犬は山芋を食べることができる食材!
山芋は犬が食べても問題のない食材です。生のままで与えることもできますし、加熱して食べさせることもできます。ただし、いくつか注意する点もあるため、山芋の特性を理解した上で愛犬に与えるようにしましょう。
山芋は「山のうなぎ」と言われるほど栄養が豊富で、薬膳料理の中でも代表的な食材です。漢方では「山薬(さんやく)」といわれています。
ちなみに、「山芋」とは「ヤマノイモ科ヤマノイモ属ヤマイモ」に分類されるいも類の総称です。ヤマノイモに分類されるイモには、「銀杏芋(いちょういも)」「長芋(ながいも)」「大和芋(やまといも)」「自然薯(じねんじょ)」などがあります。
そんな山の幸「山芋」の与え方や注意点などについて見てきましょう。
犬が山芋を食べることで期待される健康効果
山芋は栄養価が高く胃腸にもいいため、古くから人気の食材です。山芋を食べると胃腸にいいと言われるのは、「アミラーゼ」が含まれているからです。
この成分はデンプンなどの消化を助け、胃の粘膜を保護してくれるため、便秘・下痢でお腹を壊しやすい愛犬におすすめです。
他にも肥満防止効果が期待できる「水溶性食物維」、疲労回復・成長促進に効果的な「ビタミンB・C類」、神経系のバランス維持効果が期待できる「ミネラル(カリウム・リン・鉄分)」もバランスよく含まれています。
アルギニンで免疫力の向上
アルギニンはアミノ酸の一種で、体内のアンモニアを解毒し尿素に変換する働きがあります。アンモニアは、タンパク質を分解するときに発生するため、タンパク質の摂取量が多くなるとアルギニンの必要量も増えてきます。
タンパク質の多いごはんを食べさせている場合は、積極的に摂りたい成分です。また、アルギニンには疲労回復や免疫力アップ、血管を拡張する作用による血行促進、腫瘍の進行を遅らせる効果もあります。
アミラーゼで胃腸の調子を整える
アミラーゼ(別名 ジアスターゼ)は、胃腸薬にもよく使われる成分で、消化を助ける働きをしています。胃もたれ・食欲不振の改善や、整腸作用などの効果が期待できます。
また、アミラーゼは、炭水化物に含まれるでんぷんを消化する酵素で、人間は唾液に含まれていますが犬の唾液にアミラーゼは含まれていません。そのため、ドッグフードを食べている犬の消化を助ける効果が期待できる成分といわれています。
ビタミンB群、ビタミンC
山芋には、ビタミンB1やB2、B6などが含まれており、でんぷん質を分解しやすい形に変えたり、炭水化物や脂質をエネルギーに変える力があります。その働きから滋養強壮、疲労回復、免疫力向上が期待されます。
また、ビタミンCも含まれています。ビタミンCは、抗酸化作用があり老化防止や皮膚や被毛の健康維持、抗ストレス効果、関節炎などの関節の消耗に関する病気予防の効果が期待できます。
カリウムで体液のバランスを保つ
カリウムはミネラル成分のひとつで、ナトリウムと共に体液のバランスを保つ役割があります。細胞が機能するために必須の成分で、神経刺激の伝達や様々な代謝にも関与しています。
食物繊維で善玉菌を増やす
食物繊維には、腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌が排出されやすい腸内環境を作る効果が期待されています。便秘ぎみの犬に与えるのも良いでしょう。
参考文献:[食品成分データベース]いも及びでん粉類/<いも類>|文部科学省
犬への山芋の与え方
山芋を犬に与える際の調理方法は、そのまま生でも加熱してもどちらでも問題ありません。ただし、与え方には注意が必要です。
与える際には大きさについて注意することはもとより、山芋ならではの「痒くなる」「粘りっ気が強い」といった性質を考慮しておく必要があります。いくつか注意点をまとめているので、ぜひ参考にしてください。
喉に詰まらないよう小さくカットする
犬は食べ物を丸呑みする習性があるため、喉に詰まらないように小さくカットして与えるようにしましょう。また、皮には痒みの原因となる成分が含まれているので、カットの際に取り除くことをオススメします。
水分を加えて粘り気を少なくする
山芋をすりおろすと粘り気が増します。そのまま与えると粘り気により喉に詰まらせてしまう子もいるため注意が必要です。すりおろ(とろろ)して与える際は、水やスープなどを加えて粘り気を少なくしてから与えると良いでしょう。
肌に触れないように与える
山芋を触ると痒くなることがあります。この痒みは、山芋に含まれる針のような形状をした「シュウ酸カルシウム結晶」が原因で引き起こされます。
シュウ酸カルシウム結晶は、皮の周りに多く含まれており、皮を剥いたりすりおろした時にイモのほうに溶け込みます。そのため山芋が皮膚に付着した時に、針状の結晶に刺激されて痒みが発生するのです。
犬に食べさせる際はできるだけ皮膚に山芋がつかないようにしてください。すりおろした場合は、スプーンなどを使って直接口の中に入れてあげるのもひとつの方法です。
【 痒みの原因を抑える方法 】
山芋の痒みの元となるシュウ酸カルシウム結晶は、酸に触れると溶ける性質があります。山芋を酢水やレモン水につけることで、痒みの原因を薄めることができます。
しかし、犬は酢やレモンなど酢っぱいものが苦手なため、酢水やレモン水につけた後は水で洗い流すようにしましょう。
また、シュウ酸カルシウム結晶は皮に近いほど多く含まれているので、中心部のみ与えることでも痒みを軽減することができます。
犬が1日に食べても良い山芋の量
一般的に、犬に主食以外の食べ物を与える際の目安量は「一日に必要なカロリー量の20%以内」といわれています。
山芋は種類によって100gあたりに含まれるカロリー量が違いますので、食べさせるものによってきちんとカロリー計算をするようにしましょう。
100gあたりのカロリー量(塊根、生)- 山芋(長芋) :65kcal
- 銀杏芋(いちょういも):108kcal
- 自然薯(じねんじょ) :121kcal
- 大和芋(やまといも) :123kcal
例として小型犬(5kg)の場合、一日に約115gが山芋(長芋)の適量となります。必要なカロリー量は個体差がありますので、下記の記事も合わせてご参考にしてください。
犬に山芋を与える際の注意点
山芋がいくら身体に良い食材といっても、与える際にはいくつか事前に確認しておくことがあります。
「特定の疾患」が愛犬にある場合は、現在の疾患の症状がさらに悪化する恐れがあります。山芋を与える前に、まず最初に以下で説明している疾患の有無を確認してください。
また与える際は、量にも気を付けるようにしてください。
皮膚疾患がある場合
アトピー性皮膚炎など皮膚が弱い犬の場合は、何かのきっかけで山芋が少し皮膚に触れただけで、全身に皮膚炎が広がってしまう可能性があるため、与えるのは控えましょう。
腎疾患がある場合
山芋はカリウムを多く含みますので、腎疾患がある子の場合には注意が必要です。
腎疾患には、高カリウム血症と低カリウム血症があります。低カリウム血症の場合は問題は少ないと言われていますが、高カリウム血症の場合は特に注意が必要です。いずれにせよ、自己判断はせずに与える前に獣医師に相談しましょう。
腎臓や尿路系に疾患がある場合
山芋にはシュウ酸カルシウムが含まれているため、過剰摂取すると尿路結石になる可能性があります。特に、腎臓や泌尿器が弱い子は注意が必要です。
ネット上の情報では「山芋は腎臓にいい」と書かれている場合がありますが、それはあくまで健康体の場合です。腎臓や尿路系に疾患を抱えている場合は、決して自己判断せず医師に相談するようにしてください。
アレルギー症状が現れることも
山芋のシュウ酸カルシウム結晶による痒み発生も考えられますが、そもそも山芋自体に食物アレルギーを持っている場合もあります。
愛犬に初めて山芋を与える時は、まずほんの少量を試して、痒がったり嘔吐したりしないか様子を見ることが大切です。
山芋の与え過ぎに注意する
山芋が栄養豊富で犬の健康にも良いからといって、与え過ぎには注意が必要です。
食物繊維が豊富なため、適量であれば腸内改善に良いですが、与えすぎると消化不良による下痢や嘔吐、便秘などの症状が現れる恐れがあります。そして、シュウ酸カルシウムの過剰摂取による尿路結石の恐れもあります。
またカロリーが比較的高い種類もあるので、与えすぎは肥満の原因にもなります。与えていい分量を参考に、主食となるフードのトッピング程度で食べさせるようにしましょう。
まとめ
山芋は人間が食べても痒くなったり、粘りが強いので飲み込むときに注意が必要な食材です。愛犬に与える際は、細かくカットしたり粘りを抑えるよう配慮してください。
また、皮膚が弱い、腎臓に疾患がある、尿路疾患がある場合は与えるのを控えるのが良いでしょう。どうしても与えたい場合は、かかりつけの獣医に相談してください。
どんなに犬に与えてもいい食材であっても、量は適正な量を考えましょう。このように与え方さえ気をつければ、犬にとっても健康効果が期待出来る成分がたくさん含まれている山芋。
手作り食に取り入れてみたり、人間用に使うときに少しだけごほうびであげてみたりするのもいいかもしれないですね。