犬の11歳とは
犬の11歳は高齢期です。元気で病気知らずだった犬も、この年齢になったら体にさまざまな変調をきたします。飼い主さんも愛犬を「老犬」と捉え、成年期からの生活を見直さなければならない時期と言えるでしょう。
大型の犬の中でも、レトリバー・秋田犬・シベリアンハスキーなどは平均寿命が11歳前後言われています。また、中型犬では柴犬・ビーグル、小型犬ではダックスフント・トイプードルなども、11歳前後の平均寿命と言われています。
犬の11歳は、個体差もありますが、例え元気だとしても、病気や介護を近い将来にの視野に入れるべき大事な時と言えるでしょう。
犬の11歳は人間だと何歳?
人間に例えると
犬の年齢を人間の年齢に換算する場合、大型犬と中型・小型犬の数え方に若干違いがあります。
犬(11歳)を人間の年齢に換算した数値
小型犬 | 中型犬 | 大型犬 |
---|---|---|
60歳 | 65歳 | 71歳 |
犬の11歳は小型犬で人間の約60歳、中型犬が約65歳、大型犬は約71歳ということになります。
犬を人間に例えると、生後1年で小型・中型・大型のすべての犬が15歳程度まで成長します。その後は徐々にサイズにより年齢に差がでてきます。特に大型犬は成犬になってからの加齢が速まります。
犬が11歳になって目立ってくる老化のサイン
よく寝る
犬の年齢が11歳くらいになると寝ている時間が長くなります。夜だけでなく、昼間の睡眠時間も増えてきます。大好きなおもちゃや、おやつで気を引いても寝てばかりになった犬は、老化が始まっているサインです。
食に対する変化
老犬は、食欲が減退したり、逆に旺盛になるなどの変化が出てくることがあります。11歳ともなれば、胃酸や消化液の分泌が少なくなり、胃腸の働きが鈍くなります。また、運動量も減りますので、食事量が減ることもあるでしょう。
逆に急激に食欲が旺盛になる場合も見られます。食に執着することが老化のサインの1つでもありますし、ホルモンが作用している場合もありますので、獣医さんに相談してみましょう。食べ物の好みに変化が見られることもあります。味覚や嗅覚の変化も衰えによる症状です。
運動や散歩を嫌がる
11歳前後から筋肉の衰えが始まります。長時間の散歩が犬の大きな負担になっていることも考えられます。犬の筋力は後ろ足から衰え始めます。歩き方がいつもとおかしいと感じた場合は、まずは獣医さんにも相談してみましょう。
吠える、徘徊、物にぶつかる
人間と同じように老犬には認知症の症状がよく現れます。例えば、吠えることが多くなった、ウロウロと部屋の中を歩き回るようになった様子が11歳くらいの犬に見られたら、認知症の兆候であることが多いでしょう。
また、物によくぶつかる、ちょっとした音に驚く場合は、認知症のほか眼病による視力の低下の疑いもあります。
体の変調
目が見えにくそう、ゼェゼェとした呼吸や咳をするようになった、口臭が気になるということも11歳前後から現れます。また、犬が食べたものをよく吐く、えづく回数が増えるという場合もあります。頻尿になり、トイレに間に合わず尿漏れすることも起きます。
犬が11歳になって気をつけたい病気
白内障
老犬に多い目の病気に「白内障」があります。目の中の水晶体が老化によって白く濁ることで、視力の低下をきたす病気です。
犬の場合、6歳以上から急激に増えると言われていますので、11歳前から瞳の変化に注意して見ている方が良いでしょう。
白内障は遺伝的に発症しやすい犬種があります。柴犬、プードル、マルチーズ、プードル、アメリカン・コッカー・スパニエル、シーズーなど、日本でも馴染みの犬種にも多く発症例が見られるため、気を付けましょう。
心臓病
11歳前後の犬が多く発症する心臓病に「弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症)」があります。呼吸が苦しそう、咳が多い、お腹が膨らんできたという異変を感じたら、できるだけ早く獣医にかかりましょう。
弁膜症とは、心臓内の4つの弁が何らかの原因で閉まらなくなる(閉鎖不全)、または狭くなる(狭窄)疾患です。犬に特に多いのは「僧帽弁閉鎖不全症」です。僧帽弁閉鎖不全症になると、血液を全身に送り出すポンプの役目が果たせません。
この心臓病は、特に高齢の小型犬に多く発症します。マルチーズ、チワワ、ポメラニアン、シーズー、トイプードルに多く、中型犬ではキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルが若齢でも発生する場合が多いと言われています。
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子宮・前立腺の病気
11歳のメス犬の場合、子宮疾患の恐れがあり、避妊手術をしていない場合は6歳前後から発症するリスクがあります。
特に老犬が発症しやすい「子宮蓄膿症」は、大腸菌が肛門周辺から子宮へ入って感染することが原因として多いです。さらに加齢による免疫力の低下から、子宮内で細菌が増殖して発症します。症状として、下痢、お腹や外陰部の腫れ、生理とは違う血膿が見られます。
オス犬で去勢手術がされていない犬は「前立腺肥大」を発症することがあります。頻尿や便秘、血尿などの症状が出ますが、症状が出ない場合もあります。しかし未去勢のオスの75%以上がかかっているという説もあるので、未去勢の老犬を飼っている場合は注意が必要です。
尚、これらの病気を防ぐために、若いうちに去勢手術をした方が良いという考えもありますが、手術には賛否両論あります。倫理的な観点のほか、去勢手術の際におこなう全身麻酔のリスクを訴える人もいることを念頭に入れておきましょう。
犬の前立腺肥大 症状と原因、去勢手術や薬などの治療法から予防法まで
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認知症
犬の高齢化が進み、人間と同じく老犬の認知症が大変多くなってきています。特に大型犬の11歳は70歳を超えています。さまざまな認知症の症状が出てもおかしくはありません。
犬種にかかわらず、症状は人間の認知症と似たものが現れます。認知症の段階にもよりますが、犬の行動によっては危険が伴われ、片時も目が離せない状況になることもあるかもしれません。
皮膚病
犬の老化は皮膚にも現れます。新陳代謝が衰えるため、毛艶がなくなり被毛も少なくなります。このため、外気やほこりなども皮膚に付着しやすく、皮膚が刺激を受けて炎症を起こす場合があります。
また、11歳くらいになると免疫力が低下するので、体内に入ってしまった細菌を追い出すことができずアレルギーを起こすこともあります。
さらに、認知症の症状として自分の皮膚をなめ続けたり、アレルギーや炎症部の痒さから、執拗に患部を舐めて炎症を悪化させる「舐性皮膚炎」もあります。
歯の病気
11歳の頃には歯の衰えも出てきます。犬によっては歯槽膿漏で歯が抜けてしまう場合もあります。しかし、犬には入れ歯はありません。ですから子犬期から歯磨きを嫌がらないようにするしつけが、実はとても大切なのです。
老犬は歯石がたまりやすくなります。歯石は放置しておくと硬くなり、歯周病の原因になります。それが悪化すると口臭が強くなり、頬から膿が出ることもあります。
口内の病気は、細菌が体内に回り内臓の疾患に発展してしまう恐れがあります。飼い主さんが口の中をチェックでき、歯石除去の処置を行うためにも、いつでも口を触らせてくれるようにしつけておくことが大切です。
犬に11歳から長生きしてもらうためのコツ
犬の老化は突然始まるものではなく、日々確実に進んでいるものです。飼い主さんはなかなか気づきにくいかもしれませんが、小さな変化を見逃さないことが愛犬に長生きしてもらうコツでしょう。11歳以降も元気に過ごしてもらえるよう、飼い主さんには次のことをお勧めします。
定期健診を年2回に
11歳を迎えたら、健診を年に2回に増やしましょう。成犬は最低1年に1回が理想と言われていますが、シニアになればなるほど病気の発症リスクは上がり、進行も早まります。
健診を2回にすることで、飼い主さんが気づきにくい愛犬の変化を発見できる機会が多くなります。そして、例え何らかの病気が発見されても、初期治療を開始すれば軽度で済む場合もたくさんあります。
尚、年に1回の混合ワクチン接種はとても大切ですが、老化による免疫の低下から副作用反応が出ることもあります。接種した日は、特に犬を安静にさせ、目を離さないことが大切です。少しでも異変を感じたら、病院へ連れて行きましょう。
食事の改善
犬の食事は高齢犬に適したものにシフトしましょう。ドッグフードも「子犬用」「成犬用」「シニア犬用」というように分かれている物が多いです。
11歳の犬には、成犬用のフードでは補いきれない栄養もありますし、逆に成犬用では摂りすぎる栄養もあります。年齢に適した食事を意識することは、長生きの大きなコツです。
犬の老化の原因には活性酸素があります。この活性酸素を除去してくれる抗酸化栄養素が含まれたサプリメントなども食事にプラスすると良いでしょう。直接的に病気を退治するものではありませんが、体内の細胞の劣化を緩やかにする作用効果が期待できます。
また、老犬は栄養を吸収する力も衰えます。体のエネルギーの吸収を助けるために、DHAを含んだオメガ3系脂肪酸のサプリメントもお勧めです。
老いてくると、消化機能も落ちてきます。手作りの食事やおやつは、硬さや大きさにも注意して、ひと工夫してあげることも必要です。
生活環境の改善
室内はなるべくバリアフリーに近づけてあげましょう。11歳前後の足腰が弱ってきた犬には、ちょっとした段差や滑りやすい床が骨折の原因になりかねません。人間と同じく、骨折がきっかけで寝たきりになってしまう犬も多いのです。
床の素材は犬の足に大きな影響があります。滑りやすい床材の場合は、マットを敷いて足元を安定させてあげましょう。
認知症や眼病を患っている犬は視野が狭くなります。障害物にぶつからないように、予め危険な物を置かない、柱や犬がぶつかりそうな箇所には、クッション性のあるマットを設置する、立ち入られたくない場所はゲートで封鎖しておくといった配慮が必要です。
日常の生活
犬にとって遊びの時間はとても大切です。大好きな飼い主さんとコミュニケーションを取りながら楽しむことは、11歳の老犬の脳の刺激にもなります。また、飼主さんが犬の変化に気づくきっかけにもなります。体力強化やストレス発散のためにも、散歩もできる範囲でさせてあげましょう。
犬が11歳でも入れる保険にどんなものがあるの?
ペット保険は11歳の犬でも加入は可能です。しかし、犬の保険は10歳くらいから加入できる保険が限られる場合も多く、加入に条件がつくこともあります。
犬が高齢になり、病院にかかることが増えてから慌てて保険の加入を考え始める飼い主さんも多いかと思います。ですが、保険は犬の年齢が上がれば上がるほど、掛け金も高くなるのが一般的です。なるべく若いうちから加入し、いざという時に備えておくことをお勧めします。
ペット保険のタイプ
ペットの保険は大きく分けて、2つのタイプがあります。「総合保障(フルカバー)」タイプは愛犬の病気やけがに対する、通院・入院・手術の3要素をバランスよく保障しています。「補償限定」タイプは、3つのどれかに対する補償を特に手厚くサポートするタイプです。
例えば、慢性気管支炎などは長期通院治療が必要となります。「治療が長くかかる疾患に対しての補償を重点的に考えたい」場合には補償限定タイプが良いでしょう。
また11歳という年齢を踏まえ「いつ、どんな病気にかかり、どんな手術が必要になるかわからない、術後の通院費用にも備えたい」と思われる場合は、総合タイプから考えてみるのが良いでしょう。
ペットの病気にかかる費用
一例ですが、愛犬が心臓病にかかった場合の負担費用は120万だったという方もいらっしゃいます。(初診~術後1カ月検診にかかった費用の合計)。
ペットにかかる医療費は人間の健康保険のような仕組みもなく、全額が飼い主負担となっています。このため経済的な圧迫となり、愛犬に最善の治療をしてあげられない場合も生じます。
11歳という年齢は、さまざまな疾患を発症しやすく、病院にかかることは避けて通れないでしょう。その経済的な負担を保険で少しでも軽くし、安心して治療を受けさせてあげることが、犬の長生きにも繋がります。
ペット保険のシュミレーション
「ペット保険比較」by わんちゃんホンポ では、愛犬の犬種や年齢からどのような保険があるか、11歳でも加入可能かなどを、ほぼ全てのペット保険会社から一括検索し、比較することができます。
また、犬種ならではのかかりやすい病気を知ることもでき、その病気に特化している保険を検索することも可能です。資料も無料で取り寄せできるので、一度シュミレーションしてみることをお勧めします。
まとめ
11歳の犬には、高齢犬に見られる症状がすでに現れているかもしれません。元気だった時と比べ、愛犬の衰えに寂しさを感じる飼い主さんもおられるでしょう。
しかし、犬は飼い主の年齢をいつしか超えていくものです。今はまだ元気だとしても、11歳という年齢はいよいよその覚悟を持つべきタイミングなのかもしれません。
場合によっては介護となることもあるでしょう。私たちは飼い主として、犬の老化をきちんと受け止め、愛犬の年齢に合わせた生活環境を作ってあげることがとても重要なりますね。病院ともしっかり連携をとりながら、大切な家族を1日でも長生きさせてあげることに努めていきましょう。