犬のアレルギー検査で何がわかる?検査の種類や費用、結果の活かし方まで

犬のアレルギー検査で何がわかる?検査の種類や費用、結果の活かし方まで

愛犬のしつこい痒み、もしかしてアレルギー?この記事では、犬のアレルギー検査の種類、費用、期間から、原因判明後の具体的な対策、フードの選び方まで解説します。原因を特定し、つらい症状を和らげるための知識がわかります。

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記事の監修

大阪府立大学生命環境科学部獣医学科卒業。その後、約10年に渡り臨床獣医師として動物病院に勤務。予防医療、行動学、老犬の介護問題に興味を持っています。正しい知識と情報を多くの方に伝えたいという思いからWEBライターとして動物関係の記事を執筆しています。

そもそも「犬のアレルギー」とは?

後ろ足で体を掻く犬

犬のアレルギーとは、本来であれば体に害のない特定の物質(アレルゲン)に対して、体の免疫システムが過剰に反応してしまう状態を指します。

アレルゲンが体内に侵入すると、免疫システムがこれを「敵」と誤認し、体を守るためにヒスタミンなどの化学物質を放出します。この化学物質が、皮膚の痒み、赤み、脱毛、下痢や嘔吐といった様々なアレルギー症状を引き起こすのです。

アレルゲンには、食べ物に含まれるタンパク質(食物アレルギー)や、ハウスダスト、花粉、カビといった環境中の物質(環境アレルギー・アトピー)など、多岐にわたるものが存在します。トイ・プードルや柴犬、フレンチ・ブルドッグなど、特定の犬種で発症しやすい傾向も見られますが、どの犬種でも発症する可能性はあります。

アレルギーは体質的な問題であるため、完治は難しいとされていますが、原因となるアレルゲンを特定し、適切に対策することで、症状をコントロールし、愛犬の生活の質を大きく改善することが可能です。

犬にアレルギー検査を受けさせるメリット

上を見上げて幸せそうに笑っている犬

愛犬のアレルギー症状に気づいたとき、アレルギー検査を受けさせることは、原因を特定し、適切な対策を講じるための重要なメリットがあります。

症状の原因となるアレルゲンの特定

最大のメリットは、愛犬を苦しめているアレルギー症状の根本原因、すなわちアレルゲンを特定できる点です。痒みや皮膚炎といった症状は、アレルギー以外にも細菌や真菌、寄生虫の感染、ストレスなど様々な原因で起こり得ます。

アレルギー検査によって、症状がアレルギー反応によるものであり、かつ何に対して反応しているのかを明らかにすることで、憶測に基づいた対策ではなく、科学的根拠に基づいた効果的なケアを開始できます。原因が分かることで、飼い主の精神的な負担が軽減されるという側面もあります。

食事管理の具体的な指標になる

食物アレルギーが疑われる場合、アレルギー検査は食事管理の明確な指針となります。検査によってアレルゲンとなる食材が特定できれば、その食材を含まないドッグフード(アレルギー対応フードや療法食)を選んだり、手作り食のレシピを考えたりする際の重要な情報となります。

闇雲に食材を制限するのではなく、原因物質だけを的確に避けることができるため、愛犬の栄養バランスを保ちながら、安全な食事を提供することが可能になります。

生活環境の改善につながる

ハウスダストや花粉、カビなどが原因の環境アレルギー(犬アトピー性皮膚炎など)の場合、検査結果は生活環境を見直すきっかけとなります。

例えば、ハウスダストに強く反応していることが分かれば、こまめな掃除や空気清浄機の導入、布製品の洗濯といった具体的な対策を優先的に行うことができます。

どの季節にどの花粉に注意すべきかが分かれば、散歩の時間帯を調整したり、散歩後に体を拭いてあげるなどのケアを徹底したりと、効率的な対策が可能になります。

犬のアレルギー検査の種類

動物病院で採血を終えた犬

犬のアレルギー検査には、主にアレルゲンを特定するためのいくつかの方法があります。それぞれに特徴があり、獣医師が症状や状況に応じて最適な検査を選択します。

血清IgE検査

血清IgE検査は、採血によって血液を採取し、血液中に含まれる「IgE抗体」という特定の抗体の量を測定する検査です。

IgE抗体は、アレルゲンに反応して体内で作られるタンパク質の一種で、即時型アレルギー反応に関与します。この抗体がどのくらい、何に対して作られているかを調べることで、アレルゲンを推測します。

一度の採血で多くの項目(食物、環境アレルゲンなど)を調べられるのが特徴で、犬への負担が比較的少ない検査方法ですが、検出力が限定的であることから、主に環境アレルゲンを特定する時に用いられています。

リンパ球反応検査

リンパ球反応検査も採血によって行いますが、こちらは血液中の「リンパ球」という免疫細胞の反応を見る検査です。アレルゲンのサンプルに対してリンパ球がどの程度強く反応するかを測定し、アレルギーの原因を特定します。

この検査は、IgE抗体が関与しない遅延型アレルギー(食物アレルギーで多いとされる)の検出に有用とされています。血清IgE検査と併用することで、より多角的にアレルゲンを特定できる可能性があります。

除去食試験・皮膚パッチテスト

除去食試験は、食物アレルギーを診断するための最も信頼性の高い方法の一つです。アレルギーの可能性が低いとされるタンパク質と炭水化物のみで構成されたフード(除去食)を一定期間(通常8週間以上)与え、症状が改善するかどうかを観察します。

その後、疑わしい食材を一つずつ与えて症状が再発するかを確認する「食物負荷試験」を行うことで、原因食材を特定します。時間と手間がかかりますが、実際に症状が変化するかどうかで判断するため、信頼性が高い方法です。

また、皮膚パッチテストは、アレルゲン物質を皮膚に直接貼り付け、反応を見る検査ですが、一般の動物病院での実施は限定的で、日本では対応施設が限られます。

犬のアレルギーの検査費用

電卓で費用計算をする犬

犬のアレルギー検査にかかる費用は、検査の種類や検査項目数、動物病院によって異なります。費用について事前に確認しておくことが大切です。

血清IgE検査の費用

血清IgE検査は、調べるアレルゲンの項目数によって費用が変動します。一般的には、食物アレルゲンと環境アレルゲンを含む複数の項目を一度に調べるパネル検査が主流です。

費用相場は、およそ2万円から5万円程度が目安となります。より詳細なパネルや、特殊なアレルゲンを含む場合は、これ以上の費用がかかることもあります。診察料や採血料が別途必要になる場合が多いため、総額については動物病院に直接問い合わせるのが確実です。

リンパ球反応検査の費用

リンパ球反応検査も、検査機関や調べる項目によって費用が異なります。こちらの費用相場も、おおよそ3万円から5万円程度と、血清IgE検査と同程度か、やや高額になる傾向があります。

この検査も、検査費用に加えて初診料や再診料、採血料などが別途発生します。血清IgE検査と同時に実施することで、割引が適用される場合もあります。

除去食試験の費用

除去食試験自体の検査費用は発生しませんが、試験期間中に与える特別な療法食の費用が必要になります。

療法食は一般的なドッグフードよりも高価であり、犬の体重や試験期間(通常8週間以上)によって総額は大きく変わります。数万円単位のフード代がかかることを見込んでおくと良いでしょう。また、試験期間中の診察料も別途必要です。

犬のアレルギー検査結果の通知期間

書類を持つ獣医師の手元を覗き込む犬

アレルギー検査の結果が手元に届くまでの期間は、実施する検査の種類によって異なります。結果を待つ間も、獣医師の指示に従って痒みを抑える治療などを行うことが一般的です。

血清IgE検査やリンパ球反応検査といった採血による検査の場合、結果が判明するまでには通常1週間から3週間程度の期間を要します。これは、採取した血液を専門の外部検査機関へ送り、そこで詳細な分析が行われるためです。動物病院が検体を発送するタイミングや、検査機関の混雑状況によっては、もう少し時間がかかることもあります。

一方、除去食試験の場合は、結果(アレルゲンの特定)が判明するまでにはより長い期間が必要です。まず、症状の改善を見るために最低でも8週間は除去食を続ける必要があります。

その後の症状改善が見られたら、原因と疑われる食材を一つずつ与えて反応を見る「食物負荷試験」へと移行し、原因食材を確定するまでにはさらに数週間以上かかります。そのため、最終的な診断がつくまでには2ヶ月から3ヶ月以上を要することになります。

犬にアレルギー検査を受けさせるタイミングはいつ?

獣医師に相談する飼い主と診察台に乗っている犬

犬にアレルギー検査を受けさせる最適なタイミングは、一般的にアレルギー症状が慢性的に見られ、かつ犬の体調が安定している時です。例えば、「特定の季節になると必ず皮膚を痒がる」「ドッグフードを変えても下痢や軟便が続く」といった症状が1ヶ月以上続いている場合は、検査を検討する一つの目安となります。

ただし、注意点もあります。まず、若齢すぎる犬(生後6ヶ月〜1歳未満)の場合、免疫系がまだ発達途上であり、正確な結果が得られない可能性があるため、検査の実施は慎重に判断されます。

また、ステロイド剤や免疫抑制剤などの薬を服用していると、検査結果に影響が出てしまうことがあります。これらの薬はアレルギー反応自体を抑えるため、偽陰性(本来は陽性なのに陰性と出る)の結果になる可能性があるのです。

そのため、検査を受ける前には、一定期間の休薬が必要となる場合があります。休薬期間は薬の種類によって異なるため、必ず獣医師の指示に従ってください。

まずは愛犬に気になる症状が見られたら、自己判断で様子を見るのではなく、動物病院を受診し、獣医師と相談の上で最適な検査のタイミングを決定することが重要です。

犬のアレルギーと分かったらやってあげたい対策・予防法

食器からご飯を食べている犬

愛犬がアレルギーであると診断されたら、原因アレルゲンに合わせて、食事や生活環境を管理し、症状をコントロールしていくことが治療の基本となります。

アレルギー原因(アレルゲン)に合わせてドッグフードを選ぶ

食物アレルギーの場合、最も重要な対策はアレルゲンとなる食材を食事から除去することです。アレルギー検査で原因食材が特定できたら、そのタンパク質や穀物などが含まれていないドッグフードを選びましょう。

市販の「アレルギー対応フード」や、動物病院で処方される「療法食」が選択肢となります。療法食には、アレルゲンとなりにくいタンパク質(魚や鹿肉など)を使用したものや、タンパク質をアミノ酸レベルまで分解してアレルギー反応を起こしにくくした「加水分解タンパクフード」などがあります。

新しいフードに切り替える際は、1週間以上かけて少しずつ慣らしていくことが大切です。

ハウスダストや花粉などを除去する

ハウスダストや花粉、カビなどがアレルゲンの場合は、生活環境を清潔に保つことが重要になります。

こまめな掃除機がけや拭き掃除を心がけ、ハウスダストの発生源となりやすいカーペットや布製のソファ、ぬいぐるみの使用を控えるのも有効です。空気清浄機を設置して、室内のアレルゲンを減らすのも良いでしょう。

花粉の季節には、散歩の時間帯を早朝や夜にしたり、花粉が付着しにくい素材の服を着せたり、帰宅後には体をよく拭いたり、シャワーで洗い流したりする対策が症状の緩和に繋がります。

スキンケアを徹底する

皮膚のバリア機能が低下すると、外部からのアレルゲンが侵入しやすくなり、症状が悪化することがあります。

そのため、定期的なシャンプーで皮膚を清潔に保ち、保湿剤で潤いを与えるスキンケアは非常に重要です。シャンプーは、獣医師推奨の薬用シャンプーや低刺激性のものを選びましょう。

薬による治療も視野にいれる

痒みが強い場合には、これらの対策と並行して、抗ヒスタミン薬やステロイド、免疫抑制剤といった内服薬や外用薬を用いて、炎症と痒みをコントロールする治療も行われます。

まとめ

人に顔をなでられている犬

犬のアレルギーは、特定の物質に免疫が過剰反応することで、皮膚の痒みや消化器症状などを引き起こす病気です。アレルギー検査には、血液検査(IgE検査、リンパ球反応検査)や除去食試験などがあり、これらによって原因アレルゲンを特定することが、効果的な対策の第一歩となります。

検査で原因が分かれば、アレルゲンに対応したドッグフードを選んだり、こまめな掃除で環境を整えたり、適切なスキンケアや薬物治療を行ったりと、具体的な対策を講じることができます。

愛犬にアレルギーが疑われる症状が見られたら、まずは動物病院で獣医師に相談し、適切な検査と治療方針について話し合うことが、愛犬の健やかな毎日を守るために何よりも大切です。

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