犬の肉球の構造とその役割
犬の肉球は、様々なモチーフにも使われる、可愛らしい形や、手触り、匂いで人々を魅了しています。肉球ケアについて説明する前に、魅力的な肉球の構造と役割についてお話しましょう。
肉球には、大きく2つの役割があります。
肉球は犬にとっての「靴」
愛犬の肉球を思い浮かべてください。真ん中に大きな肉球が1つ、指の方に小さい肉球が4つあり、前足には狼爪のところに、もう1つ更に小さな肉球があります。
肉球を触ると他の皮膚とは異なる硬さと弾力があります。これは、厚い角質層と、その中の弾性繊維・脂肪によるものです。
角質層は、歩行の際の刺激(砂利や枝など)で徐々に厚く、硬くなっていきます。厚い角質層は、熱も伝わりづらくしてくれるため、犬は夏も冬もそのまま外を歩くことができます。熱弾性繊維や脂肪は、地面から受ける衝撃から身体を守る、クッションの役割をしています。また、肉球はしっとりしているため、滑り止めとしても役立ちます。
怪我や熱から足を守り、衝撃も和らげ、滑り止めにもなる、肉球はまさに犬にとっての「靴」と言えます。
肉球は汗をかく場所
愛犬の肉球を触ったときに、しっとりしていると思ったことはありませんか。肉球には汗腺があり、そこから汗をかいています。汗の役割というと、人間でもよく言われる体温調節が思い浮かぶかもしれません。ですが、小さな肉球でいくら汗をかいても、体温変化にはほとんど影響がありません。
では、肉球の汗にはどんな役割があるのでしょうか。
動物病院などの犬にとって緊張する場面で、犬の肉球に汗でしっとりしているのを見たことはありませんか?
犬の祖先の狼が野山を駆け回っていた頃、緊張する場面とは、何かを狩ったり逃げたりする場面でした。そんなときには、汗で肉球の乾燥を防いで、足元が滑らないようにしていたのです。
犬が後脚で地面をかいているところを見たことはありますか?この行動は、肉球の汗でマーキングをしているのだと言われています。犬の鋭い嗅覚は、お互いの汗の臭いも嗅ぎ分けることができます。
犬の肉球をケアしよう
愛犬の肉球はカサカサしたり、ひび割れていたりしていませんか?そのままでは、肉球の大切な役割をはたすことができません。では、お家ではどのようなケアができるのでしょうか。
肉球を乾燥から守る
肉球には汗腺があり、表面をしっとりさせることで、いくつかの役割を果たしていることをお伝えしました。
ですが、今、肉球が乾燥してしまっている子が増えています。それはなぜでしょうか?
あなたは、愛犬とお散歩から帰ってきたときに、愛犬の脚をきれいにしてお家の中に入れているかもしれません。実は、その方法に原因があるかもしれないのです。
お散歩から帰って、愛犬の足をシャワーで流したり、ウェットティッシュなどできれいに拭いたりしていませんか?そのとき、脚をきれいにしようとするあまり、肉球を乾燥から守っている汗や皮脂も一緒に拭き取ってしまっています。
乾いたタオルでしっかり拭き取ったり、ドライヤーを当てたりすれば、さらに乾燥は進みます。
もちろん、脚を濡らしたときには指の間まで乾燥させて皮膚病を予防する必要があります。ですが、これがお散歩のたびに行われると、肉球はどんどん乾燥してしまうのです。
肉球の乾燥を防ぐために一番よい方法は、乾いたタオルで拭くだけにして、必要な汗や皮脂を取りすぎないようにすることです。ですが、それだけでは脚が綺麗にならないこともあるでしょう。
そんなときは、ワセリンや肉球用の保湿クリームを使用したり、外に出るときに犬用の靴を使用したりしてみましょう。ただし、クリームは舐めとられてしまいますし、靴も初めは嫌がるかもしれません。あくまで補助と考えましょう。
傷や火傷から肉球を守る
よく言われるように、夏の熱いアスファルトをそのまま歩いてしまうと、肉球を火傷してしまいます。夏の散歩の前には、飼い主がアスファルトにしばらく触れてみて温度を確かめましょう。
冬も安心できません。北国では地面の氷を踏んだ場合や、山や森に入る場合、災害があって路面状況が良くない場合、こういった場合に肉球を怪我してしまうことがあります。
犬の肉球は、表面に血管が少なく、角質層が厚いために傷の治りがよくありません。また、いつも体重がかかっているところなので、傷が開きやすい場所でもあります。愛犬と歩く場所は、路面の状況をよく確かめて、必要であれば靴を履かせるなどの対策を行いましょう。
まとめ
犬の肉球について解説しました。
肉球は愛犬の暮らし方によって様子を変え、愛犬の歩行を支えています。柔らかい子犬のような肉球も、飼い主さんと一緒にたくさん歩いて強く硬くなった肉球も、どちらもとっても魅力的ですよね。
ぜひ愛犬の肉球ケアの参考にしていただき、大切な肉球を労わってあげてください。