犬はポカリスエットを飲んでも大丈夫?正しい薄め方と与える量、注意点を解説

犬はポカリスエットを飲んでも大丈夫?正しい薄め方と与える量、注意点を解説

犬はポカリスエットを飲んでも大丈夫?結論は『緊急時に水で薄めて少量ならOK』です。ただし日常的な摂取はNG。この記事では、安全な与え方・薄める倍率・体重別の適量や、与えてはいけない病気・NGケースについて詳しく解説します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

犬はポカリスエットを飲んでも大丈夫?

ベッドから体を起こして飲水しようとしている犬

犬はポカリスエットを飲むことができますが、あくまで緊急時の応急処置として、ごく少量にとどめてください。

本来、犬の水分補給は新鮮な水で十分であり、人間用スポーツドリンクは推奨されません。ポカリスエットの成分はあくまでも人間向けに調整されているため、犬が日常的に飲むと糖分や塩分が過剰となり、健康を害する可能性があります。

愛犬が軽い脱水状態や体調不良時にどうしても水を受け付けない場合、薄めたポカリスエットを少量与える方法も考えられますが、必ず獣医師に確認を取ってください。

脱水や体調不良の疑いが強い場合や症状が重い場合は、自宅でスポーツドリンクを与えるよりも速やかに動物病院で受診することが最優先です。

ポカリスエットに含まれる成分と犬への影響

ポカリスエット系のスポーツ飲料と青空

ポカリスエットは「人間の体液に近い」というコンセプトで開発された飲料ですが、犬にとって最適なバランスとは限りません。以下では、犬に影響を与える主な成分について解説します。

ナトリウム・カリウム(電解質)

ナトリウムやカリウムは体液バランスを整え、神経や筋肉の正常な働きを支える重要な成分です。

犬が軽い脱水を起こした際には一定の補給効果が期待できますが、ポカリスエットのナトリウム濃度(約49mg/100mL)は人間向けのため犬にとってはやや高めです。常用すると腎臓や心臓への負担が懸念されます。

糖質(砂糖・ブドウ糖)

ポカリスエットにはエネルギー補給と水分吸収促進のために糖質(約6.2g/100mL)が含まれています。

犬が体調不良や食欲不振のときに少量の糖質はエネルギー源として役立つことがあります。しかし、日常的に摂取すると肥満や糖尿病のリスクを高め、さらに甘い飲料に慣れると普通の水を飲まなくなることも考えられます。

酸味料(クエン酸)・香料

酸味料や香料は飲みやすさを高める目的で配合されています。これらは少量なら犬に直ちに悪影響を及ぼすものではありませんが、胃腸が弱っている犬の場合、大量摂取すると胃腸障害(下痢や吐き気など)を起こすことがあります。

また、柑橘系の香りは犬が苦手とする場合もありますので、反応をよく観察する必要があります。

これらの成分は人間にとって適切な濃度ですが、犬にとっては濃すぎる傾向があり、日常的な水分補給には向いていません。緊急時以外は犬専用の飲料か新鮮な水道水を与えるようにしましょう。

犬にポカリスエットを与えてもよいケース

屋外で飼い主が手に持つ給水ボトルから飲水する犬

犬への水分補給は基本的に新鮮な水で十分ですが、状況によっては薄めたポカリスエットが応急処置として役立つ場合があります。

ただし、あくまで一時的な方法であり、体調が戻らない場合や症状が重い場合は早急に動物病院を受診してください。

軽度の脱水症状が疑われるとき

暑い日の散歩や運動後に、犬が息を荒くして口内が乾燥しているなど、軽い脱水症状が見られることがあります。

このとき、水を嫌がって飲もうとしない場合には、少量のポカリスエットを薄めて飲ませることで、水分摂取を促すことができます。

夏バテで元気がないとき

気温や湿度が高く、犬が軽くぐったりして食欲が落ちている場合に、薄めたポカリスエットが一時的な栄養補給と体力維持の助けになることがあります。

ただし、この方法で状態が改善しない場合は速やかに動物病院に相談しましょう。

激しい運動後、水を飲みたがらないとき

激しい運動や遊びの後、興奮状態で犬が水を受け付けない場合があります。このような状況では、ごく薄めたポカリスエットを少量混ぜることで、水分補給を促せることがあります。

ただし、継続的な使用は避け、落ち着きを取り戻したら通常の水に戻しましょう。

獣医師から指示があったとき

嘔吐や下痢などで動物病院を受診した際に、獣医師から「ポカリスエットを薄めて与えるように」と具体的な指示を受けた場合は、その指示に従った濃度・量で与えてください。

獣医師の指示がある場合以外は、自己判断での継続使用は避けることが大切です。

犬に与えてもいいポカリスエットの量と与え方

水道からボウルに水を注ぐ飼い主と見守る犬

ポカリスエットは人間向けに作られているため、犬に与える際は必ずしっかり薄めて、ごく少量だけ与える必要があります。与える目的は「飲水を促すための応急処置」であり、たくさん飲ませるものではありません。

まずは一口、二口程度から始め、嫌がる様子や体調の変化がないかを必ず確認してください。

犬の体重 与えてよい目安量(薄めたもの) 原液量の目安
〜5kg(小型犬) 5〜20mL程度 1〜2mLほど
5〜15kg(中型犬) 20〜50mL程度 3〜5mLほど
15kg以上(大型犬) 50〜100mL程度 5〜10mLほど

※上記はあくまで応急的に与える際の最大目安であり、症状によって必要量は大きく変わります。体調不良が続く場合や脱水が疑われる場合は、家庭で量を調整せず、必ず獣医師に相談してください。

ポカリスエットは、そのままでは糖分・塩分が多すぎるため、必ず3〜5倍以上に薄めて「ほんのり味がする水」程度にします。また、一度に飲ませず、必ず数回に分けて少しずつ与えてください。

飲ませたあとに、嘔吐、下痢、ぐったりする、呼吸が荒いなどの異変が見られた場合は、すぐに与えるのを中止し、動物病院へ連絡してください。

犬にポカリスエットを与える際の注意点

ボウルの隣で悲しげな表情のまま伏せる犬

ポカリスエットは適切に与えれば犬の応急処置に役立つこともありますが、使い方を間違えると逆に健康を害する可能性があります。以下では、特に気をつけておきたいポイントを説明します。

常用すると肥満リスクが上がる

ポカリスエットには糖分が多く含まれており、頻繁に与えるとカロリーオーバーになります。

肥満や糖尿病につながるだけでなく、犬が甘い味に慣れると普通の水を飲まなくなる恐れもあるため、日常的に与えることは絶対に避けてください。

膵炎になりやすい犬に与えるのは危険

ミニチュア・シュナウザーやヨークシャー・テリアなど膵炎になりやすい犬種は特に注意が必要です。

ポカリスエットの糖分が間接的に総カロリー摂取を増やし、膵臓に負担をかける可能性があります。膵炎のリスクが高い犬には、獣医師の指示がない限り与えてはいけません。

糖尿病・心臓病・腎臓病の犬には不向き

糖尿病を持つ犬の場合、ポカリスエットの糖質によって血糖値が急激に上昇する恐れがあります。

また心臓病や腎臓病で塩分制限が必要な犬では、含まれるナトリウムが症状の悪化につながることも考えられます。持病がある犬には自己判断で与えず、必ず獣医師の指示を仰ぎましょう。

ぐったりしている犬への経口投与は危険

重度の嘔吐や下痢、または意識がもうろうとしている犬に無理にポカリスエットを飲ませると、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクがあります。このような状態の犬は速やかに動物病院を受診してください。

少しでも愛犬の様子がおかしいと感じた場合は、自宅で対処を続けるよりもすぐに獣医師の診察を受けることが大切です。

犬におすすめのペット用イオン飲料・経口補水液

水道の横に置かれたポカリスエット系のペットボトル飲料

犬に人間用のポカリスエットを与える場合は制限がありますが、ペット専用のイオン飲料や経口補水液なら、犬の体に合わせて成分が調整されているため安心して利用できます。

特に脱水のリスクがある季節や体調不良時の備えとして用意しておくと便利です。

ペットスエット

犬や猫などのペット向けに作られたイオン飲料です。犬の体液に近い浸透圧で調整されており、塩分や糖分も適量に抑えられています。

散歩時の水分補給や暑い日の脱水対策として気軽に利用できますが、あくまでも水道水をメインとし、適宜補助的に使用するのが理想です。

ビルバック 犬猫用 電解質サポート

動物病院でも取り扱いが多い経口補水液です。特に嘔吐や下痢による軽度〜中程度の脱水時に効果的で、電解質バランスが犬の体調に合わせて医学的に設計されています。

使用する際は、獣医師の指示に従って適切な量や頻度を守ってください。

アクアプラス(犬猫用経口補水パウダー)

水に溶かして使うパウダータイプの経口補水液です。粉末状で保存が効くため、防災用や外出時の携帯用としても便利です。必要なときに必要量だけ作れるので無駄がなく、衛生的にも安心して使えます。

これらペット専用製品は犬の健康を考慮して作られていますが、あくまでも補助的な使用を前提としており、通常時は新鮮な水を十分に与えることが最も大切です。

まとめ

水が入った器の隣で伏せて正面を見つめる犬

犬にポカリスエットを与えるのは、緊急時に限り、ごく少量を薄めた状態で飲ませる場合のみです。ポカリスエットには犬にとって糖分や塩分が多く含まれ、日常的に与えると肥満や病気の原因となるため避けてください。

特に膵炎や糖尿病、腎臓病などの持病がある犬にはリスクが高く、自己判断で飲ませてはいけません。犬の脱水や体調不良が疑われる際には、まずは新鮮な水を与え、改善が見られない場合は動物病院を受診しましょう。

日頃から犬専用のペット用イオン飲料や経口補水液を常備しておくことをおすすめします。

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