犬にアーモンドを与えても大丈夫?適量・与え方・注意点を解説

犬にアーモンドを与えても大丈夫?適量・与え方・注意点を解説

犬はアーモンドを少量なら食べても大丈夫ですが、高脂肪・高カロリーのため、肥満や膵炎などのリスクがあります。特に小型犬では影響を受けやすいため注意が必要です。

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記事の監修

大阪府立大学生命環境科学部獣医学科卒業。その後、約10年に渡り臨床獣医師として動物病院に勤務。予防医療、行動学、老犬の介護問題に興味を持っています。正しい知識と情報を多くの方に伝えたいという思いからWEBライターとして動物関係の記事を執筆しています。

犬はアーモンドを食べても大丈夫?

沢山のアーモンド

犬はアーモンドを少量であれば基本的に安全に食べられる食材の一つです。ただし、与える量や方法には注意が必要です。

愛犬が人間の食べているものに興味を示すことはよくありますが、香ばしいアーモンドもその一つでしょう。「本当に犬にアーモンドを与えてもいいの?」と不安になる飼い主さんも少なくありません。ここでは、犬がアーモンドを食べる際の安全性や注意すべきポイントをわかりやすく解説します。

犬にとっての毒性はほぼなし(甘味種に限る)

食用として流通している甘味種のアーモンドには、犬に深刻な中毒を引き起こすような有害成分はほぼ含まれていません。そのため、誤って少量を食べてしまっても、すぐに健康を害することはまずありません。ただし、食用にされない苦味種(ビターアーモンド)には犬に有害な成分が含まれているため、誤って与えることがないように注意が必要です。

また、毒性がないといっても無条件で安全というわけではありません。アーモンドは脂質が非常に多く、与え方や量、犬の体質次第では健康リスクが生じることがあります。特に注意が必要なのが、カビ毒の一種であるアフラトキシン汚染のリスクです。アーモンドを犬に与える場合は、品質が管理された新鮮な製品を選び、25℃以下・湿度60%以下の環境で密閉保存したものを使いましょう。

小型犬と大型犬ではリスクが異なる

犬のサイズによって、アーモンドを与えるリスクには差があります。一般的に、小型犬のほうが同じ量でも影響を受けやすいため、より慎重になる必要があります。

アーモンドは脂肪分が非常に多く、高カロリーのため、特に小型犬にとっては肥満や膵炎のリスクを高めます。また粒のまま与えると、小型犬の場合は喉や消化管に詰まらせる誤飲や消化管閉塞のリスクが高くなります。一方、大型犬は比較的影響を受けにくいものの、与え過ぎは禁物です。犬の体格にかかわらず、与える場合は細かく砕き、慎重に量を調節して与えることが大切です。

アーモンドの栄養と犬へのメリット

割れたアーモンド

アーモンドには犬にとって有益な栄養素が含まれており、少量を適切に摂取させることで健康上のメリットも期待できます。ただし、あくまで「適量を守った場合」の話であり、主食として与えるべきではありません。

ビタミンEの抗酸化作用で老化対策

アーモンドには抗酸化作用を持つビタミンEが豊富に含まれています。ビタミンEは老化や病気の原因になる「活性酸素」を抑える働きがあり、犬の細胞の健康維持や老化防止に役立ちます。犬に必要なビタミンEの目安量はおよそ0.6 IU/kg(体重1kgあたり)ですが、アーモンドから大量に摂取させる必要はありません。おやつとして少量取り入れる程度にとどめましょう。

不飽和脂肪酸による皮膚・被毛サポート

アーモンドにはオレイン酸やリノール酸といった不飽和脂肪酸が含まれています。特に、アーモンドに含まれるリノール酸とオレイン酸の割合はおおよそ1:7とされており、犬の皮膚や被毛の健康をサポートする働きがあります。皮膚の乾燥や毛並みの改善に適度な効果が期待できますが、脂肪分が多いため、過剰摂取は控えてください。

ミネラルや植物性タンパク質で筋肉・骨を強化

アーモンドはマグネシウムやカルシウム、カリウムなどのミネラル類のほか、植物性タンパク質も含んでいます。これらの栄養素は犬の筋肉や骨を健康に保ち、体全体の機能維持に役立ちます。ただし、アーモンドに含まれる植物性タンパク質は必須アミノ酸が不十分であるため、主食の代わりにはなりません。これらの栄養素はドッグフードにバランスよく含まれているため、あくまでも補助的なおやつとして与えることを心がけてください。

犬にアーモンドを与える際の注意点と健康リスク

犬におやつを与えている

犬にとってアーモンドは、適量を守れば安全ですが、与え方や量によっては健康に影響を与えることがあります。メリットよりもリスクが大きくなる場合もあるため、慎重な判断が必要です。

高脂肪・高カロリーによる肥満と膵炎のリスク

アーモンドはその重量の約50%が脂質で、非常に高カロリーな食品です。頻繁に与えるとカロリーオーバーになり、肥満の原因となります。肥満は犬にとって糖尿病や関節疾患、心臓病など、さまざまな健康問題を引き起こすリスクを高めます。

特に注意したいのが膵炎(すいえん)です。膵炎は脂質が多い食べ物を頻繁に与えることが原因の一つとなり、犬の場合、高脂肪食に関連した膵炎の発生率は約9〜16%ともいわれています。ミニチュア・シュナウザーやヨークシャー・テリアのように膵炎を発症しやすい犬種もいるため、より注意が必要です。

豊富な食物繊維が引き起こす消化不良・下痢・嘔吐

アーモンドには食物繊維が約10g/100gと多く含まれています。犬は本来、植物由来の食物繊維を大量に消化することが得意ではありません。食物繊維を過剰に摂取すると、消化不良や腸への負担が生じ、下痢や嘔吐を引き起こすことがあります。特に子犬や高齢犬など、消化機能が弱い犬は、さらに注意が必要です。

アレルギーと稀な中毒症状

アーモンドも犬にとってアレルゲンになる可能性があります。初めて与える際には、ごく少量から始め、皮膚のかゆみ、発疹、嘔吐、下痢などのアレルギー症状がないかをよく観察してください。

また非常にまれですが、苦味種のアーモンド(ビターアーモンド)にはアミグダリンという物質が含まれており、体内でシアン化合物に変化し中毒症状を起こすことがあります。市販されている食用の甘味種アーモンドは心配ありませんが、万が一ビターアーモンドが混ざる可能性のある商品には十分注意してください。

味付け製品・塩分・糖分のリスク

一般的に市販されているアーモンドには塩分、砂糖、スパイス、チョコレートなどが含まれている場合があります。これらの成分は犬には有害であり、避けなければいけません。

特に塩分の過剰摂取は腎臓や心臓に大きな負担をかけます。チョコレートは犬にとって猛毒で、少量でも重篤な中毒症状を引き起こす可能性があります。犬にアーモンドを与える場合は必ず無塩・無糖で味付けのないプレーンタイプを選びましょう。

犬が食べても安全なアーモンドの量の目安

アーモンドの重さ計測

アーモンドは必ずしも犬に必要な食品ではなく、あえて与える場合はごく少量にとどめるべきです。アーモンド1粒は平均で約1.2g、約7kcalと高カロリーであるため、1日に与える場合の適量は、犬の体重や体調に応じて慎重に判断しましょう。以下に目安を示します。

犬の体重
アーモンドの目安量(1日あたり)
~10kg(小型犬) 与えないか、ごく少量(1粒未満)
10kg~25kg(中型犬) 1~2粒程度
25kg~(大型犬) 2~3粒程度

この表はあくまでも一般的な目安です。特に小型犬はほんの少しでも影響を受けやすいため、与えないことを推奨します。また、中型犬や大型犬であっても、犬それぞれの体質や健康状態、普段の食事量などを考慮して慎重に調整してください。

はじめはごく少量から試す

初めてアーモンドを与える際は、まずは細かく砕いたアーモンドパウダーで約0.1g程度から試し、アレルギー反応や消化不良などが起きないか数日間様子を見てください。異常が見られない場合でも、積極的に増やす必要はありません。

万が一、嘔吐や下痢、腹痛、食欲不振など異変が見られた場合はすぐに中止し、症状が続くようであれば動物病院での診察を受けるようにしましょう。

犬にアーモンドを安全に与える方法

砕かれたアーモンド

犬にアーモンドを安全に与えるためには、粒の大きさや加工方法など、いくつか注意すべきポイントがあります。特に小型犬や丸呑みしやすい犬には、粒のまま与えると喉や消化管に詰まらせるリスクがあるため、細心の注意が必要です。

細かく砕くか、すり潰すのが基本

安全のために、アーモンドは細かく砕くか、すり潰して粉末状(アーモンドパウダー)にして与えるようにしましょう。こうすることで、喉や消化管に詰まる危険性を大きく減らすことができます。市販のアーモンドパウダーを利用する場合は、無塩・無糖・無添加のものを選んでください。

加熱すると消化しやすくなる

アーモンドを加熱(ロースト)すると香ばしく、犬が食べやすく消化しやすくなります。ロースト処理はカビの発生を抑えるのに役立ちますが、すでにカビによって生成されているアフラトキシンなどのカビ毒を分解することはできません。そのため、必ず新鮮で適切に保存されたアーモンドを使用してください。

市販のローストアーモンドは、塩分や油分などが添加されていることが多いため、必ず無添加・無塩・無油タイプを選びましょう。

フードに少量混ぜるのが理想

アーモンドは高カロリー食品のため、頻繁に与えるのは避けましょう。特別なおやつとして、時々、少量だけ与えるようにしてください。

与える際には、いつものドッグフードにアーモンドパウダーを少量混ぜて与える方法が最も安全です。フードに混ぜることで、犬がアーモンドだけを慌てて飲み込むリスクを減らすことができます。また、愛犬に直接手から与える場合でも、落ち着いた環境で飼い主がしっかりと見守り、丸呑みしないよう注意しましょう。

アーモンドに似たナッツ類は犬に与えても大丈夫?

ナッツ類

アーモンド以外にも、ナッツ類を犬に与えてよいか迷うことがあるでしょう。しかし、ナッツ類には犬にとって安全性にばらつきがあり、中には非常に危険なものも存在します。

犬にとって注意が必要なナッツ

次のようなナッツは、少量であれば直ちに危険というわけではありませんが、高脂肪・高カロリーのため積極的にはおすすめできません。

カシューナッツ
高脂肪でカロリーが高く、リン(100g中約490mg)が多いため、過剰摂取で尿路結石のリスクがあります。与える場合は極少量にとどめましょう。
ピスタチオ
高脂肪で殻を誤飲する危険があります。またアフラトキシンのリスクもありますので、基本的には避けるほうが無難です。
ピーナッツ(落花生)
正確にはナッツではなく豆類ですが、高脂肪・高カロリーでアレルギーリスクもあります。無塩・無糖で少量だけ与えるようにしてください。

犬に絶対に与えてはいけないナッツ類

次のナッツ類は犬に重篤な中毒症状を引き起こす可能性があり、絶対に与えてはいけません。

マカダミアナッツ
犬にとって非常に有毒で、嘔吐、下痢、脱力、震え、歩行困難などの中毒症状を起こします。原因物質は特定されていませんが、少量でも危険です。
クルミ(特に黒クルミ)
黒クルミにはジャグロンなどメラニン系化合物が含まれており、神経毒性を起こすことがあります。また、カビ毒のリスクもあるため与えてはいけません。
ギンナン(銀杏)
ナッツ類ではありませんが、嘔吐、下痢、呼吸困難などの中毒症状を起こす可能性がありますので、注意が必要です。

ナッツ類を犬の手の届く場所に置かないように保管し、散歩時などに犬が落ちているナッツを誤って食べないよう注意してください。

まとめ

犬にアーモンドを与える場合は少量であれば基本的に安全ですが、高脂肪・高カロリーのため、肥満や膵炎、消化不良などのリスクが伴います。特に小型犬は少量でも影響を受けやすいため、無理に与える必要はありません。

与える際は必ず細かく砕くか、粉末状に加工した無塩・無糖のアーモンドを選び、ごく少量に留めましょう。また、ナッツ類にはマカダミアナッツなど絶対に与えてはいけないものもあるため、正しい知識を持つことが重要です。

犬にアーモンドやナッツ類を与える必要性は特になく、低脂肪で安全な犬用のおやつを適量与えるのが理想です。犬の健康状態や体調に不安がある場合は、必ず獣医師に相談してください。

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