介護中は犬も飼い主も引きこもりがち
介護が必要になると、犬も飼い主自身も外に出ることが億劫になってしまいますよね。
「自分が外に出ている間に愛犬に何かあったら」と心配になったり、愛犬も一緒に連れて行くにしても「外で体調を崩したら……」といった不安から、段々と愛犬の散歩を行うことを躊躇ってしまう飼い主さんも多いはず。実際に私もそうでした。
それに、シニア期に入ると必要な運動量も減ってくるので、飼い主はつい「散歩させなくても大丈夫」と思い込んでしまいます。
しかし、じつは介護中であっても、適度な散歩は必要とされているのです。
介護中でも散歩が必要な理由
なぜ、介護が必要な犬であっても散歩が必要なのでしょうか?ここからは、その理由について詳しくお話します。
ストレス発散のため
介護中に限らず、犬に散歩をさせる大きな理由は以下の2つです。
- 運動不足の解消
- ストレスの発散
必要な運動量が減ってきた犬であっても、生きている限り「ストレス」はどうしても溜まってしまいます。
介護中の犬であれば思い通りに体が動かないことも増えるので、尚更ストレスは溜まる一方ですよね。
人でもそうですが、犬であっても適度な運動はストレスの発散につながります。たった数分であっても、散歩に行くのと行かないのでは、犬にとっては大きな違いとなるでしょう。
犬のストレスが溜まったままになってしまうと、問題行動を起こしたり別の疾患を引き起こしたりする可能性もあるので注意が必要です。
たとえ、必要な運動量が減っていたとしても、愛犬のストレス発散のために適度な散歩を行いましょう。
認知症の予防
介護が必要になりずっと家の中にいると、景色も変わらずにいるので犬の脳への刺激は減ってしまいます。
こちらも人と同様に、犬でも脳への刺激が少ないまま過ごしていると、認知機能に障害が出てきやすくなるのです。
つまり、認知症や痴呆のリスクが高くなってしまうのですね。
散歩で外の空気に触れることや、さまざまな音を聞かせることは、認知症などの認知機能障害を予防させるためにとても重要です。
もし自力で歩けない子であっても、抱っこをしたりカートを使ったりして外に連れ出してあげるといいですよ。
介護が必要な犬の散歩時の注意点
介護が必要な犬であっても、適度に散歩させることの大切さをお話しました。しかし、散歩に行く際に飼い主さんに注意していただきたいこともあります。
ここからは、介護が必要な愛犬の散歩時に気をつけたい注意点について、お話します。
平坦な道・毎回違うコースを選ぶ
介護が必要な犬の多くは、足や腰なども弱ってきているかと思います。若い頃は平気だったわずかな段差でも、介護が必要となった犬にはつらく感じてしまうことも多いです。
散歩で通る道は、階段や段差・坂道などがない、なるべく平坦なコースを選ぶようにしましょう。
ただし、平坦なコースだからと言って「毎回まったく同じ道」というのは、あまりおすすめできません。なぜかと言うと、先ほどもお話したように散歩で得られるメリットの中には「脳への刺激」もあります。
散歩コースとして毎回まったく同じ道を選ぶと、結局は脳への刺激は変わらないままとなってしまうのですね。
だからと言って、コースを大きく変更する必要はありません。「昨日は真っ直ぐ行ったけれど、今日は横の路地に入ってみよう」など、ほんの少しの変化でも大丈夫です。公園などが通り道にあるのであれば、ちょっと寄ってみるのもいいですね。
時間は短めに
健康な若い犬の散歩の時間は、犬の体の大きさによって変わってきますよね。体が大きければ大きいほど、散歩に必要な時間も長くなってきます。
しかし、介護中の犬であれば、体の大きさは関係なく「1回10分程度」が理想です。
「必要な運動量が減ったため」という理由もありますが、やはり体が弱くなってしまっている状態で長く歩かせることは、犬の体調をかえって崩してしまう危険もあります。
さらに、介護が必要となった犬は以前と比べると体力が落ちてしまっていることがほとんどです。
無理に長く歩かせると、途中で体力がもたずにその場に座り込んだり寝そべったりして動かなくなってしまう……ということも十分にあり得ます。
小さい体の子ならばいいのですが、中型犬や大型犬は連れて帰るのも一苦労ですよね。介護が必要となった犬の散歩では、時間は短く設定して愛犬の様子を伺いながら行いましょう。
寒さや暑さの対策を
介護が必要になった犬の中には、シニア期に入っている子も多いですよね。シニア期に入ると、体温調節に関係する生理機能も低下してきます。
犬では「パンティング」と呼ばれる、口でハァハァと大きく呼吸をする体温調節の方法が有名ですよね。しかし、あの行動さえも介護が必要になった犬にとっては大きな負担となります。
なので、前もってしっかり寒さや暑さの対策を行って、「犬が自分で体温調節をせずに済む状態を保ってあげること」が必要なのですね。
- 夏は朝早くや夕方などの涼しくなった時間に散歩をする
- 冬は比較的暖かい時間に、防寒具を着せて散歩をする
シニア期に限らず、愛犬の散歩時にはいつもこうした工夫をしていた飼い主さんは多いはず。介護が必要になった犬でも、同様に気を配ってあげるようにしましょう。
外に連れ出す前に、家の中を軽く歩かせておく「準備運動」も忘れないでくださいね。
愛犬の様子を見ながら適度に散歩をしましょう
介護が必要になった犬にも散歩が必要な理由と注意点をお話しました。
自分で歩ける子はもちろん、自力で歩けなかったり寝たきりになったりした犬にも、外の空気に触れさせることは大切です。
脳への刺激やストレス発散などのメリットをお話しましたが、何より大好きな飼い主さんと一緒にお散歩できることは、愛犬にとってものすごく幸せなこと。
介護が必要になった子でも、可能な限りはお散歩を続けてあげてくださいね。