肛門腺絞りとは?
犬の肛門の左右には『肛門腺』という臭腺が1対あります。肛門腺は袋状になっていて、この袋を肛門嚢(こうもんのう)といいます。
肛門嚢には、においの強い分泌物が溜まります。この分泌物については、あまり溜まらない犬、排便時に少しずつ排出する犬、自力での排出が難しい犬など、それぞれ個体差があります。
肛門嚢に溜まった分泌物をそのままにしておくと、肛門嚢が炎症を起こしたり、破裂してしまったりすることがあります。
こうしたことを予防するために、定期的に分泌物を絞り出してあげる必要があり、これを『肛門腺絞り』と呼びます。
肛門腺絞りの頻度は?
個体差がありますが、肛門腺絞りを行う頻度の目安は月に1回程度です。
しかし、分泌物の溜まりやすさや、自力で排出できるできないには個体差がありますので、愛犬はどのくらいの頻度で肛門腺絞りを行うのがベストか、獣医師やトリマーさんに相談してみるとよいでしょう。
また、お尻を床に擦りつける、肛門をなめる、自分の尻尾を追いかける、お尻を気にするなどの行動が見られるときは、肛門嚢に分泌物が溜まっている可能性があるので、肛門腺絞りを行ってあげましょう。
肛門腺絞りの手順
肛門腺絞りは爪切りや耳掃除と同様に、動物病院やペットサロンで行ってもらえますが、自宅で飼い主さんが行うこともできます。その場合の手順を簡単にご紹介します。
- ①片手で犬の尻尾を真上にしっかりと持ち上げる(しっぽの根本をもちましょう)
- ②肛門を時計盤に見立て、8時と4時の場所辺りに親指と人差し指を当てる
- ③下から上に押し上げるように絞る
- ④お尻をシャワーで洗い流すか、ウェットティッシュで拭き取る
犬の肛門腺絞りでやってはいけないNG行為
前述のとおり、肛門腺絞りは自宅で飼い主さんが行うこともできますが、その際にやってはいけないNG行為があります。6つご紹介していきます。
①力加減が強すぎる
肛門腺絞りを行う際、しっかり絞り出そうとしてついつい力が入ってしまいがちです。絞るときの力加減が強すぎると、愛犬の皮膚や肛門を傷つけてしまうことがあります。
また、痛い思いをするとお尻を触らせてくれなくなることもあるので、力ずくで絞り出そうとせずに、優しくゆっくりと下から上へ押し出すイメージで絞ってあげましょう。
②無理に絞ろうとする
愛犬が痛がったり嫌がったりしているのに無理に絞ろうとすると、尻尾やお尻を触るだけで嫌がったり、怒ったりするようになってしまうかもしれません。そうなっては、動物病院での受診やペットサロンでトリミングをお願いするときに困ったことになります。
肛門腺の絞りやすさは、分泌物の性質がさらさらとした液状の犬は絞りやすく、粘土質の犬は絞りにくいなど、個体差があります。自分で絞るのは難しいと感じたら無理はせず、獣医師やトリマーさんなどプロにお任せしましょう。
③オスワリやフセの状態で尻尾を持ち上げる
肛門腺絞りを行うときに尻尾を持ち上げますが、愛犬がオスワリやフセの状態のまま尻尾を持ち上げるのはNGです。愛犬がのけ反るような姿勢になるため、腰や背中を痛めかねません。
尻尾を持ち上げる際は、必ず愛犬を立たせた状態で行いましょう。
④お尻を覗き込みながら絞る
肛門腺を絞るとにおいの強い分泌物が出てきますが、分泌物が勢いよく飛び散ることがあり、飼い主さんの髪や洋服についてしまうことも少なくありません。愛犬のお尻を覗き込みながら絞ると、分泌物が顔に飛んでくることがあるので要注意です。
分泌物のにおいはかなり強烈ですので、すぐに洗い流せるように、シャンプーの際に肛門腺絞りを行うのがおすすめです。シャンプー時以外に行う場合は、何枚か重ねたティッシュを肛門にあてがい、その上から絞るとよいでしょう。
⑤長い爪で絞る
飼い主さんの爪が伸びていると、愛犬の肛門周りを傷つけてしまう可能性があります。愛犬に痛い思いや傷を負わせないために、飼い主さんの爪は短く切ってから肛門腺絞りを行うようにしましょう。
⑥何度も繰り返し絞る
肛門腺が上手く絞れないからといって、何度も繰り返し行うのはやめましょう。肛門周りが炎症を起こしてしまうことがあります。上手く絞れないときは、また日を改めて行うか、プロにお任せするようにしましょう。
まとめ
愛犬が肛門腺の分泌物を自力で排出できないタイプならば、肛門嚢の炎症や破裂を予防するために、定期的な肛門腺絞りが必要になります。
飼い主さんが肛門腺絞りを行う際は、ご紹介したようなNG行為によって愛犬に痛い思いをさせたり、愛犬の身体を傷つけたりしないように気をつけてくださいね。
上手く絞れない場合は無理をせず、獣医師やトリマーさんにお任せしましょう。