飼い犬にとって、「トリミング」は絶対に必要?
人間でも、髪の毛が延びてくると美容室や散髪屋さんで手入れをしますよね。小さいお子さんだったり、いつも髪の毛を短くしている人なら、器用に自分で髪の手入れをすることも出来ます。飼い犬にとって「トリミング」と言うのは、人間にとって美容室や散髪屋さんに行ったり、おうちで髪の毛を切ったりするような意味合いを持っている、と私は考えています。
プロのトリマーさんに任せるか、ご自分でシャンプーからドライ、カットまで済ませるかの違いはありますが、犬にとって「トリミング」は必要な習慣だと言えます。
そもそも、トリミングってどういうこと?
「トリミング」に似た言葉で、「グルーミング」と言う言葉があります。
日本では、「ペットサロン」などで犬をキレイにシャンプーし、カットしてくれることを「トリミング」と言う場合がほとんどですが、「トリミング」のもともとの意味は、「毛をカットしてキレイに整えること」を指します。
あまり聞きなれない「グルーミング」(grooming)と言う言葉には、「全身をお手入れし、清潔に保つこと」を指します。
アメリカやヨーロッパでは、私たちが「トリマーさん」と呼んでいる職業の人たちを「グルーマー」と呼んでいるそうです。
つまり、「全身をお手入れし、清潔に保つこと」(グルーミング)の中の作業の一つに「毛をカットして、キレイに整えること」(トリミング)が含まれるので、「トリミング」は「グルーミング」の作業のうちの一つ、という事になります。
犬のトリミングをする必要性と放置した場合のリスク
私たち人間が美容室や理髪店に行くのは、「キレイに見られたい」「若く見られたい」と思い、姿格好を見目良くするためです。けれども、犬にとっての「トリミング」や「グルーミング」はただ、姿を愛らしく見せるためだけではありません。では、姿を愛らしく整える、と言う理由以外に、なぜ、飼い犬にはトリミングが必要なのでしょうか?
もし、トリミングをしなかったら、どんなリスクがあるのかも併せて考えてみましょう。
怪我のリスク
皆さんは、犬の裏をよくみたことがありますか?
私たち人間の足の裏には毛が生えませんが、犬は肉球の間の毛が伸びるので、足の裏でも毛が伸びます。
足裏の毛が伸びると、とても滑りやすくなり、歩いたり走ったりするとき、転ばないようにと犬が足を踏ん張ってしまい、関節に大きな負担がかかります。
その負担によるダメージが蓄積すると、関節が傷んだり、あるいは転倒して腰を強打し、怪我をしてしまうことも考えられます。
皮膚病のリスク
被毛を伸ばしっぱなしにすると、絡み合ってしまいます。
庭に出たり、散歩に行く度に被毛が汚れ、外からノミやダニなどもついてきます。
また、肛門や尿道の近く付近の毛が長いままだと、排泄の度に被毛が汚れてしまいます。
不潔にしていると、さまざまな皮膚炎や皮膚病を引き起こす原因となります。
体温調整出来ず、熱中症になるリスク
春先から気温が上がり、気温が20度を超える日も珍しくない日が続きます。
そんな時、人間なら上着を薄いものに変えたり、薄着になったりして体温調節しますが、手入れをされていない犬は、汚れ切ったセーターや、ダウンジャケットを着せられたままの状態です。
まして、犬は人間よりもずっと暑さに弱く、気温22度を超えると、熱中症にかかる危険があると言われています。
トリミングをしないまま被毛が汚れて伸びるのを放置して、被毛がもつれ、分厚いセーターのようになっていたら、例え気温22度以下であっても、熱中症になってしまう恐れが十分にあります。
室内飼いでも、外出に伴ったり、散歩に行くのであれば、気温に応じてトリミングに出し、心地よく過ごせるように手入れしてあげましょう。
さまざまな病気を見逃すリスク
目を覆ってしまうほど被毛が伸びてしまうと、眼球が傷つく恐れがあります。
それに加えて目が覆われていたら、白目が充血していたり、眼球が白濁していても、眼病を発症しているのに、気が付かず、手当てが遅れてしまうかも知れません。
また、目の輝き、表情から犬の健康を見て取ることも出来ません。
被毛が汚れ切って、犬の体から悪臭を放っていると、犬の口から体調不良から起こる口臭がしていても、おそらく気が付かないでしょう。
トリミングが必要な犬種 4選
世界中には、非公認の犬種も含めて、なんと700~800種類の犬種があると言われています。人間の嗜好や、使役するために品種改良された犬達の中には、体が極端に小さくなったり、早く走れるように骨格や体格が改良されたり、被毛が長く美しくなるように改良されるなど、自然界では生きていくことが難しくなってしまった犬種もいます。
そうやって、人間の手で改良された犬達に対して、その犬達が日々を健やかに心地よく過ごせるように、犬の体の手入れをするのは、人間として当然のことです。
特にトリミングが必要な犬種を4犬種、ピックアップしてみました
1. アメリカン・コッカー・スパニエル
長い被毛が特徴的なとても愛らしい犬種です。けれども、少なくても二か月に一度のトリミングは欠かせません。
「フルコート」と呼ばれるカットは、アメコカを最も美しく愛らしく魅せてくれますが、日常生活を送るのに非常に大変な手入れが必要です。
2. ビジョン・フリーゼ
真っ白で、一見すると白いプードルのようにも見えるビジョン・フリーゼ。
実は、体の表面に近い部分のトップコートは巻き毛、その下には柔らかい下毛が生えているというダブルコートの被毛を持っています。
華やかなで愛らしい、独特のアフロヘアを生かすためには、日々のブラッシングは飼い主さんの努力次第ですが、定期的なお手入れはプロのトリマーさんでないと難しいと言われています。
3. マルチーズ
愛玩犬として長い歴史を持つマルチーズは、ビジョン・フリーゼ同様、純白の被毛が魅力的な犬種です。マルチーズの被毛は、上毛のみのシングルコートなので、ビジョン・フリーゼよりは、ご家庭でのお手入れが簡単です。
マルチーズも、アメコカ同様、家庭ならではのお手入れしやすいショートスタイルも愛らしいですが、本格的なショーに出るようなフルコートこそ、最もマルチーズの美しさが際立つ優雅な姿だと思います。
4.ヨークシャーテリア
ヨークシャーテリアも、非常に美しい被毛を持つ犬種です。マルチーズ同様、シングルコートなので、抜け毛は少ないけれど、ブラッシングやコーミングを怠ると、すぐに被毛に毛玉が出来てしまいます。
まとめ
「トリマーは第二のドクター」と言う言葉があるのだとか。トリミングをしながら、犬の体に触れ、健康状態をよく観察して、体の異変にいち早く気が付くことが出来るからだそうです。
もちろん愛犬の体の手入れの全てをトリマーさんに任せることが良いことなのではありません。日ごろのブラッシングや、散歩の後の汚れをタオルで拭ったり…と言った手入れは飼い主さんの努めです。けれども、プロならではの技で、愛犬の体をキレイに、可愛くしてもらい、犬のプロならではの目線で、なにか愛犬の体に異常がないかを見て貰うためにも、定期的にトリマーさんにお任せしてみるのも良いのではないでしょうか?