犬にレバーを与えても大丈夫!
結論から言うと、犬はレバーを食べても問題ありません。犬はもともと肉食に近い雑食動物であり、祖先であるオオカミは獲物を捕らえた際、内臓から食べる習性があるとされています。レバーは、その中でも特に栄養が凝縮された部位であり、犬の健康維持に役立つ貴重な栄養源となり得ます。
ただし、どんな食べ物にも言えることですが、与え方や量には正しい知識が必要です。栄養価が非常に高いからこそ、与えすぎはかえって愛犬の健康を損なう可能性もあります。レバーの栄養素や適切な与え方を正しく理解し、愛犬の食生活を豊かにしてあげましょう。
レバーに含まれる栄養素と犬への影響
レバーには、犬の体にとって重要な栄養素が豊富に含まれています。ここでは、主な栄養成分が犬にどのような影響を与えるのかを解説します。
ビタミンA
レバーに特に豊富に含まれるのがビタミンAです。ビタミンAは、網膜の機能を正常に保ち、夜間の視力を維持するために不可欠な栄養素で、「目のビタミン」とも呼ばれています。また、皮膚や粘膜の健康を保ち、被毛を艶やかにする効果や、体の免疫機能をサポートする重要な働きも担っています。
しかし、ビタミンAは脂溶性ビタミンという、体内に蓄積されやすい性質を持っています。そのため、過剰に摂取すると「ビタミンA過剰症」を引き起こすリスクがあります。主な症状としては、骨の変形や関節の痛み、肝臓への負担、食欲不振などが挙げられるため、与える量には細心の注意が必要です。
ビタミンB群
レバーには、ビタミンB2やB12をはじめとするビタミンB群も多く含まれています。ビタミンB群は、食事から摂ったタンパク質、脂質、炭水化物をエネルギーに変える「代謝」の過程で、補酵素として働く不可欠な栄養素です。エネルギー産生をスムーズにすることで、愛犬の活力をサポートし、疲労回復を助ける効果が期待できます。また、健康な皮膚や粘膜の維持にも関わっています。
鉄分
鉄分は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの主成分です。ヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素と結びつき、全身の細胞へと酸素を運搬するという生命維持に欠かせない役割を担っています。
レバーには、体に吸収されやすい「ヘム鉄」という形の鉄分が豊富に含まれており、貧血の予防・改善に非常に効果的です。特に、毎日元気に走り回る活動的な犬や、体が成長している子犬にとっては重要な栄養素と言えるでしょう。
葉酸
葉酸もビタミンB群の一種で、赤血球の生成を助ける働きがあることから「造血のビタミン」とも呼ばれています。
また、タンパク質の合成や、細胞が新しく作られる際の遺伝情報に関わるDNAの合成にも不可欠な栄養素です。体の発育や成長に深く関わるため、特に成長期の子犬や、妊娠・授乳中の母犬にとっては非常に重要です。
タンパク質
タンパク質は、筋肉や内臓、皮膚、被毛、血液など、犬の体を作る基本的な材料となる最も重要な栄養素の一つです。レバーには、これらの元となる良質なタンパク質が豊富に含まれています。
また、体内で合成できない「必須アミノ酸」がバランス良く含まれているため、効率的に体の組織を維持・強化することができます。
犬にレバーを与えてもいい量と頻度
栄養豊富なレバーですが、与えすぎは禁物です。ここでは、愛犬の健康を守るための適切な量と頻度の目安について解説します。
体重別の1日の摂取量目安
犬にレバーを与える際は、おやつやトッピングとして考え、1日の総摂取カロリーの10%以内を目安にすることが推奨されます。以下の表は、一般的な鶏レバー(約130kcal/100g)を加熱した場合の1日の上限量の目安です。
犬のサイズ | 代表的な犬種 | 体重 |
1日の摂取上限量(目安)
|
---|---|---|---|
超小型犬 | チワワ、カニンヘン・ダックスフンド | ~4kg | 約10g~15g |
小型犬 | トイ・プードル、柴犬、ミニチュア・シュナウザー | ~10kg | 約20g~30g |
中型犬 | ボーダー・コリー、ウェルシュ・コーギー | ~25kg | 約40g~50g |
大型犬 | ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー | ~40kg | 約60g~70g |
この量はあくまで健康な成犬の最大値です。個々の運動量や年齢、体質、そして他に与えるおやつの量などを考慮して、必ず調整してください。
与える頻度の目安
レバーを毎日与えるのは、ビタミンAなどの過剰摂取のリスクを高めるため避けるべきです。
栄養の偏りを防ぐ意味でも、週に1回から2回程度、特別なご褒美やおやつとして与えるのが最適な頻度です。主食である総合栄養食のドッグフードとのバランスを常に考えることが重要です。
子犬・老犬に与える際の注意点
子犬への与え方
子犬は消化器官がまだ完全に発達していません。そのため、レバーを与える際は、成犬よりもさらに少量から始めるようにしてください。
また、アレルギー反応が出ないか、食後の便の状態や体調の変化を注意深く観察することが大切です。子犬の成長に必要な栄養バランスは、総合栄養食である子犬用フードでしっかりと摂ることを基本としましょう。
老犬への与え方
老犬(シニア犬)は、消化機能や、栄養素を分解・排出する肝臓や腎臓の機能が低下していることがあります。レバーは栄養価が高い分、これらの臓器に負担をかける可能性も否定できません。
与える場合は、ごく少量に留めるのが賢明です。何らかの持病がある場合や、薬を服用している場合は、レバーを与えても良いか、必ず事前にかかりつけの獣医師に相談してください。
犬へのレバーの与え方と注意点
安全にレバーを与えるためには、調理法や与える前の確認が非常に重要です。愛犬の健康を守るためのポイントを解説します。
レバーの加熱は必須
生のレバーには、サルモネラ菌やカンピロバクターといった食中毒の原因菌、あるいは寄生虫が存在するリスクがあります。
これらは犬にも深刻な健康被害(激しい嘔吐や下痢、発熱など)を引き起こす可能性があるため、生のまま与えるのは絶対にやめてください。中心部までしっかりと火が通るように、必ず加熱調理をしましょう。
おすすめの調理法は「茹でる・蒸す」
犬にレバーを与える際の最も安全で健康的な調理法は、シンプルに「茹でる」または「蒸す」ことです。調理の際に、塩やコショウ、醤油、ハーブ、スパイスといった人間用の調味料は一切使用しないでください。
犬にとっては塩分過多や、中毒を引き起こす成分が含まれている可能性があり、肝臓や腎臓に大きな負担をかけます。素材そのものの味と香りで、十分に喜んでくれます。
与える前の確認事項
アレルギーがないか確認する
レバーは鶏、牛、豚など様々な種類がありますが、いずれもアレルギーの原因となる可能性があります。初めて与える際は、まず爪の先ほどの大きさにし、食後に数時間から1日程度、体調に変化がないか注意深く観察してください。
皮膚を痒がる、体を舐め続ける、下痢や嘔吐をするなどの症状が見られた場合は、すぐに与えるのを中止し、獣医師に相談しましょう。
持病がある場合は獣医に相談する
特に、肝臓疾患や腎臓疾患、尿路結石の既往歴がある犬にレバーを与えるのは注意が必要です。レバーに含まれるリンやタンパク質が、症状を悪化させる可能性があります。何らかの持病で通院している、または療法食を食べている場合は、自己判断で与えず、必ずかかりつけの獣医師に相談してからにしてください。
愛犬がよろこぶレバーのレシピ・おやつアイデア
正しい知識を持てば、レバーは愛犬とのコミュニケーションを深める素晴らしいツールになります。ここでは、家庭で簡単に作れるレシピを紹介します。
簡単レバージャーキー
まず、新鮮な鶏レバーや牛レバーを5mm程度の厚さにスライスします。次に、鍋にお湯を沸かし、レバーを数分間茹でてアクを取りながら火を通します。茹で上がったレバーの水気をキッチンペーパーでよく拭き取り、オーブンの天板にクッキングシートを敷いて並べます。
120℃程度の低温に設定したオーブンで、60分〜90分ほど、水分が飛んでカリッとするまでじっくりと焼き上げれば完成です。完全に冷ましてから、密閉容器に入れて冷蔵庫で保管しましょう。
手作りレバークッキー
茹でて完全に火を通したレバーを、フードプロセッサーやすり鉢で滑らかなペースト状にします。そのペーストに、米粉やオートミール粉を少しずつ加え、耳たぶくらいの硬さの生地になるまで混ぜ合わせます。小麦アレルギーが心配な場合は、米粉を使うと安心です。
生地を3〜5mmの厚さに伸ばし、お好みの型で抜いて、170℃に予熱したオーブンで15分〜20分ほど焼けば、香ばしいクッキーの出来上がりです。
食いつきが良くなるレバーのトッピング
最も手軽な方法が、いつものフードへのトッピングです。茹でるか蒸すかしたレバーを、愛犬が食べやすいように細かく刻むか、フォークの背で潰します。それをいつものドッグフードの上に少量乗せてあげるだけで、食欲をそそる特別な一皿になります。
レバーの茹で汁には旨味成分が溶け出しているので、冷ましたものを少量フードにかけると、さらに風味がアップし、食いつきが悪い時の水分補給にも役立ちます。ただし、与えすぎはカロリーオーバーになるため、少量に留めましょう。
まとめ
レバーは、ビタミンやミネラル、タンパク質が豊富に含まれた、犬にとって非常に栄養価の高い優れた食材です。しかし、その栄養価の高さゆえに、与える「量」、与える「頻度」、そして「加熱する」という調理のルールを守ることが、愛犬の健康を守る上で重要な条件となります。
今回ご紹介した注意点やレシピを参考に、愛犬の年齢や体調をよく観察しながら、レバーを上手に食生活に取り入れてみてください。もし少しでも不安な点があれば、自己判断せずに、かかりつけの獣医師に相談することをお勧めします。
正しい知識を持って、愛犬との食事の時間をより豊かで楽しいものにしていきましょう。