犬が去勢後に元気がない理由
去勢手術には、生殖器の病気や肛門周りの病気、また行動面の問題などの予防や治療をすることができるという様々なメリットがあります。
しかし、犬が去勢後に元気がなかったら心配になりますよね。まずは、なぜ去勢後に元気がなくなるのか犬の様子から考えられる原因をみていきましょう。
理由1.麻酔後の眠さや手術による疲れが残っている
犬が、お気に入りのオモチャにも飼い主さんの呼びかけにもあまり興味を示さず、ずっと寝ているような様子の場合は、眠さや疲れが残っていることが原因かもしれません。
麻酔から覚めてもしばらくはまだウトウトしていますし、全身麻酔で手術を行った後なので疲れは相当なものです。
理由2.傷口の痛みを感じている
犬がしょんぼり元気がない様子なのは、傷口の痛みを感じているからかもしれません。去勢手術には、その犬の精巣がどこにあるかによって主に2つのやり方があります。
<通常の精巣の場合>
精巣は、胎児の時はお腹の中にありますが、そのままだと精巣の中にある精子が温まってしまって精子の機能が落ちてしまうため、正常な犬では、生まれてから2つの精巣が陰嚢(いんのう)という袋に降りてきます。
この場合は、陰嚢のみを切開して精巣を取り出すという通常の去勢手術が行われます。
<停留精巣の場合>
生後6ヶ月になっても、精巣の両方もしくは片方が陰嚢内に下降していない場合は、停留精巣と呼ばれる状態です。
この場合、お腹を切って精巣を取り出す必要があるので、通常の去勢手術よりも傷口は大きくなります。
このように、犬によって手術方法が違い、傷口の大きさだけでなく、痛みに対する感じ方も犬の個体によって違います。
しかし、どの犬でも手術後は痛みは感じている可能性が高いので、しょんぼり元気がない様子であっても不思議ではありません。
理由3.緊張や恐怖などの精神的なストレスを引きずっている
犬がビクビクして震えているような様子の時は、緊張や恐怖などのストレスを引きずっているからかもしれません。手術の時は全身麻酔をするので意識はありませんが、その前後の検査や処置をされたことは覚えています。
また、去勢をする犬は一般的に6ヶ月以上の子犬であることが多いので、飼い主さんと離れて家とは違う場所に置いていかれるという経験は初めてでしょう。
初めての経験で緊張や恐怖を感じて、家に帰っても精神的なストレスが残っているということは十分考えられます。
理由4.エリザベスカラーに違和感があり行動しにくい
手術した部分を舐めたりしないように、手術の後はエリザベスカラーをつけてもらいます。しかし、エリザベスカラーをつけるとご飯を食べづらくなったり、歩きづらくなります。
このような不都合が嫌で、元気がなくなる事があります。
犬が去勢後に元気がない時の受診の目安
元気がない様子の時に考えられる原因をいくつかご説明したところで、ここからは、特に病院を受診するべき症状についてご紹介します。
手術後は犬の体調は除々に回復していくことが一般的ですが、中には手術をきっかけに体調を崩してしまうことがあり、放っておくと傷口の治りに影響を及ぼす場合もあります。
次のような症状が見られた時は、すぐに動物病院を受診しましょう。
犬の去勢手術後に注意して見ておくべき症状
<お腹の辺りから出血している>
出血が少量であっても、持続的にポタポタと血が出ているようであれば、お腹の中から出血している可能性が考えられるので、すぐに動物病院で診察を受けた方が良いでしょう。
<傷口を舐めている>
犬が傷口を舐めてしまうと、雑菌が傷口に付着してしまうだけでなく、糸を食いちぎって傷が開いてしまうことがあります。手術後しばらくの間は、エリザベスカラーを付けて傷口を舐めさせないようにする必要があります。
<次の日も食欲が戻らない>
食べ物を口にしない状態が続くと、体力が戻らず回復が遅れて体調を崩してしまう可能性があります。食べない場合は、動物病院で点滴など適切な処置をしてもらう必要があります。
<手術から数日経っても便や尿があまり出ていない>
手術は絶食絶水した状態で行われるので、当日は便や尿が少量しか出ないということが考えられます。
しかし、次の日も少量の尿がポタポタとしか出ていないとなると、尿管を傷つけてしまった可能性もあるので、動物病院で検査や治療をする必要があります。
<熱があるように感じる>
犬の耳を触ると大体の体温を感じることができます。普段より明らかに熱く感じる場合は、手術によって感染を起こしている可能性が考えられるので、念のため診察を受けたほうが良いでしょう。
基本的には手術から数日で犬の体調は回復していく
手術による痛みや炎症は3日以内に治ることが多く、徐々にいつも通りの体調に回復していくことが一般的なので、心配しすぎる必要はありません。
しかし、傷口が開いたり手術による合併症を起こす可能性もあるので、帰宅後は犬の様子をよく観察し、少しでも心配なことがあれば動物病院に相談しましょう。
受診した時に動物病院でされる処置
<傷口を診察>
出血している場合や傷口を舐めている場合は、傷口が開いていないかを診察します。開いていた場合は再び縫合する必要がありますが、開いていない場合はエリザベスカラーをつけて家で様子を見ることになります。
<皮下に点滴をしたり血液検査をする>
食欲がない場合は点滴によって水分を補う必要があります。その後も食欲が戻らない場合は、血液検査などをすることもあります。
<薬を出される>
熱があって感染が疑われる場合は抗生物質の処方、普段と違う食べ物を食べたなど、原因が明らかな下痢や嘔吐の症状がある場合は対症療法的な下痢止めや胃薬が処方されるでしょう。
犬が去勢後に元気がない時の対処法
受診すべき症状や病院でされる処置を解説したところで、次は自宅でできる対処法をご紹介します。
この方法は元気がない場合はもちろん、あらゆる手術をした犬全般的にとって適切な過ごし方でもあるので、ぜひ実践してみて下さい。
快適な環境でゆっくり休ませて運動は控える
手術後は体温が下がっており、体が冷えやすくなっているのでタオルなどをかけてあげて、犬が過ごしやすいとされる22℃程度に室温を設定しましょう。
さらに、清潔な部屋で犬が静かに休めるような環境を用意してあげると良いでしょう。同居動物がいる場合は、邪魔されたりじゃれ合ったりしないように、なるべく違う部屋に隔離したほうが適切です。
また、家の外で排泄する習慣がある犬の場合は、排泄のときだけ外に連れて行き、運動は控えましょう。激しい運動をすると、体に負担がかかりますし最悪の場合、傷口が開いてしまう恐れがあります。
食事は犬が食べやすい形状にして少量から再開する
手術の際の麻酔が、喉に局所的に残っている場合があります。また、絶食絶水して手術を行った影響により、直後は消化機能が低下している可能性があります。
このような時は誤嚥しやすかったり、下痢や嘔吐も起こしやすいので、普段の4分の1程度の少量のフードをふやかして与え、徐々に量を戻すようにしましょう。
ただし、食べたがらないからといってジャーキーなどのおやつや、人間の食べ物など普段と違う物を与えてえしまうと、下痢や嘔吐を引き起こしやすくなり、さらに元気がなくなることに繋がるので控えましょう。
飼い主は過度に慌てず落ち着いて犬と接する
飼い主と離れるだけでなく、普段と違う環境で痛みや恐怖を経験した犬は、ストレスを抱えて家に帰ってきます。これ以上ストレスを感じさせないように、できるだけ落ち着いて優しく接してあげることが大切です。
カラーをしている場合は食器の位置を高くする
エリザベスカラーをしていると、食器の位置まで口が届きません。食器の下に台をつけて位置を高くすることで、カラーの中に上手く食器が入り、食べやすくなります。
まとめ
この記事では、以下の内容をご紹介しました。
- 犬が去勢後に元気がない原因4つ
- 受診の目安
- 対処法
元気がない理由は様々ですが、原因が分かってそれが一時的なものであれば少し安心できますよね。犬が傷口を気にしていたり、食欲や排泄の様子などが元の状態に戻らない場合は、すぐに動物病院を受診し、適切な処置をしてもらいましょう。
家では出来るだけ安静にさせて、普段のフードを少量ずつふやかして与えるのがおすすめ。何より、飼い主さんが落ち着いてそっと接してあげることが、犬のストレスを軽減することにも繋がります。
何か少しでも心配なことがあれば、自己判断せずにすぐに動物病院に相談しましょう。