柴犬はドッグランで敬遠される?
柴犬以外の犬種を飼っている人同士で柴犬の話になると、なぜか微妙な反応が返って来ることが多いかったです。
柴犬というと「豹変する」「いきなり咬む」「怖い」というイメージを持つ人がいます。その理由は、ドッグランや散歩などで柴犬の絡むトラブルが多いことが原因とされています。
ですが、散歩中でのすれ違いだけなら、互いに吠え合うのは柴犬に限ったことでありません。実際、散歩中に会う柴犬たちは、他の犬には無関心で淡々と飼い主さんの横について歩く子が多いように感じます。
ただ近年、狩猟犬も牧羊犬も牧牛犬も、犬種に関係なく自由に利用できるドッグランが増えたことも背景にあると考えられます。
柴犬の独特な気質が刺激される何らかのきっかけが、ドッグランという限られた空間内に集中するためにトラブルが起きやすく、それがクローズアップされるようになったとも言えます。
知っておきたい柴犬の気質について
柴犬がドッグランで嫌われがちな理由として、柴犬の気質も影響していると考えられます。柴犬をはじめとした和犬の「本来の気質」についてご説明させていただきます。
飼い主に忠実、他の人には愛想に欠ける?!
他の犬種と同様に、柴犬も皆同じ性格というわけではありません。どの子も個性があり、「おっとり」「人にも犬にも友好的」「活発」「遊び好き」「人見知り」と様々です。ただ、柴犬で問題視されがちなのが「攻撃性」です。
昔から柴犬は「ワンマンドッグ」と言われるように「一人の飼い主に忠実」で他人や他の犬に対して愛想の良いタイプではありません。また、強い警戒心と独立心があり、精神的にも肉体的にも強靭です。生まれ持った気質の中で、強い攻撃性が現れてしまう理由は2つ考えられます。
血統的問題(気質を軽視した交配)
良い家庭犬として、柴犬の気質「飼い主に忠実」を引き出すように、きちんと勉強して個体を選び交配を行うブリーダーもいます。しかし、なかには気質に関係なく「見た目重視」「販売効率重視」の良質とは言い難いブリーダーもいます。それにより、攻撃性が出やすい血筋の子犬が出回っている可能性は否定できません。
ただし「攻撃性の出る可能性があるから飼えない」ということではありません。難しい気質の柴犬でも、適切な方法でしっかり取り組めば良い子に育てることは可能です。最近では「子犬のようちえん」など、パピー・トレーニングに重点を置いているトレーナーも多いので、しつけに迷ったらぜひプロに相談することをお勧めします。
※「子犬の性格(気質)テスト」というものがあり、これによってある程度の気質を判定することが可能です。下記に掲載していますので興味のある方人は試してみてください。
誤ったしつけ、行き過ぎたしつけ、飼い主との関係の問題
体罰は飼い主への信頼を損なわせる最悪の行為です。柴の子犬の時期は特に甘噛みが多く、遊び方も激しいため、つい手を上げてしまう飼い主もいるようですが、このことが後に様々な火種になります。体罰を加えられて育った犬は、恐怖心から咬むようになってしまいます。
柴犬は猟犬!見知らぬ犬や人に懐かないのは当然?
柴犬がドッグランに向かないと言われる理由には、もともと「猟犬」であることも関係しています。
柴犬をはじめとした和犬は猟犬や番犬として飼われていました。つまり猟をするために自立心や行動力が求められた犬種なのです。そのため、他の犬と仲良く遊んだり、見知らぬ人に愛想を振りまかない柴犬は、むしろ社会化が上手にできていると言われることもあるのです。
人気がある犬種は愛玩犬が多く、愛柴と比べ仲良くできずに落胆してしまうオーナーもいるかもしれません。しかし、柴犬本来の気質は「見知らぬ犬や人を警戒すること」ですから、その点を理解しておきましょう。
柴犬がドッグランを利用する際に注意すること
柴犬は他の犬と仲良く遊ぶのが苦手な傾向がありますが「ドッグランを利用してはいけない!」なんてことはありません。実際にドッグランで楽しく遊んでいる柴犬はたくさんいます。柴犬がドッグランで遊ぶための注意事項をご紹介します。
- 自分の犬から目を離さない
- 呼び戻しができるように、しつけておく
- トラブルになりやすい入り口付近に注意する
- 超小型犬との接触に注意する
自分の犬から目を離さない
一見穏やかで友好的に見えても、第三者にとっては柴犬がどういう一面を持っているかは分りません。何らの刺激によって突然、攻撃のスイッチが入ってしまう柴犬は確かにいて、飼い主自身ですら予測できないこともあります。
「呼び戻し」ができるように、しつけておく
犬がどれだけ楽しそうに遊んでいても、ヒートアップする前に確実に呼び戻せるようにしておくことが肝心です。
とは言え、遊んでいる最中の犬を呼び戻すのは、飼い主との間にかなりの信頼関係がないと難しいもの。呼び戻しが確実でないなら、犬が興奮する前にタイミングを見計らい、リードを付けて外に連れ出すか、他の飼い主さんに協力してもらって遊びを一時休止させるなどの対処が必要です。
遊ぶ時間を犬自身にまかせず、飼い主がコントロールする意味で、いったんドッグランから退場することも想定しておきましょう。犬との遊びからクールダウンさせ、飼い主に集中を戻させるために散歩することもお勧めです。
トラブルになりやすい入り口付近に注意する
ドッグランのトラブルは入り口付近で起きやすいとも言われています。テンションがやたらと高い、ボディランゲージをうまく出せない、または上手に読み取れない子犬や若い犬、動きがやたらと活発なテリア系などは、柴犬に限らず敏感な気質の犬種にとって刺激になりやすものです。
これらの犬がドッグランに入ってきそうになったら、愛犬の注意を自分に向けさせ外に連れ出すなど、自分の犬だけでなく他の犬の様子もしっかり観察して、先手を打って対応することが大切です。
また、メス同士、未去勢のオス同士もトラブルになりやすいことも理解しておきましょう。ヒート中、またはヒート前後のメスをドッグランに入れることは、それ自体御法度です。
超小型犬との接触に注意する
チワワが柴犬に攻撃されたという話をときどき耳にします。なぜなのか明確な理由は分りませんが、極端に小さい体、細かい動きが柴犬の中の狩猟本能を刺激するのではないかと言われています。
全ての柴犬が同じ行動をするわけではないので、チワワなど小型犬との接触は危険だとはっきり断定することはできません。ですが、ドッグランは危険を侵してまでとどまる場所でもありません。
互いに自分の犬の特徴、気質をよく把握した上で事故が起きる前に、その場から離れる判断が肝心です。ドッグランによっては、あえて「柴犬は大・中型エリアへ」と指示している場所もあり、判断に迷った時にはそちらを選ぶのが無難でしょう。
ドッグランで事故が起きてしまったら!
起きて欲しくないことですが、自分の柴犬が犬や人を咬んでしまったら…どんな言い訳をしようと、誰かが意図的にその柴犬を叩いたり怖がらせたりして攻撃をそそのかしたのでない限り、自分の犬を制御できなかった責任は飼い主にあります。
事故後の対応方法
- まずは謝罪
- しっかり傷口を洗い流すこと
- 付き添えるなら病院に付き添うこと
- 治療代は攻撃した犬の飼い主が負担すること
- その後の経過や対応も考えて連絡先を伝えること
- 誠意を示すこと
上記の点において、飼い主の対応のまずさゆえに柴犬の悪評が立って広まってしまう、残念な現実を実際に見聞きしています。
愛犬を落ち着かせ、怒らないことが大切
トラブルの真っ最中は、絶対に手を出さないこと。興奮した犬に咬まれるだけです。冷静に首輪に手をかけ対象から引き離し、相手が見えない所まで連れて行って落ち着かせ、落ち着いたところで「オスワリ」など簡単な指示を出してほめてください。
落ち着いているのに「何であんなことしたの!」と叱っても、犬には伝わりません。飼い主の怒りが理解できず、信頼を損ねるだけです。
柴犬にとってドッグランは本当に必要なのか考えてみよう
柴犬でも他の犬と仲良く遊べる子はたくさんいます。しかし、他の犬と上手にコミュニケーションを取れない子や、他の犬に対して威嚇してしまう子はドッグランの利用を避けた方がよい場合もあります。
ノーリードで楽しく遊ばせたい、他の犬と接してコミュニケーション能力や社会性を身につけさせたいという気持ちはよくわかります。しかし結果、喧嘩や怪我などのトラブルが発生したら、人も犬も深く傷ついてしまいます。
ドッグランを利用する時は、愛犬の性格や気質をしっかりと理解し考えるようにしましょう。どうしても遊ばせたい場合は、貸切ドッグランや柴犬専用ドッグランがおすすめです。また、ドッグランによっては日によって「柴犬限定」で開放している場合もあります。
柴犬を飼っていた筆者が考える理由
柴犬が敬遠されてしまう理由について、かつて柴犬と暮らした経験があり、現在は洋犬の小型犬と暮らす私もよくよく考えてみたのですが、洋犬の姿形、振る舞いに慣れている人々にとって、柴犬はいくぶん表情が読みづらいように感じます。そのため、様々なトラブルの噂も加わって必要以上に「柴犬は怖い」イメージが広まってしまったのではないかという気もします。
犬はとても人の気持ちに敏感です。特に他者の恐怖や不安に対し、生存本能の強い動物が敏感に反応することは当然であり、人側がそうした気持ちを抱く結果、柴犬側も緊張と警戒心を強めることは、十分考えられることです。
また、犬は本格的な争いを避けるために、相手に対して何らかのサインを出すものです。しかし一部の柴犬は、そのサインが見えづらく、またサインを出したとしても攻撃に出るまでが極端に短いような気がします。
それもまた無分別な交配によって極端に現れた気質なのかもしれません。これらはあくまで私見なのでご了承のほどを…。
本来の柴犬は、確かに日本犬特有とされる気質はあります。飼い主と共同することを好み、一緒に遊ぶことも大好きで、こちらの言わんとすることをよく理解するというように、優れた性質を持ち、きちんとしつければ非常に良いコンパニオンドッグになる犬です。
正しいブリーディングと適切なしつけが広まり、柴犬に対する偏った評価が正されることを願っています。
まとめ
ドッグランでは、「ウンチを拾う」「中で飲食しない」など様々なルールを守るのは大前提。実は最も肝心なのは「自分の犬と、自分の犬の近くにいる他の犬から目を離さない」そして「トラブルが起きる前の犬の様子をしっかりキャッチ」して「即座に対応すること」なのです。ルールを守って楽しく利用しましょう。