犬に水分補給をさせる目的
健康な犬の体は、40~80%の水分で占められています。水は、血液やリンパ液のような体液として、栄養素を体の隅々まで運ぶ役割や老廃物を回収して尿と一緒に排出させる働きがあります。
他にも、体温を一定に保つ効果や肺胞を湿らすことで呼吸時の酸素と二酸化炭素の交換を助けています。
体にとって重要な役割をしている水ですが、排尿や排便、呼吸などによって常に失われています。そのため、なんらかの原因で水分補給ができなかったり、大量に水分が失われてしまうと体内の水分バランスが崩れて脱水症状になります。
犬が脱水状態にならないようにする
脱水症状を放置してしまうと、熱中症だけでなく筋肉が痙攣を起こしたり、泌尿器系の病気を引き起こしてしまう可能性があります。
犬は、脱水症状を起こしやすい動物だと言われており、体内の10%以上の水分が失われると健康に悪影響が及び、最悪の場合には死の危険もあります。夏場だけでなく、冬に暖房の効いた部屋やコタツの中に長く居ることでも脱水症状になります。
また、嘔吐や下痢、夏バテなどが原因になることや、利尿剤などの薬の副作用で脱水症状になる可能性もあります。
脱水症状を防ぐために、いつでも新鮮な水が飲めるようにすることや、犬に水を飲んでもらう工夫をすることはとても大切です。
犬の病気を予防したり症状を改善させる
水分補給には、脱水症状を防ぐためだけでなく体温を下げる役目や、病気の予防、体調不良の症状を和らげる効果があると考えられています。
例えば、水分補給することで尿の量が増え尿中の結石成分の濃度が下がるため尿路結石の予防に繋がったり、排尿時に尿道や膀胱にある細菌を洗い流すこと、膀胱炎の予防にもなります。
他にも、水分補給をすることで血流の流れが良くなり消化機能が向上して胃腸の調子が改善されたり、代謝がアップしてむくみの解消なども期待できます。
犬の1日に必要な水分補給量の目安
犬は、1日に必要な水分のほとんどを飲水やフードから摂取しています。犬に与えているフードによって摂取できる水分量が変わりますが、ドライフードは10%、セミドライフードは25~35%、ウェットフードは70%以上の水分が含まれています。
どのタイプのフードを与えているかによって、飲水量を調整することは大切です。また、必要な水分量は季節や湿度、運動量や年齢などによっても変わるので、愛犬の状態に合わせて調整しましょう。
犬に必要な水分量の計算方法
犬に必要な水分量の目安は、次の計算式で求めることができます。
「1日に必要な水分量=体重(kg)の0.75乗×70×1.6」体重が10kgの犬の場合、「10×10×10=√√×70×1.6=629.82…」となり、約630mlが1日に必要な水分量の目安となります。
他にも、水分量の計算方法は何通りかあり、体重1kg辺り50~60mlを目安とする考え方や、犬の1日のエネルギー要求量と同じであるという考え方などもあります。
必要な水分量は、犬の個体差によっても変わります。前後20%位の増減は問題ないと言われいるため、愛犬の普段の生活や様子を見ながら適正量を判断しましょう。
犬の脱水レベルを知るための観察ポイント
犬は、体調が悪くなっても言葉で伝えることができません。そのため、いつの間にか脱水症状になっていることがあります。普段から愛犬の様子を観察して、異変に早く気づいてあげることがとても重要です。
脱水症状の大きな特徴は、皮膚の弾力が失われること。そのため、脱水が疑われる場合には、犬の首まわりのたるんだ皮膚を5~6cmほど持ち上げて離し、元に戻るまでに2秒以上かかると脱水症状が疑われます。
他にも、尿の量が減少し濃い色の尿をする、歯茎の色が薄くなり指で触ると粘着性を感じるなどの症状があります。また、急激に体重が減少するのも脱水症状の特徴です。
犬の水分補給量が少なくなる原因
健康な成犬であれば、喉が乾くと自分から水を飲んでくれますが、環境が変わったり病気が隠れていたりすることで、水を飲まなくなることがあります。
体内の水分量が十分に足りている
水をあまり飲んでいないと感じても、食事やおやつから水分補給が出来ていることがあります。愛犬の様子が普段と変わらず、元気な場合には十分な水分補給が出来ていることが多いです。
環境が変わったストレスから水を飲まなくなる
犬は、環境の変化に弱い動物です。そのため、初めての場所や安心できないと感じる場所に行くと、緊張や興奮状態になり水を飲まなくなることがあります。飲み水の容器が変わっただけでも水を飲まなくなる犬もいるほどデリケートなのです。
ペットホテルなどに預ける場合には、普段使っているベッドやお気に入りのおもちゃなどを一緒に持っていくなど、犬がリラックスできるように工夫することはとても大切です。
病気や体の痛みがあり水が飲めない
吐き気や胃に不快感があったり、歯周病や口腔内に腫瘍があると水が飲めなくなる原因になります。
また、関節に痛みがある場合や外傷による痛みなどで動くことが出来なくなり、水を飲む場所まで移動できないことで水が飲めなくなる場合もあります。
水を飲みたそうにしているのに飲まない場合には、お腹に炎症があったり痛みを感じたりしていることがあります。じっとして震えている場合も不快感や腹痛などを引き起こして水が飲めないことも。いつもと様子が違う感じたら、早めに動物病院を受診しましょう。早期発見、早期治療はとても重要です。
加齢により喉の乾きに鈍感になる
シニア犬になると、筋肉量や基礎代謝が低下することで必要な水分量が成犬に比べて少なくなります。また、加齢により喉の乾きを感じる機能が鈍感になり、必要な水分量を摂取できなくなることもあります。
さらに、シニア犬は体内に水分を溜める機能が低下するため、脱水症状になりやすいので注意が必要です。
犬の飲水量を増やす水分補給の方法
人間と同じく、水分補給は一度にたくさん飲むのではなく、少しずつ回数を増やして、喉が乾く前に飲むのが良いと言われています。
しかし、犬が喉が乾く前に水を与えることは難しいでしょう。あまり水を飲まない場合は、スポイドを使って少量ずつ与えたり、フードをふやかして与える、水分の多い野菜などをトッピングするなどの工夫をしてみましょう。
犬が飲水したくなるタイミングで与える
犬が喉が渇いているタイミングを見計らって水を与えると、飲んでくれることがあります。寝起きや散歩の後、運動した後や寝る前などは犬も喉が渇いていることが多いので、そのタイミングで水を与えると飲んでくれるかもしれません。
散歩など外出先では、いつでも水が飲めるように準備しておくと安心です。
手作りご飯やウェットフードで食事の水分量を増やす
主食にドライフードを食べている犬は、 食事から摂取できる水分が少なくなってしまいます。食事の水分量を増やす方法をいくつか紹介します。
- ドライフードをぬるま湯でふやかす
- 水分量の多いレタスなどの野菜をトッピングする
- 肉や野菜を茹でてスープにして与える
- ドライフードにウェットフードをトッピングする
- ヨーグルトや犬用のミルクをトッピングする
- おやつに野菜を取り入れる
他にも、肉や野菜を茹でて粉寒天を入れてひと煮立ちさせ、固めて寒天ゼリーにして与えるのもおすすめ。
ドライフードにトッピングをする場合には、フードの20%以内にしてトッピング分の量をフードから減らして与えるのがポイント。
また、いろんな食材をローテーションして与えるのもおすすめです。ただし、初めての食材を与える場合は、アレルギーが起こることもあるので、少量から初めて様子をみることが大切です。
水に風味をつけたり温度を変えたりすることで飲水量を増やす
水自体に風味をつけることで飲んでくれることがあります。肉や魚、しじみを茹でた汁を飲み水にしたり、茹で汁を凍らせて水に浮かべる方法もあります。ただし、水が傷みやすいので、与える直前に容器に入れる、飲んだらすぐに片付けるなど、放置しないように気をつけましょう。
また、水の温度を変えることで飲んでくれることがあります。夏は氷をいれて冷たくする、冬は体温程度に温めて与えるのがおすすめです。
水を飲む場所や容器を変更する
犬は、水飲み場が気に入らなくて飲まない場合もあります。トイレのそばや人が通る場所などは落ち着かなくて嫌うことがあります。どこが気に入ってくれるのか個体差もあるので、お家の中に水飲み場をいくつか作ってあげることで、好きな場所で水を飲むことができるようになります。
また、容器が気に入らない場合もあります。犬はヒゲが濡れるのがあまり得意ではないので、深すぎる容器は好まないことも。浅くて大き目の容器が飲みやすいと言われています。
プラスチック製の容器は、口周辺にアレルギー性皮膚炎を起こす場合があるので、ステンレスやガラス、セラミック製がおすすめです。愛犬に合ったものを選びましょう。
まとめ
水は、摂取してもエネルギーに変わりませんが、生命維持にはなくてはならないものです。水分不足になると脱水症状を起こし、様々な体調不良の原因にもなります。
愛犬が脱水症状にならないために、水分補給と合わせて、環境や温度管理にも気を配りましょう。水を飲みたがらない場合は、フードを変えるなど与え方にも工夫が必要です。
犬は体調が悪くても表に出さないことがあります。また言葉で伝えることもできません。日頃から愛犬の様子を観察して、ちょっとした違和感にもすぐに気づけるようにすることはとても大切です。
脱水症状にさせないのはもちろんのこと、少しでもおかしいと感じたら獣医師に相談するようにしましょう。