犬が生ハムを食べても大丈夫?病気・食中毒・感染症のリスクについて

犬が生ハムを食べても大丈夫?病気・食中毒・感染症のリスクについて

犬が生ハムやハムなど食肉加工品を食べても大丈夫なのでしょうか?犬が誤って生ハムを食べてしまったら、病気や中毒、感染症のリスクが気になりますね。どうやらハムの製造方法と生の豚肉を使用していることが関係しているようです。

犬が生ハムを食べても大丈夫?

テーブルの上のお皿に乗った生ハムを食べる犬

生ハムは食べても大丈夫。ただし塩分に注意が必要!

生ハムを与えても、ただちに危険になる事はありません。その点でいえば「食べて大丈夫な食材」と言えます。

しかし生ハムには「塩分が多く含まれている」ため、日常的に与える事はおすすめしません。

多すぎる塩分は様々な健康リスクがあるので、生ハムなどの塩分が多い食べ物は、日常的に与えないようにしましょう。

保存方法によっては食中毒のリスクもある

その他にも、食中毒になるリスクがあります。

  • E型感染ウイルス(HEV)
  • サルモネラ菌
  • 寄生虫
  • リステリア菌

特に、飼い主さんが見ていないところで誤飲してしまい、その後体調を崩した場合は、要注意です。動物病院などの専門機関へすぐに受診しましょう。

犬が食べてもいい生ハム量と塩分量について

クエスションマークと犬の横顔

そもそも生ハムとは?ハムとの違い

「生ハム」のことを生肉と考えている方は意外に多いのではないでしょうか。見た目的には生肉のような薄ピンク色をしていますが、生ハムとは豚のモモ肉を長時間塩漬けにした後に発酵させたものや燻製にしたものです。

そもそもハムという名称は、英語の「ham」から由来しており、豚のモモ肉を塩漬けにした加工食品のことを指します。

塩漬けまでの工程は行い、その後、加熱処理を行わないものを日本では「生ハム」と呼ばれることが多いです。

つまり「ハム」は加熱処理を経てから加工したもので、加熱していないものを「生ハム」と呼んでいます。

生ハムの塩分は普通のハムより高い

ハムは塩・砂糖・香辛料・発色剤などを合わせた塩漬剤に長時間漬け込んでから発酵させ、その後乾燥させて熟成させたり、加熱処理をしてから燻製にするなどいくつかの製造方法があります。

どのハムにしても塩漬けは必ず通る工程となりますので、塩分が高くなるのは当然かもしれません。

  • 生ハム        1100mg
  • 生ハム長期熟成    2200mg
  • ロースハム      1000mg
  • ボンレスハム     1100mg

※『日本食品標準成分表 2015年版(七訂)』を参照。100gあたりのナトリウム含有量となります。

使用する部位、製造工程や熟成期間などによってナトリウム含有量が異なります。ハムの厚さにもよりますが100gで5枚程度と考えられています。

生ハム1枚で子犬の場合は「塩分過多」になってしまう

成犬の1日のナトリウム推奨量は、体重1kgに対し50mgといわれています。

食塩はナトリウムと塩素からできており、食塩の約40%がナトリウム量に相当します。ナトリウム量を食塩の量に換算するには下記の換算式を用います。

ナトリウム(mg)×2.54÷1.000=食塩相当量(g)

これを犬の塩分に換算すると体重1kgあたり0.127gとなります。

例:体重4kgの小型犬
0.127g×4=0.508g

生ハム1枚あたりの塩分は0.6gといわれています。

体重4kgの小型犬であれば、生ハムを1枚食べれば塩分を過剰摂取してしまうことになります。

犬が塩分を摂りすぎるとどうなる?

私たち人間はしょっぱい食べ物を食べると喉が渇きませんか?喉が渇くと体内に摂取された塩分を薄めようとする働きから水分をたくさん飲むことになります。

その結果、体の水分が増加して血液の量が上昇することになります。血液の量が増えると、心臓と塩分(ナトリウム)の排泄を行う腎臓に負担がかかります。

人間はナトリウムを汗として排出することができますが、犬は肉球や鼻など限られた部位で僅かな汗をかく程度です。

なので、犬が塩分を摂りすぎると腎臓や心臓に負担がかかりやすいため、過剰摂取には十分に注意しなければならないのです。

生ハムは食中毒にリスクがある食べ物

注意の看板を持ったパグ

テーブルやキッチンカウンターの上など、人間が食べ残したものを放置しておくと犬が食べてしまうことはあり得ます。

特に掃除や洗濯など家事が多い朝は、食事の後片づけを後回しにしがちですよね。

そんな時に限って、犬は人間の目を盗んで食卓のおかずをひと口パクリ・・・なんてことは良くあることです。

けれど、「犬が中毒を起こすかも?病気になるかも?」と気が気ではありませんね。

生ハムをひと口食べただけなら塩分の過剰摂取には相当しませんので、誤食した後に下痢や嘔吐などがなければ問題ありません。

ただし、生ハムの場合は食中毒に注意が必要です。

E型感染ウイルスやサルモネラ菌、寄生虫が潜んでいる場合も

豚肉を加熱せずに食べると、E型感染ウイルス(HEV)やサルモネラ菌などによる食中毒のリスクがあるほか、寄生虫への感染報告などが挙げられています。

厚生労働省の公式サイトでは、「豚肉や豚レバーは生で食べずに中心部まで加熱して食べましょう」と注意喚起を促しています。

加熱処理をしていない生ハムはどうなのでしょうか?

生ハムに潜むリステリア菌に要注意

病院の診察台に横になる犬

加熱処理をせずに製造されて食べられる食品にリステリア菌が検出されていた報告があります。

  • 生ハムなど食肉加工品
  • ナチュラルチーズなど乳製品
  • スモークサーモンなど魚介類加工品

これらの製品を食べる機会が多い欧米で集団食中毒が発生したことで、国内でも妊婦や高齢者など免疫機能が低下している方に対し注意喚起を呼び掛けています。

リステリア症とは?

リステリアという細菌によって引き起こされる感染症を「リステリア症」といいます。

アメリカでは毎年5000人が食物からの感染症で死亡していると推定され、そのうち約500人がリステリア症で死亡しているといいます。

特に妊婦が感染すると胎児の感染から流産、早産、死産のリスクが高まる可能性があります。

主な症状

  • 発熱や下痢
  • 筋肉痛
  • 吐き気や嘔吐など胃腸障害
  • 頭痛
  • 混迷
  • ふらつき
  • 痙攣等
  • 神経障害

生ハムからリステリア菌が検出された事例も

リステリアは食中毒の原因となる可能性がある病原体で、日本でも2000年夏に、輸入された生ハムからリステリアが検出された報告があります。

羊、牛、犬、猫などの家畜やペットでも病気を起こすことがあり、発病せずにリステリアを運ぶこともあります。症状としては、羊や牛などの家畜が脳炎、流産、敗血症になった症例があります。

リステリア症は犬に感染するの?

毛布の上でぐったりしている犬

気になる動物への感染について調べてみました。
東京都獣医師会の資料によると、犬や猫などの感染ルートは、主に汚染された餌の摂取によるものと書かれています。

初期症状は食欲減退・足元がふらつくなど。数日で斜頚(頭が傾く)・グルグル回る・知覚麻痺・涎を流すなどの脳髄膜炎症状を引き起こし、重篤になると昏睡状態になり死に至ることも。その他、敗血症・流産・咽喉頭麻痺などの症例があるようです。

犬への感染の予防法は?

乳製品や食肉加工品をペットに与える時の予防策としては、下記のことが書かれています。

  • 新鮮なものを与える
  • 加熱した後に与える

なお、リステリアは室温で良く繁殖するため、下記の点に注意しましょう。

  • 餌を常温で長時間使用しないこと
  • 餌用の食器はこまめに洗浄する

犬にとって生ハムは本当に危険?

テーブルの上に置かれたお皿を舐めている犬

生ハムやナチュラルチーズなど非加熱加工食品は、日本の食品衛生法で定められた規格基準を満たしている製品です。

厚生労働省は2014年12月に、生ハムなど非加熱食肉製品とナチュラルチーズにリステリアの規格基準値「検体1gあたり100以下」を設定。大手ハムメーカーでは厚生労働省より厳しい基準値を適用しています。

リステリア菌は低温保存でも増殖する

本来、リステリア菌は自然界に広く分布しているがゆえに、いつ・どこで感染するかは予測不能ですし、どこからでも感染する可能性があります。

他の食中毒菌と同じように加熱することで死滅しますが、低温冷蔵庫や12%食塩濃度でも増殖できる特徴があります。

ゆえに塩漬けしている生ハムは冷蔵庫の中で保管すれば菌が繁殖しない、と思われがちですが、リステリア菌の場合は増殖して食中毒になる可能性があります。

また、加工食品には賞味期限がありますが、開封して保存したものや貯蔵環境の悪い冷蔵庫などに保存していれば感染リスクは高まる恐れがあります。

開封後の自然感染は自己責任

豚肉に加熱処理をせずに製造した生ハムを食べた犬が感染症を起こさない保証はありません。ユーザーが責任を持って生ハムを保管することが大切です。

食品メーカーは、生ハムの規格基準を満たしたものを製造販売しています。開封後の自然感染についてはユーザーの自己責任となります。

人間が食べる生ハムを犬に食べさせたり、誤って食べさせることがないように注意しましょう。

まとめ

お皿に並べられた生ハム

愛犬が物欲しそうにしていたり、人間が放置したために犬が生ハムを口にしてしまう可能性は0ではありません。

ハムや生ハムなど食肉加工品は、人間に必要なカロリーや摂取量が計算されて製造されているものです。非加熱加工食品の食中毒については、食品衛生法で定められた規格基準を満たす製品ですので、健康な人間であれば食中毒のリスクが低い安全な食品です。

ただし、体の小さな犬やペットに与えると肥満や病気、中毒や感染症を引き起こすリスクが伴います。犬に必要なタンパク源となる肉類は、一度加熱調理をしてから与えることをおすすめします。

下痢や嘔吐などの症状が現れたら、すぐに動物病院で受診しましょう。

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