを食べる犬

今回は、犬にカニを与える際の注意点について解説しました。要点をまとめると、カニは「加熱した身のみを、味付けなしで、ごく少量」であれば与えることができます。しかし、アレルギーのリスクは常に考慮する必要があります。

一方で、「生のカニ」や「カニの殻」は、細菌や寄生虫、消化管損傷、腸閉塞などの深刻なリスクがあるため、絶対に与えてはいけません。万が一愛犬が食べてしまった場合は、自己判断で対処せず、速やかに動物病院に連絡してください。

愛犬の喜ぶ顔は見たいものですが、その健康と安全を守ることが飼い主の最も大切な責任です。少しでも不安を感じる場合は、与えないという選択が最も賢明と言えるでしょう。愛犬との食生活で不明な点があれば、かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。

はてな
Pocket
この記事を読んだあなたにおすすめ
合わせて読みたい

あなたが知っている情報をぜひ教えてください!

※他の飼い主さんの参考になるよう、この記事のテーマに沿った書き込みをお願いいたします。

年齢を選択
性別を選択
写真を付ける
書き込みに関する注意点
この書き込み機能は「他の犬の飼い主さんの為にもなる情報や体験談等をみんなで共有し、犬と人の生活をより豊かにしていく」ために作られた機能です。従って、下記の内容にあたる悪質と捉えられる文章を投稿した際は、投稿の削除や該当する箇所の削除、又はブロック処理をさせていただきます。予めご了承の上、節度ある書き込みをお願い致します。

・過度と捉えられる批判的な書き込み
・誹謗中傷にあたる過度な書き込み
・ライター個人を誹謗中傷するような書き込み
・荒らし行為
・宣伝行為
・その他悪質と捉えられる全ての行為

※android版アプリは画像の投稿に対応しておりません。