犬にスルメを与えるのはNG!その理由と誤って食べたときの正しい対応

犬にスルメを与えるのはNG!その理由と誤って食べたときの正しい対応

スルメは犬にとって消化しづらく、塩分や添加物による健康被害のリスクがあります。本記事では、犬がスルメを食べた際の危険性と正しい対処法について詳しく解説します。

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記事の監修

大阪府立大学生命環境科学部獣医学科卒業。その後、約10年に渡り臨床獣医師として動物病院に勤務。予防医療、行動学、老犬の介護問題に興味を持っています。正しい知識と情報を多くの方に伝えたいという思いからWEBライターとして動物関係の記事を執筆しています。

犬にスルメを与えてはいけない理由

お皿に盛られたするめ

スルメは人間にとっては身近でおいしい食品ですが、犬にとっては健康を害する恐れがあります。

犬の消化器官や代謝機能は人とは大きく異なるため、普段私たちが何気なく食べているものでも、犬に与えると体調不良や重篤な症状を引き起こす可能性があるのです。そのため、愛犬にはスルメを与えないことを強くおすすめします。

以下では、犬がスルメを食べた場合の具体的なリスクについて解説します。

消化しにくい

犬は本来、野生環境で肉や骨を食べることに適した消化器を持っていますが、スルメのように人工的に乾燥され、極端に硬くなった食品を十分に消化することは困難です。

スルメは乾燥状態から唾液や胃液によって水分を吸収すると、大きく膨張し、弾力性の強い塊に変化します。この塊が消化器官内でうまく消化・通過できずに停滞すると、胃腸のトラブルを引き起こす原因となります。

特に小型犬や仔犬の場合、スルメのような硬質で消化しづらい食品は、消化管内で容易に詰まり、便秘や排便困難を招きやすくなります。また、消化管内の停滞が慢性的に続くことで、腸の健康状態を悪化させる可能性もあります。

塩分が多い

スルメには味付けや保存目的で多くの塩分が含まれていることが一般的です。犬は人間よりも塩分への感受性が高く、摂取量が少量でも体への負担となります。塩分を過剰に摂取すると、犬の体内でバランスを崩し、腎臓や心臓に慢性的な負担をかけてしまいます。

犬にとって、塩分を継続的に摂取し続けることは、将来的に心疾患や腎不全など、深刻な病気の原因となる可能性があります。塩分摂取量は犬種や体重によって異なりますが、基本的には人間の食品に含まれる塩分濃度は犬には高すぎると理解しておくことが重要です。

添加物による健康への影響も…

市販のスルメには、保存性を高めたり、味を調えるために、さまざまな添加物が使用されています。これらは人間の健康には問題ない範囲で使用されていますが、犬の体には強い刺激や負担となることがあります。

特に、調味料に含まれる成分は犬の消化能力を超える場合があり、胃腸障害を引き起こしたり、体調不良のきっかけになる可能性があります。

イカアレルギーを引き起こす恐れがある

犬の中には、イカや魚介類に対してアレルギー反応を示す場合があります。一度アレルギー反応を起こすと、犬は皮膚のかゆみや湿疹、嘔吐や下痢などの症状が出やすくなります。

アレルギーは一度発症すると完治が難しく、生涯にわたって食事管理や生活環境への配慮が必要になることがあります。そのため、あえてスルメなどアレルゲンとなりうる食品を与えることは避けるのが賢明です。

犬の健康を守るためにも、スルメのような食品は犬用のおやつに置き換えるなど、安全性が確立されたものを選ぶようにしましょう。

犬がスルメを食べたときに起こる健康リスク

ブランケットに包まる体調が悪そうな犬

犬が誤ってスルメを食べてしまうと、さまざまな健康上のリスクにさらされることがあります。飼い主が事前にこうしたリスクを把握しておくことは、万が一の際に適切な対応をとる上で非常に役立ちます。

以下では、スルメを摂取した場合に犬が陥りやすい具体的な症状や健康上の問題を解説します。

「腸閉塞」の危険がある

スルメは水分を吸収すると数倍程度に膨らみ、弾力性を持った塊になります。これが消化器官で詰まってしまうと、食物や消化液が正常に通過できず、胃腸の閉塞(腸閉塞)を引き起こす恐れがあります。

閉塞を起こすと、犬は繰り返し嘔吐したり、食欲不振、腹痛、排便困難などの症状を示します。症状が進行すると、腸の血流障害を起こし、緊急の治療が必要となることもあります。

飲み込む際に「胃や食道を傷つける」恐れがある

スルメは乾燥した非常に硬い食品のため、飲み込む際に消化管の粘膜を刺激する可能性があります。特に、小型犬や高齢犬は喉や食道の粘膜が弱く、スルメの硬い塊が擦れることで炎症や痛みを引き起こす場合があります。

この刺激が続くと消化管の粘膜に損傷が生じ、出血や二次的な感染症を招くこともあり、軽視できない問題です。

「塩分中毒」の恐れがある

犬は人間に比べて塩分を代謝する能力が低いため、スルメのような塩分の多い食品を摂取すると急性の塩分中毒の症状が現れる場合があります。

塩分の過剰摂取が原因で、犬は激しい口渇感や頻繁な水分摂取、嘔吐、下痢、元気消失などの症状を見せます。重症化すると体の震えやけいれん、意識障害に至るケースもあり、早期の獣医師による診察が不可欠になります。

これらのリスクを考えると、犬がスルメを誤って食べてしまった場合は、症状が軽度であっても決して軽視せず、動物病院に連絡して獣医師の指示を仰ぐことが重要です。

犬がスルメを食べてしまったときの対処法・応急処置

獣医師による問診中の飼い主と犬

飼い主が気をつけていても、犬がスルメを誤って食べてしまうことがあります。そのような状況が起きた際には、慌てず冷静に対応することが最も重要です。

間違った処置を行うと症状を悪化させる場合もありますので、以下に示す適切な応急処置と対応方法を参考にしてください。

飼い主が行うべき応急処置

犬がスルメを口にしてしまったことに気付いたら、まずはこれ以上食べないようにスルメを犬の届かない場所へ片付けましょう。次に、犬の現在の状態を冷静に観察してください。

食べてしまった量や時刻、犬の様子(吐き気、苦しそうな仕草、普段との違い)を正確に記録しておくことが、動物病院に連絡した際に大変役立ちます。

自己判断での吐かせる行為は危険

犬が異物を食べた際、すぐに吐かせようとする方もいますが、スルメの場合は非常に危険です。

乾燥したスルメは硬く、無理に吐かせることで喉や食道を傷つけたり、吐き出す途中で詰まって窒息を引き起こす可能性があります。吐かせる処置は絶対に自己判断で行わず、獣医師の指示に従ってください。

動物病院で獣医に伝える情報

獣医師が的確な判断と治療を行うためには、以下の情報を整理して伝えるとよいでしょう。

  • 犬がスルメを食べた正確な時間(約〇〇分前、など)
  • 食べたスルメの量(スルメのサイズや具体的な形状など)
  • 現在の犬の様子(嘔吐や元気がない、などの異常があるか)
  • 犬の基本情報(犬種年齢体重持病の有無)
  • 可能であればスルメのパッケージ情報(成分表示など)

また、明らかに異常な症状(繰り返しの嘔吐や下痢、震え、意識が朦朧としているなど)が見られる場合は、躊躇せずに早急に動物病院へ向かいましょう。夜間や休日でも対応してくれる動物救急病院の連絡先をあらかじめ確認しておくことも重要です。

犬がスルメを食べてしまったときの最も安全な対処法は、自己判断を避け、必ず動物病院に相談することです。獣医師の指示を仰ぎながら慎重に対応しましょう。

まとめ

女性に抱きしめられている犬

スルメは人間にとって手軽な食べ物ですが、犬に与えると健康上の深刻なリスクを招く可能性があります。消化器官での閉塞や粘膜の損傷、塩分過多による急性中毒など、犬の身体にとって負担が大きい食品です。

万が一愛犬がスルメを口にしてしまった場合は、自己判断で対処せず、冷静に状況を確認したうえで速やかに動物病院に連絡を取りましょう。適切な情報提供が獣医師の正確な診断と迅速な対応につながります。

犬の健康を守るため、日頃からスルメなどの危険性を持つ食品は犬の届かない場所で管理し、与えないようにすることが大切です。

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