柴犬って噛みやすい犬種?!
柴犬は、古くから猟犬や番犬として人間と密接な関わりを持ってきました。その頃の名残か、現在の柴犬も飼い主への忠誠心が強く、番犬としての性質を持っています。
そして、物事を理解する賢い頭脳を持っている柴犬は、相手から危害を加えられると感じなければ、噛みつくなどの行動には出ないでしょう。しかし、愛犬の噛み癖に悩む柴犬の飼い主が多いのも事実です。
そして、一口に「噛む」と言っても、様々な原因が考えられます。また、子犬か成犬かによっても、原因は異なります。では先ずは、柴犬の小犬と成犬が噛む原因を見て行きましょう。
柴犬の子犬が噛む原因
柴犬に限った事ではありませんが、子犬の時期特有の噛み癖が多くあります。
まず、子犬が噛んだ状況を分析して、その意味を理解しましょう。
じゃれ合いと好奇心
子犬は、相手とのじゃれ合いや相手の反応をうかがうために噛んできます。いわゆる甘噛みです。
人間の手足を見ると狙ったかのように噛んでくることがありますが、これは、別の生き物に対する好奇心の現れであり、噛むことでその反応を確認しています。
「甘」という文字がついても、決してその痛さは甘くはない甘噛み。子犬の牙は鋭く尖っているため、噛まれるとけっこう痛いですし、牙が刺さって出血したりもします。
(わが家の柴犬が子犬の頃は、家族の生傷が絶えませんでした。その頃愛犬は家族に、「ピラニア犬」と呼ばれていました。)
歯茎がむず痒い
生後4~6ヶ月頃になると乳歯から永久歯の生え変わりの時期となり、歯茎がむず痒くなるため、なんでもかじるようになります。ケージや柱などをガリガリ噛むのは、このせいであることが多いです。
わが家の柴犬は子犬期に、トイレトレーをガリガリかじって破壊しまくり、いくつ買い換えたかわかりません。ケージも、1度買い換えています。「ピラニア犬」は「破壊クイーン」でもありました。
柴犬の成犬が噛む原因
柴犬の成犬が噛む場合、その多くが問題行動として飼い主の手を焼く事になるでしょう。
噛む原因を分析して、しつけや環境の改善が出来るかどうか分析してみましょう。
警戒心
主人と1対1でコンビを組む狩猟のために改良されてきた柴犬は、見知らぬ人や犬には警戒心が強い傾向にあります。その警戒心の強さから、噛んで威嚇する事があります。
体罰
しつけのなかで体罰があると、防衛本能が働き、噛むようになってしまいます。ですから、体罰や物を叩いたりする脅かしなどは厳禁です。強い体罰を加えると、その人の前では大人しくなるかもしれませんが、他の人や動物を攻撃する可能性があります。
体罰は、百害あって一利なし。飼い主と愛犬との信頼関係を壊すだけなので、しつけのなかで体罰を行ってはいけません。
主従関係の逆転
飼い主との主従関係が築けていないと、犬は自分が優位にいると感じます。そうすると犬は、噛むことで、「触るな!」「言うことを聞け!」と飼い主に命令するようになってしまい、人間を噛む事があります。
ストレス
柴犬は元々運動量が多く、とてもエネルギッシュな犬種です。運動不足でエネルギーを持て余してしまうとストレスが溜まり、その結果「噛む」という行動に出る場合があります。
脳内の異常
噛むという攻撃行動が、脳内ホルモンの代謝異常やてんかんなど、脳の機能的な異常が関連している場合もあります。(これに関する詳細は、後述します。)
(※次のページでは噛み癖のしつけ方をご紹介!)
柴犬の噛み癖の対処法としつけ方
愛犬が、人や他の犬に噛みついたら一大事です。ですから噛み癖は、早急に直さなくてはいけません。
噛む原因によって、対処法やしつけ方も変わります。
子犬(甘噛み)編
甘噛みのしつけは、根気と時間を要しますが、避けては通れません。このしつけを失敗すると、甘噛みが本気噛みとなり、手をつけられなくなります。では、甘噛みの対処法としつけはどうしたらよいのでしょうか?
低い声で大きく叫ぶ
子犬が甘噛みをしてきたらその瞬間に、「痛い!」と低い声で大きく叫びます。ここでポイントとなるのは、「低い声」。母犬が子犬を叱るとき、子犬の口を噛んで低い声で唸ります。
そのため、飼い主が低い声を出すことで、子犬は叱られたと感じることができるのです。甘噛みをする度にこれを繰り返すことで、噛むのはいけないことなのだと子犬は学習していきます。
ちなみに、高い声で叫んでしまうと、子犬は飼い主が反応してくれたと喜び、興奮してしまうので逆効果です。
背を向けて無視をする
子犬が甘噛みをしてきたら、くるりと背を向けて無視をします。子犬が遊んでと吠えてきても、甘えてくっついてきても少しの間、完全に無視です。
大好きな飼い主に背を向けられ、無視をされるのは子犬にとってはつらいこと。このつらい体験を通して子犬は、してはいけないことを学びます。
部屋を出て行く
低い声で大きく叫んでも、背を向けて無視をしても効果がなかったら、子犬をひとりにして部屋を出て行きます。遊んでいる途中に甘噛みをしてきたら遊びを中断し、無言で目も合わさず部屋を出て行きます。
遊びが中断され、部屋にひとりぽつんと取り残されるのは、子犬にとって最悪の罰となるでしょう。
少ししたら部屋に戻ってかまいませんが、すぐに子犬に声をかけたり、触れたりはせずに、普通に過ごしてください。
その他
- ボール投げなどで子犬のエネルギーを発散させる
- コットンロープなど、噛んでも良いおもちゃを与える
- 噛んではいけないものにはビターアップルを塗布する
子犬~成犬編
警戒心で噛む場合
近所の人や友達など、飼い主以外の人たちに触ってもらったり、おやつをもらったりして、人間に対する警戒心を取り除いてあげることが有効です。
主従関係の逆転で噛む場合
飼い主と犬との間に信頼できる主従関係を作り、飼い主がリーダーになることが重要です。飼い主は時間をかけて毅然とした態度で犬と接し、リーダーであることを意識して行動しましょう。
ストレスが原因で噛む場合
長時間散歩に連れて行ったり、一緒にボール遊びをしたりして、ストレスを発散させてあげましょう。また、硬質プラスチック製のものなど、思いっきり噛めるおもちゃを与えるのも良いでしょう。
柴犬を欧米式でしつける
噛み癖の直し方について調べると、マズルコントロールやホールドスチール(束縛制止法)などが有効とされています。しかし、これら欧米式のしつけ法は、気質の強い柴犬には不向きなしつけ法です。攻撃性が悪化することもありますので、注意が必要です。
甘噛みがかなりひどかったわが家の柴犬に、欧米式のしつけ法を試したら、まさに悪化しました。撫でることもままならなくなってしまい、一時はどうなるかと真剣に悩みましたが、別の方法で矯正することができました。
柴犬の噛み癖と脳の関係
『柴犬が噛む原因』のところでも触れましたが、脳の機能的な異常で噛む場合もあります。対処法やしつけで柴犬の噛み癖が直らない場合は、それが原因かもしれません。
脳内伝達物質のセロトニンは、感情のブレーキとも言われるホルモンで、動物の攻撃行動に影響を与えます。柴犬にはこのセロトニンの代謝が弱い個体が多いため、噛む攻撃行動を起こす可能性が高いと考えられます。
また、ある研究によると、攻撃行動のある犬の脳波を計測したところ、てんかん症例に見られる脳波が約9割の個体で確認されました。このように柴犬の噛み癖は、しつけの問題ではなく、脳内ホルモンの代謝異常やてんかんのような脳の機能的な異常が関連していることもあるのです。
上記のような脳内の異常が原因である場合、どんなにしつけをしても噛み癖は直りません。投薬を含む適切な治療が必要となります。
攻撃行動に対する薬物療法について
柴犬の噛むなどの攻撃行動に対し、正確な診断を行ったうえで、必要に応じて薬物療法が行われることがあります。
攻撃行動の治療では、以下のような薬が使用されます。
SSRIs(フルオキセチンなど)
選択的セロトニン再取り込み阻害薬で、脳内のセロトニンの代謝を調整し、気分を安定させる作用があります。作用発現が遅いため、継続投与が必要です。副作用として、食欲減退、鎮静、嘔吐、下痢などが報告されています。
TCAs(クロミプラミンなど)
三環系抗うつ薬で、脳内のセロトニンの代謝を調整し、気分を安定させる作用があります。SSRIsの副作用のほかに、尿貯留、尿結石、血圧上昇などの副作用があります。
BZDs(ジアゼパムなど)
ベンゾジアゼピン系抗不安薬で、不安を和らげ、脳を落ち着かせる作用と抗てんかん作用があります。即効性がありますが、作用時間は4~6時間と短いです。副作用は、ふらつく、活動性の低下、食欲亢進、逆説興奮などがあります。
まとめ
柴犬は賢く飼い主に忠実で、最高のパートナーになる気質を持っています。
しかし一方で、警戒心が強いために噛むという行動に出てしまいがちです。噛みつき事故を起こせば、飼い主も愛犬もこれまでと同じようには暮らせません。
そのような悲劇が起こらないためにも、噛み癖は絶対に放置せず、早急に噛む原因を探り、適切な対処やしつけをして必ず直しましょう。
もし飼い主の手に負えない場合は、ドッグトレーナーや行動学を専門にしている獣医師に相談することをお勧めします。
▼柴犬について詳しく知りたい方はこちら
柴犬を飼うにはどんな人が向いてる?
ユーザーのコメント
40代 女性 moon
飼い主さんが両手で必死に口をこじ開けようとしましたが、なかなか離さず、急いで動物病院へ連れて行ったそうですが、噛まれたトイプードルは亡くなったようです。
私が飼っている犬も小型犬なため、それ以降は申し訳ないのですが柴犬には少々警戒してしまいます。普段温厚なだけに、豹変した姿を見てしまって内心とても衝撃でした。
柴犬は他の洋犬と違ってしつけ方法が特殊だと聞いたことがあります。アゴの力は相当ですので、他の犬や人と事故にならないよう、きちんとしたしつけトレーニングが必要だと思います。
40代 女性 ケーキ
ドッグランなどで「甘噛みだから~」という飼い主さんは、たいてい意識の低い方だなと思ってしまいます。甘噛みだからいい、という認識のようです。本気噛みじゃない、ということだからなのでしょうか。
以前うちの犬は、1才未満のやんちゃな柴犬の甘噛みで怪我をしました。そのときの飼い主さんの言い訳が「まだ子犬だから甘噛みの時期で。ちょっと激しかったかな?」程度のことを笑いながら言われました。頭に来たので一緒に動物病院へついて来てもらい(大げさだと言われましたが)、獣医さんからみっちり指導をしてもらいました。
体がある程度大きくなって、アゴの力が女性では敵わないほどになるということを想定して、きちんとトレーニングをするべきだと思います。
女性 aoi
子犬が歯痒くて噛んでいる場合、初めは恐る恐る噛んでいると思います。それがだんだん強くなってきたらその時に大声で制するのはとても効果的です。と、同時にどのくらいまで噛んでもいいのか(噛んではいけませんが)強さを学習することもできます。
成犬になってからの噛み癖は状況によります。警戒していたり唸っている場合はとても危険です。愛犬が飼い主に対し警戒や唸ったりする場合の原因は、ほぼ飼い主に問題があります。原因をしっかり突き止めて対処してください。
成犬の甘噛みや噛み癖はマズルコントロールが有効的です。特にマズルの長い柴犬には高い効果も期待できます。ただこればかりでしつけていくと犬にも不信感が出てきてしまいます。しつけの後のフォローも大事です。
散歩中の柴犬の中には、気性の荒い子をよく見かけます。もちろんしつけのちゃんとしている柴犬もいます。他の犬が通ると歯をむき出しにして吠えて威嚇をする様子はとても怖いものがあります。その時の飼い主さんの行動は、柴犬を制することもせずただリードを引くだけでした。噛み癖は他の犬や人に怪我を負わせたり、小型犬なら命を奪ってしまう行動です。柴犬の飼い主さんにはその責任を感じてほしいと思います。
30代 女性 nico
女性 杏子
女性 コロ
ストレスや欲求不満からくるものなら原因をつきとめ解消し、漢方やサプリなどでリラックス効果のあるものを持続していく方法もあります。「犬 リラックス サプリ」や「犬 ストレス サプリ」などで検索すると色々出てくるので、こちらもひとつの方法かと思います。
40代 男性 シン
本格的に薬殺処分も覚悟しましたが、途中放棄は許せず、改めて気合を入れ直し行ったのが次の手法でした。知らない人が見たら“虐待”と捉えられ兼ねない形かもしれませんが、結果的に今では甘噛みしようとする動作は見えますが、一切の噛み癖がなくなりました。
【必要なもの】軍手・厚手の牛革手袋・ワサビ(和からし)・十分な飲み水・気合
①軍手と厚手の牛革手袋を用意し、ワサビか和からしをたっぷりとグローブに塗り込みます。
②噛み癖が発生するシチュエーションで敢えて噛ませます。(痛いです。青タンは気合で乗り切ります)
③噛んでワサビ・からしが口の中に入っても2~3度は繰り返します。
④1~2日後、再度チャレンジします。(大分減りましたが、我が家ではまだ繰り返しました)
⑤まだ噛むようであれば、直接口の中にワサビ・からしを絞りこみ食べさせます。
※リードを持って吊るし上げれば口は開きます。
⑥以降は噛み癖が一切なくなりましたが、反射的に牙を剥こうとすることがありました。
⑦既に牛革の手袋に恐怖感があるあるようで、見せるだけで牙を剥く事すらなくなりました。
最初は特に悶絶してましたし、いつもの5倍以上の水を飲んでました。
私の場合、里親というのもあるかもしれませんが、これからも“おっかなびっくり”接するよりは今この時期にと覚悟を決めたことも大きかったのかもしれません。
女性 ビンゴ
40代 男性 匿名
原因がわからないのに行為だけ禁止しようとすると歪みがでるとはトレーナーの先生のお言葉。対症療法を使うよりしっかり絆を築いて家族と認められる方が一見遠回りでも近道です。すでに噛み癖が出ている成犬は例外でプロの手助けが必要でしょう。