犬がマウンティングする理由は?放置した場合のリスクや正しい対処法を解説

犬がマウンティングする理由は?放置した場合のリスクや正しい対処法を解説

愛犬のマウンティングに困っていませんか?去勢済みでもやめないのには理由があります。この記事では、犬がマウンティングする多様な理由(遊び、ストレス等)と、効果的なやめさせ方を解説。人・犬・物への対象別対処法や正しいしつけ方を学び、悩みを解決しましょう。

そもそも犬のマウンティングとは?

マウンティングする犬

犬のマウンティング行動とは、他の犬や人、クッションやぬいぐるみなどの物に対して、馬乗りになって腰を振る一連の行動を指します。

多くの飼い主が性的な行動と結びつけて考えがちですが、実際には犬のコミュニケーションや心理状態を示す多様な意味合いを持っています。

この行動は、性別や年齢、去勢・避妊手術の有無にかかわらず、あらゆる犬に見られる正常な行動の範疇です。

例えば、オスの犬だけでなくメスの犬もマウンティングを行いますし、子犬が遊びの中で見せることも珍しくありません。

去勢手術済みのオスや避妊手術済みのメスであっても、ホルモンの影響とは関係なくマウンティングをすることがあります。

そのため、この行動の背景にある犬の気持ちを正しく理解することが、適切な対応への第一歩となります。

メスもマウンティングする

一般的にマウンティングはオスの行動というイメージが強いですが、メスの犬も行います。

メスの場合、興奮した時や自分の優位性を示したい時、あるいはストレスを感じた時に見られることがあります。

去勢・避妊手術でマウンティングは減らせる?

去勢・避妊手術は性ホルモンに関連するマウンティングを減少させる効果が期待できます。

特に未去勢のオスが発情期のメスに対して示す性的な動機による行動は、手術によって大きく抑制されるでしょう。

しかし、すでに述べた通り、マウンティングの理由は性的なものだけではありません。

遊び、ストレス、自己主張など、他の要因で身についた習慣となっている場合は、手術後も行動が続く可能性があります。

愛犬が去勢・避妊済みであるにもかかわらずマウンティングをする場合、その背景には性的な動機以外の理由が隠されていると考えられます。

犬がマウンティングする理由

人の足に抱きつく犬

犬がマウンティングをする背景には、単一ではない複数の理由が存在します。愛犬の状況を観察し、どの理由に当てはまるかを見極めることが重要です。

性的な行動をとっている

最も原始的で広く知られている理由が、性的な衝動によるものです。特に去勢手術をしていないオス犬が、発情中のメス犬の匂いに刺激されて行うことがあります。これは子孫を残すための本能的な行動と言えます。

ただし、家庭で暮らす多くの犬、特に去勢済みの犬においては、この理由が当てはまるケースは限定的です。

興奮している

犬は遊びが盛り上がってきたり、飼い主の帰宅時に嬉しさで興奮したりすると、その有り余るエネルギーを発散させるためにマウンティングをすることがあります。これは特に子犬や若い犬によく見られる行動です。

じゃれ合いの一環として他の犬にマウンティングを仕掛けることもあり、この場合は攻撃的な意図はなく、純粋な遊びの延長線上にある行動と解釈できます。

優位性や順位を示そうとしている

犬社会におけるコミュニケーションの一環として、相手に対する自分の立場が上であることを示すためにマウンティングをすることがあります。これは「社会的マウンティング」とも呼ばれ、犬同士の関係性の中で順位を確認する行動です。

また、人に対して行う場合、犬が自分の要求を通そうとしたり、主導権を握ろうとしたりする意思の表れである可能性も考えられます。

ストレスや不安を感じている

犬は、自分の思い通りにならない状況や、強いストレス、不安を感じた時に、その気持ちを別の行動に転嫁して落ち着こうとすることがあります。これを「転嫁行動(てんかこうどう)」と呼び、マウンティングもその一つです。

例えば、来客や新しい環境、大きな音など、犬が苦手とする状況下で突然マウンティングを始める場合は、ストレスが原因である可能性が高いでしょう。

これは、自分自身を落ち着かせるためのカーミングシグナル(犬が自分や相手を落ち着かせるために見せるボディランゲージ)の一種とも考えられています。

飼い主の気を引こうとしている

犬は非常に賢く、どの行動が飼い主の注意を引くかを学習します。過去にマウンティングをした際、飼い主が「やめなさい!」と大声を出したり、慌てて駆け寄ったりした経験があると、「この行動をすれば構ってもらえる」と誤って学習してしまうことがあります。この場合、マウンティングは飼い主の気を引くための手段として使われます。

犬のマウンティングを放置した場合の問題やリスク

じゃれ合う犬たち

犬のマウンティングは自然な行動の一つですが、常習化すると様々な問題やリスクを引き起こす可能性があります。

犬同士のトラブルに発展するリスク

すべての犬がマウンティングを受け入れるわけではありません。ドッグランや散歩中、愛犬が他の犬にマウンティングをした結果、相手の犬が嫌がって唸ったり、反撃したりして喧嘩に発展するケースは少なくありません。これが原因で、相手の犬や飼い主に怪我をさせてしまう最悪の事態も考えられます。

人間を怖がらせる・不快にさせる

マウンティングの対象が人、特に来客や子供に向けられた場合、相手に強い不快感や恐怖心を与えてしまいます。犬好きでない人にとっては特に許容しがたい行動であり、人間関係に溝を生む原因にもなりかねません。

また、小さな子供にマウンティングをして押し倒してしまい、思わぬ怪我につながる危険性も潜んでいます。

犬自身の怪我や健康問題に繋がる

過度なマウンティングは、犬自身の体にも負担をかけます。繰り返し腰を振ることで腰を痛めたり、床や物との摩擦で性器を擦りむいて炎症を起こしたりすることがあります。特に、柴犬やミニチュアダックスフンドのような胴長の犬種は、腰への負担に注意が必要です。

犬と飼い主の立場が逆転する(主従関係が曖昧になる)

飼い主へのマウンティングを許容していると、犬が「自分の方が立場が上だ」と勘違いし、主従関係が曖昧になることがあります。その結果、マウンティング以外の場面でも、わがままを押し通そうと要求吠えをしたり、指示に従わなくなったりと、他の問題行動に発展していく可能性があります。

犬のマウンティングをやめさせる方法

ボールを咥えて走る犬

犬のマウンティングをやめさせるには、叱りつけるのではなく、その行動の根本原因にアプローチし、望ましくない行動をさせない環境を作ることが重要です。

ストレスの原因を取り除く

ストレスが原因でマウンティングをしている場合、そのストレス源を特定し、取り除くことが最も効果的です。例えば、運動不足が考えられるなら、散歩の時間を長くしたり、ドッグランで思い切り走らせたりする機会を増やしましょう。

コミュニケーション不足を感じるなら、知育トイを使ったり、室内での遊びの時間を充実させたりするのも良い方法です。環境の変化がストレスになっている場合は、犬が安心して過ごせる静かな隠れ家(クレートなど)を用意してあげましょう。

去勢・避妊手術を行う

性的な動機によるマウンティングが強い場合は、去勢・避妊手術が有効な選択肢となります。手術によって性ホルモンの分泌が抑えられ、性的な衝動そのものが減少するため、行動の改善が期待できます。

ただし、前述の通り、遊びやストレスなど他の理由が習慣化している場合は、手術だけでは完全になくならないことも理解しておく必要があります。

一貫した態度で「ダメ」と伝える

マウンティングを始めたら、興奮して大声を出すのではなく、低く落ち着いた声で「ダメ」や「NO」と短く伝えます。そして、すぐに行動を中断させます。

重要なのは、家族全員が同じルールで一貫した対応をすることです。ある人は許し、ある人は叱るという状況では、犬は何が正しいのか混乱してしまいます。

別の指示で気をそらす

マウンティングを始めようとする素振りを見せたら、すかさず「おすわり」や「ふせ」といった、犬が得意なコマンドを出して気をそらしましょう。

犬がマウンティングから意識を切り替え、指示に従えたら、たくさん褒めておやつを与えるなどご褒美をあげます。これを繰り返すことで、「マウンティングをするより、飼い主の指示に従う方が良いことがある」と学習させることができます。

これは、望ましい行動を褒めて増やす「陽性強化」というしつけの考え方に基づいた、効果的な方法です。

犬のマウンティングの対処法

ぬいぐるみを運ぶ犬

マウンティングの対象が犬か、人か、物かによって、具体的な対処法も変わってきます。それぞれの状況に応じた冷静な対応を心がけましょう。

ほかの犬に対してマウンティングする場合

散歩中やドッグランで他の犬にマウンティングをしそうになったら、すぐにリードを短く引いて物理的に距離を取らせます。そして、「おすわり」などの指示でクールダウンさせましょう。

相手の犬が嫌がっている素振りを見せたら、速やかにその場を離れるのがマナーです。相手の飼い主さんには「すみません」と一言声をかける配慮も大切です。

興奮しやすい犬の場合は、ドッグランで長時間遊ばせるのではなく、こまめに休憩を挟むなどの工夫が必要です。

人に対してマウンティングする場合

愛犬が人の足や腕にマウンティングをしてきたら、騒いだり笑ったりせず、無言で犬を体から引き離します。そして、犬に対して背中を向けて完全に無視をします。犬が落ち着くまで、飼い主はその場を立ち去るか、犬を別室に短時間隔離する「タイムアウト」も有効です。

犬は注目されることを好むため、「マウンティングをしても無視される=楽しくない」と学習させることが重要です。

ぬいぐるみなどに対してマウンティングする場合

クッションやぬいぐるみなど、特定の物に対して執着してマウンティングをする場合は、その対象物を犬の生活スペースから隠してしまうのが最も簡単な解決策です。

犬が執着している最中に無理やり取り上げようとすると、唸ったり抵抗したりして、物への執着をかえって強めてしまうことがあります。大好きなおやつやおもちゃを見せて犬の注意を引き、自ら対象物を離した瞬間に褒めて片付ける、という方法が効果的です。

まとめ

マウンティングをしている犬

犬のマウンティングは、性的な理由だけでなく、遊び、興奮、自己主張、ストレスなど、多様な心理が背景にある複雑なコミュニケーション行動です。愛犬がなぜマウンティングをするのか、その根本的な原因を冷静に観察し、見極めることが問題解決への第一歩となります。

感情的に叱りつけるのではなく、一貫した態度で冷静に中断させ、「おすわり」などの代替行動へ導くことが重要です。ストレスが原因であればその要因を取り除き、犬同士や人とのトラブルに発展しないよう、飼い主が適切に管理する必要があります。

マウンティングという行動を通じて愛犬が送っているサインを正しく読み取り、適切に対応することは、愛犬との信頼関係をより一層深めることにつながります。

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