犬の去勢とは
犬の去勢とは、オス犬の生殖能力をなくすために精巣を摘出する外科手術のことです。全身麻酔をした後、陰嚢を1~1.5センチメートルほど切開し、精巣と精巣上体が納まっている睾丸を取り出す手術が一般的です。稀に、睾丸を残してパイプカットだけを行う場合もあります。
麻酔によって食べ物が気管に入ったり嘔吐をしたりすることを防ぐため、多くの場合前日の夕食後から絶食や絶飲の指示が出ます。手術自体は30分前後で終了し、日帰りか1泊の入院で済むことがほとんどです。
犬の去勢を行うメリット
望まない妊娠、出産を避けることができる
去勢手術をすることで、望まない妊娠や出産を避けることができます。多頭飼いなどでメス犬が妊娠した場合、小型犬であれば2~3匹、中型犬や大型犬であれば6~10匹の子犬が産まれます。中には子犬の引き取り手がおらず、やむを得ず保健所などに預けることになってしまうケースもあるようです。飼い主のいない子犬の増加を防ぐためにも、妊娠を臨まないのであれば手術をした方がよいでしょう。
ホルモンの影響による問題行動が少なくなる
- マーキングをする
- 激しい遠吠えを繰り返す
- 他のオス犬への攻撃性が増す
- メス犬を求めて徘徊する
去勢をしていないオス犬は、性ホルモンの影響によって上記のような問題行動を起こす傾向が強いようです。手術をして性ホルモンの分泌をなくすことで、これらの問題行動の減少が期待できます。
また、犬は嗅覚が優れているため、オス犬は離れた距離にいる発情期のメス犬の臭いにも反応します。手術によってオス犬の発情を抑えることができれば、メス犬が近くにいるのに交尾ができないというストレスも回避できるでしょう。
病気を防ぐことができる
- 精巣腫瘍
- 前立腺肥大
- 肛門周囲腺腫
- 会陰ヘルニア
去勢手術を行うことで、上記の病気を防げる可能性があります。「精巣腫瘍」は名前の通り精巣にできる腫瘍のことで、高齢になってからの発症は手術のリスクが高くなります。「前立腺肥大」、「肛門周囲腺腫」、「会陰ヘルニア」はいずれも性ホルモンの影響が大きいとされる病気で、去勢をしていない高齢の犬が発症しやすいとされています。
いずれの病気も、精巣を取り除く去勢手術をすることで発症を予防することが可能です。
犬の去勢を行う時期
犬に去勢手術を行う時期は犬の大きさなどによっても異なりますが、生後6~10カ月が妥当とされています。オスには発情期がなく、メスの発情に誘発されて生殖活動を行います。オスが繁殖能力を有するのが生後7カ月~1年程度なので、その前に手術を行うことで発情や望まない妊娠を防ぐことができます。
また、高齢になるほど麻酔のリスクや手術による合併症、副作用を起こす可能性が高まることから、それらの危険性を最小限に抑えるためにも早い時期に実施した方がよいと考えられています。
犬の去勢手術の後のケア方法
手術後すぐは、一度にたくさんのドッグフードを与えると麻酔の影響で吐いてしまう可能性があります。前日から絶食しているので犬が大量に餌を欲しがることもあるかもしれませんが、消化器官に負担をかけないためにも、少しずつ与えたり飲み込みやすいようふやかしたりする方がよいでしょう。
犬の去勢手術の場合、7~10日後に再診と抜糸を行うことが一般的です。それまでは傷口が開かないよう激しい運動を避け、散歩の頻度や時間は獣医の指示に従いましょう。シャンプーも抜糸から1週間程度経ってから行う方が安心です。犬が傷口を気にして舐めてしまう場合は、エリザベスカラーや術後服を利用することも検討しましょう。
手術は肉体的な負担だけでなく精神的なダメージも伴います。家に帰った後は体をやさしく撫でる、食欲があればおやつを与えるなどしてスキンシップをはかり、愛犬の心のケアにも努めましょう。
犬の去勢における注意点
犬の去勢手術の費用
一般的な去勢の手術費用は、日帰りで20,000~30,000円程度です。病院や犬のサイズなどで値段が異なるため、詳しくは手術を受ける予定の病院に事前に確認してください。
去勢手術を受ける前には、犬の健康状態や麻酔に耐えられるかどうかを確認するための検査をする必要があります。手術代の他に、血液検査やX線検査などの事前検査で3,000~5,000円程度かかることを覚えておきましょう。また、入院や服薬、病気の治療などが必要な場合は別途費用がかかることもあります。
自治体によっては犬の去勢手術の費用を助成してくれるところもあるので、一度お住いの市区町村のホームページなどを確認してみるとよいかもしれません。
体重の管理
去勢手術をした犬はエネルギー消費量が減少し代謝が落ちる一方で、食欲が増すために太りやすくなります。肥満は様々な病気にかかるリスクを高めるので、食事の管理や適度な運動によって体重を管理するようにしてください。
ドッグフードやおやつの中には去勢や避妊をした犬用の低カロリーなものも売られているため、必要に応じてこれらの製品を利用するのもよいでしょう。
元気がない時
食欲がなかなか回復しなかったり元気がない日が続いたりして心配な場合は、早めに病院に連絡をして指示を仰ぐようにしてください。急な体調変化がある場合に備えて、手術は午前中に行うと対応がしやすいでしょう。
また、手術後に犬がおとなしくなり、性格が変わったと感じることがあるかもしれません。これは手術をしたことでホルモンの影響による攻撃性や問題行動が減るためであり、一般的に去勢手術で性格が変わることはないとされています。よって、他の犬に対する攻撃性が落ち着いたとしても、なわばりを守るために吠える、ストレスや恐怖によって噛みつくなどの行動は手術をした後も変わらないこともあるようです。
まとめ
犬に去勢手術を行うと、望まない妊娠を避けたり、問題行動や病気を防いだりできるメリットがあるようです。術後は体と心のケアが必要になり、全身麻酔のリスクや体重の増加など手術による影響もあるので、去勢における注意点をよく確認した上で手術を行うかどうかを判断するとよいかもしれません。