犬の避妊・去勢について考えてみよう!それぞれのメリット・デメリット

犬の避妊・去勢について考えてみよう!それぞれのメリット・デメリット

よく動物病院で聞かれる内容の1つに、「避妊・去勢ってしたほうがいいのですか?」という質問があります。メリットやデメリットなども含めて書かせていただきます。もちろん最終判断は飼い主さんが行うことが多いかと思いますが、その判断をされる情報の1つになれば幸いです‼︎

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記事の提供

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

はじめに

こちらを見る犬

少し前になりますが、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが遺伝子検査を行って「乳がんになりやすい」ということが判明し、その予防として胸の切除と卵巣・子宮を摘出された、というニュースを耳にされた方も多いのではないでしょうか。
そのニュースは『まだ乳がんになるかもわからないのに"予防"として手術をうけている』という点に多くの方が驚いていたようです。賛否両論あったかと思います。

これは、わんちゃんの『去勢・避妊』についても同じことが言えると思います。まだ病気にもなっていないのに『予防』として手術を実施する。その点がどうしてもネックになっている飼い主さんが多いように思います。それは当たり前の感情だと思います。
不妊手術をしない選択をされた飼い主さんにその理由を聞くと『手術は病気になってから行うものであり、健康な身体にメスを入れるのは抵抗がある』という理由が多いかと思います。
逆に、わんちゃんを迎え入れた、ということと不妊手術をセットに考えていて、とりあえず手術をする、という飼い主さんも結構いるように思います。

そこで今回は『不妊手術のメリット・デメリット』を交えながら、不妊手術を検討されている方はもちろん、すでに不妊手術が済んでいるわんちゃんと一緒に暮らしている方はなぜ不妊手術をしなければならなかったのか、というその理由を考えるきっかけになってくだされば幸いです!

犬の不妊手術について

まず、女の子と男の子では手術の仕方が全然違ってきます。またメリットやデメリットも変わってきますので、順番にみていきましょう。

犬の避妊手術について

メスの柴犬

まずは女の子の『避妊手術』について考えてみましょう。
女の子の手術は、お腹をあける手術になります。方法は、『卵巣』という女の子のホルモンを出す元となる小さな臓器のみを摘出する方法と、『卵巣』と『子宮』という赤ちゃんが育つ袋を両方とも摘出する方法の2種類があります。病院さんや先生のお考えによっても異なりますので、かかりつけの先生に聞いていただけるといいかと思います。

犬の避妊手術のデメリット

  • 麻酔のリスク。
  • 太りやすくなる。
  • 妊娠できなくなる。

やはり、お腹をあける手術になるので、麻酔をかけての手術になります。
人と一緒で麻酔も完全に100%大丈夫だと断言することはできません。ですから、避妊手術は一般的には安全と言われていますが『万が一』ということも十分に考えられます。なのでデメリットの1つとして、『麻酔のリスク』があげられます。

また、ホルモンのバランスが崩れてしまうので太りやすくなってしまいます。このことから、避妊手術後は体重管理には注意する必要があります。特におやつのあげすぎには注意です!

犬の避妊手術のメリット

  • 病気を予防できる。

犬の避妊手術のメリットはこれにつきると思います。具体的には『乳腺腫瘍』、つまり『乳がん』になりにくくなります。

わんちゃんの場合は良性の腫瘍が多いといわれていますが、放っておくと悪性にもなっていく場合もあるようですし、手遅れだと肺に転移して亡くなってしまいます。乳腺腫瘍のわんちゃんは多く、病院でもよくみかけます。その大きさが野球ボールほどまで膨れ上がり、自壊してしまって膿んでしまった子も珍しくありません。

また、わんちゃんの初めての生理が起こる前に避妊手術をすると『ほぼ100%に近い割合で乳腺腫瘍の発生を防ぐことができる』と言われています。これが発情を1回でも迎えてしまってからだと、ガクッと乳腺腫瘍の発生率はあがってしまいます。何度も発情を迎えてからだと、それに比例して乳腺腫瘍の発生率が高まっていくのです。
なので、その時点で避妊をしても乳腺腫瘍の予防には残念ながらなりません。できれば、できるだけ早めに避妊手術を、可能なら初めての発情前にすることが推奨されます。

それに加え、わんちゃんの飼い主さんはどこかで耳にされたことがあるかと思いますが、『子宮蓄膿症』という病気も予防できます。この病気は緊急疾患で場合によっては死に至ることもある怖い病気です。

簡単に説明しますと、子宮に膿がたまってしまい、手遅れになると身体中に菌がまわって亡くなってしまう可能性もある病気です。
これは避妊をすることで確実に予防できるものです。理解していただきたいのは、いい乳腺腫瘍も子宮蓄膿症も、基本的には『シニア期』に多くみられる、ということです。その時期は麻酔のリスクも若い子に比べると高くなります。もし他の病気があったら手術をするのも難しいかもしれません。そのためにも、健康で若い時に『予防』のために手術を考えてみるのもいいのではないでしょうか。

犬の去勢手術について

オスのダックス

男の子の手術は、女の子の手術とくらべると大変さが少し違います。お腹をあけないため、手術時間も短いですし、実際の手技も大変ではありません。

犬の去勢手術のデメリット

  • 麻酔のリスク。
  • 太りやすくなる。
  • 前立腺ガンになるかもしれない。

上の2つについては、避妊手術の時と同じですが『前立腺ガンになりやすい』とはどういうことなのでしょう。
去勢手術をすると前立腺が腫れることが少なくなるのは間違いはないのですが、報告によると『去勢したほうのわんちゃんの方が、去勢していないわんちゃんよりも前立腺ガンになりやすい』という事実もでてきました。

腫れる理由はガンだけではないので、『去勢していればガン以外の理由で前立腺が腫れるのを防いでくれるけれど、去勢してもガンになってしまうリスクはある』ということです。

なかなか難しいですよね...。でも、私個人としては前立腺ガンに実際なった子を見たことがありません。なので、前立腺ガンよりも去勢で予防できる病気のほうを病院では遭遇する機会が多いためメリットのほうをとっていただきたいところです。

犬の去勢手術のメリット

  • 前立腺が腫れるのを防ぐ。
  • 精巣の腫瘍を防げる。
  • 会陰ヘルニアの予防。
  • 男の子らしい行動がへる。

去勢のメリットの一つとして、前立腺が腫れるのを防ぐ、ということがあります。
前立腺が腫れてしまうと、血尿になったり、うんちが細くなったり…生活する上で支障が出てきてしまいます。去勢をすることでそのような症状を起こさせないようにすることができます。

また、男の子のホルモンの元になっている『精巣』を手術で取り除くので、精巣が元になる腫瘍を防ぐことができます。中には命に関わるものもあるので、そのような腫瘍を防げるというのはメリットと言えます。

さらに『会陰ヘルニア』の予防にもつながります。肛門周りの筋肉がどんどん緩んで穴が開き、そこから、膀胱や腸がでて行き、うんちが出なくなったり、おしっこがでなきなったり...会陰ヘルニアも命に関わってくるものです。これには男の子のホルモンが関係しているといわれていますので、去勢する意味はあるかと思います。

最後に、男の子らしい行動も減ります。
例えば、少しシャイな子であれば、去勢することで少し攻撃性が減ってくるとも言われています。

避妊手術の項目でも触れましたが、これらの病気もシニア期になってからあらわれてくることが多いということを忘れないで下さい。

まとめ

飼い主と犬

個人的にはやはり『子供が欲しい』などの特別な理由がない限り、不妊手術はしたほうがいいと思います。麻酔のリスクなどは怖いかもしれませんし、健康なのにメスを入れなければならないことに抵抗を感じてしまうのもわかりますし、勇気がいる選択ではあると思います。

でも、防げるものは防いだほうがいいのではないでしょうか。実際、乳腺腫瘍で亡くなってしまった子たちを見ています。子宮蓄膿症になり手遅れで亡くなってしまった子も中にはいました。当然ですが、飼い主さんはみんな後悔されていました。私たちも救えたはずの命なので、残念でなりません。

ただ、最終判断をされるのは飼い主さんです。その意見を私たちは尊重しますが、後悔のない選択をされることの手助けに、この記事が少しでもなればいいと思います。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    50代以上 女性 ZARA

    うちの子(ゴールデンレトリバー雌)は一回は子どもを産ませてみたいとの私の甘い考えから避妊をせずにきて結局子どもも産むこともなく6歳半になった頃子宮蓄膿症になり緊急手術をしました。そのときの全身麻酔が原因で食道狭窄症になり食事が一切できなくなりました。遺漏をしながら何回もバルーンで食道を広げる治療をし、やっとどろどろ状態のものなら食べられるようになり現在(7歳半)に至っています。つくづく早く避妊の手術をしていたらと後悔するばかりです。
  • 投稿者

    40代 男性 ヒロ

    私は簡単に子供が見たいから、産ませたいからとゆう安易な考えで産ませる人がわかりません。産まれた後、もらい手や飼う余裕があるのだろうかと思います。もし自分の娘の子供が見たいからといって男の所に娘を泊まらせに行かせますか?
  • 投稿者

    50代以上 女性 チワワ〜ズのママ

    我が家は最初の子を迎えた時に これから お世話になり学ばせて頂くために早々に動物病院を決めました。 その時に 避妊、去勢のアドバイスを受けました。 悩みましたが 例えば子供を産ませるとしても 色んな問題やトラブルなどがありえるかも知れないと思い 手術を決断しました。 下の2匹の子達も避妊、去勢を済ませました。 家の中を留守番時でも自由に行動させているので 生理やマーキングなどの心配がなく過ごしています。
    たまに 親にさせてあげたかったかなぁと ふと、思う時も無い訳ではありませんが 相手あっての妊娠なので 相手を探したり 授かった命の行く末などを考えれば これで良かったのだと思います。
    前に犬好きの方々のグループに入りSNSで情報交換してましたが 避妊、去勢に関して真っ向から反対意見を述べる方々も少なく無い事に驚きました。
    迎え入れた時点で獣医さんとの交流が無い方達に多く見られると思います。
    我が子の病気はもちろんですが 相方との出会いや新しい命の事も考え 本来 活用してあげなければならない臓器を機能させず ほっとくのも酷なような気がします。
  • 投稿者

    女性 匿名

    ようやく日本でもデメリットについて語られると思ったのですが、あまりの内容で驚きました。

    私の犬は去勢していません。親にしたいという安易な理由ではありません。

    前立腺腺癌(ミシガン州立大学の獣医学部の研究では去勢で前立腺がんのリスクは減らないと結果)、移行上皮癌、骨がんなど数種類のがん、リンパ腫などリスクが2-4倍あがり、心臓にリスクを抱える可能性は5倍という研究結果をみたからです。
    乳腺腫瘍、子宮蓄膿症、前立腺肥大、肛門周囲腺腫、前立腺炎などリスクが減る、とありましたが去勢・避妊しない場合とどれぐらいリスクは減るのか、きちんとしたデータを確認できません。

    特に6か月未満の去勢・避妊は成長にかなりの悪影響があるため推奨されない(アメリカ カリフォルニア大学デイビス校の研究結果)、先に述べた研究結果でも一年未満の避妊・去勢はさらにリスク増加という結果に対し、日本はいまだに早ければ早いほうがいい(最初の発情期がくるまで)という多くの獣医の考えには落胆せざるを得ません。

    乳腺腫瘍で亡くなった場合は避妊手術しなかったせいだ、と思ってもがんで亡くなった場合避妊したせいだ、とほとんどの獣医師、飼い主は思わないでしょう。だからいつまでもデメリットについて語られません。

    両方にメリット、デメリットはあります。
    ただ、あまりにも去勢・避妊に対するデメリットが語られてなさすぎる現状は非常に怖いと感じています。
    まるで避妊・去勢をしていないと飼い主失格かのように多くの獣医師・オーナー・愛護団体は言います。
    飼い主であるならば、きちんと犬の生活習慣、遺伝など判断しどうするかを考えるべきであり、それを促す獣医師が増えていくことを願います。



  • 投稿者

    50代以上 女性 匿名

    わたしは、わたしの飼い犬を去勢させるつもりはない。去勢のメリットデメリットを自分なりに調べ家族で話し合い熟考した結果の結論だ。ただ、去勢避妊の決断をし実行した人も、結果的にわたしの決断と真逆になっただけで、去勢避妊のメリットデメリットを調べ話し合い熟考した結果の決断だと思う。皆がそれぞれに、各自の決断を尊重してくれるなら良いと思うが、去勢避妊が当たり前。去勢避妊しないのは愛犬愛愛猫家でなない というような風潮には、反発したくなる。持論を展開したくなる。その持論を述べさせていただくと→わたしからみたら、病気予防ということも含め、『飼いやすくなるから』去勢避妊する というのを堂々と言ってるような気がして嫌なのだ。とどのつまりが、飼いやすくなるから、去勢避妊をさせましょう てなに?と思ってしまう。
    飼いやすくというのは、愛情、躾でしていくもので、手術でするものだろうか?
    生き物を飼うこと自体、人のエゴなのに、その上人に都合の良いように(飼いやすくするために)手術で改造 というのはいかがなものか?
    行き過ぎると、将来、遺伝子操作とかで、
    病気にならないし雄でも雌でもない大人しい犬猫(人工的に生み出した動く生きてるぬいぐるみ)まで誕生させてしまうのではないだろうか。
    去勢避妊を推奨する理由も、病気にならない雄でも雌でもない大人しい犬猫にするために ということなのだろうか。生き物を飼う時に、悩んでも苦しんでも、ありのままのその子とより良い関係を作っていくことが、お互いの学びにも喜びにもなると思うし、それが、飼う、育てる 醍醐味だと思うのだが。
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