犬の毛玉がひどくなる原因
- 毛質
- 外部からの刺激
- お手入れ不足
- • 水分や汚れ
毛質や毛量
毛玉のできやすさには、元々の毛質が大きく関係しています。
毛玉はロングコートの犬にできます。ロングコートにも様々なタイプのコートがありますが、ポメラニアン、シーズー、シェットランドシープドッグ、ゴールデンレトリバーなどでも毛玉がよくできると言われています。
犬の被毛には、硬くてしっかりしたオーバーコートとふわふわの柔らかいアンダーコートの二層に分かれているダブルコートと、アンダーコートがないまたはとても少ないシングルコートがあります。ダブルコートの犬は毛量が多いために毛玉ができやすくなってしまいますが、シングルコートでもマルチーズやヨークシャーテリアのように細く柔らかい毛を持つ犬では毛玉ができやすいと言われています。
また、プードルやビション・フリーゼといった犬種は抜け毛は少ないものの、クルクルとカールした毛質のため、ブラッシングが不十分だと毛と毛が絡み付いて毛玉ができやすいです。
服や首輪など外部からの刺激
犬の毛玉は、首輪やハーネスをつけたり、服を着せたりするといった外部からの刺激でもできやすくなります。
首輪やハーネスをつけている部分は、毛が押さえつけられたり、動くたびに毛がもつれることで毛玉ができやすくなります。服を着せることがある犬では、首回りや足回りで同じことが起きたり静電気が起きて毛玉ができやすくなります。
首輪を常につけっぱなしだったり、服を着せることが多い時、また着ている時間が長い場合は注意が必要です。また、手術後や病気などでエリザベスカラーをつけると、首輪同様に首回りに毛玉ができやすくなります。
お手入れ不足
毛玉ができる原因として、お手入れ不足も挙げられます。
先に紹介した、ダブルコートの犬種では一般的に年に2回、春と秋に換毛期があります。この時期は大量の毛(アンダーコート)が一気に抜ける為、こまめにブラッシングをして抜け毛の除去をしないと、抜けた毛が絡み、あっという間に毛玉ができてしまいます。
また高齢犬には、若い時には必要のなかった注意が必要になることがあります。まず、高齢になると、新陳代謝が衰えたり外に出る機会が減ったりして、換毛期がずれることがあります。春や秋といった季節にとらわれず、抜け毛が多くなったタイミングでしっかりとブラッシングをしてあげましょう。
また、高齢犬は、体調が良くないことが増えたり動くのがおっくうになったりして、トリミングサロンの利用や飼い主さん自身によるお手入れが難しくなることもあり、気付かぬうちに毛玉になってしまっていた、ということもよくあります。特に寝ていることが多くなると、いつも下にしている側面にだけ毛玉がすぐにできたりすることもあります。
水分や汚れ
毛が濡れていると、毛玉になりやすくなります。暑い時期に水遊びをしたりシャンプーをした後、雨の中で散歩に行った後などは「濡れたから乾かさなきゃ」と思うでしょうが、毛に雪がついた場合も同様です。冬場に雪が降る地域では、お散歩の時に、足や胸、お腹周りに雪玉が付きます。雪の中で長時間遊んだり歩いたりすると、犬の毛が雪の水分でまとまり、その上からさらに雪が付きやすくなって雪玉ができます。
そして、お散歩の後や雪遊びの後に、しっかりと雪を溶かしてほぐさないと、まとまったまま毛玉になることがあります。夏場の海やプール遊び、雨の日のお散歩なども同じように、終わったらしっかりと乾かしてとかす必要があります。
水だけではなく、泥や葉っぱなどが毛につくと、そこに周りの毛が絡んで毛玉となる事があります。汚れや毛についたものは、早めに取り除きましょう。
また、野生動物ではよく毛玉が見られるのと同じように、外飼いであまり毛のお手入れがされていない犬では、毛玉が色々なところにできてしまっていることがあります。どんな生活環境であっても、日々のケアは大切です。
犬の毛玉ができやすい体の部位
- 耳の後ろやしっぽ
- • 前足や後ろ足の飾り毛
- 脇や後ろ足、内股
- 毛の根本
耳の後ろやしっぽ
耳の後ろやしっぽの付け根は、角度があったりブラッシングで小回りを利かせる必要があるために、きっちりとかすことが意外に難しく、あまりとかされない毛と毛が絡み合って毛玉ができやすいです。
耳の飾り毛が豊かなパピヨンやロングコートのチワワなどでは耳の飾り毛がとても柔らかく、毛玉ができやすい毛質であることもあります。ゴールデンレトリーバーなどのしっぽに飾り毛のある犬では、飾り毛に汚れや葉っぱなどがついて毛玉ができることがあります。気をつけましょう。
前足や後ろ足の飾り毛
ロングコートのタイプによっては、毛が明らかに長いのは耳や手足、しっぽの飾り毛だけ、ということもあります。また、ロングコートのはずなのに若いうちはなかなか飾り毛が伸びてこない犬もいます。
そのような犬では、あまり毛玉ができやすいようには見えないからとたまにしかブラッシングをしないでいると、いつの間にか毛玉ができていた、ということがあります。また、手足を触られることを犬が嫌がるために手足の飾り毛のブラッシングがなかなかできずに毛玉になってしまうこともあります。
脇や後ろ足の付け根、内股
脇や後ろ足の付け根、内股は、歩いたり走ったりするたびに、足とお腹の間の毛が擦れてもつれやすくなります。またこれらの部位は、犬自身の協力がないとブラッシングしにくかったり皮膚が柔らかいためにより注意を払ってブラッシングをする必要がある場所でもありますし、デリケートな部位なので触られるのを嫌がる犬もいます。そのため、毛玉ができやすくなります。
後ろ足の付け根の中でも犬が座ると地面に触れる部分は、毛量が非常に多いこともあり、毛玉ができやすい部位の一つです。また、肛門に近くて汚れやすいことからも、毛玉ができやすくなります。特に下痢や肛門嚢のトラブルがある場合には、普段よりも注意が必要です。
毛の根本
毎日しっかりブラッシングしていたのに、いつのまにか毛玉になってしまっていた!なんて経験はありませんか?
意外と多いのが、毛の表面だけブラッシングしていて実は根本はブラッシングできていないというもの。特に毛量の多いダブルコートの犬種では、毛の根元までブラシが届いていないということがあります。
ブラッシングでは、抜けたアンダーコートを取り除くことが重要です。オーバーコートの下にあるアンダーコートにブラシの先が届いていないと、毛玉のもととなる抜けてたまったアンダーコートがどんどんたまっていき、その毛が絡みつきあって毛玉ができてしまい、そうなってから初めてアンダーコートが除去できていないことに気付く、ということもあります。
ロングコートや毛量の多い犬種は毛をかき分けて、根本からしっかりとブラシをする必要があります。
毛玉ができることによる犬への影響
- 皮膚のトラブル
- 痛み
皮膚のトラブル
毛玉ができる前の抜け毛が被毛の中にたまっている場合でも、毛玉ができてしまった場合でも、被毛の中の通気性が悪くなり、蒸れやすくなります。すると、それが皮膚病の原因となったり、雨やシャンプーで濡れるとなかなか乾かずに皮膚病を引き起こすことがあります。
細菌が異常に繁殖し、皮膚に炎症が起こるのです。炎症が起これば赤みや痒みがでたり、犬が掻きむしって皮膚に傷ができたりただれたりし、さらに化膿することもあります。毛玉の放置は皮膚トラブルにつながることがあるのです。
引っかかりやひきつれによる痛み
毛玉ができると、毛の根本が引っ張られる状態になります。絡み合った毛は他の毛をどんどん巻き込み、毛玉から離れた部分の毛や皮膚も引っ張ってしまいます。また毛玉は放っておくと、ガチガチに固まってフェルト状の塊になり、より周りの毛や皮膚を強く引っ張ってしまうこともあります。当然、毛が引っ張られれば痛みが出ます。人も毛を引っ張られれば痛いですよね?それと同じです。
犬の毛玉の取り方
犬の毛玉は放っておくとどんどん酷くなります。毛玉に気付いたら、早めに対処しましょう。また、毛玉は濡れると余計に固まるため、お風呂に入れる時は入れる前に必ず処理しておきましょう。
小さな毛玉の対処法
【用意するもの】
- スリッカーブラシ
- コーム(くし)
軽いもつれや、できてすぐの小さな毛玉や固くなる前の毛玉はブラシでほぐすことができます。
- スリッカーブラシを使って毛玉のはじからゆっくりとほぐしていきます。一気にほぐそうとしないように。毛が毛玉より根本で切れたり、皮膚を強く引っ張っててしまい、強い痛みを与えます。毛や皮膚を引っ張らないように、毛玉そのものや毛玉と皮膚の間を指でしっかりと挟んでブラシを入れるようにします。
- ほぐしながら、傷んだ毛が切れることもありますが、切れた毛も丁寧に取り除きましょう。
- 毛玉がほぐしきれたら、コームを使って根本から全体をしっかり整えてあげましょう。毛玉の周囲の毛も毛玉になりやすい状態になっていることがあるので、毛玉の周辺の毛もしっかりコームで梳かしましょう。最後にグルーミングローションを使い、静電気を抑えたり毛を滑らかにするのも良いですね。
ひどい毛玉の対処法
【用意するもの】
- スリッカーブラシ
- コーム(くし)
- ハサミ
- 毛玉取りローション(酷い場合)
毛玉が大きく、ガチガチのフェルト状になってしまうと、ブラシだけではほぐせなくなります。スリッカーブラシ以外に、コームとハサミを用意します。
毛玉を取るときに、根本からハサミで切り落とそうとする方もいますが、その時に引っ張られた皮膚を誤って切ってしまったり、犬が動いた時にハサミが当たって怪我をしてしまうこともあります。ハサミは、毛玉を切り落とすのではなく以下のように使うことをおすすめします。ハサミを使う際は細心の注意を払ってくださいね。
- まず犬の毛玉と皮膚の間にコームを入れます。こうすることでコームが皮膚をガードして毛玉に入れたハサミが当たらないようになります。ただし、コームで毛玉を強く引っ張ってしまわないように注意しましょう。
- その状態のまま毛玉を裂くように縦方向にハサミで切り込みを入れます。
- 毛玉の大きさに合わせて何箇所か切り込みを入れます。皮膚を引っ張らないように毛の根本をしっかりと押さえたりコームを使いながら切り込みを入れた後、スリッカーブラシで毛玉のはしからゆっくりとほぐしていきます。
ほぐしながら、毛の束が取れることもありますが、それもゆっくり丁寧に取り除きましょう。なかなか取れない時は、毛玉取りローションや犬用リンスを水で薄めた物をかけると取りやすくなります。
フェルト状の毛玉は、痛みから嫌がったり、時間がかかったり、犬にも負担がかかります。おやつなどを上手く使って気を逸らせたり、途中で気分転換するのも良いでしょう。
トリミングサロンで切ってもらう
毛玉が酷く自分で処理ができなかったり、犬が嫌がったり暴れて危険な場合は、トリミングサロンにお願いしましょう。トリマーさんは、毛玉の状態に合わせて適切な処理方法や安全な取り方も知っています。ただし、あまりに毛玉がひどいと刈ってしまうしかないこともあります。どのような方法で毛玉を取り、どのような仕上がりになるのか、事前に聞いておきましょう。
犬に毛玉ができないようにするには
毛玉の予防には、日々のお手入れや定期的なトリミングが欠かせません。ブラッシングは毎日行いましょう。寝起きやお散歩の後に行うと毛玉予防に効果的でしょう。
また、シャンプーのあとは、リンスやローションなども使って毛の滑りを良くしたり、根本までよく乾かすこと。濡れたままだと毛はすぐにもつれてしまいます。
プードルやビション・フリーゼなど、毛が伸び続ける犬種は定期的なトリミングも必須です。キチンとカットすることで毛玉ができにくくなります。もし、トリミングサロンで毛玉をとってもらうことになった場合、普通のトリミングとは別に毛玉料金がかかることもあります。
先にも紹介したとおり、毛玉を取るのは簡単ではないことが多くあります。毛玉料金の相場は、小さな毛玉や毛玉の数が少ない場合には500円程度ですが、毛玉の状態や数、サロンによっても変わります。安全に毛玉を取ってもらうためには必要な料金ですが、事前にサロンに確認しておくと良いでしょう。
犬の毛玉を取るのに役立つおすすめ商品
(監修獣医師が、以下の特定の商品をおすすめするものではありません。)
ドギーマン NHS 角型スリッカーブラシ
スリッカーブラシは毛玉を取るための必須アイテムです。毛質や被毛のタイプによっては、日々のお手入れにも必須のブラシです。スリッカーブラシには、ピンの先が丸くなっているものと針状になっているものがあります。ピン先が丸くなっているものは、皮膚に当たっても皮膚を傷付けないというメリットがありますが、毛玉の除去には向きません。毛玉の除去が目的であれば、針状のものを選びましょう。
サイズはSとMがあり、また長毛用と短毛用があります。犬の大きさと被毛のタイプで選びましょう。
Marsviex ペットコーム
コームも毛玉除去のためだけではなく日々のお手入れにも必要なものです。こちらの商品はサイズが2種類ありますが、他にも様々なサイズのコームが売られていますので、犬の大きさに合ったものを選びましょう。
SHOWTECH 毛玉カッター
吹きかけることで、静電気を防ぎ、毛の滑りが良くなります。毛玉に吹きかけると、毛玉を取り除きやすくなるそうです。日々のブラッシングにもおすすめです。
メイドオブオーガニクス フォードッグ グルーミングスプレー 125ml
吹きかけることで、静電気を防ぎ、毛の滑りが良くなります。毛玉に吹きかけると、毛玉を取り除きやすくなります。日々のブラッシングにもおすすめです。
まとめ
いかがだったでしょう?人間と違い、全身をたくさんの毛に覆われている犬たちは、お手入れを怠るとすぐに毛玉ができてしまう場合があります。
毛質や普段の生活の仕方などによって毛玉ができやすい犬もいます。毛玉を放置すると、犬の毛や皮膚に与えるダメージは増えていき、犬に苦痛を与えてしまいます。
日頃から被毛の観察やお手入れを欠かさずに行い、もし毛玉ができてしまった時は早めに対処して、犬の健康を守ってあげましょう。