犬の聴力が低下しているときのサイン
「うちの犬、耳が遠くなってきたみたい」というのは、シニア犬と暮らす飼い主さんからよく耳にする言葉です。
耳が聞こえにくくなったり、完全に聞こえなくなったりする犬の難聴は一般的なことですが、初期の段階では気がつきにくいものです。
また、初期の間に気がついて対処をすれば、聴力を失わずに済むこともあります。もし愛犬に次のような様子が見られたら、聴力が落ちている可能性があります。
- 呼びかけやコマンドに対する反応が以前と違う
- ドアベルや掃除機などの音に反応しない
- 睡眠からなかなか目覚めない
- アクティブでなくなる
- 以前よりも吠えるようになった
- 頻繁に頭を振ったり傾けたりする
これらの兆候が見られた場合、特に複数の兆候が見られた場合は、動物病院で耳の検査を受けましょう。
聴力が少しずつ低下していく場合は、兆候もだんだん表れてきますが、ある日突発的に耳が聞こえなくなった場合は、犬がパニックから攻撃的になることもあるので注意が必要です。
犬の聴力検査
多くの動物病院では、犬の聴力のチェックをするために機械などは使わず、シンプルな方法を取ります。
犬の視野の外で何らかの音を出して、振り返ったり耳を動かしたりする反応があるかどうかを確認します。
さらに耳の内部のチェック、血液検査、レントゲンなどを使って、外耳道に感染症や外傷があるかどうかを調べます。
犬の聴覚障害の原因として考えられるのは感染症や外傷、薬物中毒、老化などがありますが、感染症などはきちんと治療すれば、元の聴力を取り戻すことができる場合が多いので、病院での診察は不可欠です。
反対に治療せずにいると、そのまま完全に聴力が失われることもありますので、たとえシニア犬でも「老化だろう」と放置するのはよくありません。
もっと正確に愛犬の現在の聴力を診断してほしい場合には、『脳幹聴覚誘発反応(BAER)』と言うテストがあります。これは、聴覚刺激に対して反応する脳の電気的活動を検出して聴覚を評価するものです。
犬にとって苦痛がなく短時間で正確な結果が得られるのですが、日本でこの検査を行っている施設はとても少ないのが現状です。
どうしてもという方は、かかりつけの動物病院で紹介などを相談してみてください。
難聴が即QOL低下に結びつくわけではない
様々な理由から、聴覚が低下して難聴になっている犬はかなり一般的です。また、先天的に聴覚障害を持って生まれてくる犬もいます。
たとえ難聴でも、飼い主さんが注意することで犬の生活の質(QOL)を低下させずに過ごすことは可能です。目も見えるし、犬には優れた嗅覚もあるからです。耳が聞こえなくても、活発に他の犬と遊び、元気に過ごしている犬はたくさんいます。
難聴の犬へのキューやコマンドは、手を使ったハンドシグナルとセットにするようにします。後天的に難聴になった犬には、ハンドシグナルとトリーツを組み合わせたトレーニングを行います。
また、犬にアプローチするときには背後など、視界の外から近づいたり触ったりすることは止めましょう。犬が見える位置から近づく、ベッドを優しく揺らすなど、犬に気配を伝えることがポイントです。
たとえ耳が聞こえなくなっても、犬はボールやおもちゃで遊んだり、飼い主さんの側で撫でてもらったりすることが大好きです。
シニア犬などは耳が遠くなったために、飼い主さんから構われなくなる例もたまに耳にしますが、それは本当に悲しいことです。
犬のQOLを決めるのは飼い主次第だということを、愛犬の聴力が低下してきたときにも忘れずにいたいですね。
まとめ
犬の聴力低下のサイン、検査、その後の対応のヒントなどをご紹介しました。聴力の低下に限らず、何かしらのハンディが表れたときに、飼い主さんが工夫したり、新しいことを学んだりすることで、愛犬との絆が一層強くなることも多いものです。
もしも愛犬が難聴になってしまっても、充実した幸せな生活はできるのだと忘れないでいたいと思います。
《参考》
https://www.thedrakecenter.com/services/dogs/blog/deaf-dogs-living-hearing-loss
https://www.anicom-page.com/all_details?type=1&id=265