犬に鶏肉を与えても大丈夫
犬に鶏肉を与えることは基本的に問題ありません。
ただし、安全に与えるためには調理法に注意が必要です。人間用に味付けされた鶏肉は、犬にとって塩分や調味料が過剰なため健康を害する可能性があります。
初めて鶏肉を与える際は、少量から試し、犬にアレルギー症状が出ないか注意深く観察しましょう。下痢や嘔吐、皮膚のかゆみなど異常が見られた場合はすぐに中止し、動物病院に相談してください。
鶏肉に含まれる栄養素と犬への影響
鶏肉には、犬の健康維持に役立つ栄養素が豊富に含まれています。主に含まれている栄養素と、それらが愛犬の体に与える具体的なメリットについて見ていきましょう。
タンパク質
鶏肉の最大の特徴は良質なタンパク質が豊富に含まれていることです。タンパク質は犬の筋肉や臓器、皮膚や被毛を作る重要な栄養素であり、特に運動量が多い犬や成長期の子犬、シニア犬の筋肉維持に欠かせません。
脂質
鶏肉に含まれる適度な脂質は、効率的なエネルギー源として役立ちます。また、必須脂肪酸を含む脂質を摂取することで、皮膚の乾燥予防や被毛を美しく保つ効果が期待できます。
ただし、摂りすぎると肥満につながるため、量には注意しましょう。
ビタミンA
鶏肉には、皮膚や粘膜の健康維持をサポートするビタミンAが含まれています。ビタミンAは、犬の免疫力を高め、外部の細菌やウイルスから身体を守る働きをします。
ただし、過剰摂取すると健康に悪影響があるため、適量を守ることが重要です。
ビタミンB群
鶏肉にはビタミンB6やナイアシンといったビタミンB群も多く含まれています。これらはエネルギー代謝を促進し、犬の疲労回復や神経機能を正常に保つ役割を果たします。
特に夏バテや体調不良で食欲が落ちている犬の栄養補給に適しています。
鶏肉の部位ごとの栄養価と特徴
鶏肉は部位によって栄養素や特徴が大きく異なります。愛犬の健康状態や目的に合わせて適切な部位を選ぶことが大切です。それぞれの部位の特徴と、どんな犬に向いているかを見ていきましょう。
ささみ
ささみは鶏肉の中でも特に脂肪分が少なくタンパク質が豊富です。消化にも優しいため、肥満気味の犬や消化機能が弱っているシニア犬に向いています。
また、クセのない味わいで食欲がないときのトッピングとしても喜ばれます。腎臓病がある犬はリンの摂取量に注意が必要なので、事前に獣医師へ相談しましょう。
鶏胸肉
鶏胸肉も低脂肪・高タンパクで、運動量が多い犬や日常的なトッピングに適しています。
疲労軽減効果が期待される「イミダゾールジペプチド(イミダペプチド)」が含まれており、活動的な犬の筋肉疲労ケアに役立ちます。ただし、加熱するとパサつきやすいため、細かく刻むなど食べやすい工夫が必要です。
鶏もも肉
鶏もも肉は程よい脂肪があり、味わい深く嗜好性が高い部位です。食が細い犬や成長期の子犬、体重を少し増やしたい犬に適しています。
一方、肥満気味の犬に与える場合は脂肪部分を取り除くなど、カロリーコントロールが必要です。
鶏レバー
鶏レバーは鉄分やビタミンA、B群が非常に豊富です。貧血気味の犬や栄養不足になりがちな産後の母犬の栄養補給に最適です。
ただし、与えすぎるとビタミンAの過剰症を招くため、頻繁に与えるのは避け、週に1回程度の特別なトッピングとして少量を与えるのが適切です。
鶏砂肝
鶏砂肝は脂肪が少なく、噛みごたえのある食感が特徴です。おやつとして与えることで満足感を得やすくなります。
一方で、非常に硬く消化に時間がかかりやすいため、胃腸の弱い犬や丸飲み癖のある犬には不向きです。与える際は薄くスライスするなど、食べやすく調理しましょう。
鶏皮
鶏皮は脂肪分が非常に多く、高カロリーな部位です。肥満や膵炎のリスクが高まるため、基本的に犬には与えないようにしましょう。特に脂質の代謝に配慮が必要な犬種や膵炎の既往歴がある犬は避ける必要があります。
犬に与えてもいい鶏肉の量
鶏肉はあくまで「主食のドッグフードに足すもの」と考え、1日に必要な総カロリーの10%以内に収まる量を目安にすると安心です。トッピングやおやつとして鶏肉を増やした分は、そのぶんドッグフードの量を必ず減らして調整しましょう。
下記は、皮と骨を取り除いたゆでた鶏ささみ・鶏むね肉を、普段のフードにトッピングする場合のおおよその目安です。
| 体重の目安 | 1日の目安量 |
|---|---|
| 約3kg(小型犬) | 10〜15g |
| 約5kg(小型〜中型犬) | 20〜25g |
| 約10kg(中型犬) | 30〜40g |
| 約15kg(中型〜大型犬) | 45〜60g |
毎日トッピングとして与える場合は、上の範囲の少なめの量を目安にするとバランスを崩しにくくなります。
運動量が多い日や体重を増やしたい場合は、表の中でやや多めの量に調整してかまいませんが、その分ドッグフードの量を減らし、総量が増えすぎないようにしましょう。
子犬やシニア犬に与えるときは、成犬よりも少なめの量から始め、体調や便の状態を見ながらゆっくり量を調整していくことが大切です。
鶏もも肉など脂肪分の多い部位を使う場合は、同じ体重でも表より少なめを目安にしてください。
犬に鶏肉を与える際の注意点
鶏肉は犬にとって安全な食材ですが、与え方を間違えると健康を損なう可能性があります。特に鶏肉を普段の食事に取り入れる際に注意したいポイントを具体的に確認しましょう。
生肉による食中毒を防ぐために加熱する
鶏肉を生のまま与えると、サルモネラ菌やカンピロバクターなどの細菌による食中毒のリスクがあります。
重症化すると下痢や嘔吐だけでなく、人間にも感染する恐れがあるため、鶏肉は必ず中心部まで十分に加熱してから与えましょう。
骨は喉や腸を傷つけるため与えない
鶏の骨は加熱すると縦に鋭く裂け、喉や消化管を傷つける恐れがあります。
また、生の骨であっても詰まったり細菌感染を起こしたりする可能性があります。骨つき肉を調理する際は、必ず骨を取り除いてから犬に与えてください。
味付け・加工された鶏肉は与えない
人間用に調理された鶏肉(焼き鳥、唐揚げ、サラダチキンなど)は、塩分や香辛料、油分が多すぎるため犬には与えないようにしましょう。
また、ネギ類(玉ねぎ、ニンニクなど)は犬にとって有害で、調理過程で鶏肉に付着する可能性があるため避けてください。
初回は少量でアレルギーを確認する
鶏肉は犬にとって比較的アレルギーを起こしやすい食材の一つです。初めて与える際はごく少量からスタートし、その後数日間は体調の変化に注意を払いましょう。
体を頻繁に掻く、目の周りが赤くなる、下痢などの症状が現れた場合は、すぐに与えるのをやめて動物病院へ相談してください。
鶏肉を使った犬用の簡単レシピ・トッピング
鶏肉は、いつものドッグフードに少し加えるだけでも食いつきが良くなる便利な食材です。
ここでは、家庭で手軽に作れて、犬用として安心して使えるレシピを紹介します。量は「犬に与えてもいい鶏肉の量」を参考にしながら、愛犬の体重や体調に合わせて調整してください。
食欲が落ちたときのゆで鶏トッピング
一番シンプルで毎日使いやすい、ゆで鶏トッピングの作り方です。鶏肉だけを使い、味付けも一切しないので、初めて鶏肉を試すときにも向いています。
《材料》
- 鶏ささみ または 皮を取り除いた鶏むね肉:100g
- 水:適量(鶏肉がかぶるくらい)
《作り方》
鍋に水を入れて沸騰させ、鶏肉を加えます。弱火にして中心までしっかり火を通し、粗熱が取れたら食べやすい大きさに細かく刻みます。ゆで汁は捨てずに、とっておいてフードに少しかけても構いません。
《与える量の目安》
体重3kgの成犬なら、刻んだゆで鶏は1日あたり10〜15g程度を、いつものフードに混ぜて与えます。10kgの成犬なら、1日あたり30〜40g程度を目安にし、数回に分けてトッピングすると負担になりにくくなります。
鶏ひき肉×野菜のそぼろトッピング
鶏肉だけでなく、消化しやすく刻んだ野菜も一緒に摂れるそぼろトッピングです。普段のフードだけでは野菜が少ないと感じるときに、少量をプラスしてあげましょう。
《材料》
- 鶏ひき肉(むね肉ベース推奨):100g
- キャベツ(芯を除く):30g
- ニンジン:20g
- 水:50〜100ml程度
《作り方》
キャベツとニンジンを細かいみじん切りにします。小鍋に鶏ひき肉と野菜、水を入れ、中火でほぐしながら煮ます。アクが出たら取り除き、具材がやわらかくなったら火を止め、粗熱を取ります。塩や油などの調味料は使いません。
《与える量の目安》
できあがり全量で約2〜3日分を想定します。体重5kgの成犬なら、1日あたりそぼろ全体の20〜25g程度をフードに混ぜれば十分です。残りは小分けにして冷蔵または冷凍し、早めに使い切るようにしましょう。
シニア犬向けとろみささみスープ
噛む力や飲み込む力が弱くなってきたシニア犬には、とろみをつけたやさしいスープ仕立てがおすすめです。水分補給にも役立ちます。
《材料》
- 鶏ささみ:50g
- 水:150ml
- 片栗粉:小さじ1/2(約1.5g)
《作り方》
鶏ささみを細かく刻むか、包丁でたたいて粗いミンチ状にします。鍋に水とささみを入れ、弱火〜中火で煮て、肉に火が通ったら火を弱めます。
水で溶いた片栗粉を少しずつ加え、全体に軽くとろみがついたら火を止め、よく冷ましてから与えます。
《与える量の目安》
体重3kgのシニア犬であれば、1回に与えるスープは30〜40ml程度にし、その中に含まれるささみの量が5〜10g程度になるよう調整します。
フードに少しかける、または食欲がないときの補助として与えるなど、様子を見ながら量を増減してください。
まとめ
鶏肉は犬にとって安全で栄養価が高く、適切に与えれば愛犬の健康維持に役立つ食材です。
ささみやむね肉などの脂肪が少ない部位を中心に、体重や健康状態に合わせた量を守り、毎日与える場合でも総カロリーの10%以内に抑えることが重要です。また、必ず加熱調理をし、生肉や骨、人間用に味付けした食品は避けましょう。
初めて与えるときは少量から試し、アレルギー症状がないか慎重に観察してください。安全に配慮しながら、愛犬の食生活を豊かにしてあげましょう。



