犬の耳ダニの特徴
耳ダニとは別名「耳疥癬」ともよばれ、ミミヒゼンダニという0.3mmほどの小さなダニの寄生によって発症する病気です。
ヒゼンダニは世界的に広く分布し、日本でも各地で高い発症が認められています。耳の中の耳垢やカサブタ、組織液、血液などを栄養源とし、交尾をして卵を産みます。孵化をして幼ダニから成ダニへと成長していき、繁殖を繰り返していきます。
耳ダニはこのように繁殖力が強いことが特徴で、耳ダニを発症している犬との接触によりミミヒゼンダニは感染していきます。
犬の耳ダニに感染した症状
耳ダニが疑われる場合、下記のような症状や仕草がみられます。
- 耳を掻く
- 頭を振る
- 黒い耳垢がみられる
- 耳のニオイがきつい
耳ダニの症状で特徴的なのが、耳のまわりにたくさんの黒い耳垢がみられること。これらはミミヒゼンダニが食べた栄養源の残りカスと、ミミヒゼンダニの排泄物だと考えられます。
またミミヒゼンダニは皮膚の中に侵入して住み着いてしまうため、強い痒みを伴います。耳ダニを発症すると、ミミヒゼンダニが侵入したときに付いた傷と、その傷を修復しようと集まった免疫細胞の分泌によって痒みが発生しているのです。
そのため耳ダニを発症すると耳を頻繁に掻いたり、痒みを少しでも紛らわそうと頭を振ったり地面にこすり付けたりするなどの仕草がみられます。
犬の耳ダニによる病気
耳ダニは症状が悪化すると外耳炎や内耳炎、中耳炎などを併発する恐れがあるため、早期発見・早期治療が重要となります。耳ダニを発症してしまった場合、併発する恐れのある病気をご紹介します。
外耳炎
外耳道に炎症が起きた状態を外耳炎といい、ミミヒゼンダニが付けた傷や排泄物が原因で発症します。強烈なニオイの耳垢が溜まったり、痒みによって頭を振ったり、さらに症状が悪化すると鼓膜が破れる場合もあります。
耳ダニは、垂れ耳の犬種や耳の中の毛が多い犬種、外耳道が狭い犬種は発症しやすい傾向にあります。
内耳炎
耳の奥の内耳の部分に炎症が起きた状態を内耳炎といいます。内耳は、聴覚に関係する「蝸牛」とバランス感覚に関係する「三半規管」から構成されています。
そのため内耳炎を発症すると、まっすぐ進めなくなり、足元がふらついたり、眼振(目が震える)になったり、嘔吐や難聴を伴います。
ミミヒゼンダニが内耳にまで侵入することが原因の一つとして考えられますが、耳ダニの治療において使用した洗浄液が内耳にまで達したことで炎症が起こる場合もあります。
中耳炎
耳の奥の中耳の部分に炎症が起きた状態を中耳炎といいます。中耳は、音を受け取る「鼓膜」と拾い集めた音を収納する「鼓室」、音を増やす「耳小骨」、気圧を調節する「耳管」から構成されています。
そのほか眼球の動きを調整する「自律神経」や顔の筋肉に関係する「顔面神経」も周辺に存在しています。そのため中耳炎を発症すると、頭が左右どちらかに傾いたり、耳が麻痺したり、頭を振るようになります。また、瞳孔が小さくなるホルネル症候群を併発する恐れもあります。
犬の耳ダニの取り方
耳ダニを発症すると、痒みだけでなく耳の中に耳垢が溜まります。目に見えて耳垢が見える分にはケアをすれば問題ないのですが、ミミヒゼンダニはとても小さなダニなので、手で除去することができません。
また耳はとてもデリケートなので、無理にご家庭で取ろうとせず、動物病院でお願いしてみるといいかもしれません。耳垢やカサブタなどをキレイに除去し、耳の中の毛を抜くことが効果的と考えられます。
犬の耳ダニの治療法
耳鏡とよばれる器具で耳の中を観察するか、綿棒などで耳垢を採取して検査するかなどによって、ミミヒゼンダニを確認することができます。
また、採取した耳垢をルーペで観察するだけでも、場合によっては黒い耳垢の上を小さな点状のものが動いていればミミヒゼンダニである可能性が高いといわれています。
ミミヒゼンダニの駆除には、セラメクチンとよばれる殺ダニ剤の滴下投与が効果的です。肩甲骨の間に滴下するだけで効果が期待できますが、ダニの卵には十分に作用しないため、1回のみの投与では成ダニへの成長を防ぐことができません。
そのため、投与後も一週間~10日間ほどの間隔で通院して検査をし、耳ダニがみられた場合は再度投与する必要があります。2回目以降の投与は少量で良く、根気よく続ければ根治が望めます。セラメクチンと同じくイベルメクチンとよばれる殺ダニ剤も効果が認められています。
しかし、シェットランドシープドッグやコリーなどといった遺伝的に重大な副作用を引き起こす恐れがある犬種や、フィラリアを発症している犬種には使用することができないため、慎重に考慮する必要があります。
耳ダニは再発する可能性があるので、症状が治まった様子がみえても油断せず、ミミヒゼンダニが完全に死滅するまで動物病院に通院しましょう。
犬の耳ダニの予防法
耳ダニを発症する原因は、耳の中が蒸れやすいことが考えられます。耳の中が蒸れやすいとは耳の中が渇きにくい状況、つまり垂れ耳の犬種が発症しやすい傾向にあります。
ダックスフンドやゴールデンレトリバー、キャバリア、コッカースパニエルなどの垂れ耳の犬種は日頃から注意して観察してみましょう。テリア種やプードルなどの犬種は耳の中の毛が多いため、汚れが溜まりやすい傾向にあります。
ミミヒゼンダニは繁殖力が強く、感染した犬と接触することで感染します。多頭飼いしているご家庭は、1匹に耳ダニの感染が発覚したら他の犬も必ず検査するようにしましょう。
ミミヒゼンダニは体外でも数日生きることができるので、耳ダニを発症している犬が使った寝床や歯ブラシ、オモチャなどにも卵があるかもしれません。キレイに洗い、消毒をしましょう。
また、飼い主さんのお手入れ不足も耳ダニの発症原因として挙られます。ミミヒゼンダニは耳垢を栄養源として成長しているので、普段からきちんと耳のケアをしましょう。また水遊びやシャンプーのあとなどの湿気の多い状況は繁殖しやすい環境となってしまうので、タオルできちんと水分を拭きとることが大切です。
耳のお手入れ方法
ブラッシングやシャンプー、歯みがき、耳のケア、爪切りなどのお手入れを総称してグルーミングといいます。グルーミングは見た目を整えるだけでなく、体を清潔に保つことでさまざまな病気の予防にもつながります。
耳のケアに関しては、一週間に一度のお手入れを習慣づけましょう。耳の中がとてもデリケートなので、力を入れすぎてはいけません。汚れの程度やニオイなども観察しましょう。
- 犬の背後にまわり、右手で犬の首を支えます。
- 左手の人差し指で鼻の上を、中指と薬指で顎の下を押えることで、頭が動かないよう固定します。
- 左手の親指で耳をめくり、耳の中の毛を抜きます。
- イヤークリーナーを付けたコットンやガーゼで耳の中の周りを拭きます。
- イヤークリーナーを付けた綿棒を入れます。小さく回しながら汚れを取りましょう。
まとめ
耳ダニはどの犬種でも発症する可能性がある病気です。しかし、普段の耳のケアによって耳ダニを予防することができます。グルーミングは見た目を整え、病気を予防できるとご紹介しましたが、それだけではありません。
犬と触れ合ってスキンシップをとることで、信頼関係や絆が深まり、コミュニケーションをとれる絶好の機会です。犬のために、身も心も満たされた生活を送るようにしましょう。
ユーザーのコメント
20代 女性 小夏
耳からの悪臭って、顔を少し近づけただけでも、匂いに敏感な私には、異臭がするのに気付きました。
痒いまま生活するのもかわいそうですし、ひどくなるのも怖いので、お散歩のあとの足を綺麗にする時にでもチェックしてあげるといいですね!
30代 女性 Chappy
いつもシャンプーカットの時にお願いしているくらいです。普段から耳に触れたりして、いざという時に触らせてもらえるようにしておいたほうがいいですね!
30代 女性 もこじ
30代 女性 xoxo
夏場はとくに気を付けています。
耳掃除、トリマーさんは綿のようなものをクルクルっとピンセットのようなものに巻きつけて行っています、私もできるようになりたな、と思うのですが、犬に暴れられると怖いとなかなかできません。なので液体タイプのクリーナーで2週おきにやっているのですが、効果があるのかいまいち不安なままやっています。耳の中に毛が生えてしまうので、トリミングに行った際に抜いてもらっています。
犬が耳を後ろ足でカイカイしだしたら耳をぺろんとめくって、中をチェックしています。汚れていることはあまりないのですが、奥の方は見えないので心配です。記事にあったように耳をこすりつけるような仕草をしたら、要注意ってことですね、気に留めておきます。
40代 女性 こたママ
女性 匿名
20代 男性 耳ダニ博士
よって首周辺や耳周辺には耳ダニは寄生しません。
なぜ耳の裏や首をかいているかというと耳がかゆいけど足が短くて届かないなどの理由で耳をかいているつもりになっているからです。
この場合は首周辺に赤みがでますが首周辺がかゆいわけではありませんので、そういったところで勘違いされる飼い主もいます。
あと、イヤークリーナーを自宅で耳の中に入れ洗浄する方法は耳ダニがいた場合、外に撒き散らす行為になるので、あまりオススメではないです。
外でやればいいかもですが耳掃除のやりすぎも耳の表面を傷つけたり、炎症が起きたりする要因になるので基本は1週間に一回程度で問題ありません。
2、3日で耳垢がたまってくるようなら一度病院に行った方がよいかと思います。
点耳薬を数滴垂らすとありますが、点耳薬の種類によっては数滴でも耳表面の皮膚を弱くしてしまう作用もあるので、これは獣医や、薬剤師などの指示に従って点耳を行って下さい。
女性 ふうた
女性 ぶん