犬が嫌がる行動4つ
私たちが犬にする行動に対して犬が嫌がるのは、犬にとっては不快さや恐怖を覚える行為だからという理由がほとんどです。
普段何気なく行っていることから、病気の時にせざるを得ない行動まで、まずは犬が「嫌だ!」と感じやすいことを知ってみましょう。
体の敏感な部分を触る
「これ、うちの犬嫌がるんだよね」
と最も実感しやすいのが、日常のケアではないでしょうか?
- 爪切り
- 家にあがる前の足拭き
- 耳掃除
- 歯磨き
- シャンプー、カット
など、本来は愛犬の病気を予防したり、愛犬自身と室内の清潔さを保つためには必要な行動です。ところが、犬にとっては「体の先端」はとても敏感な所と言えます。そのため、足先・耳・口周りは特に触られるのを嫌がることが多い場所です。
また、爪切りや耳掃除では1度、もしくは繰り返し痛い思いを体験すると、それ以降触られるのを嫌がるようになってしまったというトラウマ的な思い出を抱える犬もいます。
そして、シャンプー・カットを嫌がる犬も同じことです。シャワーの感覚やドライヤーの音、顔周りにはさみが近づく顔カットの恐怖は、嫌な思い出として残りがちです。足裏の毛を刈るバリカンも、振動によるくすぐったさやバリカンによるケガの痛みが印象に残りやすく、犬への配慮に欠けたトリミングで「お風呂嫌い」の犬になってしまいます。
体に道具を装着する
次に自宅で困るのが、体に物を身につけることを嫌がる場合です。
- リード、首輪、ハーネス
- 服
- オムツ
- 靴
リードや首輪・ハーネスは、外出時の必須の道具です。これを嫌がってしまうようでは、愛犬と一緒にお出かけすることができませんよね。
体にものを身につける違和感はどんな犬でも大なり小なり感じています。その違和感が強ければリードを噛んだり、ハーネスの着用部分をしきりに掻いたりと、ずっと気にしてしまうことになります。
また、違和感以外にも、おもちゃ代わりとしての対象になったり、ブラブラ揺れるリードが獲物に見えてついつい追いかけてしまうという本能的行動を刺激することで気にしている場合もあります。
服や靴は必須ではありませんが、皮膚病の時の掻き壊し対策や、神経疾患で足の運びがうまくいかなくなった時のサポートで特殊な靴下を活用することもできます。オムツはいわずもがな、排泄してはいけない場所でのもしもの対策、老犬になった時の介護時に活躍できますね。
ところが、こういったグッズを急に長時間「着けて!」と装着しても、愛犬が必要だと思って着けているわけではないので当然不思議に思っています。体に擦れる、敏感な足先にくっつくという「いつもと違う触感」に戸惑ってしまうというわけです。
病気の治療をする
病気になった時には、病院での治療と同時に、獣医さんに指示された方法でお家でのケアが必要になることがあります。これは大切な治療の一環です。
ですが、間違った方法で行うと愛犬に嫌われてしまったり、病院に行くことすら苦労することになります。
- 目薬の点眼
- 点耳薬の点耳
- 内服薬を飲ませる
- 注射(採血点滴など)
そもそもお薬が必要になる時には、愛犬は「痛い」「痒い」「苦しい」といった感覚に悩まされていることが多いものです。そこにチクッとした針の痛みを感じたり、おいしくない薬を飲まされると、人でも犬でもさらに不快さが増してしまいます。
例えば外耳炎の治療とは言え、赤く腫れて、痛みが強い所に点耳薬を無理やり塗られたりすると、耳を触られることがどんどん嫌いになったりすることもあります。
病気の治療によって元気になることは大切です。しかし、犬にとってはなぜその薬や注射が必要なのかは、言葉で説明しても理解できません。嫌なこと・怖いことが続く治療の時間は、犬たちにとって大きなストレスになってしまいます。
犬を緊張させる仕草や接し方をする
犬は人のように言語を使ったコミュニケーション方法を取っていません。唸ったり、吠えたりと鳴くことはありますが、それはコミュニケーションの中ではやや補助的です。メインになるのは何と言ってもボディランゲージです。
- 顔を近づける
- じーっと視線を合わせて見つめ続ける
これは犬たちの間でのボディランゲージでは、「敵意」「警戒心」を表すことが多い仕草です。飼い主さんとのしつけで行うアイコンタクトとは別で、初対面の人と、もしくは怒っている様子の飼い主さんと視線を合わせ続けるのは、犬にとってはとても緊張することです。
また、子どもが苦手な犬も多いですが、
- 上から真正面からアプローチする
- ぎゅっと抱いて拘束する
- 追いかけまわす
- 近くで大きな声をあげる
といった犬にとっては「急に何なんだ!?」とびっくりさせることが多いのも理由としてあげられます。
犬が相手の気持ちを和らげる時には、基本的には下からや横からアプローチすることが多い生き物です。目の前でコロンと寝転がったり、伏せをしたりするのはもちろん、大回りして斜めから近づくことで相手の気持ちをほぐすこともあります。
「遊ぼうよ!」という仕草の1つであるプレイバウでは、お尻を高く上げて伸びをするような姿勢をとります。
こういった相手に落ち着きを促す・自分の緊張や不安を相手に伝えるための「カーミングシグナル」とは真逆の行動を取られると、犬は相手を「空気の読めないヤツ!」として大いに嫌がります。もちろん子どもだけでなく、大人でも犬をびっくり・緊張させる行動をする人は嫌われがちです。
また、人より聴覚が良い犬にとって、大声・口笛・人工的な機械音などの騒々しい音や甲高い音は、不愉快・恐怖の対象になるので注意が必要です。
犬が嫌がるときの対策
嫌がっていることを無理やり進めると、飼い主さんのことまで嫌だなと思う時間ができることにつながります。将来嫌だと思うことが減るように、もしくは、今嫌だなと思っていることを克服するために、愛犬にとってぴったりな方法を探してあげましょう。
嫌なことをする時にはごほうびも一緒に
「歯磨き・足拭き・耳掃除など=不愉快で楽しくないこと」と一旦覚えてしまうと、そこからはなかなか気持ちを変えてくれなくなります。そのため、犬が嫌がる時には、ぜひ「とっておきのごほうび」を用意して、嫌なことをする時に愛犬の気分を紛らわせてあげてください。ごはんが大好きな子であればいつものごはんでも良いですが、できれば苦手なことをする時にしか食べられない「おいしいおやつ」を選んであげる方が、印象は良くなりやすいです。
慣れるまでは2人体制で行うと失敗しにくいでしょう。1人がごほうびを手に持って、愛犬がガジガジと噛んでいる間に、もう1人が足拭きや爪切り点耳などを行います。
ずっと食べれない時間が長いと愛犬も嫌なことをされていることに気づいてしまうので、右前足を拭いたら1個、左前足を拭いたらもう1個と、間隔を区切りながら行ってあげてください。
段階を踏んで少しずつ慣れさせる
今までされたことがなかった習慣を、急に取り入れろと言われてもびっくりしてしまいます。
特に多いのは歯磨きで、飼い主さんは急に愛犬の口に歯ブラシを突っ込んで、ゴシゴシ磨いてしまいがちです。ところが、犬に対しては急に敏感な口元に触られた上、口の中までいじられるのですからたまったものではありません。
- ごほうびを使いながら口元をタッチする
- 唇をめくる
- 歯に触る
- 歯を磨く
といったように、徐々に触る時間を伸ばす、磨く本数を増やすといったように段階を踏んで少しずつ受け入れてもらいましょう。
リードや首輪などのお散歩グッズ、オムツや服なども同じことです。ごほうびをあげている間に数秒着けて外すことから始め、少しずつ時間を伸ばしていきます。首輪やハーネスを着けている間、引っ張りっこやマッサージなど、愛犬が思いっきり楽しめたり、気持ちよくリラックスできることをして気をそらしてあげるのも効果的です。
足先などの敏感な場所を含めて、体に物を身につける行為に慣れていると、それだけで病気や介護のケアがスムーズにいくことがあります。着けるのを嫌がるからやめておこうではなく、若い内から少しずつ慣れておくことで、将来必要になった時に役に立ちますよ。
できるだけ恐怖を与えない正しい方法で行う
病気のケア
病気のケアは特に犬に恐怖を与えがちです。飼い主さんは気合を入れて自分に迫ってくるし、嫌がれば怒られるしで、犬にとっては散々な時間になってしまいます。
そのため、飼い主さんが意識するべきなのは、
- 投薬に失敗しても犬を怒らない
- 何気なく行い気合を入れすぎない
- 愛犬に気づかせない
- 成功したら愛犬を思いっきりほめる
例えば、点眼は真正面からやってしまうと犬にとっては「怖い」と感じて逃げてしまいます。そのため、飼い主さんの両足の間に後ろから抱きかかえるようにして、愛犬の頭を上向かせた後、点眼を頭の後ろから持ってきて液を落とすようにしましょう。飼い主さんの手が目の前から迫ってこないので、犬も比較的すんなりとさせてくれます。終わったら大好きな遊びに誘ったり、ごほうびをあげたりしてすぐに気分転換させてあげてください。
投薬もごはんに混ぜるとペッと薬だけ吐き出してしまうことがありますよね。「なんで出すの!?」と怒ってしまいがちですが、それは愛犬にとって「薬=嫌な思い出」にしかなりません。
- ごはんの前に薬を包んだおいしいおやつを作り、それだけ先に食べさせる
- いつものごはんタイムを始める
投薬時に飼い主さんが緊張していると犬も怪しむため、何気なく差し出してあげてください。匂いの強いおやつに包むとばれにくいので効果的です。それが終わったら、いつものごはんタイムを始めましょう。
お腹いっぱいの時にはおいしいおやつに包んでも薬がばれやすく、また、一旦吐き出したりするとその後再トライが難しくなってしまいます。投薬する時にはぜひ順番も考えて与えてみてくださいね。
自宅でのお風呂
自宅でのシャンプーもシャワーの当て方には注意してあげてください。
顔の周囲から勢いよくシャワーを当てると怖く感じるため、足の方からゆっくり声をかけながら流してあげましょう。また、皮膚にあたる細い水流の勢いが嫌な子なら、できるだけシャワーヘッドを近づけるとその感触が薄れます。
人のヘアドライヤーは音が大きく、それが近づいてくるのは犬にとって妙なものが近づいてくる恐怖しか感じません。まずはドライヤー時間をできるだけ短時間にするために、タオルドライをしっかりと行いましょう。
その上で優しい風量からスタートし、場合によっては布団乾燥機に似た犬用の小さい音のドライヤーを使用すると、風量は少なめですが犬が怖がらないこともあります。また、ドライヤーが近づいてくるよりも、固定されたドライヤーに自分が近づいた方が愛犬にとっては怖くない場合もあります。
犬が優しい風量に慣れたら、自分と愛犬のポジションをドライヤーに近づくように少しずつ移動すると、おとなしく乾燥させてくれることがあるので試してみてくださいね。
犬のボディランゲージを知る
犬がボディランゲージで「何だか嫌だな」「緊張するな」と思っている証の仕草をしているのに、読み取ってあげられない人はたくさんいます。これは犬から嫌われるだけでなく、咬まれたり攻撃されることにもつながり、飼い主さん・他の人・犬とのコミュニケーションに支障をきたしてしまうことになります。
- 眠い時以外のあくび
- 視線(顔)をそらす
- 耳を後ろに倒す
- しっぽを低い位置で振る
など、愛犬の仕草からストレスを感じているかどうかを読み取ることが大切です。
そんな時には、なでたり声をかけて気持ちを落ち着かせることはもちろん、今行っている行動が原因であれば一旦止めてあげることも検討しましょう。その上でごほうびで気持ちを紛らわせるなど、嫌だと感じていることを良いことに変換してあげると効果的です。
また、自分以外の人が愛犬にしている行動が原因でストレスサインが出ているなら、
「うちの子怖がりなので、まずは自分から寄っていくまで時間がかかるんです」
「顔を触られるのは好きじゃないんですけど、背中をなでてもらうのは気持ちいいみたいで好きなんですよ」
と相手の人に別の行動をしてもらえるよう促してみてください。
自分の愛犬をストレスから守りつつ、相手の人にコミュニケーション方法を変えてもらうことは、これからの関係作りにとても大切です。
きちんとストレスサインが読める人は、犬から好かれる人になりやすいですよ!
まとめ
犬が嫌がることは、実は人が嫌がることと通じる場合がとても多いです。
楽しくない・おいしくない・不快なことは私たち人であっても嫌なものです。また、慣れないことをする・苦手なものを克服する・新しい習慣を取り入れる時には、人だって時間をかけたり気分転換しながら徐々に慣れていきます。
「やらなきゃ!」と思ってついつい焦ったり、急いで進めてしまいがちですが、愛犬の気持ちを考えてあげることが1番大事なことです。
嫌だなと今感じていることを、状況に応じて愛犬が「まあこれなら悪くないかな」と思えるように、工夫しながら行ってあげてくださいね。