犬の歩く姿を見て、何だか猫背気味だなと思ったことはありませんか。獲物を狙う、猫のような姿勢で頭を下げて歩く姿に野生的なものなのか、姿勢が悪いのか、それとも病気や怪我なのかと、不思議や不安を感じたことのある方は少なからずいらっしゃるでしょう。
この記事では、我が家の大型犬にもたまに見られた、この猫背姿勢について調べた結果わかった、「犬が猫背になる理由」についてご紹介して参ります。
犬の重心
前重心
犬は通常4本足で立っていますが、その重力のかけ具合は、それぞれの脚に均等にかかっているわけではありません。犬は前脚により高い比率で重力をかけており、それは前脚:後脚に6:4くらいの割合だと言われています。犬の重心は前方に置かれているのですね。
その時々の姿勢によっては猫背に見えやすくなります。特に散歩中、地面を気にしていたり、低めの高さにあるものを目で追っていたりすると、頭が下げ気味になり、人間から見ると猫背のようになるのです。
重心とその影響
犬の前脚は歩いたり走ったりと日常生活においてメインとして使われ、後脚は踏ん張ったり蹴ったりするときに使われています。加齢による影響で後脚が弱りやすいのもそのせいで、日常的にかかる負荷と使用頻度の差が関係しているのです。
よってシニアに近づいた犬には、特に後脚を重点的に動かす運動やストレッチで、筋肉が衰えないような工夫をしてあげると良いですね。
また気持ちの変化によっても、重心の位置やかかり具合は変わります。重心がより前にあるときは興奮状態にある、相手より優位にいると思っている、自信満々といったような気持ち、重心がより後ろにあるときは恐怖を感じており、自信がない気持ちを指します。
前脚加重による肩甲骨の凝り
犬の基本的な重心は前方にありますが、加齢による衰弱や怪我を庇うなどの理由で後脚にふだん以上に重力をかけることができない場合、より前脚加重になる場合があります。その場合、前脚に大きな負担がかかることはもちろんですが、同時に肩甲骨周りにも負担が生じ、凝り固まってしまいます。
そしてその結果として、肩甲骨から前脚にかけての可動域が狭くなり、歩幅が狭まるという症状が起こるのです。前脚加重になっている個体は、首を下げた姿勢で立ったり歩いたりすることが多く、猫背になり、肩甲骨の上骨が浮き出て見えます。
首の凝り
また犬は人間と違って4足歩行姿勢であるため、頭を前向きに支えるには、首の筋肉で常に頭を体側に引っ張り支える必要があります。
そのため、かなり首周りの筋肉を使い、慢性的に凝っていると言えます。つまり首をもたげる筋肉が凝っているために、頭が下がり気味になり、猫背に見えるのです。
頸椎ヘルニア
頸椎ヘルニアとは、首部分のヘルニアのことです。頸椎ヘルニアにかかると首にひどい痛みが生じるために、頭を低く下げ背中を丸めるようにして歩いたり、首をすくめたまま動かなくなったりします。これが猫背に見える原因かもしれません。
他の症状としては、散歩で首輪につなげたリードを引っ張ると痛がったり、触られるのを嫌がったり、頭の上にあるものを見るのに首を動かさず、上目遣いになったりします。犬に多いヘルニアの中でも特に痛みが強いため、異常に気がついたらすぐに治療を受けさせましょう。重症化すると四肢麻痺の恐れもあります。
フローリングや段差の多い生活環境や、リードの引っ張り癖など首への負担が原因であり、それを防ぐためには環境整備と躾が必要です。
猫背を軽減するために
犬の猫背を軽減するためにはマッサージが有効です。度合いに差はあるものの、どの犬も肩甲骨周りと首周りは凝り気味で、優しくマッサージされたり撫でられたりすると喜ぶもの。うっとりと寝てしまう子もいます。
マッサージの注意点としては人間にするような強い力では行わないこと。またデリケートな部分には行わないこと。マッサージのやり方は自由ですが、基本的には犬を寝かせ、首周りや肩甲骨周りを揉み、押したりし、また円を描くように撫でたりします。気持ち良く感じているか、効いているかは犬の表情を見ればわかるでしょう。
頭の下にクッションやブランケットを入れて支えてあげると犬が脱力できるので、よりリラックス効果を生むことができます。犬用マッサージの専門書やプロが施術してくれる犬専用の整体も存在しますので、興味のある方はそちらも調べてみると良いですね。
ヘルニアである場合は専門治療が必要であり、マッサージなどは逆効果です。負荷を加えないよう安静にさせましょう。
定期的なケアを
犬に見られる猫背の原因について述べて参りました。凝りが猫背に通ずるとは、少し人間と似ていましたね。筋肉を使って動く以上、その筋肉は凝り固まり、それを放置すれば姿勢へと反映されるのです。
凝りの辛さを知る人間だからこそ、愛犬にはできるだけ定期的にマッサージを行って凝りを軽減してあげたいですね。またマッサージは飼い主とのスキンシップにもなり、絆が深まるのではないでしょうか。愛犬の状態をよく観察し、まめにケアしてあげることが大切ですね。