犬の介護にはどのようなものがある?
人間と同じように、犬であっても介護が必要とされる理由はその子によってさまざまです。まずは「犬の介護の種類」にはどのようなものがあるのか、一部ではありますが解説します。
食事の介護
まず、シニア犬には「食事の介護」が必要となります。犬に限ったことではありませんが、食べることはまさに「生命維持の基本」です。
老化はどの犬にも必ず訪れるもので避けることはできません。しかし、「シニア期の食事管理によって、老化の影響を少なくしたり遅らせたりできる」とも言われているのです。
飼い主が注射器などを使って犬にごはんを食べさせる「強制給餌」の場合はまた少し変わってきますが、自力で食事を摂れる犬の場合に介護で気をつけていきたいポイントは次の3つです。
- 犬が食べやすい構造の食器を使う
- 食欲を出させる工夫を行う
- 栄養面を考えた食事内容を意識する
高齢になると首や背中の筋肉や骨も衰えます。そのため、今までと同じ食器では食べづらいということもあるので、飼い主はシニア期に適した食器を選ぶ必要があります。
また、食事の内容についても、若い頃と同じというのはおすすめできません。シニア犬の場合、代謝機能や消化機能も若い頃よりも徐々に落ちていきます。
なので、若い頃のままの食事内容では、タンパク質をうまく分解できずに内臓に負荷がかかったりカロリーが高すぎて肥満につながってしまったりというケースも出てきます。
もしも食欲が若い頃のままであっても、食事はシニア用に切り替えるようにしましょう。
食欲が衰えてきた犬の場合には、フードを人肌程度に温めて匂いを出すなどして、犬の嗜好性を高めるように意識してみてくださいね。
排泄の介護
シニア犬の介護の中でもっとも工夫や飼い主の配慮が必要となるのが「排泄の介護」です。
犬だけではなくどの生き物でもそうですが、食事と同じく「排泄」も生きていく上での基本本能です。それが自力で思うようにできなくなるというのは、犬にとってもつらくて悔しいことなのです。
もしも高齢の愛犬が排泄で失敗してしまっても、飼い主は広い心で受け止めてあげましょう。叱ることはせずに、トイレの場所やトイレに連れていく時間などを見直すようにしてみてくださいね。
また、「おむつを履かせればいい」と考える飼い主さんも多いかと思います。しかし、トイレに連れてさえいけば自力で排泄できるのであれば、おむつは最後の手段にとっておきましょう。
先ほどもお話したように、「自力で排泄する」というのは犬にとっても生きる上で大切なことで、愛犬の生活の質を保つのにも重要なことなのです。
どの介護でも同じですが、「犬が自分でできること」を飼い主が奪い取ってしまわないように気をつける必要があります。
床ずれ防止の介護
寝たきりになってしまったという犬には「床ずれ防止の介護」が必要となります。
「床ずれ」というのは、長期間同じ姿勢でいた場合に、体重がかかっている部分の皮膚表面が壊死してしまうことを言います。
床ずれは、発生初期では内部組織のダメージを目で見て確認することはできません。そのため、飼い主や周りの人間が異変に気づいた時には、すでにかなり悪化した状態のことがほとんどです。
さらに、床ずれは一度起こってしまうと再発しやすいと言われています。治療期間も長くなってしまうので、介護の初期から「床ずれしないように予防をする」というのが大切です。
床ずれは、体重が長い間にわたって一箇所に集中することから起きてしまいます。なので、飼い主が定期的に愛犬に寝返りを打たせることが重要です。
しかし、このとき無理に犬の体を持ち上げると内臓に負担がかかってしまうこともあるので注意が必要です。
中型犬や大型犬の場合は、飼い主さんは1人で無理をせずに、周囲の人やペット介護サービスなどと協力して行ってくださいね。
また、ウレタンなどを使用した「床ずれ防止マット」なども売っているので、こちらも検討してみてください。
夜泣きへの対応
人間と同じように犬でも痴呆などの認知機能に障害が出てしまうことがあります。
夜中に大きな声で泣き続けるなど、飼い主への精神的負担も多くなってしまうことも珍しくはありません。
犬が夜泣きをする場合には、昼夜が逆転していることがほとんどです。なので、できるだけ昼間のうちに散歩などの適度な運動を行ったり、日光を浴びさせたりして「体内時計を正常に戻す工夫」をしてみましょう。
また、夜泣きは孤独や不安感が要因となっているケースもあります。家族の近くに寝床を移動することでおさまる場合もあるので試してみてくださいね。
愛犬への介護で気をつけたいこと
犬の介護の種類や方法について、簡単にではありますがご紹介してきました。これらの介護を行うにあたって、飼い主のみなさんに特に気をつけてほしいのが、次の3つです。
- 完璧を求めないこと
- 頼れる人やサービスを見つける
- 「大変」よりも「幸せ」が勝る介護を意識する
愛犬への介護を一人で行う飼い主さんは珍しくありません。しかし、たった一人で介護を行うと、愛犬が旅立った際の喪失感がとても大きくなり、ペットロスが重症化しやすくなってしまいます。
愛犬の介護を行う際には、ご家族や友人など周囲の人たちとも協力するようにしましょう。ペット介護のサービスや動物病院の往診などを利用するのも一つの手です。一人で抱え込まないようにしてくださいね。
また、介護は終わりが見えないので、つい「大変」という気持ちが強くなってしまいます。
しかし、どんなに大変であっても、愛犬と過ごせる「今」という時間を大切に感じてみてください。そうすることで「大変」という気持ちよりも「幸せ」という想いの方が勝っていくかとおもいます。
愛犬の介護に完璧を求めたり、自分だけでどうにかしようと気張ったりする必要はありません。大好きな飼い主のみなさんが元気に介護を行ってくれることこそが、愛犬にとっては幸せなことなのです。
それを心に留めて、愛犬の介護に取り組んでいきましょう。